総合リハビリテーション 41巻2号 (2013年2月)

特集 呼吸リハビリテーション―新しいチーム医療の展開

今月のハイライト
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 呼吸リハビリテーションはさまざまな対象者に必要な,幅広い側面をもつチーム医療です.今回は,基本的な慢性呼吸不全の包括的呼吸リハビリテーションのみならず,病院における人工呼吸器離脱,在宅高齢者,在宅人工呼吸器装着児,災害におけるHOT患者の支援など,知っておきたいいろいろな局面におけるチーム医療について,それぞれ最前線でご活躍の方々に執筆をお願いしています.

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呼吸リハビリテーションとは

1.定義

 呼吸リハビリテーションは,「患者の症状を軽減し,生活の質(quality of life;QOL)や日常生活動作(activities of daily living;ADL)を向上させ,より積極的に社会参加を促すことを目的とし,徹底した患者評価から,呼吸器疾患患者の日常生活活動を全人間的に支援する科学的根拠に基づいた包括的医療介入である.医療介入においては,運動療法,教育,行動変容だけではなく,患者個々の必要性に応じたオーダーメイド治療を行い,慢性呼吸器疾患患者の心身の状況を改善し,長期のアドヒアランスを増強する行動を促進する」と定義される1-5).呼吸リハビリテーションは,患者評価にはじまり,患者・家族教育,薬物療法,酸素療法,理学療法,作業療法,運動療法,社交活動などの種目をすべて含んだ包括的な医療プログラムによって行われる(図1)1,4).包括的呼吸リハビリテーションは,患者およびその家族に対して,多次元的医療サービスを多くの職域にわたる専門家チームの協力すなわち学際的医療チームによって提供する医療介入システムである.

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当院の呼吸サポートチーム(RST)の立ち上げ

 近年,呼吸器管理関連の医療機器の進歩は目覚しく,それに伴い人工呼吸器の取り扱いに関するアクシデントが取りざたされているなか飯塚病院(以下,当院)でも人工呼吸器の取り扱いエラーが年に2~3件報告されるのが現状である.

 当院は福岡県の中央に位置し,筑豊地域の42万人の医療圏の救急医療を担う急性期に特化した病院であり,病床数1,116床,診療科目34科,入院病棟21病棟を有しているが,一般的に人工呼吸器管理は集中治療室(intesive care unit;ICU)や急性期病床を有する病棟で行われることが多く,集中治療を必要とされない一部の患者は一般病棟での人工呼吸器管理となる.人工呼吸器の取り扱いに不慣れな一般病棟での呼吸器の管理は看護師のストレスが大きく,エラーの要因につながる危険性が高い傾向にある.

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在宅における呼吸リハビリテーション

 呼吸リハビリテーションは入院または外来通院にて,他職種により構成されるチームで包括的に実施される.一方,通院が困難な事例では在宅での呼吸リハビリテーションへの移行が必要な事例もある.在宅呼吸リハビリテーションは医療機関内で実施される呼吸リハビリテーションと比較し,普及しておらず,本邦の公的介護保険制度(以下,介護保険)を利用した報告は少ない.本稿では須藤内科クリニック(以下,当院)で行った在宅呼吸リハビリテーションを中心に,介護保険制度を利用した在宅呼吸リハビリテーションについて述べる.

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はじめに

 呼吸リハビリテーションは,単なる呼吸理学療法のみではなく,人工呼吸管理,栄養管理,薬物療法,吸入吸引などのケアを包括的に行うものであり,これらを効率的に継続するには,チーム医療が必要である1).乳幼児にとって長期的呼吸管理による生活の質の低下が,精神運動発達へ及ぼす影響は大きい.呼吸状態が安定すると,睡眠の質が改善されて劇的に表情が変わることがある.

 われわれは,外来や訪問診療での,呼吸器設定の評価,呼吸機能評価,緊急時対応のため蘇生バッグによる換気の指導と排痰介助の指導を訪問診療チームで行っている.栄養評価を管理栄養士,嚥下機能評価・口腔ケアや歯のケアを訪問歯科医師にお願いしている.また,入院先でも在宅と同様の呼吸リハビリテーションを行って呼吸状態を維持できるように複数の医療機関と連携をとっている.

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はじめに

 2011年3月11日午後2時46分,三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の東日本大震災が発生した.東北から関東地方にかけての太平洋沿岸部は津波による壊滅的な被害を受け,電話などの通信機能の途絶や,東北地方440万世帯,関東地方400万世帯の停電など,在宅酸素療法(home oxygen therapy;HOT)患者にも大きな影響が及んだ.

 今回の震災では在宅酸素事業者各社が過去の災害の経験を活かし,迅速な安否確認,酸素ボンベの配送に尽力したが,そのなかから,帝人在宅医療株式会社(以下,当社)におけるHOT患者支援活動と,今回の震災から学んだ災害支援における課題を報告する.

巻頭言

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 2011年度に回復期リハビリテーション病棟協会が発行した調査報告書のなかに衝撃的なデータがある.回復期リハビリテーション病棟100床当たりのリハビリテーション専門医もしくは認定臨床医数,0人:34.4%,0.5人未満:18.9%,1.0人未満:21.4%,2.0人未満:17.4,2.0人以上:7.9%.なんと回復期リハビリテーション病棟の3分の1以上がリハビリテーション専門医不在の病院であり,1つの病棟に1名以上のリハビリテーション専門医がいる確率はわずか8%にも満たないとの内容である.常識的には「○△科病棟」という名が付いていれば「○△科」の専門医が最低1名は勤務していると誰もが想像・期待するであろう.リハビリテーション科の看板を掲げていながらリハビリテーション専門医がこれだけ不足している回復期リハビリテーションの現状は異常であり,酷な言い方をすれば患者の期待を裏切っているとも言える.

 現在全国のリハビリテーション専門医数は1,854名とされ,毎年70名前後増加している.そのうち回復期リハビリテーションに従事するリハビリテーション専門医は推定300名程度である.仮に全国6万床の回復期リハビリテーションの各病棟に1名のリハビリテーション専門医を配属すると,病棟数と同じ1,471名が必要となり,1,100名余りが不足しているという計算になる.この10年間に爆発的に増加した回復期リハビリテーションの病床に対してリハビリテーション専門医の供給がまったく追い付いていないのである.

入門講座 意欲・自発性・やる気の評価と支援策

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はじめに

 「リハビリテーションは二方向性の作業である.患者に対して一方向的に施される治療とは異なり,リハビリテーションでは患者本人が積極的な役割を果たす1).」外科的手術,投薬など疾患の治療は,一方向的に実施しても成し遂げることは可能だが,二方向性の作業であるリハビリテーションは,患者本人に主体性をもたせないと成功しない.しかしリハビリテーションの現場では,患者のリハビリテーションに対する「やる気のなさ」に遭遇し,セラピストが苦慮する機会は少なくない.意欲低下,発動性低下,脳卒中後うつ病(post-stroke depression:PSD),アパシー(Apathy),社会行動障害などは「やる気のなさ」を引き起こし,リハビリテーションの阻害因子となり得る.

 Gainotti2)は,脳損傷後の情緒的,社会心理学的問題を引き起こす主な要因として以下の3つを挙げている.第1は神経学的要因で,情緒的,社会的行動の制御を司る特定の神経機構を乱すことによりこれらの問題を引き起こす.第2は心理学的要因で,これは障害に対峙する態度にかかわる.またこれは障害に対する気づきや障害が生活の質に与える影響への気づきからも起こる.第3の要因は患者の社会的ネットワークや社会活動に対する患者の機能障害の影響から生じる1,2)

 本稿では「やる気のなさ」の問題を脳損傷による一次性の要因:神経学的(器質的)要因と二次性の要因:心理的要因に分け,その評価法と介入策について考えてみたい.

 

※表2「POMS 6つの気分尺度」は,権利者の意向等により冊子体のみの掲載になります.

実践講座 症例から学ぶ臨床神経生理学・第2回

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はじめに

 肘部尺骨神経障害(ulnar neuropathy at the elbow;UNE)はヒトの上肢に発生する絞扼性末梢神経障害のなかで手根管症候群(carpal tunnel syndrome;CTS)に次いで2番目に頻度が高い1,2).尺骨神経の障害が疑われる症例で電気診断検査法(electrodiagnostic study;EDXs)を施行する場合,絞扼部位の特定が重要となる.UNEに類似した臨床症状は肘関節での障害のみならず,手関節でのギヲン管症候群,加えて腕神経叢の下部および第8頸椎および第1胸椎神経根症でも認められることから,UNEと診断するためには,可能な限り正確に障害部位を特定し,UNEに類似した症状を呈する疾患を鑑別することが求められる1)

 本稿では,まずUNEの病態について概説し,さらに症例を通じEDXsの実際について述べる.

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要旨:〔目的〕社会的サポートは,日常生活動作をはじめとする多くの健康指標との関連を示すと報告されている.しかし,社会的サポートと歩行能力との関係についての報告はない.そこで,本研究では,リハビリテーション患者データバンクの登録データを使用して,歩行自立度と社会的サポート(介護力)との関連を検証することを目的とした.〔対象・方法〕対象は,入院時歩行不可能で選択基準を満たした9病院の急性期脳卒中患者813名である.歩行自立・非自立を従属変数,介護力の有無を説明変数とし,性別,年齢,脳卒中病型分類,在院日数,脳卒中既往歴の有無,発病前modified Rankin Scale,発症後リハビリテーション開始病日,意識レベル(Japan Coma Scale),入院時麻痺側下肢の運動機能,入院時半側空間無視,入院時感覚障害,入院時Functional Independence Measure(以下,FIM)運動項目合計,入院時FIM認知項目合計,装具の処方の有無,リハビリテーション医の関与の有無,カンファレンスの実施状況,1日あたりリハビリテーション単位数の17因子を調整変数としたロジスティック回帰分析を行った.〔結果〕介護力「なし」のものに比べて,「あり」のものが歩行自立する確率は2倍(オッズ比2.0:95%信頼区間1.2~3.4)大きかった.〔結語〕社会的サポート源である介護力は,自宅退院のみならず,歩行自立にも影響している可能性が示唆された.

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要旨:〔目的〕脳損傷者におけるコミュニケーション障害について検討を加えるため,日常生活上の行動障害と情動的表情認知,模倣的表情表出に着目し健常者との比較を行った.〔対象〕通所作業所に所属する利用者10名,大学生10名を対象とした.〔方法〕日常生活上の行動障害については脳外傷者の認知-行動障害尺度(the cognitive-behavior scale for traumatic brain injury:以下,TBI-31)と表情に関するアンケートで調査した.情動的表情認知・模倣的表情表出についてはプロンプター装置(MPL-16W, Life-on)にて喜びと怒り表情を呈示し,表情の認知の有無を判定すると同時に,画像注視中の対象者の表情を撮影し模倣的表情表出を測定した.〔結果〕TBI-31では健忘性,対人場面での状況判断力の低下,課題遂行力の低下が認められた.表情に関するアンケートでは怒りっぽくなった,笑顔がみられなくなった,全く表情がなくなったなどが挙げられ,利用者の表情表出の減少や表出内容も怒り表情のみであったことがうかがえた.情動的表情認知はすべての対象者で認識可能であった.模倣的表情表出の怒り表情では健常者と相違は認められなかったが,喜び表情では健常者のほうが模倣的表情表出をした人数が有意に多かった(χ2値7.200,p=0.007).〔結語〕他者への共感を示す手段でもある模倣的表情表出中の喜び表情が脳損傷により低下することが示唆された.この結果から,脳損傷者とのコミュニケーション場面において彼らの表情表出は乏しく,違和感をも抱かせる事態を招いているのではないかと考えられる.

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要旨:〔目的〕短下肢装具の着用が回復期脳卒中患者の歩行変動性に及ぼす影響を検討した.〔方法〕対象は同意が得られた回復期脳卒中患者16名とした.平均年齢61±12歳,発症後期間15±6週,脳梗塞8名/脳出血8名,麻痺側は右6名/左10名であった.測定課題は,快適速度での10m歩行とした.測定条件は,短下肢装具の有無で2条件とし,各条件2回ずつ測定した.課題中は,対象者が所有する杖および短下肢装具を用いた.10m歩行の所要時間と歩数から,時間距離因子として歩行速度,歩行率,重複歩距離を算出した.歩行変動性の評価は,小型無線加速度計を用いて,歩行周期時間の変動係数を算出した.すべての測定項目について,装具の有無による変化を検討した.また装具着用による変化率について,歩行変動性と時間距離因子の関連を検討した.〔結果〕短下肢装具着用によって歩行速度,歩行率,重複歩距離は有意に増加し,歩行変動性は有意に減少した.歩行変動性の変化率は時間距離因子の変化率と相関しなかった.〔結語〕回復期脳卒中患者における短下肢装具の着用は,時間距離因子を向上させるだけでなく,歩行変動性を減少させ,歩行安定性も改善させる可能性が示された.また歩行変動性の改善は,時間距離因子の向上とは関連しないことが示された.

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要旨:回復期病棟では,転院時に頻尿を呈する症例を多く認める.頻尿による不眠や精神的ストレスは,ADLが低下した患者にとっては大きな負担となり,リハビリテーション阻害因子となり得る.また,頻回のトイレ介助が,介助者の大きな負担となる.今回,頻尿を呈する患者に対してアミトリプチリンを内服前後のトイレ回数,入院時および退院時のFIM合計点,排泄に関するFIMの得点の変化を検討した.アミトリプチリン内服前後で排尿回数(中央値(四分位範囲)[範囲])が10.0(8.4,13.2)[7.5~15.7]から8.0(7.1,9.1)[5.6~13.6](p<0.05)と減少し,FIMの合計点は入院時55.5(50.3,67.5)[49~71.0]から退院時81.5(66.3,90.0)[60.0~90.0](p<0.05)に改善した.排泄に関するFIMの得点は,トイレ動作が4.0(3.3,4.0)[1.0~5.0]から5.0(5.0,5.0)[1.0~6.0]に,尿管理が3.5(1.5,4.8)[1.0~6.0]から5.0(4.3,5.0)[2.0~7.0]に,便管理が4.5(3.3,5.0)[1.0~6.0]から5.0(5.0,5.0)[2.0~7.0]と有意な改善を認めなかった.アミトリプチリンは向精神薬であるため,その副作用を考慮する必要があるが,回復期病棟患者の頻尿に対する治療法の一つとして検討してもよいと考える.

連載 障害者スポーツ

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マイオカイン(myokine)

 健常者にとってスポーツは生活の質(quality of life;QOL)を高め,健康を維持増進するのに推奨されている.疾患の急性期を過ぎ,社会復帰した障害者にとっても,スポーツは障害の増悪予防・健康維持の面から健常者以上に必要不可欠なものとされている.健常者においては,スポーツによる運動が,動脈硬化症を基礎とした心血管系疾患の発症率,死亡率が低下すること1)はよく知られている事実である.しかし,運動負荷自体が動脈硬化を伸展させる糖代謝異常や脂質代謝異常にどのような機序で影響を与えるかは長年分かっておらず,このような健康増進機序を励起する化学的・物理的シグナルはexercise factorとして,研究されてきた.

 近年,exercise factorの一つとして,運動により骨格筋からサイトカインが分泌されることが明らかとなり,それらはmyokineと名付けられた2).今回,myokineの代表であるインターロイキン(Interleukin;IL)-6を中心に障害者スポーツにおける重要性について論じたい.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 ロマン・ロラン(1866~1944)が1903年に発表した『ベートーヴェンの生涯』(片山敏彦訳,岩波書店)の序文では,彼が伝記を書いたベートーヴェン,ミケランジェロ,トルストイの三者に言及して,「ここにわれわれが物語ろうと試みる人々の生涯は,ほとんど常に永い受苦の歴史であった」,「彼らは試練を日ごとのパンとして食ったのである.そして彼らが力強さによって偉大だったとすれば,それは彼らが不幸を通じて偉大だったからである.だから不幸な人々よ,あまりに嘆くな.人類の最良の人々は不幸な人々と共にいるのだから」,「彼らの生涯の歴史の中に読み探ることは,―人生というものは,苦悩の中においてこそ最も偉大で実り多くかつまた最も幸福でもある,というこのことである」と,苦悩こそが偉大な創造の源になりうるという考えを示している.

 特に,ベートーヴェンについては,「陰鬱な悲劇的な相貌」,「彼の習慣的な平素の表情は憂鬱」,「その眼が示している深い悲しみ」など,ベートーヴェンの抑うつ的な傾向を強調するとともに,「自分で呼び出した魔神たちの力に圧倒されている魔術師のような有様」,「往来を歩いている彼にとつぜん襲いかかって,通行人らをもびっくりさせた急激な霊感の発作」と,ベートーヴェンもまた,魔神(デーモン)の支配のもとで創造した人間であるという指摘がなされる.実際,ロマン・ロランは,ベートーヴェンが10代の頃について,「彼の健康はすでに絶えまなく悩んでいた.そして彼は自分の病気にみずから憂鬱症を付け加え,実際の病状よりもその憂鬱症の方がさらにひどかった」と語り,20代後半に陥った聴覚障害についても,「この悲劇的な悲しみは,その時期の幾つかの作品にあらわれている」として,彼の聴覚障害に伴う悲しみは,『悲愴奏鳴曲』や(作品第13番,1799年),『ピアノのための第三のソナタ』(作品第10番,1789年)を産み出したと語るなど,べートーヴェンの苦悩や障害と創造性の関係という病跡学的な現象に着目している.

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

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 「終の信託」(監督/周防正行)は,情にほだされた善意の行為が,「犯罪」に読み替えられ,殺人罪に反転するという話である.選ばれた舞台は,現代の論点とでも言うべき二つの現場である.終末医療に正対する病室と,信頼揺らぐ検事室である.

 呼吸器内科医師の折井綾乃(草刈民代)は,東大医学部出身という履歴からみても折紙付きのエリートである.患者からの評判もすこぶる良い.ただどうしたことか,いかにも軽佻浮薄な,今風に言うなら“たらし”で“チャラ”い同僚医師の高井と不倫関係にあり,当然のことながら捨てられてしまう.自分を守るという点で詰めが甘い.

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1.着衣障害の臨床徴候―自験例を含めた文献的考察

 国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科保健医療学専攻リハビリテーション学分野

  山本  潤・他

 着衣障害について症例検討は散見されるが,病態解明には至っていない.着衣障害の病態を研究するために,医学中央雑誌および神経心理関連雑誌(1982~2011年)から45例と自験例2例を加え,47例を対象に検討した.着衣障害の記述から「視認知エラー」「操作エラー」「手順エラー」の3つのエラータイプに分けた.「視認知エラー」は衣服の形態認知,衣服と身体の照合などの誤反応,「操作エラー」はボタンかけ・紐通しなどの誤操作,「手順エラー」は着衣順序の混乱などとした.さらに少数例からの検討ではあるが,脳損傷部位との関係から「視認知エラー」は頭頂-後頭葉領域の後方で,「操作エラー」は頭頂-後頭葉領域の前方で,「手順エラー」は頭頂-前頭葉を含む広範な領域と関連があると考えられた.以上より着衣障害は,脳損傷部位に応じた徴候を示し,複数の徴候からなる「症候群」としてとらえることを示唆したい.

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 ボツリヌス菌が産生するボツリヌス毒素は,神経筋接合部でアセチルコリンの放出を妨げる働きを持つ.一般にボツリヌス毒素の作用は末梢性に限られるとされており,筋弛緩,鎮痛作用に効果のあることが確認されている.そのため,近年では各種疾患の治療に用いられるようになり,多方面から注目を集めている.

 日本国内においてはA型ボツリヌス毒素製剤ボトックス®が注射剤として承認されており,1996年に眼𥇥痙攣,2000年に片側顔面痙攣,2001年に痙性斜頸,2009年に2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足へと徐々にその適応が拡大され,2010年に上肢痙縮・下肢痙縮への適応承認へと至る経過をたどっている.リハビリテーション医学・医療の分野では上肢痙縮・下肢痙縮に対するボツリヌス毒素の適応が拡大されたことにより,特に脳卒中患者の後遺症に対する治療として急速に広まりつつある.ただ,どの筋を目的に,どのくらいの用量を使用するかに関してはまだ基準がなく,臨床経験の積み重ねにより標準化されていくことが期待されている状況である.

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 回復期リハビリテーション病棟が創設されて,早10年以上が経過しました.回復期リハビリテーション病棟の創設および実践は,それまでの古典的医学モデルから脱却し,病棟内でのコミュニケーションを通じて,職種間の壁を取り除いた真のリハビリテーションアプローチが実践される礎となりました.回復期リハビリテーション病棟の理念は,今後も日本から世界に発信されるべきものであると思われます.

 そのような経緯を踏まえ,本書「PT・OT・STのための脳損傷の回復期リハビリテーション―運動・認知・行動からのアプローチ―」は,形骸化したチームアプローチに関する評論とは異なり,意識的に使い手の側に立って書かれた良書であります.まさに回復期リハビリテーション病棟に勤務するセラピスト(療法士)によるセラピストのための指針書と言えるでしょう.

お知らせ

2013年度成人片麻痺ボバース講習会

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文献抄録

投稿規定

投稿および著作財産権譲渡承諾書

次号予告

編集後記
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 どんな最後を迎えたいか.チューブだらけになった自分の姿を想像する延命治療はやめてと思う.でも,実際に終末期になったとき,「やっぱりもうちょっと頑張りたい」とか思ったりしないだろうか…….「本当は延命してほしい」けど,「尊厳死」を選ばなきゃという雰囲気や,周りに遠慮したりして言い出せずとか…….こればかりは経験者に「あなたは本当に思い通りの最後を迎えられましたか?」と尋ねることはできません.

 「8月に生まれる子供」(大島弓子)という漫画を思い出しました.急激に老化するという奇病にかかった18歳の主人公.徘徊や失禁の症状から「安楽死をこいねがう手紙」を書くが,心の変化があり,最後には「心臓が力つきて停止するその時までその命をたすけてくだい」と撤回の手紙を書く.詳細は省きますが,生死に対する心境の変化が描かれています.今「尊厳死」法制化への動きが急速に進んでいます.「尊厳ある死」とは,「リビングウィル」とは,「終末期医療」のあり方は? このあたりのことを今まであまり深く考えずに来たような気がします.まずはいろいろな考えを知る必要がありそうです.取り急ぎ「終の信託」(199頁)を観に行かねば.

基本情報

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総合リハビリテーション
41巻2号 (2013年2月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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