Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「500ページの夢の束」—「スター・トレック」のセリフを支えにして困難と向き合った自閉症者
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.1115
発行日 2018年11月10日
Published Date 2018/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201487
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「I am Samアイ・アム・サム」のビートルズ,「シンプル・シモン」の宇宙船,「ぼくと魔法の言葉たち」のディズニーアニメといったように,いくつかの映画の自閉症者は,お気に入りの世界を立ち上げ,その力を借りて現実生活の困難に対処している.「500ページの夢の束」(監督/ベン・リューイン)のウェンディ(ダコタ・ファニング)も「スター・トレック」の力を借りている点でこの系譜に属する.
はじめに自立支援ホームにおけるウェンディのパターン化された生活が描かれる.起床後,ベッド,タオル,洗面道具を整える.ヘンな匂いがするタオルを替える.セーターの色も月曜・オレンジ,火曜・ラベンダーといったように,曜日で決めている.通勤コースも,ヘイジ通りを右,ブキャナン通りを右,マーケット通りでは止まる(この通りは絶対渡らない)という自身のルールを厳守.ホームに戻った後も,6時から「スター・トレック」鑑賞,7時に夕食,8時から雑用,就寝まで自由時間という不動の日課に身を置く.変化を好まない,臨機応変に対応することが苦手という自閉症の「障害特性」論を地で行く生活ぶりだ.
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