臨床眼科 60巻7号 (2006年7月)

特集 第59回日本臨床眼科学会講演集 (5)

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要約 目的:増殖前糖尿病網膜症での網膜無灌流領域の拡大に関与する因子の検討。対象と方法:光凝固を行っていない増殖前糖尿病網膜症10例10眼を対象とした。年齢は36~73歳(平均54歳),糖尿病の罹病期間は3~20年(平均12年)であった。12~20か月(平均16か月)の経過を観察した。画角50°の眼底カメラでフルオレセイン蛍光眼底造影を3回以上行い,無灌流領域の面積を画像解析で算出し,乳頭の面積に換算した。結果:無灌流領域の面積は有意に増加した(p<0.05)。観察期間中のHbA1cの増加率と無灌流領域の拡大率の間には正の相関があった。背景因子として,観察開始時の無灌流領域の面積とHbA1cが,無灌流領域の拡大率と有意に相関していた。結論:増殖前糖尿病網膜症での網膜無灌流領域は増大する傾向があり,網膜無灌流領域が大きく,HbA1cが高いほど拡大しやすい。

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要約 目的:糖尿病黄斑症での硬性白斑の局在,黄斑浮腫の形態,矯正視力の関係の検索。対象と方法:硬性白斑がある糖尿病黄斑症300眼を対象とした。硬性白斑は光干渉断層計(OCT)で検索し,網膜内と網膜下に分けた。黄斑形態はKishiの分類を改変した方法で分類した。結果:硬性白斑はOCTでは237眼(79%)に検出され,151眼(64%)では網膜内のみ,86眼(36%)では網膜内と網膜下にあった。網膜下にある硬性白斑では,網膜内にあるものよりも矯正視力が不良であり,囊胞様黄斑浮腫または漿液性網膜剝離が併発する頻度が高かった。結論:硬性白斑が網膜下にある眼では,黄斑の形態にかかわらず矯正視力が不良である。

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要約 目的:脈絡膜新生血管が網膜下増殖組織に進行したpunctate inner choroidopathyの症例の報告。症例と経過:25歳女性の左眼に変視症と暗点が生じた。眼底に黄白色斑状病変が散在し,黄斑部の外下方に新生血管があった。発症から7か月の当科受診時には,左眼矯正視力は0.1で,当初の新生血管は網膜下増殖組織になっていた。副腎皮質ステロイドの内服開始後,視力は徐々に改善し,黄白色斑状病変と網膜下増殖組織は色素沈着を伴い瘢痕化した。結論:典型的な脈絡膜新生血管に網膜下増殖組織が続発したことからpunctate inner choroidopathyと診断した。光干渉断層計(OCT)で網膜深層と脈絡膜内に黄白色病変に相当する高反射層があり,網膜下増殖組織は主に網膜色素上皮上にあった。

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要約 目的:特発性傍中心窩毛細血管拡張症4例の報告。症例:症例は62歳男性と,53歳,63歳,76歳女性である。いずれも片眼発症で,主訴は視力低下または変視症であった。1例はGass分類1Aで,光凝固を行い3年後に視力が0.3から0.6に改善した。他の3例は同じ分類2Aで,視力は0.5~0.9であり,いずれも無治療で0.8~1.0に改善した。結論:本症に対する光凝固は,症例を選び,過剰凝固を避けて行う必要がある。2Aの軽症例では自然寛解が期待できる。

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要約 目的:インドシアニングリーン(ICG)を使った黄斑円孔手術後の残留ICGとその代謝経路の検索。対象と方法:特発性黄斑円孔10眼に対しICG併用の内境界膜切除術を行い,その1週,1か月,3か月後に近赤外光撮影と画像解析ソフトで蛍光輝度の変化を検索した。結果:黄斑円孔は全例で閉鎖し,8眼で視力が改善した。残留ICGは手術後緩慢に消失した。測定した5か所で蛍光輝度は一様に低下し,その低下速度には眼底の部位による差がなかった。結論:今回の所見は,網膜の残留ICGが軸索輸送により代謝されていることを示していない。

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要約 目的:特発性黄斑上膜に対する膜剝離術で,トリアムシノロンを併用した場合としない場合の成績の比較。対象と方法:過去39か月間に同一術者が手術を行い,6か月以上の経過が観察できた46例46眼を対象とした。前期の19眼ではトリアムシノロンを使わず,後期の27眼ではこれを使った。結果:術後の平均視力には両群間に有意差がなかった。内境界膜を剝離していない2眼で再発があり,1眼はトリアムシノロンを不使用,1眼は使用していた。トリアムシノロンを使用した27眼中,19眼では内境界膜を剝離し,8眼ではしなかった。両群間に術後視力と中心窩厚には有意差がなかった。内境界膜剝離群では平均中心窩厚の変化率が有意に減少し,非剝離群では減少しなかった。結論:特発性黄斑上膜に対する硝子体手術でトリアムシノロンを併用することにより,手術の安全性と特発性黄斑上膜または内境界膜の視認性が向上する。

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要約 目的:術前視力が良好な網膜剝離眼でのコントラスト感度の術後変化の検索。症例:強膜輪状締結術を行った網膜剝離25例25眼を対象とした。術前矯正視力は全例で0.9以上であった。コントラスト感度は,その曲線下の面積に相当するarea under log contrast sensitivity function(以下,AULCSF)として数値化した。結果:AULCSFについては,術前の患眼と僚眼との間に有意差があった(p<0.05)。患眼の術前,術後,僚眼の矯正視力については,いずれにも有意差がなかった。術前後のコントラスト感度の変化量と剝離面積との間に有意な相関があった(rs=0.54,p<0.05)。結論:コントラスト感度は黄斑が剝離していない網膜剝離眼でも低下し,剝離の復位後に改善し,その程度は復位した剝離面積と相関する。

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要約 目的:乳児内斜視の術後に安定した眼位を保つために,屈折の管理が持つ意義の検討。対象と方法:過去11年間に内斜視手術を行った8歳未満の43症例を検索した。術後の屈折は調節麻痺下で行った。屈折を未矯正または矯正の状態で,眼位を交代プリズムカバーテストで計測した。結果:術後の屈折値は,球面等価度数で平均+1.27Dであった。眼位は屈折未矯正時で平均+5.37Δ,完全矯正時で平均+1.28Δで,完全矯正時では有意に減少して正位に近づいた。調節性内斜視が9例(21%)にあった。結論:乳児内斜視の術後では,屈折管理を行うことが良好な眼位と両眼視機能獲得のために重要である。

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要約 目的:片眼に眼内レンズ,他眼にレーザー屈折矯正手術を行った3例の報告。症例:近視が強い眼に後房型有水晶体眼内レンズを挿入し,他眼にレーザー屈折矯正手術を行い,1年以上の経過を観察した。結果:術後の等価球面度数は6眼ともほぼ正視であり,裸眼視力がよい眼での満足度が高かった。矯正視力は全例で良好であった。耳側角膜切開で眼内レンズを挿入した眼では,角膜乱視が平均0.44D増加した。コントラスト感度は,眼内レンズ挿入眼では全周波数で上昇し,レーザー施行眼では高周波数領域で低下した。結論:高度近視に対し,後房型有水晶体眼内レンズを挿入することは屈折を矯正する有効な手段である。直乱視があるとき,耳側角膜切開で残存する乱視が満足度に影響する可能性がある。

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要約 目的:強度近視に対し,片眼に有水晶体眼内レンズ挿入術,僚眼にwavefront-guided LASIKを行った3例の検討。症例:症例の年齢は24歳,39歳,41歳で,それぞれ約一10D,一7D,一7Dの近視が両眼にあった。結果:1例では眼内レンズ挿入眼では術後視力と屈折が良好であったが,LASIK施行眼では術後1年で屈折の戻り(regression)が生じ,追加矯正を行った。ほかの2例では両眼とも視力と屈折が安定していたが,眼内レンズ挿入眼のコントラスト感度は1例で不変,1例で上昇した。LASIK施行眼のコントラスト感度はやや低下した。高次収差は眼内レンズ挿入眼では術前後でほぼ不変であり,LASIK施行眼では増加した。自覚的な見え方は,3例とも眼内レンズ挿入眼のほうが良好であった。結論:強度近視に対する有水晶体眼内レンズ挿入術が有効な症例がある。

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要約 目的:後天青黄色覚異常がある網膜色素変性患者の色認識の検索。方法:網膜色素変性患者6例12眼を対象とした。パネルD-15検査で全員に後天青黄色覚異常があった。年齢は36~68歳(平均50歳)で,矯正視力は0.4~0.9の範囲にあった。53枚の色票に対する色名呼称検査で色誤認の型を分析し,日常生活での色誤認につき聞き取った。結果:色名呼称検査では,12眼が青を黒,11眼が青を緑,10眼が黄色を白,7眼が茶を紫,7眼が紫を茶,3眼が緑を青と誤認した。色覚異常の自覚はあいまいであったが,よく聞くと色誤認を経験し生活に支障がある例があった。結論:後天青黄色覚異常は網膜色素変性患者の視機能障害の1つであり,これに関する具体的な生活指導が望まれる。

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要約 目的:翼状片に対し,単純切除,トリアムシノロン結膜下注射,マイトマイシンC点眼を行った成績の報告。対象と方法:翼状片手術を行った40眼を対象とした。単純切除により強膜を露出させたのち,トリアムシノロン0.3ml(12mg)を結膜下に注射し,術後2日間0.04%マイトマイシンCを点眼し,術後1か月間ステロイドを点眼した。結果:術後3か月以上の観察で,翼状片は3眼(7.5%)に再発した。手術の術式は簡便であり,術後の瘢痕形成は無または軽微であった。結論:翼状片に対する今回の術式は,簡便であり再発が少ない。

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要約 目的:九州大学眼科での最近20年間の強膜炎と上強膜炎の動向の報告。対象:2002年までの20年間に受診した強膜炎111例と上強膜炎59例を対象とした。結果:発症時の年齢は,強膜炎が52.4±16.5歳,上強膜炎が47.5±16.5歳であった。男女比はいずれも女性がやや多かった。強膜炎の病型は,びまん性58%,結節性17%,壊死性5%,後部強膜炎が20%であった。強膜炎と上強膜炎ともに片眼性が多く,眼合併症では虹彩炎,全身合併症では関節リウマチが多かった。結論:当科での強膜炎と上強膜炎は,性別,年齢,眼ならびに全身合併症は,従来の報告とほぼ一致している。日本では欧米よりもびまん性強膜炎が多い傾向がある。

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要約 目的:片眼に網膜動静脈閉塞症が発症し,並存する鉄欠乏性貧血に対する治療が奏効した若年女性の報告。症例:24歳女性が右眼の視力低下で受診した。1か月前から一過性の右眼視野欠損が頻発していた。初診時の矯正視力は右0.02,左1.2であり,右眼眼底に網膜静脈の拡張と蛇行,Roth斑様の出血,乳頭の下鼻側に浮腫があった。蛍光眼底造影所見と合わせ,網膜中心静脈閉塞症と網膜動脈分枝閉塞症の併発と診断した。内科的には治療が必要な全身疾患はなかったが,食思不振があり,身長163cm,体重35kgと痩せていた。血液検査で血清鉄が46μg/dlと低値であった。結果:血栓溶解療法でいったんは改善したが再び増悪した。第10病日から鉄剤を経口投与し,その12日後に眼底所見が改善し,視力が1.0になった。結論:鉄欠乏性貧血が基礎にある網膜循環障害には,貧血の治療が奏効することがある。

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要約 目的:Wavefront-guided LASIKにおいて,球面度数をアジャストした例(A群)としない例(N群)を比較検討した。対象と方法:A群21例36眼,N群32例50眼の年齢,術前の自覚的屈折値と波面収差解析値,術後の裸眼視力,自覚的球面度数,等価球面度数を比較した。波面収差解析はVISX社WaveScan(R),エキシマレーザーはVISX社Star S4(R)を用いた。結果:年齢はA群28.8歳,N群32.6歳でA群が有意に若かった。術前自覚的屈折値と波面収差解析値の球面度数の差はA群で0.48Dであった。術後裸眼視力はA群1.49,N群1.38で有意差はなく,術後自覚的球面度数はA群-0.01D,N群-0.13D,等価球面度数はA群-0.13D,N群-0.22DとA群のほうが正視に近かった。結論:自覚的屈折値と波面収差解析値の球面度数に差がある例でアジャストを行い良好な結果が得られた。

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要約 目的:ラタノプロスト点眼による副作用が生じた症例を,ウノプロストン点眼に切り替えた効果の検索。対象と方法:ラタノプロストン点眼で副作用が生じた13例23眼を対象とした。年齢は60~88歳,平均75歳である。点眼をウノプロストンに切り替え,1年以上の経過を観察した。結果:眼圧と視野には変更前後で有意な変化はなかった。副作用としての眼瞼色素沈着は67%,睫毛または眼瞼の多毛は70%,点眼時の刺激感は30%で改善した。結論:ラタノプロストン点眼による副作用が生じた症例を,ウノプロストン点眼に切り替えることは,副作用の軽減または進行防止の意味で有意義である。

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要約 目的:発症の翌日から開始したステロイドパルス療法に抵抗し,遷延した原田病症例の報告。症例と経過:28歳女性が1日前からの両眼の霧視で受診した。矯正視力は右0.4,左0.6であり,眼底に胞状の網膜剝離があり,典型的な蛍光眼底造影所見と合わせて原田病と診断した。メチルプレドニゾロン1,000mgによるステロイドパルス療法を開始したが,病状が急激に増悪し,顕著な網脈絡膜剝離になり,頭痛,白髪,脱毛,難聴が出現した。第10病日からシクロスポリンの全身投与を開始した。発症6週後から網膜剝離は消退をはじめ,発症から4か月後に夕焼け状眼底になり,最終視力が左右とも0.6に改善した。結論:原田病では発病初期から通常の治療に抵抗する症例がある。このような重症例には適切な治療法を立案することが望ましい。

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要約 目的:汎ぶどう膜炎が併発した潰瘍性大腸炎3症例の報告。症例:症例はそれぞれ27歳女性,33歳女性,44歳男性である。潰瘍性大腸炎の診断からぶどう膜炎の発症までの期間は,それぞれ3年,13年,23年であり,1例はメサラジン,2例は副腎皮質ステロイドを内服中であった。ぶどう膜炎は2例が片眼性,1眼が両眼性であった。虹彩毛様体炎,乳頭炎と網膜血管炎が全例にあった。副腎皮質ステロイドの内服開始または増量を必要とした。結論:潰瘍性大腸炎には前部ぶどう膜炎が好発するが,汎ぶどう膜炎としても発症することを本症例群は示している。

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要約 在胎24週4日で生まれ,出生体重が666gの超低出生体重女児に未熟児網膜症と先天白内障が両眼にあった。未熟児網膜症には光凝固を右眼に,盲目的冷凍凝固術を左眼に行い,左眼の先天白内障には生後6か月で経毛様体水晶体切除術を行い,生後1歳7か月の現在まで良好な結果を得ている。

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要約 目的:縦書きと横書きの文章を読むときの眼球運動の比較。対象と方法:19~23歳の健康人19名を対象とした。読書時の眼球運動は赤外線眼鏡型眼球運動記録装置で記録し,自覚的な読みやすさを聴取した。読書材料として,1辺が3.5mmの明朝体の文字を,A4用紙に1行45文字,15行で縦または横に印刷したものを使った。結果:眼球運動波形は,縦書きと横書きともに視線移動(saccade)と固視からなる階段状波形を示した。視線移動の速度は横書きのほうが速く,固視回数は縦書きのほうが有意に多かった。自覚的には横書きのほうが読みやすいという回答が多かった。結論:縦読みでは固視回数が多くなり,視線移動速度が遅くなることが読みやすさに影響していると解釈される。

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要約 目的:上強膜骨性分離腫1例の報告。症例:幼児期から右眼上耳側球結膜下にある腫瘤を主訴として受診した10歳男児。所見:腫瘤は弾力性に富み,表面が平滑な淡黄色であり,磁気共鳴画像検査(MRI)のT1強調画像で耳側眼球壁に高信号領域と,その後方に無信号領域があり,腫瘤の陰影は脂肪抑制像で抑制された。切除された腫瘤は,軟性腫瘤下に線維性被膜で包まれた硬性腫瘤からなり,軟性腫瘤は脂肪腫,硬性腫瘤は上強膜骨性分離腫と診断された。結論:本症例の術前診断にはMRIが有用であった。

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要約 目的:網膜下出血と出血性色素上皮剝離が合併した網膜色素線条症2例の報告。症例:1例は74歳男性で,飛蚊症を契機として網膜色素線条と,両眼の中心窩耳側に網膜下出血が発見された。経過観察中に左眼,その8か月後に右眼に出血性色素上皮剝離が生じた。治療により右眼は瘢痕治癒したが,左眼には硝子体出血が生じ,光覚弁になった。ほかの1例は62歳女性で,左眼視力低下を契機として両眼に網膜色素線条,左眼に新生血管黄斑症が発見された。その3か月後に右眼に出血性色素上皮剝離が生じたが,加療により瘢痕治癒した。左眼には経瞳孔温熱療法ののち出血性色素上皮剝離が発症した。血腫は吸収されたが,最終視力は0.04であった。結論:網膜色素線条には新生血管黄斑症が併発し,出血性色素上皮剝離または硝子体出血になることがある。

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要約 目的:前部虚血性視神経症が突発したBehçet病症例の報告。症例:53歳男性が7年前にBehçet病と診断され,アフタ性口内炎,結節性紅斑,外陰部潰瘍,副睾丸炎,両眼に虹彩毛様体炎があった。コルヒチンとプレドニゾロンを内服し,症状は軽快し,矯正視力は左右とも1.5であった。2か月前に肺炎と熱発を契機として掌蹠膿疱症が生じ,左眼矯正視力が0.01に低下した。所見と経過:左眼の視神経乳頭が発赤腫脹し,視野の狭窄があった。蛍光眼底造影で乳頭上方の低蛍光と脈絡膜充盈遅延があり,前部虚血性視神経症と診断した。副腎皮質ステロイドパルス療法ののち,アスピリンとシクロスポリンの内服を行った。発症から9か月後の現在,乳頭は蒼白化し,視力は0.3であり,下方の水平性視野欠損がある。結論:Behçet病で視力低下が突発した場合には,前部虚血性視神経症が原因である可能性がある。

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要約 目的:両眼の視力低下で発症した可逆性後部白質脳症症候群(reversible posterior leukoencephalopathy syndrome:以下,RPLS)の症例の報告。症例:39歳女性が子宮体癌に対し子宮摘出術を受けた。抗癌薬の投与から7時間後に頭痛,血圧上昇,意識障害,視力低下が生じた。矯正視力は左右眼とも30cm指数弁であり,両眼に中心暗点が検出された。磁気共鳴画像検査(以下,MRI)で両眼の後頭葉に高信号域があった。降圧療法とステロイドパルス療法を行い,その3日後に視力が1.5に改善し,中心暗点とMRIの異常所見は消失した。これらの所見からRPLSと診断した。結論:視力と視野障害の原因として,RPLSが関与することがある。

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要約 目的:糖尿病と緑内障の加療中に発見されたCushing症候群1例の報告。症例:45歳男性が5年前に糖尿病と診断され,加療中であった。網膜症の検査時に両眼に高眼圧,右眼に視神経乳頭の線状出血があった。さらに左副腎腫瘍が発見され,これによるCushing症候群であると診断された。結果:摘出された副腎腫瘍は副腎腺腫であった。摘出後に眼圧は下降して安定した。結論:糖尿病と緑内障が併発している状態の原因の1つとしてCushing症候群が関与していることがある。

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要約 目的:眼瞼型特発性眼窩炎症の臨床症状と治療効果の報告。対象と方法:過去4年間に診断した特発性眼窩炎症43例のうち眼瞼型18例を対象とし,臨床症状と治療効果を検討した。結果:男性12例,女性6例で,年齢は25~73歳,平均52歳であった。片側が17例,両側が1例であった。症状または徴候として,眼痛が67%,眼瞼腫脹が67%,視力低下が28%,眼球運動制限が39%,ぶどう膜炎が17%,眼内腫瘍に類似する所見が22%にあった。症状は高用量ステロイド投与で8例中4例(50%),低用量ステロイド投与で10例中6例(60%)が改善した。両群間に有意差はなかった(p=0.35)。結論:眼瞼型特発性眼窩炎症では,ぶどう膜炎または眼内腫瘍類似の症状が起こることがある。症状の改善率はステロイドの初期量に依存しない。

専門別研究会

地域予防眼科 平塚 義宗 , 村上 晶
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 日本臨床眼科学会の専門別研究会「地域予防眼科」は,1981年に第1回が開催され今回で25回目である。長年世話人を務められた小暮文雄先生(日本失明予防協会)が昨年3月逝去された。小暮先生は獨協医科大学教授退任後も,アジアの失明予防活動において多大な貢献をされた。この場をお借りして小暮先生の失明予防に対する御業績と御遺徳を偲び,心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 今回は演題1~5を金井淳先生(順天堂東京江東高齢者医療センター)が,6~9を赤松恒彦先生(赤松眼科)が座長を務めた。

連載 今月の話題

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 コンタクトレンズ使用者の高齢化に伴い,単に屈折異常の矯正だけではなく,老視の矯正も同時に行うことが求められている。従来の遠近両用コンタクトレンズは十分な満足度が得られないことや,処方の難しさなどの問題で,広く普及しているとはいいがたい状況であった。しかしながら,近年,遠近両用コンタクトレンズの種類も増え,処方しやすい環境が整いつつある。そこで遠近両用コンタクトレンズの種類と特徴を述べ,これらのコンタクトレンズを使用した老視矯正について概説する。

連載 日常みる角膜疾患40

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 症例

 患者:74歳,女性

 主訴:左眼眼痛,左眼視力低下

 現病歴:2004年11月に両眼の眼痛を主訴として近医を受診した。両眼角膜下方の辺縁部に角膜潰瘍が認められた。モーレン潰瘍を疑われ,ステロイド点眼薬と内服薬を処方され経過を観察していた。角膜潰瘍はいったん縮小したがその後,左眼角膜下方傍中心部に角膜潰瘍が再発した。潰瘍は次第に深くなり,菲薄化した角膜は2005年1月に虹彩の嵌頓を伴った角膜穿孔がみられた。同近医で嵌頓部を被覆する目的で,結膜全周切開後に角膜全周にわたる結膜被覆術を施行された後に当科を紹介され受診した。

 既往歴:高血圧,高脂血症

 家族歴:特記事項なし。

 経過:当科初診時の視力は右0.6(1.2),左眼前手動弁(矯正不能)であった。当科受診時前に施行された被覆結膜は剝離し,穿孔部は露出していた(図1a)。結膜充血がみられ,左眼角膜下方傍中心部には角膜穿孔部に虹彩の嵌頓が認められた。穿孔部周囲の角膜実質には浮腫がみられた。右眼下方角膜に菲薄化がみられたが,結膜充血はみられなかった。涙液分泌検査(シルマーⅠ法)では両眼とも5mm以下と涙液減少症がみられた。血液学的検査ではリウマチ因子の上昇がみられた。

 角膜移植術の目的で当科に入院となり,同年1月に左眼全層角膜移植術を施行した(図1b)。術後,涙液減少症改善目的で左眼涙点プラグ挿入術を施行した。術後経過は良好であり,2006年5月の最終受診時まで角膜潰瘍の再発は認められていない。

連載 眼形成手術手技17

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 前頭筋吊り上げ術は,吊り上げ材料で眉毛部の皮下組織と瞼板とを連結し,眉毛挙上で開瞼ができるようにする手術である。Bell現象が認められない場合でも,眼瞼下垂による視機能障害があり眉毛挙上ができれば適応である。当然,兎眼が生じないように低めに定量するべきである。

 眉毛上部と瞼縁の皮膚を切開し,眼輪筋の下にトンネルを作製して吊り上げ材料を留置する(図1)。

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要約 19歳女性に頭痛,嘔吐,吐気が突発し,血圧が250/168mmHgに上昇していることが発見された。その2週後に眼科に紹介された。矯正視力は右1.0,左0.05であり,両眼の眼底に網膜深層の白色斑が多発し,乳頭周囲と後極部に漿液性網膜剝離があった。蛍光眼底造影で造影早期から点状過蛍光が多発し,網膜下への色素漏出があり,高血圧性脈絡膜症と診断した。全身検査で血漿レニン活性とアルドステロンの上昇があり,線維筋性異形成による腎血管性高血圧症と診断された。発症から6週後に経皮経管的腎動脈形成術が行われ,血圧は無治療で130/80mmHgに改善した。血圧の改善とともに眼底所見は改善したが,経過中に軟性白斑と線状出血が生じた。加速型高血圧を背景にした脈絡膜循環障害が高血圧性脈絡膜症の原因であると推定された。

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要約 先天緑内障と人工的無水晶体がある35歳男性の右眼の眼圧が点眼でコントロールされていた。左眼は15年前に眼球癆になっている。右眼が2年前から水疱性角膜症になり,角膜全層移植を行った。術後眼圧が上昇し,視力低下と視野障害が生じたので,1か月後に非穿孔性線維柱帯切除術を行った。その16か月後の現在まで眼圧の経過は良好である。本症例が唯一眼,無水晶体眼,角膜移植直後であったことが,非穿孔性線維柱帯切除術を選択した理由である。この手術手技が角膜移植直後の無水晶体眼に奏効したことを示す1例である。

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要約 目的:放線菌による巨大涙小管結石の症例報告。症例と所見:71歳女性が2年前からの難治性結膜炎で受診した。左下眼瞼の内眼角付近に硬結があり,瞼結膜が充血し,涙小点に発赤があった。硬結部を圧迫すると下涙点から血性膿が流出した。細菌培養の結果は陰性であった。磁気共鳴画像検査(MRI)T2強調画像で,内部が低信号の輪状の病変があり,放線菌による涙小管結石が疑われた。菌塊が大きく硬いので,硬結部を経皮的に切開し,結石を摘出した。涙小管は拡張し,緑黄色の内容物で充満していた。病理検査で放線菌による涙小管結石と診断した。結論:放線菌による涙小管炎または結石は涙小管経由の圧出や涙小管そう爬で除去することが多いが,巨大結石では経皮的な摘出が必要である。

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要約 目的:高血圧と糖尿病が網膜神経線維層に及ぼす影響の報告。対象と方法:網膜神経線維層厚を380例380眼で検索した。内訳は,高血圧がない糖尿病114眼,高血圧がある糖尿病62眼,10年以上前からの高血圧と網膜血管硬化症がある69眼,正常135眼である。糖尿病群はいずれも網膜症を認めない。網膜神経線維層厚の計測には光干渉断層計(OCT2)を使い,計測部位は乳頭周囲,耳側,上側,下側,鼻側とした。測定値の評価には年齢を考慮した。結果:網膜神経線維層厚の平均値は,高血圧眼では正常眼と有意差がなく,糖尿病眼では高血圧の有無にかかわらず正常眼よりも有意に低値であった。重回帰分析で,網膜神経線維層厚は正常眼では加齢によりわずかに減少し,糖尿病眼では高血圧の有無にかかわらずやや強く減少した。結論:年齢と糖尿病は網膜神経線維層厚に影響を及ぼすが,高血圧は影響しにくい。

基本情報

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臨床眼科
60巻7号 (2006年7月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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