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はじめに
緑内障治療は,点眼薬を中心とした薬物治療と,レーザー手術や観血的手術による手術療法に大別されるが,大多数の緑内障患者では,その治療の主体は薬物療法となる。従来からのβブロッカー,炭酸脱水酵素阻害薬,副交感神経刺激薬,交感神経刺激薬に加え,プロスタグランジン関連薬やαブロッカー,αβブロッカー,α刺激薬などの多彩な点眼薬が選択・投与可能となった。このような点眼薬を単剤使用あるいは併用することにより,以前より大きな眼圧下降が得られるようになり,特にラタノプロストは,より強力な眼圧下降効果を持ち合わせており,いまや薬物治療の主役である。
狭義の原発開放隅角緑内障(primary open-angle glaucoma:以下,POAG)に限らず,わが国で最も高頻度の緑内障型である正常眼圧緑内障(normal-tension glaucoma:以下,NTG)においても,その治療には,より低眼圧であることが求められる。しかしながら,Iwataら1)が示す「視野障害が軽症なら眼圧18mmHg以下,中等症なら15mmHg以下,重症なら12mmHg以下」とする治療指針や,Collaborative NTG Study2)での「30%以上眼圧下降することで,視野進行抑制が認められる」に基づいた眼圧条件を満たすことは,時として容易なことではなく,実際の臨床の場では頭を悩ませることも多い。
緑内障性視神経症の成因には,眼圧,眼血流,グルタミン酸代謝異常,免疫異常,神経栄養因子,加齢などの種々の因子が関与していることが知られている。しかしながら緑内障治療において,エビデンスに基づいて視野進行の抑制効果が認められている治療は唯一,眼圧下降のみであり,今後さらなる強力な眼圧下降作用をもつ薬物や,現在使用している薬物とは異なる作用機序を有する薬物の治療が求められる。
この報告では,現在新たに開発が進められており臨床への応用が期待されているROCK(Rho-associated coiled-coil containing protein kinase)阻害薬を中心に,新しい薬物治療の展望について述べる(表1)。
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