特集 緑内障診療の新しい展開
濾過手術創の創傷治癒過程と濾過手術の進歩
雑賀 司珠也
1
1和歌山県立医科大学眼科学教室
pp.156-163
発行日 2007年2月15日
Published Date 2007/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101527
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濾過手術創部の閉鎖・瘢痕化は創傷治癒の結果である
近年の新規の眼圧下降薬の開発により,緑内障の薬物眼圧コントロールはかつてより良好となった。その結果,手術を必要とする症例は以前より減少している。しかし薬剤治療で十分にコントロールできない症例には従来どおり濾過手術などの手術が必要である。濾過手術は一種の瘻孔を意図的に形成する手術と見なすことができ,当然の創傷治癒反応の結果である瘢痕化による閉塞はこの場合好ましくない。一般の他部位の瘻孔と同様で,濾過部分での体液成分の持続的な漏出が保たれていてこそ,瘻孔である濾過部が閉鎖しない。したがって,その結膜下組織への漏出が持続するためには,結膜下組織の瘢痕化(ある意味正常な創傷治癒反応)が完結することは好ましくない(図1,2)1~3)。
筆者の濾過手術後の症例で,濾過手術後一定の期間を経て,眼圧や術後急性期の炎症が消失した時期での濾過胞の大きさ維持と眼圧コントロールの関係を調査した(血管新生緑内障は検討に含めなかった)結果,濾過胞の高さや強膜内の房水流出路の大きさと安定時期での眼圧には有意な負の相関が検出された(図3,4)3)。すなわち,濾過胞の縮小と眼圧コントロール不良には密接な関係があることが確認できた。
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