書評
Robert Twycross,Andrew Wilcock 編 武田文和,的場元弘 監訳「トワイクロス先生の緩和ケア—QOLを高める症状マネジメントとエンドオブライフ・ケア」
恒藤 暁
1
1京都大学医学部附属病院緩和医療科
pp.1098
発行日 2018年11月10日
Published Date 2018/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201481
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オックスフォード大緩和ケア講座の初代主任教授であったトワイクロス先生が1984年に執筆し,武田文和先生が翻訳された『末期癌患者の診療マニュアル』(医学書院,1987)が出版されてから30年以上が経過した.当時,緩和ケアの実践に関する日本語の書物はほとんどなく,貪るように読んで診療に当たったことを思い出す.過去30年においてわが国での緩和ケアの知識と技術の普及には目覚ましいものがあるが,患者に対する心構えについての教示を受ける機会は乏しく,物足りなさを感じていたところに本書が世に出たことは時宜にかなっていると感じる.
トワイクロス先生はセント・クリストファー・ホスピス研究所の所長として招聘され,がん患者の痛みの治療法などの研究に励み,その後,「WHO方式がん疼痛治療法」(1986)の作成会議の専門家委員として中心的な働きをされた.監訳者のお一人である武田文和先生とは,それ以来の深い親交があり,お二人は「WHO方式がん疼痛治療法」の普及活動と医療麻薬の管理規制の改善に取り組まれている.本書は,トワイクロス先生の50年にわたる緩和ケアの臨床・研究・教育の経験を通して得られた英知の集大成といえるであろう.
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