総合リハビリテーション 46巻11号 (2018年11月)

特集 難病に対する医療・福祉とリハビリテーション

今月のハイライト
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 難病といわれてきた疾患でも,近年,診断と治療薬,多様なリハビリテーション手法が開発されています.しかし,希少疾患が多いこと,回復期リハビリテーションに該当しないこと,進行性であることなどから,まだまだリハビリテーションや社会参加を含めた包括的な支援が不足している状況にあります.一方で,呼吸器や電子機器を利用して,自らがマネジメントして長期の療養生活を送る当事者からの発信が増えてきています.本特集では,難病診療やリハビリテーションにおける近年の進歩や新しい考え方を紹介し,読者に情報提供することを通して少しでも多くの難病症例の診療に寄与することを目的として企画しました.

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はじめに

 かつて神経内科は「なおらないか(治ら内科)」といわれてきた.そのなかでも難病は「治癒困難」であることが定義になっているように,いまだに診断も治療も難しい疾患が多い.しかし,この20年間の進歩は目を見張るものがある.脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)のように,全く治療法がなく致命的であった疾患が,生命予後のみならず機能予後も大きく改善する治療が実現している.神経難病を中心に,その一部を紹介する.

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はじめに

 特集のテーマは,「難病に対する医療・福祉とリハビリテーション」ということで,診断から治療,社会的な問題までさまざまな切り口の論文で構成されている.その中にあって本稿は,「神経保護と再生に対するリハビリテーションの効果」というタイトルで,難病であるパーキンソン病に対するリハビリテーションの意義,リハビリテーションによる神経新生への効果,リハビリテーションを用いる基礎研究の問題点,そして,リハビリテーションが再生医療において果たす役割を,主として基礎研究に軸足を置いて述べる.

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はじめに—解決すべき問題とは

 随意運動は脊髄と脳幹の運動ニューロン(下位運動ニューロン)を中枢神経系が制御することで行われる.1つの下位運動ニューロンとその支配する筋線維からなる構成体は運動単位とよばれる.運動単位は運動単位活動の頻度と動員される運動単位の総数により制御されており,すべての運動現象をつかさどる効果器(effector)である.神経・筋疾患(neuromuscular disease)とはこの運動単位(motor-unit)そのものが変性することで,進行性の運動機能障害と筋萎縮を引き起こす重篤な疾患群をいう.この代表疾患は,脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy;SMA),球脊髄性筋萎縮症(spinal and bulbar muscular atrophy;SBMA),筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis;ALS),シャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth disease;CMT),筋ジストロフィー,遠位型ミオパチー,先天性ミオパチー,封入体筋炎であり,すべて指定難病である.これらの神経・筋疾患においては治療法研究が進まなかっただけでなく,運動療法に対しても検討が行われてこなかった(表1).その理由は,強い筋収縮を短時間行う筋力トレーニング(strength training),弱い筋収縮を長期間行う持久力トレーニング(endurance training),または固有受容器神経筋促通法(proprioceptive neuromuscular facilitation technique)などが罹患した運動単位に対して過負荷となり変性が逆に進むのではないかという議論が絶えなかったからである1,2).このため,神経・筋疾患では,廃用症候群の予防のための運動療法すら十分されてこなかった.

 運動単位を制御する上位運動ニューロンが変性する疾患群で,両下肢の痙性麻痺により立位や歩行機能が低下するものを痙性対麻痺と呼ぶ.痙性対麻痺を起こす進行性難病の代表はヒトT細胞白血病ウイルス(human T-cell leukemia virus type 1;HTLV-1)関連脊髄症(HTLV-1 associated myelopathy;HAM)と遺伝性痙性対麻痺(指定難病では脊髄小脳変性症の中に分類されている)であり,いずれも指定難病である.これらの疾患では,症状の進行は抑えられず,徐々に立位や歩行が不能になる.運動療法における問題は,歩くごとに病的歩行運動パターンが再学習されることでさらに悪い歩行運動パターンを再学習する悪循環になることである.廃用症候群を予防するために歩くことすら,悪い歩行運動パターンの強化学習となる可能性があり矛盾がある.

 神経・筋疾患においても痙性対麻痺においても,適切な運動療法の研究はなされてこなかったため,どのような運動療法が最適であるのか不明なまま運動療法は行われてこなかった(表1).

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はじめに

 筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis;ALS)は神経変性疾患の中でも特に進行が早く,平均生存期間は3〜5年とされている.四肢の筋力低下のみならず,呼吸筋や話す,飲み込むといった機能までもが障害される.診断,告知,治療方針に加え,介護から精神的,経済的な面まで神経内科医が1人で解決することは困難であり,各専門家に問題をゆだねるのが最も効果的である.そこで考えられたのがmultidisciplinary clinicといわれる多職種による診療形態で,1970年代にアメリカではじまり,その後ヨーロッパにもひろがった.通院や移動が困難なALS患者にとって診察,検査に加え,ソーシャルワーカー,栄養士,治験コーディネーターなどとの面談が1回の受診で完結することは大きな助けになった.すでに海外の研究では,多職種連携診療が患者の生命予後や生活の質(quality of life;QOL)改善に繋がると報告され,先進国では多職種連携診療がALSの標準的治療になっている1-4)

 東邦大学医療センター大森病院神経内科(以下,当科)外来におけるALSの多職種連携診療(通称 ALSクリニック)開設までの経緯と現在の活動を述べる.

難病の就労支援の概況 春名 由一郎
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はじめに

 難病による「障害」は,固定した後遺症に限定されず,障害者手帳制度の対象でない場合でも,「体調の崩れやすさ」,「疲れ」,「痛み」,「免疫低下」,「皮膚障害」などによって,広い意味での「健康状態に関連した生命・生存,生活,人生の困難状況」が顕著になりやすい1)

 近年,障害者総合支援法や障害者雇用促進法において,そのような難病による「障害」も支援対象になった.また,わが国の障害者就労支援は以前からの障害者雇用率制度や福祉的就労以外にも新たな取り組みを広げている.難病の治療と仕事の両立支援はがんや慢性疾患と共通した課題である.国連障害者権利条約による合理的配慮提供・差別禁止は,以前から「難病のある職業人」からの要望の多かったものである.さらに,特に医療依存度が高く重度の障害のある難病患者にとって,従来は就労支援が「究極の目標」になりがちであったが,現在,情報通信技術や働き方の多様化・柔軟化によって新たな就労支援の可能性と課題が明らかになりつつある.

 本稿では,このような幅広い難病の就労支援について,既に法制度や支援体制の整備が進んでいる状況や,今後の課題としての先駆的取り組みまで現況を整理したい.

呼吸管理と在宅生活 石川 悠加
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各国の呼吸管理ガイドライン

 神経筋難病も対象となる在宅人工呼吸ガイドラインは,欧米において,各国や学会から公表されてきた1-3).非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive positive pressure ventilation;NPPV),気管切開人工呼吸,気道クリアランスなどに関する推奨が行われている.そこでは,専門性の高い適切な予防的な呼吸ケアを行うことにより,ケアの負担が軽減し,患者と家族の生活の質(quality of life;QOL)が向上するとされる.ケアで大変な家族に,これ以上効果が確認されていない呼吸ケアや専門的でない呼吸ケアで負担を増やしてはならないとしている.

 本邦でも,「神経筋疾患・脊髄損傷の呼吸リハビリテーションガイドライン」4),2015年に「NPPVガイドライン」5),筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)やデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy;DMD)など疾患別の診療ガイドライン(日本神経学会)が公表されたが,在宅人工呼吸に特化したガイドラインはなく,経験に基づいて実施している.

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はじめに—生きること=コミュニケーション

 「一つだけでも戻せるものがあるのであれば,迷わず私は,話せることを望みます」.難病コミュニケーション支援講習会の挨拶での,当時日本ALS協会の会長であった岡部宏生氏の言葉である.難病を抱え発話によるコミュニケーションがとれない当事者にとって,コミュニケーションは「生きること」そのものであることを意識し続けることは,支援者にとって最も大切なことである.本稿では,難病患者を支えるコミュニケーション支援方法の紹介から実際の活用法,それらを支える社会制度について具体例を踏まえながら概説した.

巻頭言

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 1995年に野茂英雄選手が海を渡り今年で23年.今では,当たり前のように子供たちが口にする「将来の夢はメジャーリーガー」.今年,アメリカ・メジャーリーグの舞台で鮮烈なデビューを果たした大谷翔平選手も,高校時代既にメジャー球団への入団を目標としていたそうだ.しかし,例えば30年前に将来の夢としてメジャーリーガーを口にできる子供は一体どのくらいいたのだろうか.間違いなく,野茂英雄という一人のパイオニアの出現によって,日本人の野球観は大きく変化した.リハビリテーション領域においても,ある1つの提案や発見によって,その後の診療方針に大きな影響を及ぼす場合がある.

 “サルコペニア”,骨格筋量の減少を示す用語として,1989年にRosenbergが提唱した.2018年時点でわが国の高齢化率は28%超であるが,この用語が誕生した1989年は未だ14%にも達していなかった.無論,このころには介護保険制度はなく,高齢者医療・介護への関心は現在の比較対象にならないほど低かったであろう.そんななか,高齢者の骨格筋量に着目し,その後世界中で着目されることになる“サルコペニア”を提唱したRosenbergは卓越した先見性の持ち主だったことが伺える.

入門講座 感覚障害とリハビリテーション・4

味覚障害 杉本 久美子
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はじめに

 食物をおいしく味わうことは生活のなかの大きな楽しみであり,味覚障害はこの楽しみを奪い生活の質(quality of life;QOL)を大きく低下させる.とりわけ高齢者や有病者においては,味覚障害は容易に食欲低下から低栄養状態を招き,全身状態を悪化させる要因となる点で重要な感覚障害の1つである.

 味覚障害患者数は高齢社会の進行に伴って増加していることが,日本口腔・咽頭科学会による全国的調査の結果から示されており,1990年に年間の推定味覚障害患者数14万人であったものが,2003年には24万人と大きく増加している1).この動向は味覚外来を設置している病院の近年の報告2)でも示され,高齢者では加齢に伴う味覚機能低下3)に加え,全身疾患,服薬の影響により味覚障害が増加することを反映している.

実践講座 リハビリテーション看護・4

嚥下障害の評価とアプローチ 西村 和子
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はじめに

 厚生労働省資料による「わが国における死因率の推移(主な死因別)」では,悪性新生物・心疾患に続き肺炎が第3位であり,2011年に脳血管疾患を抜いて以降,上昇傾向となっている.肺炎患者の約7割が75歳以上の高齢者であり,またその高齢者の肺炎のうち,7割以上が誤嚥性肺炎と報告されている1)

 入院患者の半数以上が高齢者であることはめずらしくない.高齢者は,入院後手術や治療によってベッド上での安静や絶食期間があることで,容易に廃用性の変化が起こりやすい.そのため,入院時から廃用予防のための援助が必要である.そのなかで,嚥下障害も廃用の1つとして挙げられる.長期間の絶食により口腔機能や咽頭に廃用性の変化が生じ,その機能が低下することが考えられる.また,長期間消化管を使用しないことによる消化吸収障害や免疫力の低下,バクテリアル・トランスロケーションなど全身性の感染症を引き起こすリスクが高まることが知られている2).経口摂取をしないことにより,精神的満足が得られず,また口腔内の唾液の分泌の減少が口腔内の感染を助長して味覚が障害され,食欲の減退にもつながる可能性がある.口腔内の感染が誤嚥を起こすことにより,肺炎の発生につながる原因ともなり得る3)

 これらのことから,いかに絶食期間をつくらず早期から経口摂取を開始できるようアプローチを行うかで,廃用性の変化を予防し高齢者の生活の質(quality of life;QOL)を維持していくことができると考える.そのなかで看護師が担う役割は大きく,初期段階から口腔機能を保つための口腔内の観察と口腔ケアは特に重要である.さらに,リハビリテーションや歯科・歯科衛生士など多職種と連携したアプローチを行うことが効果的であると考える.

 本稿では,藤田医科大学病院(以下,当院)での取り組みを中心に嚥下障害の評価とアプローチの方法について解説する.

実践講座 地域におけるリハビリテーション専門職の役割・2

活動支援システム 田中 明美
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はじめに

 要支援認定者らにおける「自立支援や重度化防止」を図るには,心身の状態像を把握し,生活機能低下の背景・要因が分析でき,優先的に取り組むべき課題を整理し,課題解決に向けた有期限での支援内容を具体的に示し,本人・家族の同意を得ながら実践していくプロセスが重要である.そのためには,しかるべき対象をピックアップする介護予防ケアマネジメントの質を担保することをはじめ,生活機能の向上が図れるプログラムの整備や自立支援を多職種で協議できる地域ケア会議の開催が大前提である.また,ほかには元気を回復していく高齢者が地域でいきいきと暮らしていける社会資源の創出や高齢者が活躍していける場の整備がともに進められていることも重要である.奈良県生駒市においては,2012年度に厚生労働省のモデル事業である「市町村介護予防強化推進事業」に参加したことにより,「自立支援・重度化防止」の意識が高まり,介護予防・日常生活支援総合事業にその理念を組み入れることができた.その背景にはリハビリテーション専門職の役割が大きかったため,その位置づけや役割について概説する.

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要旨 【目的】本研究では,変形性膝関節症(knee osteoarthritis;膝OA)患者の膝内反動揺を軽減できる運動靴(膝内反軽減シューズ)を開発し,そのシューズが歩行立脚期の膝内反角に及ぼす影響を検討した.【対象】変形性膝関節症と診断された13名19肢(すべて女性:平均年齢61.5±6.1歳)を対象とした.【方法】膝内反軽減シューズを着用した歩行と一般靴を着用した歩行を行い,初期接地および立脚中期の膝関節内反角を計測した.その後,立脚中期から初期接地の膝内反角を引いた膝内反角変化量を求め,両靴間で比較した.【結果】一般靴では初期接地から立脚中期にかけて,膝内反角が有意に増加した(p<0.01).一方,膝内反軽減シューズでは膝内反角の有意な増加は認められなかった.また,膝内反軽減シューズ着用時の膝内反角変化量は,一般靴と比較して有意に低値を示した(p<0.01).【結語】膝内反軽減シューズは,一般靴よりも歩行立脚期の膝内反角を軽減できること,膝OA症例の症状緩和や病態の進行抑制にその効果を期待できる可能性が示された.

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要旨 【背景】頸髄損傷不全麻痺者の下肢筋力回復経過と歩行自立との関連を分析し,歩行自立に必要な下肢筋力の数値的指標と,予後予測に適切な受傷後経過時期を検討した.【対象】脊髄損傷データベースに登録された患者(422名)のうち,長期経過観察できた60名を対象とした.【方法】対象を歩行非自立群と歩行自立群に分け,各群内および両群間で受傷後経過時期別のlower extremity motor score(LEMS)回復値を比較した.Receiver Operating Characteristic曲線(ROC曲線)を求め,LEMSカットオフ値を算出した.【結果】歩行自立群の入院〜受傷後2週におけるLEMS回復値は,受傷後1か月以降のすべての時期と比較して,有意に高かった.ROC曲線の分析結果から,受傷後1か月が適切な予後予測時期と考えられ,LEMSカットオフ値は32点であった.【結語】受傷後2週および1か月のLEMS経過から歩行自立予後予測が可能である.

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要旨 【目的】介護支援専門員(ケアマネジャー,care manager;CM)を対象に,心不全疾患理解度とケアプラン状況を把握することを目的とした.【対象・方法】2016年9月時点での兵庫県丹波医療圏域内に登録してある60か所の事業所に在籍しているCM 152名に対し,郵送法にてアンケート調査を実施した.【結果】回収率は71.7%.CMの心不全の疾患理解度は高かった(72.0%)が,ケアプラン作成においては「運動・活動量」の症状を反映しておらず,心不全モデルケースに対して身体活動量を維持・向上させるための運動支援系サービスの選択は少なかった.医療情報の収集では医師からは直接的に得ていたが,コメディカルからは書面上で間接的に得ており,情報提供書の有効性が高かった.【結語】CMの心不全疾患理解度に比して運動支援系サービスの選択が少ない原因として,身体活動量を含めた運動療法の重要性の認識が低く,在宅心臓リハビリテーションを推進するうえでの課題になっていると考えられた.

連載 補装具支給・判定Q & A

下肢装具を2個支給できますか? 高岡 徹
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A 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)における補装具の個数は,原則として1種目につき1個です.ただし,職業または教育上特に必要と認めた場合は,2個の支給も可能です.複数個支給は,下肢装具における場合が最も多いと思いますが,車椅子や義足などでも認められることがあります.複数個を支給する際には,それぞれを常用,作業用などと区別して記録しておくのがよいでしょう.

連載 公害・薬害とリハビリテーション

大腿四頭筋短縮症 武富 由雄
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はじめに

 1962年以降,日本各地で1歳未満〜3歳の小児に異常な歩行・走行を呈する多くの大腿四頭筋短縮症(以下,本症)がみられ,稀な疾患とはいえなくなり,社会的に大きな問題として提起された.行政や医学界は研究班を組織し全国的に本症の調査と研究を実施することになった1)

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 昭和28年に発表された『病友』(『上林暁全集第10巻』,筑摩書房)の中で,前年に50歳で脳卒中を患った上林暁は,同じ脳卒中仲間の友人との交友を描いている.

 近所の酒屋,虎屋の主人は,主人公よりも9か月前に発症した先輩格の患者だが,主人公が「僕は相変らず煙草がやめられませんでねえ」と言うと,「それだけは,やめた方がいいと思うがなア」と煙草の害を指摘するだけでなく,「散歩はいいですよ.是非散歩はおしなさい」と,散歩の効用を説くなど,医学的にも理に適った助言をする.虎屋自身,脳卒中後は,それまで大好きだった酒も煙草も絶つという生活を送っていたのである.

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 「I am Samアイ・アム・サム」のビートルズ,「シンプル・シモン」の宇宙船,「ぼくと魔法の言葉たち」のディズニーアニメといったように,いくつかの映画の自閉症者は,お気に入りの世界を立ち上げ,その力を借りて現実生活の困難に対処している.「500ページの夢の束」(監督/ベン・リューイン)のウェンディ(ダコタ・ファニング)も「スター・トレック」の力を借りている点でこの系譜に属する.

 はじめに自立支援ホームにおけるウェンディのパターン化された生活が描かれる.起床後,ベッド,タオル,洗面道具を整える.ヘンな匂いがするタオルを替える.セーターの色も月曜・オレンジ,火曜・ラベンダーといったように,曜日で決めている.通勤コースも,ヘイジ通りを右,ブキャナン通りを右,マーケット通りでは止まる(この通りは絶対渡らない)という自身のルールを厳守.ホームに戻った後も,6時から「スター・トレック」鑑賞,7時に夕食,8時から雑用,就寝まで自由時間という不動の日課に身を置く.変化を好まない,臨機応変に対応することが苦手という自閉症の「障害特性」論を地で行く生活ぶりだ.

私の3冊

私の3冊 藤原 大

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 「血液培養も採らずに,やれリウマチ性多発筋痛症とか,やれ巨細胞性血管炎とか言っている臨床医のなんて多いことか.そんなことをしていると,Huggyに叱られますよ!」.そんなセリフが聞こえてきそうである.「リウマチ・膠原病」と聞くと裏口から逃げ出したくなる感情を抱く医師に,笑顔をもたらしてくれる,奥深い読み応えのある書籍が現れた.

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 腰痛は多くの人々が経験するもので,本邦では男性で1番目,女性で肩こりに次いで2番目に,訴えの多い症状です(厚労省「平成28年国民生活基礎調査」より).その腰痛の中でも,原因が特定できるものは15%であり,残りの85%は原因が特定できない“非特異的腰痛”と呼ばれ,心理・社会的要素を考慮することが必要とされてきました.

 それに対して本書は,「日本人における原因不明の非特異的腰痛は20%である」という一文から始まります.このことは,腰痛疾患への対応をライフワークとし,中でも非特異的腰痛の解明に尽くされてきた著者・荒木秀明氏が最も述べたかったことであり,本書の結論となるべきものかもしれません.

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 名著『切断と義肢』(医歯薬出版)の著者であり,日本の切断者リハビリテーションの第一人者,関西リハビリテーション界の重鎮である澤村誠志氏を中心に,山口 昇,大田仁史,米満弘之,浜村明徳,石川 誠,等々10人を越す著名な方々が,地域リハビリテーション,地域包括ケア,義肢装具学会,ISPO(国際義肢装具協会)等々について書き,かつ語り合った興味深い本である.

 本書の興味深い特徴は,ほとんどの方々が,「自分がどうしてこの道に入ったか」から語りおこしておられる点である.たとえば澤村氏がこの道に入ったのは,父君が阪神電車の車掌をしていた19歳の時に,あやまってレールの上に転落し,下腿を5cmの短断端で轢断されたことが大きかったという.父君は大変な勉強家であり,澤村義肢製作所を興し,多くの切断者の心の支えとなった.その志を継いで,さらに大きく(全国的,かつ国際的にまで)発展させたのが澤村氏というわけである.氏の,若くしての,「苦学」のアメリカ留学,ライフワークである兵庫県立総合リハビリテーションセンターの建設と育成,アジア・東欧・北欧・西欧・北米27か国の37か所のリハビリテーションセンターと義肢装具研究所を訪ね歩く3か月の「貧乏旅行」(駅に寝泊まりまでしたという!)など興味は尽きない.

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 オックスフォード大緩和ケア講座の初代主任教授であったトワイクロス先生が1984年に執筆し,武田文和先生が翻訳された『末期癌患者の診療マニュアル』(医学書院,1987)が出版されてから30年以上が経過した.当時,緩和ケアの実践に関する日本語の書物はほとんどなく,貪るように読んで診療に当たったことを思い出す.過去30年においてわが国での緩和ケアの知識と技術の普及には目覚ましいものがあるが,患者に対する心構えについての教示を受ける機会は乏しく,物足りなさを感じていたところに本書が世に出たことは時宜にかなっていると感じる.

 トワイクロス先生はセント・クリストファー・ホスピス研究所の所長として招聘され,がん患者の痛みの治療法などの研究に励み,その後,「WHO方式がん疼痛治療法」(1986)の作成会議の専門家委員として中心的な働きをされた.監訳者のお一人である武田文和先生とは,それ以来の深い親交があり,お二人は「WHO方式がん疼痛治療法」の普及活動と医療麻薬の管理規制の改善に取り組まれている.本書は,トワイクロス先生の50年にわたる緩和ケアの臨床・研究・教育の経験を通して得られた英知の集大成といえるであろう.

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 リハビリテーション科医,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士の編集体制によって,2018年4月に『がんのリハビリテーション』が発刊されました.がん対策基本法が2006年6月に成立し,がん患者の状況に応じた良質なリハビリテーションの提供が求められました.2007年から,がんのリハビリテーション研修ワークショップ(CAREER)が開始され,医師,看護師,リハビリテーション専門職によるチーム医療の普及啓発が進められています.

 本書は7章272ページと比較的コンパクトですが,病期ごとの実践を念頭に置きつつ代表的ながん種の症状やリスク管理を踏まえて,運動耐容能,摂食嚥下,浮腫に対する具体的な対応に言及し,さらに心のケアについて取り上げた充実した内容となっています.

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記
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 5年ほど前,特集記事で紹介されている,NPO法人ICT救助隊による「難病コミュニケーション支援講座」に参加させていただきました.声が出せず,筆談も困難な方へのコミュニケーションの支援方法を学び,実際に体験できます.

 「人を介して行う」コミュニケーション.初めて見た「口文字」ではALS患者さんと介護者の方の“技”と“コンビネーション”に圧倒され,衝撃を受けたことをよく覚えています.そして「透明文字盤」体験では初対面の方と目線を合わせるのはなんだか照れてしまい,なかなかうまくいかず.なるほどコミュニケーションの原点はしっかり相手の顔をみることと改めて気づいた次第.

基本情報

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総合リハビリテーション
46巻11号 (2018年11月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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