Japanese
English
研究と報告
脳損傷者における情動的表情認知と表情模倣
Recognition of emotional facial expressions and facial mimicry in people with brain injury.
増山 英理子
1,2
,
本間 生夫
2
,
野々垣 睦美
3
,
中野 実代子
1
Eriko Masuyama
1,2
,
Ikuo Homma
2
,
Mutsumi Nonogaki
3
,
Miyoko Nakano
1
1昭和大学保健医療学部
2昭和大学医学部第二生理学教室
3クラブハウスすてっぷなな
1Sciences Showa University School of Nursing and Rehabilitation
2Department of Physiology, Showa University School of Medicine
3Club House STEP NANA
キーワード:
表情認知
,
表情模倣
,
社会的認知
,
脳損傷
Keyword:
表情認知
,
表情模倣
,
社会的認知
,
脳損傷
pp.171-181
発行日 2013年2月10日
Published Date 2013/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110023
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要旨:〔目的〕脳損傷者におけるコミュニケーション障害について検討を加えるため,日常生活上の行動障害と情動的表情認知,模倣的表情表出に着目し健常者との比較を行った.〔対象〕通所作業所に所属する利用者10名,大学生10名を対象とした.〔方法〕日常生活上の行動障害については脳外傷者の認知-行動障害尺度(the cognitive-behavior scale for traumatic brain injury:以下,TBI-31)と表情に関するアンケートで調査した.情動的表情認知・模倣的表情表出についてはプロンプター装置(MPL-16W, Life-on)にて喜びと怒り表情を呈示し,表情の認知の有無を判定すると同時に,画像注視中の対象者の表情を撮影し模倣的表情表出を測定した.〔結果〕TBI-31では健忘性,対人場面での状況判断力の低下,課題遂行力の低下が認められた.表情に関するアンケートでは怒りっぽくなった,笑顔がみられなくなった,全く表情がなくなったなどが挙げられ,利用者の表情表出の減少や表出内容も怒り表情のみであったことがうかがえた.情動的表情認知はすべての対象者で認識可能であった.模倣的表情表出の怒り表情では健常者と相違は認められなかったが,喜び表情では健常者のほうが模倣的表情表出をした人数が有意に多かった(χ2値7.200,p=0.007).〔結語〕他者への共感を示す手段でもある模倣的表情表出中の喜び表情が脳損傷により低下することが示唆された.この結果から,脳損傷者とのコミュニケーション場面において彼らの表情表出は乏しく,違和感をも抱かせる事態を招いているのではないかと考えられる.
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