臨床眼科 61巻2号 (2007年2月)

特集 緑内障診療の新しい展開

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はじめに

 日本緑内障学会多治見緑内障疫学調査(通称:多治見スタディ)が行われてから5年の歳月が経過した。この間に多くの興味深い解析結果が報告されている。現段階でも解析は続いているが,本稿ではこれまで得られた結果をまとめ,それらをどのように今後に生かしていくべきかを考按する。

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はじめに

 原発閉塞隅角緑内障は,前房隅角をめぐる解剖学的形状の問題により虹彩が線維柱帯に押し付けられて隅角が閉塞し,眼圧上昇をきたす疾患である。その診療においては,診断がつけば速やかにレーザー虹彩切開術(laser iridotomy:以下,LI)あるいは観血的周辺虹彩切除術を行うという考え方が長年にわたってゴールデン・スタンダードであった。これは,原発閉塞隅角緑内障における隅角閉塞のメカニズムはほとんど瞳孔ブロックによるという考え方に基づいており,瞳孔ブロックを簡易に解消しうるLIが合理的な治療法とされていたわけである。原発閉塞隅角緑内障はすでに診断と治療法が確定した疾患であり,早期に診断して治療を遂行できるかどうかのみが問題とされていたといえる。

 すでに解決済みの疾患と認識されていた原発閉塞隅緑内障であるが,最近,にわかに注目を集めるようになった。その理由は主に2つ挙げられよう。1つは,1990年代から2000年代初頭にかけてアジアでの緑内障疫学調査が進み,その有病率の高さと失明率の高さが明らかになったことである。世界の人口の多数が集中する東アジアにおいて原発閉塞隅角緑内障が高い有病率を有し失明の大きな原因となっていることは,欧米の眼科臨床家にとってもグローバルな眼科学の重要問題と認識されるようになった。もう1つの理由は,超音波生体顕微鏡(UBM)の普及などによって隅角閉塞の研究が進み,東アジア人の原発性閉塞隅角のメカニズムが従来考えられていたほど単純ではないことが明らかになってきたことである。また,これに加えて,わが国に特有の問題であるが,LI術後の晩期合併症として深刻な水疱性角膜症が多数報告されていることにも,われわれは留意しなければならない。

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はじめに

 ここ2年来,フーリエドメイン(Fourier domain:FD)光干渉断層計(OCT)が,次世代のOCTの技術として注目されてきた。2006年のAmerican Academy of Ophthalmology(AAO)の機器展示では,すでに7社から商用機の展示があり,うち2社は米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)の認可を受けていた(すなわち,残り5社はFDAに申請中である)。OCT3000を中心とする眼底用タイムドメインOCTは,知る限り3社の商用機しかなかったわけであるから,フーリエドメインOCTの実用化の勢いに驚いた方々は少なくないと思う。その勢いの理由は,タイムドメインOCTほど強い基本特許がなかったことが考えられるが,それ以上にフーリエドメインOCTがタイムドメインOCTを圧倒する基本性能をもつためと考えられる。

 近年,緑内障診断機器として,HRT2,GDx,OCT3000の3つの光学診断機器が,ほぼ同程度の緑内障検出力を有するとされる。このなかでOCTだけが,フーリエドメインOCTへと技術革新が起きているため,今後OCTが緑内障診断機器の本命に浮上する可能性が高くなってきた。この時点で,フーリエドメインOCTが緑内障診療において何を可能にするかを予想することはよいタイミングと考える。

眼圧の質のとらえ方 中村 誠
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はじめに

 眼圧測定が緑内障診療のキー・プレイヤーであることは論を待たない。正常眼圧緑内障(normal-tension glaucom:以下,NTG)が圧倒的多数を占めるわが国においては,その診断的価値は下がった。しかし,NTGにおいてさえも,眼圧下降が唯一エビデンスの確立した治療法である1)とみなされるようになった昨今,治療効果判定におけるその重要性は減じることはない。

 しかも,緑内障診療時に行われる各種検査法のなかで,眼圧測定はほとんど唯一といってよい他覚的検査法である。すなわち,眼圧測定は何よりも信頼のおける検査法,のはずである。ところが一方で,眼圧測定はさまざまなバイアスがかかる可能性のあることも事実である。医師,患者ともども,1mmHgの変化に一喜一憂するが,はたしてそこにどのような意味が潜在しているのか。本稿では眼圧測定の質のとらえ方について復習してみたい。

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はじめに

 緑内障治療は,点眼薬を中心とした薬物治療と,レーザー手術や観血的手術による手術療法に大別されるが,大多数の緑内障患者では,その治療の主体は薬物療法となる。従来からのβブロッカー,炭酸脱水酵素阻害薬,副交感神経刺激薬,交感神経刺激薬に加え,プロスタグランジン関連薬やαブロッカー,αβブロッカー,α刺激薬などの多彩な点眼薬が選択・投与可能となった。このような点眼薬を単剤使用あるいは併用することにより,以前より大きな眼圧下降が得られるようになり,特にラタノプロストは,より強力な眼圧下降効果を持ち合わせており,いまや薬物治療の主役である。

 狭義の原発開放隅角緑内障(primary open-angle glaucoma:以下,POAG)に限らず,わが国で最も高頻度の緑内障型である正常眼圧緑内障(normal-tension glaucoma:以下,NTG)においても,その治療には,より低眼圧であることが求められる。しかしながら,Iwataら1)が示す「視野障害が軽症なら眼圧18mmHg以下,中等症なら15mmHg以下,重症なら12mmHg以下」とする治療指針や,Collaborative NTG Study2)での「30%以上眼圧下降することで,視野進行抑制が認められる」に基づいた眼圧条件を満たすことは,時として容易なことではなく,実際の臨床の場では頭を悩ませることも多い。

 緑内障性視神経症の成因には,眼圧,眼血流,グルタミン酸代謝異常,免疫異常,神経栄養因子,加齢などの種々の因子が関与していることが知られている。しかしながら緑内障治療において,エビデンスに基づいて視野進行の抑制効果が認められている治療は唯一,眼圧下降のみであり,今後さらなる強力な眼圧下降作用をもつ薬物や,現在使用している薬物とは異なる作用機序を有する薬物の治療が求められる。

 この報告では,現在新たに開発が進められており臨床への応用が期待されているROCK(Rho-associated coiled-coil containing protein kinase)阻害薬を中心に,新しい薬物治療の展望について述べる(表1)。

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濾過手術創部の閉鎖・瘢痕化は創傷治癒の結果である

 近年の新規の眼圧下降薬の開発により,緑内障の薬物眼圧コントロールはかつてより良好となった。その結果,手術を必要とする症例は以前より減少している。しかし薬剤治療で十分にコントロールできない症例には従来どおり濾過手術などの手術が必要である。濾過手術は一種の瘻孔を意図的に形成する手術と見なすことができ,当然の創傷治癒反応の結果である瘢痕化による閉塞はこの場合好ましくない。一般の他部位の瘻孔と同様で,濾過部分での体液成分の持続的な漏出が保たれていてこそ,瘻孔である濾過部が閉鎖しない。したがって,その結膜下組織への漏出が持続するためには,結膜下組織の瘢痕化(ある意味正常な創傷治癒反応)が完結することは好ましくない(図1,2)1~3)

 筆者の濾過手術後の症例で,濾過手術後一定の期間を経て,眼圧や術後急性期の炎症が消失した時期での濾過胞の大きさ維持と眼圧コントロールの関係を調査した(血管新生緑内障は検討に含めなかった)結果,濾過胞の高さや強膜内の房水流出路の大きさと安定時期での眼圧には有意な負の相関が検出された(図3,4)3)。すなわち,濾過胞の縮小と眼圧コントロール不良には密接な関係があることが確認できた。

連載 日常みる角膜疾患・47

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症例

 患者:35歳,女性

 主訴:右眼眼痛,右眼視力低下

 現病歴:特に誘因なく右眼の異物感を自覚した。次第に眼痛を自覚するようになり近医を受診,抗菌点眼薬を処方され様子をみるように指示されたが眼痛は軽快せず,視力低下も自覚するようになったために当科を受診した。

 既往歴:アトピー性皮膚炎

 初診時所見・治療経過:当科初診時の視力は右0.1(0.3×S-5.50D()cyl-1.50D 110°),左0.5(1.2×S-4.50D),眼圧は右15mmHg,左15mmHgであった。細隙灯顕微鏡検査では右眼結膜は充血しており毛様充血もみられた。また右眼角膜中央部よりやや下方に,境界が明瞭な膿瘍を伴った角膜潰瘍がみられた(図1)。潰瘍周辺部の角膜実質には炎症細胞の浸潤がみられた。右眼前房内には炎症細胞がみられたが蓄膿はなかった。中間透光体,眼底には異常所見はみられなかった。

連載 網膜硝子体手術手技・2

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はじめに

 硝子体手術をすべて滞りなく遂行するには,理に適った方法でそれぞれの操作を確実に施行することが重要である。個々の手技を疎かにすると思わぬ合併症が起きたり,手術が非常にやりにくくなったりする。本稿では,当教室で行っている硝子体手術の基本的な手技について解説する。

連載 眼科医のための遺伝カウンセリング技術・4

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はじめに

 今回は,遺伝カウンセリングの現場におけるカウンセラーの基本的態度とコミュニケーション・スキルについて解説したい。医師の診療とカウンセリングの違いがあるのですべてとはいわないが,日常診療にもお役に立てる部分があれば幸いである。

 最初に2つのことを強調しておきたい。第1にカウンセリングのスキルとは「上手に説明するための技術(プレゼンテーション)」でも,「相手を説得するための技術(ディベート)」でもない。クライエントが「話しやすいような雰囲気をつくる」ための技術なのである。前回「傾聴」の重要性について解説したが,相手の話を引き出し,真実を語らせること,そして相手の気持ちを読み取って今後のクライエントの行動について予測を立てる心理的対応技術なのである。

 「でも,最終的にはクライエントの行動変容を目的にしているのではないか。話を聞いただけで相手の行動が変わるのか。」と疑問の声が上がりそうだが,これらの基本的な対応から,クライエントを自己洞察させ,好ましい自律的決定へと導くのである。相手の力を上手に利用するのである。カウンセラーが上手にプレゼンテーションをしたり,巧みにディベートを行う必要はないことを理解していただきたい。コラムにも紹介したが,能弁な人はかえってカウンセラーに向かないといわれる所以である。

 第2に,コミュニケーション・スキルを上達させるためには,カウンセリング理論による裏付けが効果的である。もちろん経験も重要であるが,経験だけに頼ると多くの失敗経験と長い時間が必要になる。日常使っているスキルについてカウンセリング理論から裏付ける習慣をつけておくと,未経験の場面でも応用が効くはずである。プロフェッショナルのカウンセラーと素人の違いは経験の違いだけでなく,理論についての理解の差であるといってよい。

 今回,紹介するスキルはロジャースの理論を基本にしているが,種々のカウンセリング技法にはその技法(理論)特有のスキルがある。なかにはロジャースと異なる考え方もあるだろうが,医療現場で働く医師はまずロジャースを学んで欲しい。特にカウンセリング・マインドといわれるカウンセラーの基本的態度にはロジャースの考え方から学べるものがとても多いと考えている。

連載 眼科医のための救急教室・2

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 前号では,患者の急変に対する基本的処置について解説いたしましたが,さらに話を進めて今回の主題は「揃えておきたい薬剤,器具とその注意点」としました。クリニックや病院の眼科外来における必要最小限かつ実践的な薬剤・器具の使用法とpitfallについて,特に使用頻度を考慮して処置順に解説させていただきます。

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要約 目的:視力低下と視神経網膜炎を初発症状として2期梅毒が発見された症例の報告。症例:56歳男性が10日前からの左眼霧視と中心暗点で受診した。糖尿病と高血圧の既往があった。矯正視力は右1.2,左0.5であり,左眼の視神経乳頭の腫脹と黄斑部にかけての浮腫があった。蛍光眼底造影で網膜静脈からの蛍光漏出があり,中心暗点が検出された。右眼には異常はなかった。経過:上肢から躯幹にかけて爪甲大の紅斑が多発し,梅毒血清反応が陽性であり,梅毒2期のバラ疹と診断された。アモキシシリン内服で眼底所見は改善し,2か月後の左眼矯正視力は0.7に回復した。結論:頻度は激減しているが,梅毒が原因で視神経炎またはぶどう膜炎が発症することがある。

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要約 目的:線維柱帯切除術後の濾過胞からの晩発性房水漏出に対して行った自家テノン囊移植術の報告。症例:術後の濾過胞から房水漏出がある5例5眼を対象とした。男性1例,女性4例で,年齢は55~79歳(平均68歳)であり,線維柱帯切除術からの経過期間は63~113か月(平均89か月)である。全例が4mmHg以下の低眼圧であり,脈絡膜剝離と視力低下が全例にあり,低眼圧黄斑症が1眼にあった。結果:自家テノン囊移植術後,1~2週で結膜欠損部が上皮化し,眼圧が徐々に上昇し,脈絡膜剝離と低眼圧黄斑症などの合併症は消失して視力が回復した。術後完全に漏出が止まるまでの期間は4~60日であり,最終眼圧は無投薬で7~11mmHgに維持された。8~38か月(平均26か月)の観察で,結膜欠損,房水再漏出などの合併症は生じていない。結論:線維柱帯切除術後の濾過胞からの晩発性房水漏出に対する自家テノン囊移植術は有効である。

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要約 目的:シヌソトミー併用トラベクロトミー,水晶体乳化吸引術,眼内レンズ挿入術同時手術の術後眼圧の長期経過を検討した。対象と方法:過去98か月間に上記手術を行い,3か月以上の経過が観察できた194例289眼を対象とした。内訳は原発開放隅角緑内障245眼,偽落屑緑内障27眼,正常眼圧緑内障14眼,高眼圧症3眼である。術前,術後の眼圧と投薬点数の比較はt検定を用い,生命表はKaplan-Meier法を用いて生存率を検討した。結果:平均眼圧は術後6か月で最低値になった。術後84か月までの平均眼圧はすべて12~13mmHg台であり,術前値より有意に低下した。術後96か月で18mmHg以下の生存率は93.9%,16mmHg以下の生存率は73.5%であった。結論:本術式は術後の目標眼圧値が16mmHg以下の緑内障眼に対して,積極的に施行してよいと考えられる。

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要約 目的:再発性多発性軟骨炎が続発したぶどう膜炎に対し,硝子体手術が奏効した症例の報告。症例:84歳男性が2日前からの右眼の視力低下と眼痛で受診した。矯正視力は右光覚弁,左0.6であり,右眼に虹彩炎,硝子体混濁,網膜出血,胞状網膜剝離があった。左眼に異常は認められなかった。内因性細菌性眼内炎を疑い,右眼に対し水晶体乳化吸引,眼内レンズ挿入,硝子体切除を行った。10日後に発熱,3週後に両側の耳介の炎症,有痛性関節炎,内耳障害,咳嗽が生じ,再発性多発性軟骨炎と診断した。手術の2か月後に眼内炎は軽快し,視力は0.2に回復した。結論:本症例に硝子体手術が奏効したのは,再発性多発性軟骨炎がⅡ型コラーゲンに対する自己免疫疾患であり,硝子体がⅡ型コラーゲンを主体とする組織であるためと解釈される。

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要約 目的:眼内悪性リンパ腫2症例の報告。症例:症例はいずれも女性で,年齢は73歳と69歳である。主訴はいずれも両眼の視力障害と霧視で,初診時の矯正視力は,0.2と光覚弁,0.01と0.4であった。前房と硝子体混濁が4眼すべてにあり,そのうちの2眼には広範囲の網脈絡膜萎縮があった。1例では硝子体手術による生検で,クラスVの異型リンパ球があり,悪性リンパ腫の診断が確定した。他の1例では副腎皮質ステロイド点眼が無効であった。硝子体生検では診断が確定できなかったが,硝子体中のサイトカイン検索でIL-10が高値であり,IL-10/IL-6比率が高く,悪性リンパ腫が強く疑われた。2例とも放射線照射を行った。結果:それぞれ9か月と13か月の経過観察で,再発または中枢神経系への転移はなく,最終視力は0.3と手動弁,1.2と1.2である。結論:眼内悪性リンパ腫に対する副腎皮質ステロイド点眼は硝子体細胞診の陽性率を下げる危険がある。硝子体中のIL-10とIL-6の測定が補助診断として有用である。

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要約 目的:眼部帯状疱疹の発症後に特異な脱色素病変が脈絡膜に生じた症例の報告。症例と所見:71歳女性が右眼の激痛と頭痛で受診した。右眼は8年前に囊性緑内障と診断し,点眼により加療中であった。受診時の矯正視力は右0.7,左1.0,眼圧は右42mmHg,左12mmHgであった。右眼に急性虹彩炎の所見があり,右三叉神経の第1と第2枝の領域に帯状疱疹があった。血中の水痘・帯状疱疹ウイルスと単純疱疹ウイルス値は著しく上昇していた。経過:アシクルビルと副腎皮質ステロイドの全身投与で眼圧はただちに下降し,眼内炎は1か月後に軽快した。発症から6か月後に大小の黄色病変が右眼底に数個出現した。蛍光眼底造影で軽度の色素漏出があった。4年後の現在では,眼底の脱色素斑はやや赤みを呈し,輪郭が不鮮明になった。結論:本症例の眼底病変は脈絡膜の脱色素であり,眼部帯状疱疹の後遺症であると解釈される。落屑症候群との関係は不明である。

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要約 目的:ぶどう膜炎を併発した多発性硬化症1症例の報告。症例と所見:65歳女性が歩行障害としびれ感などから多発性硬化症を疑われ,発症から10か月後に精査のため眼科に紹介された。矯正視力は右0.6,左0.9であり,両眼に毛様充血,虹彩炎,乳頭浮腫,網膜静脈炎,硝子体混濁があった。副腎皮質ステロイド薬の点眼と内服で病状は軽快し,5週後に視力は両眼とも1.0に改善した。全身検査でぶどう膜炎の原因疾患は検出できなかった。磁気共鳴画像検査(MRI)で,頸髄と胸髄に脱髄病巣の空間的ならびに時間的な多発があり,多発性硬化症の診断が確定した。結論:高齢者であっても多発性硬化症が発症し,ぶどう膜炎が併発することがある。

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要約 目的:光学部の素材がアクリルまたはシリコーンで,同一デザインの眼内レンズ(IOL)の比較評価。対象と方法:98名の両眼に超音波白内障手術を行った。片眼にはアクリルIOL(AR40e),他眼にはシリコーンIOL(Clariflrex)を挿入した。手術の3日,1,3,6か月後にIOLの偏心,傾斜,前房深度,前囊切開窓面積,屈折誤差を測定した。結果:偏心,傾斜,前房深度には術後の経時的な変化がなく,2群間にも差がなかった。前囊切開窓面積は,シリコーンがアクリル群よりも有意に小さく,前囊収縮率も大きかった。結論:眼内に挿入したアクリルとシリコーンIOLとの間に偏心,傾斜,前房深度については差がなく,前囊収縮は後者が有意に大きかった。

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要約 目的:粘弾性物質を併用する線維柱帯切除術による緑内障日帰り手術の短期成績の報告。対象と方法:広隅角緑内障10例11眼を対象とした。年齢は38~76歳(平均62歳)である。前房を維持する目的で,粘弾性物質として低粘度で低分子量のヒアルロン酸ナトリウム製剤を術中に使用し,術後も眼内に残した。術後3か月まで経過を観察した。結果:術後7日までの眼圧値は4~28mmHgで,20mmHg以上の眼圧上昇が4眼にあった。術後2週以後は全例で眼圧が20mmHg以下に安定した。浅前房が4眼にあったが前房消失例はなかった。術後3か月までの眼圧は全例で良好であり,重篤な合併症はなかった。結論:粘弾性物質を併用する線維柱帯切除術により,術後早期の低眼圧を予防することが可能であり,緑内障日帰り手術の安全性を高める術式として評価される。

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要約 目的:日系人を含む日本人のアレルギー性結膜炎に対する0.1%オロパタジン点眼液と0.025%レボカバスチン点眼液の有効性と使用感の比較。対象と方法:アレルギー性結膜炎の既往がある20名を被検者とし,米国の2施設で,6週間にわたる抗原誘発試験を行った。男性14名,女性6名で,年齢は19~61歳(平均38歳)である。片眼に0.1%オロパタジン点眼液,他眼に0.025%レボカバスチン点眼液1滴を点眼し,その3.5時間後に予備検査で確認した至適濃度の抗原を両眼に点眼した。眼そう痒感と使用感は被検者が定量的に評価した。結果:オロパタジンはレボカバスチンよりも眼そう痒感を有意に抑制し(p<0.05),使用感も優れていた(p<0.05)。オロパタジンでは眼痛と灼熱感はなく,レボカバスチンでは眼痛が25%,灼熱感が20%にあった。被検者の75%がレボカバスチンよりもオロパタジンを好んだ。結論:オロパタジンはレボカバスチンよりも眼そう痒感を有意に抑制し,使用感も優れていた。

今月の表紙

前囊収縮 水澤 剛 , 西田 輝夫
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 症例は71歳女性。急性閉塞隅角緑内障の既往があり,両眼ともレーザー虹彩切開術が施行されていた。2004年2月,近医にて右眼66mmHg,左眼10mmHgと右眼の眼圧上昇を認め,急性緑内障発作の診断にてグリセロールとアセタゾラミドの点滴静注を施行され,当科を紹介され受診となった。当科初診時,視力は右0.1(矯正不能),左0.1(0.6×+2.50D()cyl-0.25D 60°),眼圧は右28mmHg,左10mmHgであった。水晶体所見はEmery-Little分類のgrade 2,隅角所見はShaffer分類のgrade 0を認め,水晶体前方偏位による急性緑内障発作の再発と診断し,超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入術の緊急手術を施行した。術後,眼圧は正常化した。

 手術後1か月より前囊収縮が出現し,徐々に進行しているが囊の閉鎖には至っていない。写真は,手術後1年5か月経過した現在の右眼の状態であり,矯正視力は(1.0×()cyl-1.00D 90°),眼圧は10mmHgと経過は良好である。

べらどんな

ポロニウム
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 ポロニウムはキュリー夫妻により1898年に発見された。鉱石のピッチブレンドがウランの原料であるが,これを抽出しても,強い放射能がまだまだ残っている。「なにか新物質があるのでは」と考え,ピッチブレンドの滓からこれを手作業で分離することを試みた。

 最終的に2つの新元素が得られた。化学的に蒼鉛(Bi)に似ているポロニウムと,バリウム(Ba)に似たラジウムである。

やさしい目で きびしい目で・86

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 ♪頭を雲の上に出し 四方の山を見下ろして 雷様を下に聞く 富士は日本一の山

 この歌詞は富士山に登った人には感慨深いものがある。

 私は山登りを趣味にしているわけではないが,19歳の夏に北アルプス立山連峰を歩いた。最初からそのような予定ではなく,室堂までバスで行き雷鳥荘で一泊という計画であった。しかし雷鳥荘でお世話になったおじさんに「折角だから立山に登っていらっしゃい」と言われ,大きなおにぎりを2個作っていただき,るんるん気分でジーンズにタンクトップ,足下はデッキシューズという無謀ないでたちで出発した。登山口までは草木の陰に見え隠れする夏毛の雷鳥に感激しピクニック気分であったが,次第に足下は岩場と瓦礫となり,靴は何度も脱げそうになり,靴ずれでできた水泡も破れ,痛みをこらえて必死でひたすら上を目ざした。ようやく頂上に辿り着いたときには,頰をなでる爽やかな風と眼下に広がる景色に足の痛みも忘れ感動したことは今でも鮮明に覚えている。

ことば・ことば・ことば

成人
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 日本語の「やまと言葉」と「漢語」みたいな違いが英語にもあります。イギリスは1066年にフランスからきたウイリアム王に征服されました。これよりも前からあった単語が「やまと言葉」に相当し,これ以後に入ったのが外来語と考えてよろしいようです。もちろんこんな雑な定義では言語学者に叱られることは十分承知しています。

 やまと言葉,すなわちアングロサクソン系の単語は,短いことと使用頻度が高いことが特徴です。Boyにgirl,manにwoman,fatherにmother,pigにhenにcowなどがそれです。「成人」を意味するadultもそうかと思ったら,見事に間違っていました。

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 先に本誌(臨眼 60:1825-1829,2006)に掲載された大山奈美氏らの論文「Unilateral acute idiopathic maculopathyの1例」を興味深く拝読させていただきました。論文には,緒言中に「わが国では両眼例がNakazawaらによって報告されたのみで稀な疾患である」,また考按中に「わが国では最近,両眼例が1例報告されたが,典型的な片眼例の報告は本報告が初めてである」と記載されておりますが,以前われわれも「片眼性急性特発性黄斑症の1例」として本誌「眼科図譜」374(臨眼 55:1831-1834,2001)に症例報告をしておりました。その症例は無治療でほぼ2か月の経過で自然治癒しており,臨床的特徴である既往としての感冒様症状や硝子体中の炎症細胞はみられなかったものの,典型的な片眼性の症例であったと考えております。

文庫の窓から

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 水戸藩主徳川齊昭公(1800-1860)の藩政の改革,弘道館の建設,水戸学の精神などについては世によく知られているところであるが,また,幕政に参与し,医政と厚生運動にも大変熱心であったことも看過できない。なかんずく『醫弊説』を自ら撰して医学の振興に尽力したことは有名な話である。ここには齊昭公の医政について,その第一人者である石島績,矢数道明両先生のご研究をもとに『醫弊説』を紹介する。

 徳川時代,水戸歴代藩主のうち,医学振興に最も心を注いだのは烈公徳川齊昭であった。烈公は弘道館内に医学館を設け(天保12年),藩内に15の郷校を置いて医学教育を行い,自ら『醫弊説』を撰して医道の興揚,医の倫理を提唱した(矢数道明)。ことに烈公は,この『醫弊説』において,藩医の悪弊を痛切に説破したといわれている。

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あとがき 西田 輝夫
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 たった1例の症例報告が疾患概念の大きな変革につながる例を経験します。あるいは多数の症例をじっくりと検討することで,その疾患の臨床像や治療の方針がみえてくることもあります。一方で,行政とも共同して全住民の検診を行うことで,疾患の特徴や新しい概念が生まれてくる場合もあります。日本緑内障学会が中心となって行われた多治見スタディがその1つですし,現在も九州大学を中心に久山町でのスタディが行われています。多治見スタディで,緑内障に関するさまざまな新しい問題点が導き出されたことは素晴らしいことであり,このような疫学調査の必要性を改めて感じました。

 今月号は,「緑内障診療の新しい展開」を特集としてお届けします。閉塞隅角緑内障と同じ考え方で,高い眼圧により視神経線維が傷害されると基本的には考えられてきた開放隅角緑内障ですが,眼圧が従来からいわれている正常範囲内であっても視野障害や視神経乳頭の陥凹が進行する正常眼圧緑内障の頻度がわが国では高いことが多治見スタディで明らかになりました。眼圧はもはや緑内障の診断の過程では大きな意味をもたなくなり,視野障害と視神経乳頭の形状が診断の基本となってきています。しかしながら視神経を再生させることのできない現時点では,治療の標的は眼圧の下降です。このあたりに緑内障の診断と治療における循環理論のような難しさがあります。現在でも眼圧は大切な指標です。しかし現在私たちが用いている眼圧計はあくまで角膜が正常であるという前提で計測しているわけですから,角膜移植術後や瘢痕により角膜が菲薄化している場合や,角膜屈折矯正手術を受けておられる方などでの眼圧の読み値と真の値の違いに注意を払う必要があります。どうぞ今月号の「臨床眼科」をお楽しみください。

基本情報

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臨床眼科
61巻2号 (2007年2月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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