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はじめに
わが国において,脳卒中は死因の第3位,要介護に至る原因疾患の第1位を占め,その対策は行政,医療従事者その他の関係機関にとって喫緊の課題となっている.脳卒中に対し適切な疾病対策を行うためには,疾病登録事業などにより,国および地域における脳卒中診療の実態を正確に把握し,その結果に基づいた施策を立案することが重要である.しかし,2018年現在,わが国の脳卒中診療の領域には,「がん対策基本法」,「がん登録の推進に関する法律」に基づくがん登録に相当するような,強制力のあるデータ登録事業がなく,一部の地域の事業や研究として個別に実施されるのみである.行政がかかわって症例登録事業などを実施している都道府県も,12府県にとどまっている1).悉皆性の高いデータ登録事業がない現状において,診療実態を適切に把握することは困難であり,2016年より開始された厚生労働省健康局の「脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会」の報告書2)において,疾病レジストリなどのデータベースのあり方については今後の検討課題である旨の言及がみられたり,また同年に日本脳卒中学会,日本循環器病学会などの連携のもとで公表された「脳卒中と循環器病克服5か年計画」3)でも,登録事業の促進が,5か年計画を達成するための戦略のひとつとして挙げられるなど,疾病対策を立案するうえでの重要な課題と認識されている.
本稿では,わが国における現行の個別の脳卒中登録事業のうち,脳卒中急性期の症例を登録している日本脳卒中データバンクについて,取り組みや変遷を紹介する.また,特に脳卒中のリハビリテーションに係るデータの収集における日本脳卒中データバンクの役割を示し,その課題について考察する.
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