臨床眼科 65巻3号 (2011年3月)

特集 第64回日本臨床眼科学会講演集(1)

原著

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要約 目的:球結膜悪性黒色腫の切除後に血清の5-Sシステイニルドーパ値が上昇し,後縦隔Schwann細胞腫の切除後に血清値が正常化した症例の報告。症例:59歳女性に18年前からの左眼球結膜の色素斑が増大して受診した。所見と経過:左眼の角膜全周に色素沈着があり,角膜に侵入していた。生検で結膜悪性黒色腫と診断された。全身転移の所見はなく,1か月後に結膜腫瘍を切除した。血清の5-Sシステイニルドーパ値は正常範囲にあり,切除から14か月後に29.3nmol/lに上昇し,縦隔に腫瘍が発見された。右肺の部分切除と後縦隔腫瘍切除を行い,細気管支肺胞上皮癌と後縦隔Schwann細胞腫と診断された。血清の5-Sシステイニルドーパ値はその後正常化した。結論:本症例では,Schwann細胞腫から5-Sシステイニルドーパが産生された可能性がある。

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要約 目的:近視性脈絡膜新生血管の蛍光眼底造影と光干渉断層計(OCT)による所見の比較。対象と方法:フルオレセイン蛍光眼底造影で色素漏出がある活動性の近視性脈絡膜新生血管32眼を対象とした。屈折は-7D以上であった。OCTで滲出性変化の有無を判定し,蛍光眼底造影による所見と比較した。結果:OCTにより13眼(41%)で滲出性変化がなく,不一致群と判定された。最高矯正視力は不一致群で良い傾向にあり,滲出性変化の検出率とOCTの解像度は無関係であった。結論:近視性脈絡膜新生血管では,蛍光眼底造影とOCT所見が乖離する症例が高率に存在する。OCTのみで活動性の評価をすることは危険である。

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要約 目的:アテロコラーゲン液状プラグ(キープティア®)の治療効果と適応の検討。対象と方法:ドライアイ症状がある15例30眼を対象とした。年齢は57±18歳である。キープティア®で涙点を閉鎖し,8週後までの経過を追った。結果:自覚症状は有意に改善した。他覚所見として涙液貯留層が増加し,角結膜染色スコアが改善した。自覚症状,涙液貯留層,角結膜染色スコアは,Schirmer試験値が6mm以上の症例では改善し,5mm以下の症例では改善しなかった。結論:キープティア®による涙点閉鎖は,比較的軽症のドライアイに対する治療選択肢の1つとして位置づけられる。

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要約 目的:使い捨て焼灼器(ディスポパクレン)を使った結膜弛緩症手術の短期経過の報告。対象と方法:手術を行った結膜弛緩症14例16眼を対象とした。平均年齢は73歳である。点眼麻酔のあと開瞼器を使用し,上方視をさせ,下方の弛緩した結膜を眼内レンズ(IOL)鑷子で把持し,ディスポパクレンで弧状に焼灼した。ディスポパクレンには先端温度が450~650℃になるOPTEMPIIV(日本アルコン)を使用した。結膜弛緩症の重篤度は,0~3までの4段階に分類した。術後1か月後の自覚症状と,3か月後までの合併症を評価した。結果:結膜弛緩症の重篤度は術後1週間から改善し,1か月後に0となり,3か月後まで持続した。焼灼した結膜部位は,全例で強膜と接着していた。結論:使い捨て焼灼器(ディスポパクレン)と眼内レンズ(IOL)鑷子を使った結膜弛緩症手術は,点眼麻酔のみによる外来手術が可能で,早期に改善が得られ,格別な合併症がなかった。

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要約 背景:虹彩分離症を伴う白内障の手術では,分離した虹彩が誤吸引される危険がある。虹彩レトラクターなどの器具が有用であるが,虹彩損傷や出血の可能性がある。目的:虹彩分離症がある3眼にヒーロン®Vを使って白内障手術を行った報告。症例:虹彩分離症と加齢白内障がある3例3眼に白内障手術を行った。年齢はそれぞれ73,86,93歳である。術中に前房にヒーロン®Vを注入することで,超音波乳化吸引装置の吸引流量と吸引設定値を下げることができ,虹彩前葉の誤吸引なしに安全に手術を行うことができた。虹彩切除は行わなかった。結論:虹彩分離症を伴う白内障の手術に併用したヒーロン®Vは有用であった。

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要約 目的:ラタノプロストからタフルプロスト点眼に切替えたときの緑内障眼での乳頭微小循環の変化の報告。対象と方法:広義の原発開放隅角緑内障20例20眼を対象とした。年齢は43~78歳(平均66歳)である。ラタノプロスト点眼中とタフルプロストに切替えてから1か月と3か月後に乳頭の微小循環を,乳頭全体と上下の耳鼻側で測定した。測定にはレーザースペックル血流計を用い,mean blur rateを指標とした。結果:眼圧,血圧,眼灌流圧には切替え前後で差がなかった。血流量は,切替えの3か月後に乳頭の各部位で有意に増加した(p=0.005~0.048)。結論:ラタノプロストからタフルプロスト点眼に切替えてから3か月後に,緑内障眼での乳頭微小循環が有意に増加した。

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要約 目的:加齢黄斑変性の脈絡膜新生血管部からの眼底自発蛍光の報告。症例と方法:加齢黄斑変性16眼を対象とした。男性10眼,女性6眼で,平均年齢は72歳である。15眼にラニビズマブ,1眼にベバシズマブと光線力学療法を行った。眼底自発蛍光はキャノンCX-1で記録した。結果:脈絡膜新生血管がある部位の自発蛍光は14眼で低下していた。光干渉断層計(OCT)で,網膜色素上皮を越えた脈絡膜新生血管が7眼にあり,うち6眼では脈絡膜新生血管が低自発蛍光の部位と一致した。6眼でのOCTで網膜色素上皮が不明瞭な部位にも,低自発蛍光がみられた。結論:脈絡膜新生血管の部位で自発蛍光が低下する原因は,新生血管そのものによる遮断と考えられるが,網膜色素上皮の障害も関与している。

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要約 目的:黄斑円孔術後に水痘帯状疱疹ウイルス虹彩毛様体炎が生じたvon Hippel-Lindau病の症例の報告。症例:41歳男性が右眼視力低下で受診した。31歳当科初診時,両眼に網膜血管腫があり,光凝固が行われた。矯正視力は2か月前まで良好であった。10年前の両腎摘出以後血液透析中であり,39歳で小脳血管芽腫摘出術を受けた。父,弟,子にvon Hippel-Lindau病がある。所見:矯正視力は右0.1,左1.5であった。右眼に黄斑上膜と黄斑円孔があり,硝子体手術を行った。その6日後に前房の炎症が増悪し,前房水から水痘帯状疱疹ウイルスが検出された。単純ヘルペスウイルスとサイトメガロウイルスは陰性であった。バラシクロビルの内服で消炎した。結論:von Hippel-Lindau病での眼手術後には,炎症所見の経過に配慮する必要がある。

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要約 目的:乳癌が両側の眼窩に転移し,片眼が急速に失明した症例の報告。症例:68歳女性が1週間前からの複視で受診した。20年前に乳癌の摘出を受け,5年前に骨,肺,肝に転移があり,加療中であった。所見と経過:矯正視力は右0.8,左0.7で,軽度の白内障以外には両眼とも異常がなく,コンピュータ断層撮影(CT)で眼窩に異常はなかった。3週間後に右眼に深部痛と眼瞼下垂が生じ,右眼視力は零であった。その2週間後の磁気共鳴画像検査(MRI)で視神経から眼窩上縁にかけて腫瘍の浸潤があった。初診から1年後に右前頭葉,側頭葉,左眼眼窩に転移が生じ,その1か月後に不帰の転帰をとった。結論:悪性腫瘍の眼窩転移では,すでに他の臓器に多発していることが多く,治療による予後の改善は期待し難い。しかし,視機能低下を防ぐことは,quality of lifeを維持するために必要である。

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要約 背景:北インド北西部でチベット難民を主な対象としたアイキャンプ活動が日本のNGOにより2000年から実施されている。目的:この10年間の患者背景の変化の報告。対象と方法:2000年と2009年に手術を行った各35名の患者に7項目について聞き取り調査をした。結果:発足時に多かったチベット人と徒歩による来院者が減少し,ロータリークラブの宣伝と地元の評判からの受診者が増加した。無料である経済的利便性を挙げる患者は依然として高率であった。結論:アイキャンプでの患者背景の変化は,該当地への協力活動がもたらす波及効果に加え,社会状況の変化を反映する。

専門別研究会

強度近視眼底研究会 大野 京子
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 今年で3回目の開催となる強度近視眼底研究会は,学会初日の朝8時半という早朝からの開催にもかかわらず,多数の先生方にご出席いただき活発な討論がなされた。強度近視はわが国の失明原因の第2位であることが山田昌和先生らのご研究により示され,強度近視による失明を防ぐためにさまざまな角度からの発表,討論がなされた。

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 単回使用器材(single-use devices:SUDs)を単回使用と定めているのは製造販売業者であり,医療施設でSUDsの再使用を規制する法律は存在しない。SUDsは曖昧な法的不整備の中で経済的理由により再利用しているが,行き過ぎた安全管理・感染防止の声に惑わされてすべてを破棄するのではなく,環境保護,地球温暖化対策の重要課題を踏まえ,資源の有効活用を目指して再生処理の基準作りを国が行うことが重要である。

連載 視野のみかた・12【最終回】

両眼開放視野 松本 長太
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はじめに

 日常臨床における視野検査は,一般的に片眼を遮蔽して行われる。視野検査を片眼ずつ行うことは,各種眼疾患の診断,経過観察における基本的な手法である。しかしながら,われわれの日常では片眼でものを見ることは少なく,多くの場合は両眼開放下で視覚情報処理が行われている。視機能を評価する項目は多数あるが,一般的に多くの視機能は単眼視に比べ両眼視で向上する。この両眼加算(binocular summation)は視野検査でも認められ,基礎的な心理物理学的実験において,さまざまな検査条件下での両眼加算に関する要因が検証されている1~6)。日常生活における視機能を考えるとき,この両眼開放下での視野を理解することは,患者のQOV(quality of vision)を考えるうえで非常に重要となる。

 ここでは,両眼開放視野を理解するうえで基本となる考え方と,両眼加算に影響を及ぼすさまざまな要因について考えていきたい。

連載 眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本・15

CNTF 竹内 侯雄 , 中澤 満
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 毛様神経栄養因子(ciliary neurotrophic factor:CNTF)は最初にニワトリの毛様神経節細胞から分離された神経栄養因子1)であり,その後の研究でインターロイキン6(IL-6)ファミリーに属するサイトカインの1つであることが明らかにされた。分子量21kDaのタンパク質である。CNTFは全身の神経節細胞や中枢神経に分布しているが,眼では網膜とくにMüller細胞,アストログリア,マイクログリアなどのグリア細胞などで発現していることが知られている2)

 その作用は神経保護作用と神経再生作用であり,実際に前者の機能と関連する視細胞保護効果を利用して網膜色素変性の治療に応用する臨床研究がSievingら3)により米国にて施行されている。しかし,CNTFには視細胞保護作用がある一方で,杆体の根本的機能である光トランスダクションに対して抑制的に働き,網膜電図a波の振幅を低下させる働きがあり,視細胞保護に対しては二面性がある4)

連載 つけよう! 神経眼科力・12

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異常眼球運動の診断は問診から!

 ひとくちに自発性異常眼球運動といっても,先天眼振のように進行がなく放置しても差し支えないものから,松果体腫瘍に伴う輻湊眼振のように緊急に治療を要するものまでさまざまである。それらの診察に際してまず行うべきものはやはり問診である。主要な問診事項とその際に疑うべき疾患を表1に示した。先天性と後天性の鑑別で問診上これまで最も重視されてきたのは動揺視(oscillopsia)の有無で,先天性では動揺視を自覚せず,後天性では動揺視を自覚するというものであるが1),筆者の経験では,周期性交代性眼振(periodic alternating nystagmus:PAN)においては,先天性であってもその多くが間欠性の動揺視を自覚している。しかし,周期性交代性眼振以外の眼振では今なおこの有無は重要な診断根拠となるので必ず尋ねるべき事項である。

今月の表紙

落屑症候群 山川 曜 , 鈴木 康之
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 症例は75歳,女性。5~6年前から,緑内障で近医に通院していた。「視野に異常はないが,眼圧は20mmHg台」として,ラタノプロスト,チモロールマレイン酸塩,ブリンゾラミドの3種点眼で,眼圧コントロールと経過観察とされていたが,セカンドオピニオン目的で当院を受診した。視力は右0.9(0.9),左0.8(0.9)で,眼圧は右16mmHg,左15mmHgであった。瞳孔縁には明瞭な落屑は見当たらなかったが,散瞳したところ,両眼とも水晶体前面に明瞭な落屑物質を認めた。程度には大きな左右差を視認できなかったが,画像としてコントラストが得やすかった左眼の写真(初診時)を示す。

 撮影には,140万画素CCDを電子ファイリングシステムKowa VK-2に接続したKowa SC-1200を使用した。背景照明は用いず,倍率は10倍,鼻側約30°位置からの照明として,スリット長は11mmで,やや太めのスリット幅を選択している。落屑物質の様子から,意図的にわずかに上方寄りを撮影した。十分なコントラストで,落屑の様子を捉えることができた。

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 京都大学の眼科は網膜硝子体疾患のメッカである。伝統の中で育まれた優秀な研究者たちによって膨大な網膜硝子体の基礎研究と臨床研究がなされてきた。また,日本で最初に硝子体手術を行った盛新之助先生をはじめ,非常に優れた多数の網膜硝子体サージャン,優れた網膜硝子体スペシャリストを輩出されてきた。

 その中のおふたり,𠮷村長久先生と喜多美穂里先生が編集され,京都大学眼科学教室に在籍中あるいは,かつて研鑽を積まれた先生方が執筆された『眼科ケーススタディ 網膜硝子体』が上梓された。31の症例提示とそれについての解説がきれいなカラー写真,光干渉断層計,蛍光眼底造影写真を用いて解説してある。必要に応じてシェーマも多用され,よく整理されていて理解しやすい。

やさしい目で きびしい目で・135

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 私が眼科医局に入局した頃は,女医さんは結婚したら医局をやめるというのが暗黙の了解でした。私も当然,結婚・出産を機に大学を去るものと思っていました。ところが,娘の樹里が3歳の時に臨床復帰してから,ずっと大学に籍を置いています。三村主任教授が「ママさん女医にも大学で活躍の場を」とお考えになり,私はその第一号だったのです。

 臨床復帰した当初は本当に大変でした。大学院で博士号を取ったは良かったものの,マウスや細胞とばかり向き合っていたので臨床が全くできなくなっていたのです。おまけに子育てにも向いておらず,娘が小さい頃は育児ノイローゼになりそうで心に余裕がなく(娘にも悪いことをしました),医局でもギスギスしていたと思います。なのに,子供をずっと保育園に預けて仕事ばかりというわけにもいきませんでした。「ママがいないと寂しいだろう」と気を揉み,気が気でなかったのです。仕事と子育てと,時間も制限されいろいろなことは無理だと悟り,本当に好きなことだけをしようと決心し,専門を斜視弱視・神経眼科に絞りました。教授にもその意を伝え,専門一本・臨床一本に絞ることを了解して頂きました。それでも時間が足りず,でも子供との時間も欲しかったので,お手伝いさんを雇い食事以外の掃除・洗濯を全部してもらいました。大学を早く帰る分(夕方6時頃帰宅),学会発表の準備や論文などは朝3時に起き挽回に努めました。今も朝仕事をするのは変わりません。

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要約 背景:ティーエスワン®(TS-1)はテガフール,ギメラシル,オテラシルカリウムを含む内服用の抗癌薬であり,流涙,結膜炎,角膜炎,角膜びらんなどが副作用として知られている。目的:TS-1®の内服後に生じた角膜障害に自己血清の点眼が奏効した2症例の報告。症例:それぞれ81歳と82歳の男性で,胃癌の手術後にTS-1®を約1年間内服していた。渦巻き状の角膜上皮下の混濁があり,休薬後に点眼で加療したが,それぞれ1眼で改善しなかった。20%自己血清点眼を1日6回行い,それぞれ3か月と2か月後に角膜障害が軽減し,視力がやや改善した。結論:TS-1®の休薬後も継続する角膜上皮下混濁が,自己血清の点眼後に軽減した。

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要約 目的:片眼の緑内障性視神経障害と急速に進行する視野障害から下垂体腫瘍が発見された1症例の報告。症例:53歳女性に人間ドックで左眼の視神経乳頭異常が発見され,受診した。所見:矯正視力は右1.0,左1.2で,眼圧は右21mmHg,左23mmHgであった。左眼に緑内障性視神経障害と,これに一致する視野障害があり,原発開放隅角緑内障と診断した。ラタノプロスト点眼を開始した。2年後に視野障害が急速に進行した。頭蓋内検索で下垂体腫瘍が発見され,摘出手術が行われ成長ホルモン産生腫瘍と診断された。摘出後も左眼の弓状暗点は持続した。結論:本症例では,下垂体腫瘍による進行性の視野障害が,緑内障性の視神経と視野障害に併発したと解釈される。

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要約 目的:非結核性好酸菌症に対するエタンブトール投与後に発症した視神経炎の1症例の報告。症例:71歳女性が内科から紹介され受診した。17年前に関節リウマチでステロイド剤と免疫抑制薬を内服し,8年前に非結核性肺好酸菌症と診断され,抗菌薬の内服を開始し,白内障手術を受けた。所見:矯正視力は右0.6,左1.2で,右眼に黄斑変性があった。初診と同時にエタンブトールを含む治療を開始し,その2か月後に両下肢にしびれ感が生じた。初診から7か月後に「両眼が暗い」と訴え,矯正視力が右0.09,左手動弁に低下し,中心暗点があり,球後視神経炎が疑われた。初診から18か月後の現在,視力は右0.15,左0.04を維持している。結論:本症例はエタンブトール内服が原因として関与した可能性が大きい。

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要約 目的:加齢黄斑変性に対する光線力学療法の1年後の視力転帰と効果に関連する因子の報告。対象と方法:光線力学療法を行った加齢黄斑変性104例108眼を対象とした。男性79眼,女性29眼で,年齢は51~90歳(平均75歳)である。術前視力は,0.1未満が33眼,0.1~0.5が60眼,0.5以上が15眼であった。ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)が37眼にあった。治療から12か月後の視力をlogMARで評価した。結果:光線力学療法は1眼あたり平均2.37回行われた。1年後の視力は,0.2以上の改善が34眼,不変が46眼,0.2以上の悪化が28眼にあった。ポリープ状脈絡膜血管症の有無と年齢は視力の転帰と関係がなかった。視力改善は,女性(p=0.01),若年者(p=0.03),漿液性剝離がない例(p=0.04)で有意に良好であった。結論:加齢黄斑変性に対する光線力学療法は,術後12か月目の視力維持に効果があった。漿液性剝離は予後不良となる一因であった。

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要約 目的:線維柱帯切除術の前後に眼軸長を測定した結果の報告。対象と方法:過去1年間に線維柱帯切除術を行った77眼を対象とした。27例30眼では単独手術,40例47眼では白内障手術を同時に行った。平均年齢は61.7±10.8歳であった。眼軸長はIOLマスターで測定し,眼内レンズの度数はSRK-T式を使用し,屈折は自動屈折計で測定した。結果:平均眼圧は術前19.3±5.4mmHg,術後11.0±4.2mmHgであった。術後平均140日後の眼軸長は術前よりも有意に減少した(p<0.0001)。眼軸長の変化は,眼圧の変化(p<0.0001)と,年齢(p=0.0003)との間に有意な相関があった。線維柱帯切除術の単独手術では,屈折値に有意な変化がなかった。同時手術群では,実測屈折値が予想値よりも近視化した。結論:線維柱帯切除術と白内障同時手術では,術後に近視寄りの屈折誤差が生じる可能性がある。

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 1815年は世界史ではとくに重要な年である。この年にウィーン会議が開催され,1789年に始まったフランス革命とこれに続くナポレオンによるヨーロッパの征服に終止符が打たれ,新秩序に向けての動きが始まったのである。

 日本の眼科にとっても1815年は大きな意義をもつ。杉田立卿(すぎた・りっけい)が翻訳した『眼科新書』が出版されたからである1)

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欧文目次

べらどんな 生涯現役
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 山形市のT先生から随筆集をいただいた。眼科を開業されたのは40年前であるが,祖父の代から数えると100年以上になる。

 ほとんどの文章が山形県医師会報に書かれた。どうも山形に住んでいると,日本と世界の情勢がよく見渡せるものらしい。

べらどんな 韋編三絶
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 本を読むとき,「眼光紙背に徹す」という表現がある。「ページの裏までしっかり読む」という意味だが,昔の人はそれこそ暗記するくらい繰り返して読んだらしい。

 本を筆写する方法もある。高校3年のとき,国語の先生が齋藤茂吉のファンであった。茂吉の最初の歌集『赤光』(シャッコウと発音)は大正2年に出版され,大評判になった。赤い表紙だったことも有名だった。ただし純粋な赤ではなく,橙色に近い渋い赤である。

ことば・ことば・ことば 悪液質
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 むかし学生だったとき,「悪液質」の話を聴きました。体に悪性腫瘍があると,そこから有毒な物質が出ます。それにより患者は次第に衰弱し,不帰の転帰をとるというものです。

 「悪液質はcachexy」と教わりましたが,これが具体的にどのような物質だかは教えてもらえませんでした。あの当時の教授は偉かったので,授業中でも授業後でも,学生が質問をするのは畏れ多かったのです。

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次号予告

あとがき 鈴木 康之
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 島根大学の大平教授による今月の話題「眼科におけるディスポーザブル製品-単回使用医療器材の再使用についての提言」を非常に興味深く拝読させていただいた。医療機関によるディスポーザブル製品の再使用を規制する法律が存在しないという話にはいささか虚を突かれた。眼科手術で使う膨大かつ高価なディスポーザブル機器を正々堂々と再使用できるようになれば,経済的にも心理的にも,そしてもちろん地球環境的にもどんなによいことであろうか。大平教授が指摘されているように,ディスポーザブル製品の再使用にあたっては専門家の育成,専門業者への適切な依頼,そしてそれらを支える法的な整備と経済的基盤の確立が何よりも大切と思われる。現状のような「何でもディスポで」というような風潮がいつまでも続くと思っている医療関係者はどこにもいないであろう。非常に時宜を得た提言であり,各方面からの積極的な関与が望まれるところである。

 しかしながら,一方で心配になるのが,わが国の現状である。政府は携帯電話やデジカメ,ゲーム機を捨てるのにもお金を徴収しようとしており,このまま行くと家電製品の不法投棄もしくはタンスの肥やし化が急増しそうな感じである。それはともかく,このような状況下でディスポーザブル製品の再使用を検討した場合,よほど気を付けて調整しないと,結果として手術点数の削減および医療機関からの使い捨て費用の徴収などという,医療機関のみ苦しむようなことになってしまいかねない。そのような事態に陥らないように十分心して交渉を進めていく必要があるだろう。

基本情報

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臨床眼科
65巻3号 (2011年3月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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