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はじめに
厚生労働省資料による「わが国における死因率の推移(主な死因別)」では,悪性新生物・心疾患に続き肺炎が第3位であり,2011年に脳血管疾患を抜いて以降,上昇傾向となっている.肺炎患者の約7割が75歳以上の高齢者であり,またその高齢者の肺炎のうち,7割以上が誤嚥性肺炎と報告されている1).
入院患者の半数以上が高齢者であることはめずらしくない.高齢者は,入院後手術や治療によってベッド上での安静や絶食期間があることで,容易に廃用性の変化が起こりやすい.そのため,入院時から廃用予防のための援助が必要である.そのなかで,嚥下障害も廃用の1つとして挙げられる.長期間の絶食により口腔機能や咽頭に廃用性の変化が生じ,その機能が低下することが考えられる.また,長期間消化管を使用しないことによる消化吸収障害や免疫力の低下,バクテリアル・トランスロケーションなど全身性の感染症を引き起こすリスクが高まることが知られている2).経口摂取をしないことにより,精神的満足が得られず,また口腔内の唾液の分泌の減少が口腔内の感染を助長して味覚が障害され,食欲の減退にもつながる可能性がある.口腔内の感染が誤嚥を起こすことにより,肺炎の発生につながる原因ともなり得る3).
これらのことから,いかに絶食期間をつくらず早期から経口摂取を開始できるようアプローチを行うかで,廃用性の変化を予防し高齢者の生活の質(quality of life;QOL)を維持していくことができると考える.そのなかで看護師が担う役割は大きく,初期段階から口腔機能を保つための口腔内の観察と口腔ケアは特に重要である.さらに,リハビリテーションや歯科・歯科衛生士など多職種と連携したアプローチを行うことが効果的であると考える.
本稿では,藤田医科大学病院(以下,当院)での取り組みを中心に嚥下障害の評価とアプローチの方法について解説する.
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