- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本書は,看護が栄養についてもっと責任を持つべきだという主張に貫かれている.読みやすく,サルコペニアと栄養管理を学ぶためには,看護師ばかりでなく,医師,歯科医師,リハビリテーション関連職種を含めた多職種にとっても極めて役立ち,優れた内容となっている.題はリハビリテーション栄養となっているが,一般栄養管理としてのポイントを学ぶこともできる.疾患ごとの実例も多数取り上げられていて,臨場感があるし,コラムもおもしろい.実際の臨床現場では,経験の浅い研修医や,栄養に関心の薄い医師が出す指示に栄養管理上の問題があるケースは相当数存在する.NSTの活躍している病院においてさえ例外ではない.これに対して看護が積極的に関与して,チームで医療を展開すべきであるという考えには心から賛同する.さらに踏み込んで,編者の一人である森みさ子さんが「サルコペニアという概念が広まり一般市民にも周知されるようになれば,医原性サルコペニアをつくった看護師が過失を問われる時代がくるであろう」(p.114)とまで述べている箇所には驚いた.看護師が果たす役割は,それほど大きいのである.
近年,「リハビリテーション栄養」が注目を浴びている.評者は10年ほど前に「栄養を与えないでリハビリテーション訓練が行われている弊害」について日本リハビリテーション医学会の専門医会で若林秀隆先生の講演を聞いて感銘を受けた.それまでも栄養に関しては関心があり,大変重要であると認識してはいたが,日本の医療現場の実情は異なっている.実際,1日1,000kcalにも満たないエネルギー量で「るいそう」が進んだ状態で入院してくるリハビリテーション患者は当院でも少なくないし,油断するとそのまま低栄養が継続されてしまうケースさえある.栄養管理がなされない状態でのリハビリテーションは有害無益であり,罪悪でさえあると考えられる.栄養管理の必要性はいくら強調してもしすぎるということはない.
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.