巻頭言
卓越した先見性とリハビリテーション
山田 実
1
1筑波大学人間系
pp.1019
発行日 2018年11月10日
Published Date 2018/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201464
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1995年に野茂英雄選手が海を渡り今年で23年.今では,当たり前のように子供たちが口にする「将来の夢はメジャーリーガー」.今年,アメリカ・メジャーリーグの舞台で鮮烈なデビューを果たした大谷翔平選手も,高校時代既にメジャー球団への入団を目標としていたそうだ.しかし,例えば30年前に将来の夢としてメジャーリーガーを口にできる子供は一体どのくらいいたのだろうか.間違いなく,野茂英雄という一人のパイオニアの出現によって,日本人の野球観は大きく変化した.リハビリテーション領域においても,ある1つの提案や発見によって,その後の診療方針に大きな影響を及ぼす場合がある.
“サルコペニア”,骨格筋量の減少を示す用語として,1989年にRosenbergが提唱した.2018年時点でわが国の高齢化率は28%超であるが,この用語が誕生した1989年は未だ14%にも達していなかった.無論,このころには介護保険制度はなく,高齢者医療・介護への関心は現在の比較対象にならないほど低かったであろう.そんななか,高齢者の骨格筋量に着目し,その後世界中で着目されることになる“サルコペニア”を提唱したRosenbergは卓越した先見性の持ち主だったことが伺える.
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