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はじめに
原発閉塞隅角緑内障は,前房隅角をめぐる解剖学的形状の問題により虹彩が線維柱帯に押し付けられて隅角が閉塞し,眼圧上昇をきたす疾患である。その診療においては,診断がつけば速やかにレーザー虹彩切開術(laser iridotomy:以下,LI)あるいは観血的周辺虹彩切除術を行うという考え方が長年にわたってゴールデン・スタンダードであった。これは,原発閉塞隅角緑内障における隅角閉塞のメカニズムはほとんど瞳孔ブロックによるという考え方に基づいており,瞳孔ブロックを簡易に解消しうるLIが合理的な治療法とされていたわけである。原発閉塞隅角緑内障はすでに診断と治療法が確定した疾患であり,早期に診断して治療を遂行できるかどうかのみが問題とされていたといえる。
すでに解決済みの疾患と認識されていた原発閉塞隅緑内障であるが,最近,にわかに注目を集めるようになった。その理由は主に2つ挙げられよう。1つは,1990年代から2000年代初頭にかけてアジアでの緑内障疫学調査が進み,その有病率の高さと失明率の高さが明らかになったことである。世界の人口の多数が集中する東アジアにおいて原発閉塞隅角緑内障が高い有病率を有し失明の大きな原因となっていることは,欧米の眼科臨床家にとってもグローバルな眼科学の重要問題と認識されるようになった。もう1つの理由は,超音波生体顕微鏡(UBM)の普及などによって隅角閉塞の研究が進み,東アジア人の原発性閉塞隅角のメカニズムが従来考えられていたほど単純ではないことが明らかになってきたことである。また,これに加えて,わが国に特有の問題であるが,LI術後の晩期合併症として深刻な水疱性角膜症が多数報告されていることにも,われわれは留意しなければならない。
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