臨床皮膚科 50巻5号 (1996年4月)

特集 最近のトピックス1996 Clinical Dermatology 1996

1 最近話題の疾患

Toxic shock-like syndrome 五十嵐 英夫
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 わが国においてもA群レンサ球菌を起因菌とする発熱,血圧低下,ショック,壊死性筋膜炎・筋炎,多臓器不全などの臨床症状を呈し,その経過の進行が速く,激烈な疾病である劇症型A群レンサ球菌感染症が散見されるようになった.1992年7月から1995年2月まで,私どもの研究所に92症例から分離されたA群レンサ球菌の精検依頼があった.この92症例の疫学調査を実施した.その結果,年齢では31〜70歳までの患者は68.5%,0〜30歳までの患者は22.2%であった.性別では男性:63名,女性:29名で,男女比は2:1であった。死亡についてみると,男性:21名,女性:15名の計36名で,その死亡率は39.1%であった.分離株のT抗原型別と発熱性毒素型別を行った.その結果,T1型とT3型A群レンサ球菌が全体の約60%を占めており,T3型A群レンサ球菌は発熱性毒素A産生であった.現在でも本症の発症機序は不明である.

皮膚非定型抗酸菌症 伊藤 薫
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 皮膚非定型抗酸菌感染症は,近年多くの報告があり,現在では最も多い皮膚抗酸菌症になりつつある.最近その中でMycobacterium aviumによる皮膚感染症の報告が散見されるようになってきた.本菌は従来,皮膚病変を生ずることは稀といわれていたが,本邦では小児例が増加してきており,また欧米ではAIDSに伴う感染症として重要になりつつある.皮膚病変としては丘疹,結節,膿瘍,潰瘍などを形成する.治療としてはいまだ定まった方法がないのが現状である.従来診断に苦慮していた非定型抗酸菌症に対して,最近DNAを用いた診断法が行われるようになってきた.その中でマイクロプレート・ハイブリダイゼーション法とPCR法を用いた菌種の同定法が特に皮膚感染症においては有用である.

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 近年日本国内における寄生虫皮膚疾患,特に線状爬行疹は,顎口虫によるものの他に,新たに旋尾線虫幼虫によるものが多く報告されるようになってきた.一方,近年の海外渡航の増加から海外で寄生虫疾患に感染する例も多くなってきた.そこで最近経験した旋尾線虫幼虫による線状爬行疹例と,海外で感染したと思われる顎口虫症例について報告し,両者の鑑別点にも触れた.

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 アスピリン不耐症は,アスピリンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の摂取により,蕁麻疹,血管浮腫,喘息などを生じ,時にはアナフィラキシーショック類似の症状を呈する注意を要する疾患である.症状はI型アレルギーによく似ているが,NSAIDsの持つシクロオキシゲナーゼ阻害作用がその発症に関係していると推測されており,非アレルギー性の疾患と考えられている.また,食物に含まれるサリチル酸化合物や色素であるタートラジン,防腐剤である安息香酸ナトリウムやパラベンなどによっても症状が誘発されることがあり,発症のメカニズムには不明な点が多い.我々はNSAIDsの経口摂取により喘息を生じた1例と喘息と蕁麻疹を生じた1例を経験した.2症例とも誘発の前後で血中プロスタグランディン,ロイコトリエン,ヒスタミンを測定したが,特別な変化はみられなかった.この2症例に文献的考察を加え,アスピリン不耐症の発症機序について考察を加える.

IgA水疱性皮膚症 橋本 隆
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 最近,IgA抗体を示す自己免疫性水疱性皮膚疾患について研究が進みその抗原物質も明らかとなってきた.線状IgA水疱性皮膚症血清は未知の97kD蛋白ないしVII型コラーゲンと反応する.多くの瘢痕性類天疱瘡血清中に180kD類天疱瘡抗原と反応するIgG, IgAが見いだされ,眼粘膜瘢痕性類天疱瘡血清中には未知の45kD蛋白と反応するIgA抗体が存在する.私どもはIgA抗表皮細胞間抗体を有する症例にintercellular IgA vesiculopustular dermatosis(IAVPD)という名称を提唱した.IAVPDにはIEN型とSPD型の2種の亜型が存在する.これ以外にもIgGとIgAの両方の抗基底膜部抗体を有する線状IgA/IgG水疱性皮膚症,また,IgGとIgAの表皮細胞間抗体を同時に有する症例も報告されているが,これらの疾患の独立性は確立されていない.今後,自己抗原の生化学的解析がIgA水疱性皮膚症の分類・診断に大きな進歩をもたらすことが期待される.

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 膠原病における間質性肺炎は,原疾患の活動に一致して出現することが多いが,肺病変のみが先行することもある.膠原病を基礎疾患として出現する間質性肺炎を膠原病肺とよぶが,組織像では特発性間質性肺炎と区別できない.膠原病における間質性肺炎の合併はその予後を左右し,適切な治療が求められる.

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 皮膚疾患を伴う眼科疾患のうち,視機能の点で重要な疾患や頻度が高い疾患について,疾患の特徴,最近の診断,治療,皮膚疾患との関連などについて述べた.視力低下や失明にいたる眼疾患として,角膜ヘルペスやBehçet病をとりあげた。角膜ヘルペスでは,樹枝状角膜炎や,円板状角膜炎などの種々の病型を呈する.角膜ヘルペスの治療にアシクロビルが用いられるようになり角膜穿孔や失明の頻度は激減した.最近,アトピー性皮膚炎は,眼科領域においても診断,治療の重要性が注目されている.眼合併症として角結膜炎,円錐角膜,白内障,網膜剥離といった眼瞼,結膜,角膜,水晶体,網膜など眼球の各部に多彩な症状をきたす.この原因としては,眼球への外力の影響が問題となっている.眼合併症の予防のために眼周囲の皮疹の積極的な治療に加え,眼をたたいたり,強く押すことの危険性についての啓蒙も重要である.

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 慢性皮膚疾患を治すためには,医療側の診療努力だけでは十分な効果は期待できない.社会,職場,学校,家庭を含めた十分な連携と患者自身の自主的な闘病努力が続けられなければ,水をざるで掬うがごときものである.そのためには社会医学的手法を駆使して診療の場より外に撃って出た指導・管理活動が必要である.前橋市において十数年来,市内中学校全体を対象とした皮膚科学校健診を行っているが,市内中学生のうちの皮膚疾患罹患者に卒業までの3年間徹底した管理指導を行うとともに,生徒全体,教師,家庭,さらに学校保健委員会の場を通し皮膚に対する啓蒙活動を行うことにより,十分な効果をあげ得た.特にアトピー性皮膚炎について重点的に指導・管理を行い顕著な効果をあげた.

2 皮膚疾患の病態

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 癌の転移現象は原発巣から癌細胞が離脱することから始まり,周辺組織を通って,血管やリンパ管に侵入し,循環に乗り遠くの臓器で転移巣を形成する非常に複雑なステップより成り立っている.それぞれのステップでカドヘリンファミリーやインテグリンファミリー,イムノグロブリンファミリー,セレクチンファミリー,CD44ファミリーなど様々な接着分子が関与している.また,癌遺伝子や癌抑制遺伝子がこれらの接着分子を介して転移機構を制御している可能性も示唆されている.

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 レチノイドのレセプターとしては,all-trans retinoic acidをリガンドとするretinoic acid receptor(RAR)と9-cis retinoic acidをリガンドとするretinoid-X receptor(RXR)が存在する.レチノイン酸レセプターの認識配列としては,5'-GGTCA-3'の塩基配列が5ヌクレオチドをはさんで2回繰り返す配列が典型的とされており(RARE),この配列には,RARとRXRがヘテロな二量体を形成して結合する.皮膚においては,RARα,RARγとRXRαが主に発現しているが,我々は,このように皮膚に存在するレチノイドのレセプターの働きをin vivoの状況で確かめる目的で,正常のRARの機能を妨害する働きを持つdominant negativeなRARの変異体を皮膚に発現したトランスジェニック・マウスを作成した.そのようなマウスの皮膚では,角層のmulti-lamellar structureが形成されないことがわかった.

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 細胞膜は,いくつかの蛋白からなる膜骨格によって細胞内側から裏打ちされている.この膜骨格の構造と機能についてはこれまで主にヒト赤血球で解析されてきたが,ケラチノサイトにおいても数種類のヒト赤血球膜骨格に類似した蛋白の存在が免疫化学的に確認されている.その主要な裏打ち蛋白のスペクトリン様蛋白に着眼し,培養ヒトケラチノサイト内にelectroporation法(電気穿孔法)を用いて抗ヒト赤血球スペクトリン抗体を導入すると細胞内で免疫複合体が形成され,Ca2+で誘導されるアクチン線維の細胞質から膜方向への移動が阻害された.このことからスペクトリン様蛋白がケラチノサイトのアクチン線維の細胞内分布を規定する重要な役割を果たしていることが示唆された.この結果を中心にケラチノサイトの膜骨格の構造と機能について解説した.

エピモルフィン 坪井 良治
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 エピモルフィン(epimorphin)は胎児マウスの毛包形成や肺の管腔形成を誘導する物質として1992年Hiraiらにより報告された.エピモルフィンは間葉系と上皮系の細胞が三次元で接触した時に間葉系細胞に発現するが,組織学的には皮膚の基底膜部に局在する.現在までのところ遺伝子組み換え型のエピモルフィンフラグメントの投与により新生毛包が形成されたという報告はないが,培養プレートをエピモルフィンでコーティングすると,上皮系や間葉系の細胞の接着が促進することが報告されている.多機能因子として今後の解析が期待される.

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 急性創傷の治癒は止血後,炎症期,肉芽形成期,組織改築期を経て表皮化へと進行するが,この一連の生体反応にはtransforming growth factor-β,basic fibroblast growth factor, tumor necrosis factor α,platelet-derived growth fac-torなどの増殖因子が関与する.増殖因子は細胞の産生するサイトカインとして包括されるが,近年の細胞生物学,分子生物学の発展とともにその作用の多様性が明らかにされてきた.これらの増殖因子はその強力な作用のため,産生された局所でオートクリンないしはパラクリン機序を介して自己ないし隣接する細胞に作用すると考えられる.ある増殖因子が作用した細胞では,他の増殖至因子やサイトカインの産生が誘導され,複雑なサイトカインネットワークが形成される.正常の創傷治癒機転では,このサイトカインネットワークの総計バランスが巧妙に制御されて表皮化を完了する.

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 脂肪酸結合蛋白質(fatty acid-biding pro-tein,以下FABP)はサイトゾルに存在し,脂肪酸の細胞内転送や代謝に関わる蛋白質として注目され,各臓器には独自のFABPが存在することが明らかにされていた.近年筆者らは,ラット正常皮膚から皮膚型FABP(cutaneous FABP,以下C-FABP)の単離およびそのcDNAのクローニングに成功した.C-FABPの皮膚における局在を免疫組織化学的に検討したところ,C-FABPは有棘層上層から顆粒層,および脂腺に特異的に発現していた.更に乾癬や有棘細胞癌においては,正常表皮に比較して広い範囲で強く発現していることもわかった.表皮と脂腺は脂質代謝が活発に行われている部位であることから,C-FABPはこれらの部位で他のFABPと同様に,脂肪酸の転送や代謝に機能していると考えられる.C-FABPの詳しい機能的解析は今後の課題であるが,表皮の脂質代謝の解明に新たなアプローチが可能になったと思われる.

3 新しい検査法と診断法

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 抗好中球抗体(antineutrophil cytoplasmic autoantibody, ANCA)は蛍光抗体間接法の蛍光パターンにより,c-ANCA(centralized cytoplas-mic pattern)とp-ANCA(perinuclear pattern)に分類される.c-ANCAはproteinase 3を標的とし,Wegener肉芽腫症に特異性が高い.P-ANCAのうちmyeloperoxidase(MPO)を標的としたものは特発性半月体形成性腎炎や顕微鏡的多発性動脈周囲炎などの小血管における壊死性血管炎で検出される.MPO-ANCA陽性の血管炎は腎臓を高率に侵すとともに,肺胞内出血をきたしやすい.筆者らによる全身性強皮症患者におけるMPO-ANCAの検討を報告するとともに,ANCAを中心に壊死性血管炎を再検討した報告や血管炎におけるANCAの関与についての最近の知見を紹介した.

爪郭顕微鏡検査の実際 大塚 勤
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 爪郭毛細血管検査について,自験例の結果をまとめ他の報告と比較検討した.方法としては,定量的測定と多変量解析を用いた.全身性強皮症では毛細血管係蹄の拡大と係蹄間隔の延長が観察された.この所見は皮膚筋炎にも観察されたが,全身性エリテマトーデスには観察されなかった.強皮症の毛細血管像は87%が異常であり,強皮症patternと判定された.Raynaud症候群(以下RS)では,primary RS 54%,secondary RS 83%が強皮症patternであった.未分化結合組織病においても強皮症patternが80%に認められた.また,肺血管抵抗と有意な相関を示した.乾癬患者においては短くコイル状の毛細血管像が見られ,皮疹の面積率,爪郭部の乾癬皮疹,爪の点状陥凹,爪剥離と相関していた.糖尿病においては爪郭毛細血管に異常を認めたが,他の糖尿病性血管病変と相関を認めなかった.これらの結果は,爪郭毛細血管顕微鏡検査が,特に結合組織疾患の診断,病状把握に有用であることを示している.

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 コラーゲンは細胞外に分泌された後,線維を形成するが,そのままではその線維は機械的支持というその基本的な機能も発揮し得ない.架橋結合形成という翻訳後修飾の最終段階を経て初めて本来の機能を発揮できるようになる.コラーゲンの機能は機械的なものだけではない.細胞接着,細胞の分化と増殖,そして組織と形態形成に深く関わっていることが明らかになりつつある.したがって架橋結合形成はこのような生物学的機能にも影響を持つと考えられる1).したがって,当然皮膚の病態と深く関わっている.現在約10種類の架橋の構造が明らかになっているが,そのうち特に皮膚に特有とされているヒスチジノヒドロキシリジノノルロイシン(HHL)は,今後,皮膚疾患との関わりが明らかになるにつれて重要なマーカーになると予想される.ここではHHLも含めて架橋結合の解析方法と,現在までの知見を総括する.

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 遺伝性ムコ多糖異常症はリソソーム由来の10の酵素低下症,臨床的には6亜型が知られている.特異な顔つき,ごつい体つき,多毛,軟骨内骨化障害,関節の運動制限,肝脾腫,心障害,角膜混濁,精神運動発達遅滞などを有し,ムコ多糖尿を伴うことを特徴とする.現在ムコ多糖症IIIA, CおよびD(サンフィリポA, C, D症候群)以外の亜型の遺伝子変異は解明されている.本稿では筆者らがpriorityを取りえたムコ多糖症II, IV A, VII型の遺伝子変異の解析について主に概説し,その他I,III, IV B, VI型についても簡単に触れた.

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 成長期の毛髪は伸びる際に血流中に存在する薬物をその濃度に比例して取り込み,それを保持しながら約1cm/月の速さで伸びていく.よって毛髪は1cm/月の“テープスピード”で服薬歴を記録し続けてくれる“テープレコーダー”として利用できる.薬物によっては毛髪1本,多くても数本を毛根側から1cmずつに細断し,その中の薬物濃度を測定して,毛髪成長方向の薬物濃度分布として表すと,ほぼ1月単位の投与量の歴史を過去数カ月に亘って知ることができる.ただし,毛髪の成長速度は個人間で,また,個人内でも毛髪1本毎に異なっており,さらに成長期・休止期といった毛髪サイクルもあり,毛髪の中に何らかのタイムマーカーが必要である.キノロン系抗菌薬は常用量を1日服薬しただけで常法のHPLC法により毛髪1本の,2mmの細断片から検出できることが判明した.これをマーカーとして利用すると,毛髪分析の定量性が飛躍的に向上した.

4 治療のポイント

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 類天疱瘡に対するミノサイクリン療法は,1)効果発現期間が数日ないし2週間程度と短期間であること,2)ステロイド内服療法に比し副作用が少ないこと,3)軽症および中等症のみならず,重症例でも有効であること,4)ステロイド内服療法と併用が可能であること,5)ステロイド内服の減量に際しても有効であることなどより,ステロイド内服療法と並び類天疱瘡治療の中心的治療法となろう.

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 全身性エリテマトーデス(SLE)の予後因子と治療方針について概説した.内臓病変では腎不全,CNSループスおよび心肺病変,皮膚病変では皮内結節,血管炎型の皮疹,紫斑を伴う蝶形紅斑およびatrophie blancheなどの血管障害性皮膚病変,検査所見では血小板減少,さらに自己抗体では抗2本鎖DNA抗体と抗リン脂質抗体が予後に関わる要因として注意が必要である.また主な臨床症状について,治療方針を解説した.

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 Squaric acid dibutylester(SADBE)を用いた局所免疫療法を行い,4年以上加療している円型脱毛症患者35例について,その治療経過をまとめた.発症年齢は6ヵ月から46歳,観察期間は4年から18年.治療開始時の病型は多発性通常型13例,ophiasis型3例,全頭型10例,汎発型9例だった.髪の占める面積を指標とした治療効果のパターンから3群に分類した.Group I(効果良好群):広範な脱毛例だが治療に十分な効果を示し,再発しても治療の再開により速やかに回復した.思春期以降発症の女性例が多かった.Group II(効果不良群):広範な脱毛例で,治療に当初から効果のない例と効果が徐々に減弱する例がみられた.発症が低年齢の例が多かった.Group III(効果不十分群):中等度脱毛例で,ある程度の効果はあるが十分とは言えなかった.低年齢発症で広範な例ほどSADBE療法が効きにくい傾向があった.真に有効であるかどうかの判断は,数年以上の治療経過が必要と考えられる.効果不良ないし不十分な例ではSADBE療法のみでは限界があり,新たな治療法の工夫,開発が必要である.

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 乾癬に対する活性型ビタミンD3(タカルシトール軟膏)外用・PUVA併用療法(以下PUVAD3療法と略す)の治療効果・安全性を検討するため,18名の尋常性乾癬患者に対し,PUVAD3療法を施行した.7名ではPUVAD3,療法とPUVA単独療法の左右比較検討も行った.その結果,18名全例において寛解が得られ,PUVA治療回数平均14.6回,UVA照射量平均4.17J/cm2,寛解まで平均38.2日であった.左右比較では7名全例において,PUVAD3療法のほうが優れていた.皮膚局所所見,臨床検査所見共に大きな副作用は見られなかったが,改善した皮膚局所に色素沈着が残る傾向が認められた.

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 アトピー性皮膚炎(ADと略す)の抗菌薬療法の適応は,皮表の黄色ブドウ球菌(黄ブ菌と略す)の菌量がスクラブ法で106cfu/cm2<またはスタンプ法で1000cfu/10cm2<の場合であり,細菌培養で単に黄ブ菌を検出したのみでは抗菌薬は投与しない.個々の症例では,臨床症状の程度のみで菌量の推定は困難であるため,抗菌薬療法を行う場合にはスタンプ法で皮表の黄ブ菌の菌量を確認する必要がある.ADの治療としてcefdinir(CFDN)内服と1%chlorhexidine gluconate(CG)クリーム外用について,治療前後にスタンプ法で比較した.CFDN内服が1%CGクリーム外用より菌量減少効果がはるかに優れており,副作用出現頻度も少ない.CFDN内服後MRSAへの菌交代率は20/96(20.8%)であった.抗菌薬療法後に菌交代したMRSAの菌数が増加する場合,黄ブ菌の存在以外にADの皮疹を増悪させる他の要因が存在している可能性が考えられる.不適切な外用・接触皮膚炎の除去などを抗菌薬投与と同時に行うことが重要である.

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 皮膚潰瘍や褥瘡治療において,創面の感染制御はもっとも重要なアプローチの一つであるが,非選択的毒性を有する消毒薬の使用には異論も多い.これはポビドンヨードなどの消毒薬にみられる組織傷害性が創傷治癒を遷延させるという理由によるものである.一方,MRSA感染創に最も有力なポビドンヨードは捨てがたいとの意見もある.大切なことは,創面の清浄化が求められる時期では正しく用い,滲出液が減少し肉芽形成期に入った場合には創周囲にとどめることであろう.正しい使い方とは,目的に合った濃度を用い,創内に残留させないこと,洗浄剤を含む製剤を用いないことである.入院中で,生理食塩水による洗浄が清潔に施行できる理想的な状況と,在宅ケアでの困難な状況との間には大きなギャップも存在するので,消毒薬の使用には合理的かつ柔軟な対応が求められよう.

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 掌蹠膿疱症は,手掌,足蹠という極めて特徴ある部位に好発する慢性再発性の皮膚疾患である.大多数の症例は扁桃の病巣感染が原因と考えられ,扁桃摘出により著効が得られる.少数例では歯牙・歯肉の感染病巣,金属アレルギー等の関与も考えられる.保存療法としてステロイドホルモン剤外用,PUVA療法,抗アレルギー剤,レチノイド,シクロスポリン内服等の治療が行われているが,対症療法の域を出ず,効果が不十分であったり,副作用のため使用が制限されるのが現状である.発症機序に関しては,患者血清中に扁桃上皮および掌蹠皮膚ケラチンと反応する抗ケラチン抗体が存在し,患者扁桃リンパ球は抗ケラチン抗体を産生するとともに皮膚に対し障害的に働くことが示された.また膿疱部皮膚浸潤リンパ球では特定のTCR-Vβ遺伝子が検出された.今後,本疾患は扁桃を病巣とした自己免疫疾患としてとらえられるものと考えられる.

爪白癬の治療 原田 敬之
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 爪白癬は日常診療においてしばしば遭遇する疾患にもかかわらず,確実かつ安全な治療法がないのが現状である.従来から試みられてきたグリセオフルビン内服療法と外用療法について触れた.最近トリアゾール系の抗真菌内服剤が使用できるようになり,爪白癬の治療にも選択肢が増した.これらの薬剤の薬理動態からその投与法として間歇投与ないしパルス療法が試みられており,今後試みられて良い治療法と考えた.しかし,わが国においては未だ十分な症例数が検討されておらず,詳細な有効性,投与方法や投与量などの問題点が残されているが,その利点と欠点などについて考察した.最後に近い将来わが国でも使用できるようになると思われる新しい抗真菌内服剤であるテルビナフィンについても若干触れた.

水痘を治療すべきか 浅野 喜造
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 Varicella-zoster virus(VZV)は感受性者に侵入,2週後に水痘を生じる.潜伏期に2相性のウイルス血症,発病前後には皮膚だけでなく内臓諸臓器の病変が想定される.現在,水痘に対してワクチン,アシクロビルという有力な武器が存在し,その優れた効果は良く知られている.水痘を予防,治療すべきか否かの判断は本来疾患の重症度,合併症の種類,頻度によるが古典的重症感染症の減少など社会環境の変化とともに臨床家,保護者のいずれにも疾患回避の方向がみられる.日常診療の中では有効,安全な方法があれば是非わが子には使ってほしいという保護者の強いニーズが感じられるが,実際の使用にあたっては医師と保護者の間にインフォームド・コンセントを要し,その判断のためには臨床的効果と経済的利点とともに患児の苦痛の軽減,QOL向上の観点での考慮が必要とされよう.

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 帯状疱疹の疼痛および帯状疱疹後神経痛(PHN)に対するmexiletine経口治療の有用性について検討を加えたので報告する.帯状疱疹患者158名とPHN患者8名を次の4群に分けた.第1群:(A)+mexiletine(150mg/日),第2群:(A)+vidarabine(300mg/日)+alprostadil(60μg/日),第3群:(A)のみ,第4群:mexiletine(300mg/日)のみ〔基本処方(A):naproxen(300mg/日)+mecobalamin(1500μg/日)〕.第1群が最も除痛効果がすぐれており,予後も良好であった.Mexiletine(経口)は帯状疱疹の疼痛およびPHNの治療に有用であると考えた.

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 最近の伝染性軟属腫(MCと略す)は個疹の小さいもの(1〜2mm大)が無数に,しかも広範囲に散在していることが多い.特に紅色調の強い個疹の多発は痒みを伴い掻破で自家接種し,他人への伝染力も著しい.したがって私は,このような症例では速やかに治療することが望ましいと考え,積極的に加療するよう啓蒙している.治療にやぶさかなのは未だ確たる治療法に乏しいためではなかろうか.ましてや最近のMCは小さくかつ無数に散在している症例が多いので,従来からの根治的圧出除去法では患児はもとより,施術者にとっても耐え難い労作である.私は既報の40%硝酸銀療法の難点を改善し,40%硝酸銀ペースト法(40%硝酸銀液に小麦粉を25%の割合に加え撹拌しペースト状とする)を考案し,MC丘疹にのみ微量に塗布し良結果を得たので当該法の実際について概説する.

薬物相互作用 中野 重行 , 松木 俊二
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 薬物治療では薬物が併用されることが多く,薬物相互作用を生じて,薬理作用が増強したり,減弱することがある.薬理作用の強さは,作用部位の薬物濃度と生体の薬物に対する感受性により規定される.作用部位の薬物濃度は,血中薬物濃度に依存し,薬物の吸収,分布,代謝,排泄により規定される.そこで薬物が,他の併用薬物の吸収,分布,代謝,排泄に影響を与えるならば,その薬物の作用部位における薬物濃度に変化が生じ,薬理作用を増強したり減弱することがある(薬物動態学相で生ずる薬物相互作用).また,生体の薬物感受性の変化や,同じ薬理作用を生ずる系での作用の増強または減弱を生ずることもある(薬力学相で生ずる薬物相互作用).薬物相互作用の発現には,病態像(肝障害や腎障害など),血漿蛋白量,年齢的要因なども関与する.薬物相互作用の発現メカニズムと可能性ある組み合わせを知っておくと,薬効を高め,薬物有害反応を防ぐのに役立つ.

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 近年,ヒト表皮細胞の培養技術の進歩に伴い,培養表皮の作製が可能になり,皮膚欠損部の治療法として,皮膚科・形成外科領域で臨床応用されつつある.我々は,表皮細胞単独での無血清下増殖培養法を確立し,さらに,分化培養条件下で5〜7層に重層化して作製した培養表皮シートを多くの疾患に適応し,良好な治療成績を上げている.培養表皮の利点は,表面積比較で数千倍にまで拡大培養できる点や細胞の保存が数年にわたって可能である点等が挙げられる.当科では,培養表皮のシート状での凍結保存を可能としたのに伴い,この培養表皮をオートグラフト,アログラフトを必要とする多くの皮膚疾患で利用すべく,スキンバンク(細胞バンク)の設立を目指したシステム化に取り組んでいる.すでに,安全性のチェックや培養法のルーチン化,関係書類の整備等の一連のシステム化をほぼ確立しており,現在,このシステムにのっとり臨床適用を進めている.現在までの適応症例は150例以上に上り,一部の疾患では非常に有効な治療方法となっている.本稿では,我々の培養表皮作製方法と本スキンバンク(細胞バンク)のシステムについて紹介したい.

皮膚科と医療訴訟 西蔭 雄二
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 医事紛争と医療過誤の発生過程とその責任について具体的に述べた.診療契約上,医師としての治療上の責務は注意義務が重要な要素であり,後者を果たすには一定の医療水準に達しているか否かが問題点となる.手術を含め身体的侵襲の高いものについては説明を十分に行い,納得の上で治療をすることは言うまでもない.説明義務と告知義務そして問診義務などはその責務について常に問われる事柄であり,いささかの説明を行った.そして皮膚科の紛争と過誤事例を挙げて,項目別にその解説をした.

基本情報

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臨床皮膚科
50巻5号 (1996年4月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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