臨床雑誌整形外科 69巻12号 (2018年11月)

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は じ め に

 術中の経頭蓋電気刺激筋誘発電位(TES-MEP)は脊椎脊髄手術において術中の脊髄損傷を防止し,安全に手術を遂行する方法として普及してきている.しかしながら,得られるモニタリング筋からの複合筋活動電位(CMAP)は麻酔薬・筋弛緩薬の影響や,患者の基礎疾患により容易に抑制される1~8).実際にモニタリング可能な波形振幅が得られないと,信頼できるTCE-MEPが施行できない.われわれは,波形振幅を増幅させる手法として末梢神経をテタヌス刺激後に筋誘発電位をとる脊髄モニタリング手法(post tetanic Br-MsEP:p-MEP)を行っており,これにより簡便にCMAPを増幅させ,従来のMEP法(conventional Br-MsEP:c-MEP)に比べ,波形検出率ならびにモニタリングのreliabilityが上昇することを過去に報告した9,10).しかしながら,実臨床においてp-MEPを必要とするような術前背景因子は明らかではない.

 本研究の目的は,どのような術前背景因子を含む症例にp-MEPが必要なのかを明らかにすることである.

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は じ め に

 腰椎疾患に対する仙骨硬膜外ブロック(caudal block:CB)は有効な治療法と考えられる1,2).しかしその効果判定は,患者の主観的評価に頼っている.

 CB施行後に腰部・殿部・下肢の温感を訴える患者は存在する.この温感がサーモグラフィで評価可能か,さらに施行されたCBの効果がサーモグラフィで客観的に評価可能かを検討したので報告する.

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は じ め に

 本邦において人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:THA)後に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とアセトアミノフェンを併用して内服した鎮痛方法の有用性を報告したものはない.THAの術後疼痛管理は,低侵襲手術や早期リハビリテーションの利点を最大限に活かすために重要な課題の一つである.

 近年,術後疼痛管理の方法としては多様式鎮痛(multimodal analgesia)の概念が普及している1).多様式鎮痛は異なる作用機序の鎮痛方法,鎮痛薬などを組み合わせることにより,多角的に鎮痛を行い,さらにそれぞれの鎮痛方法や薬剤の副作用を低減する方法である.

 多様式鎮痛で使われる薬剤のなかで,NSAIDsは消炎鎮痛効果があるため,術後鎮痛の基本的薬剤となっているが,消化性潰瘍のリスクがあるため最近ではCyclooxygenase-2(COX-2)選択的阻害薬のセレコキシブが多く用いられるようになっている.アセトアミノフェンはその作用機序は明確に解明されてはいないが,NSAIDsとは作用機序が異なりCOX阻害作用がないため,NSAIDsで懸念される消化性潰瘍や腎障害,抗血小板作用など副作用が少ないとされる2).このため多様式鎮痛では,ほかの薬剤と併用しやすい薬剤とされており,欧米での術後疼痛管理におけるガイドラインでは,禁忌でない限り,NSAIDsとアセトアミノフェンを併用することが推奨されている3,4)

 以前にわれわれは,THAの術後鎮痛におけるアセトアミノフェン点滴製剤の有用性を報告した.しかし,現状,本邦ではアセトアミノフェン点滴製剤の保険適用は経口摂取困難な術後となっているため,経口摂取が可能になった後には内服に切り替える必要がある.これまで,THAの術後疼痛管理においてNSAIDsとアセトアミノフェンの内服を併用した報告はない.本研究の目的は,THAの術後鎮痛におけるCOX-2阻害薬(セレコキシブ)とアセトアミノフェンの内服を併用した鎮痛方法の有用性を明らかにすることである.

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は じ め に

 非定型大腿骨骨折(atypical femoral fracture:AFF)は大腿骨転子下から顆上部において軽微な外力で生じるstress fractureと定義され1),2010年の米国骨代謝学会(American Society for Bone and Mineral Research:ASBMR)のタスクフォースレポート以来,その報告が増加傾向にある.AFFは骨癒合が得られにくく,治療に難渋する場合がある.本稿ではAFF(完全骨折)5例6肢を経験し,発症要因と治療法について考察したので報告する.

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は じ め に

 有痛性分裂膝蓋骨の治療は保存的治療が原則とされ,疼痛が強くスポーツ活動が長期間される症例には手術的治療が行われる1~4).われわれは,当院で膝関節痛を訴えて分裂膝蓋骨を認めた患者にギプス固定を施行し全例に骨癒合を認めたので報告する.

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は じ め に

 日本人の平均寿命は男性が80.98歳,女性が87.14歳1)と世界でトップクラスの長寿国であるが,一方健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間,すなわち健康寿命は男性が71.19歳,女性が74.21歳2)であり,今後は健康寿命の延伸が課題となる.加齢により日常生活を制限する要因として運動器疾患,特に変形性関節症があげられるが,なかでも変形性膝関節症(OA)は日本全体で2,530万人が罹患していると推計され3),その治療は非常に重要である.

 進行したOAに対して,人工膝関節全置換術(TKA)は有効かつ費用対効果の高い手術であると日本整形外科学会によるガイドラインにて推奨されており4),2015年には8万件以上の手術が行われ,さらに年々増加傾向である5).両側の膝関節の変形が進行している場合,両側を一度に行うか,あるいは片側ずつ行うか,選択に迫られる.これまでにもTKAの両側手術と片側手術を比較した報告はあるが,医療経済的側面も含めた研究は少ない.本研究の目的は,TKAの両側手術と片側手術について,安全性と経済性を比較することである.

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は じ め に

 整形外科分野において,下肢手術,骨折や人工関節全置換手術には深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)が発生しやすく,DVT,肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)を合わせた静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)として病態解明や予防に注目が集まっている.

 人工関節全置換術後に適切な予防を施行しないと,40~60%の患者にDVTを生じるといわれ1),PE患者の12%,DVT患者の6%は発症から30日以内に死亡するとの報告もある2).したがって,VTEに対しては適切な予防と治療が必須である.

 VTEに対しては,従来より未分画ヘパリン,ビタミンK拮抗薬(ワルファリン),低分子ヘパリン,フォンダパリヌクスが使用されてきたが,これらには非経口投与であることに加え,特にビタミンK拮抗薬では至適治療域が狭く,定期的なモニタリングが必要であること,ほかの薬剤や食物との相互作用が大きいことなどの欠点があった.近年,直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulants:DOAC)と呼ばれる薬剤が開発され,広く使用されるようになってきた.国内外の第3相臨床試験で,DOACは従来治療と比較して同等以上の効果と安全性が示されている3)が,人工関節全置換術後に発生したDVTに対するDOACの治療効果に関する報告は少ない.本研究の目的は,人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)術後に発生したDVTに対してアピキサバンの信頼性,術後短期成績を評価することである.

誌説

広範切除の作法 森井 健司
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 整形外科領域の手術の多くは,解剖学的に危険な部位になるべく近づかない標準的な手順が決められています.外傷を例にとると,橈骨遠位端骨折,大腿骨頚部骨折など,力学的に破綻しやすい部位や受傷時の肢位に特徴があるため,例外はあるものの好発部位が明確であり,危険な神経や血管を露出することなく手術が完遂できる手順を定めることが可能です.

私論

保存的治療へのこだわり 星野 裕信
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 「できれば手術はしたくない」.どの患者もそう思うだろう.われわれ整形外科医は手術が好きで整形外科医になったのであり,筋骨格系に特化した整形内科医をめざしているわけではない.私も股関節外科医であるため,人工股関節全置換術,各種骨切り術,股関節鏡視下手術といった股関節外科医として身につけておきたい手技を,当時の高名なスペシャリストのところにお願いをして見学しにいき,手術手技のセミナーやカダバートレーニングに参加して技術を高めてきた.しかしこれらの手術手技は,保存的治療でよくならないものに対して行われるべきである.

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 腰椎椎体間固定術は神経の全周性の除圧と椎体間固定を行える優れた術式であり,現在広く行われている.固定術後に椎間ケージが後方移動する症例を,われわれはまれに経験する.ケージの後方脱転はさらにまれな合併症であるが再手術が必要となりうる重大な合併症である.今回,われわれは後方経路腰椎椎体間固定術(posterior lumbar interbody fusion:PLIF)後にケージが後方脱転し,再手術にてケージの入れ替えを行ったにもかかわらず再度脱転をきたした症例を経験したので報告する.

 なお,本稿では椎体ケージの2mm以上の後方移動を「転位」,椎間ケージ後縁が椎体後縁よりも後方へ移動したものを「脱転」と定義した.

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 Acromioclavicular joint cystは変形性肩鎖関節症や変形性肩関節症,腱板断裂などに伴って発生するまれな疾患である.今回,われわれはacromioclavicular joint cystに対し鏡視下手術を施行した1例を経験したので報告する.

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 単発性骨嚢腫(solitary bone cyst:SBC)による病的骨折では,骨折後にSBCが治癒することがあり,また,骨皮質の菲薄化のため強固な固定が困難な場合もあり,保存的に経過をみることもある1).しかし,骨折治癒後に残存したSBCの再拡大や再骨折が生じることも多い.大腿骨に生じた場合は,活動制限が大きいため,重篤な機能障害が生じる可能性があり,積極的に手術を行うべきであるといわれている2).また,手術時に大きな内固定材を使用すると,抜釘後に再骨折を生じる可能性があることを危惧する意見もある3)

 今回われわれは,小児大腿骨近位部SBCに生じた病的骨折術後の抜釘時に人工骨移植を追加した1例を経験したので報告する.

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 脛骨遠位端triplane骨折は,矢状面,前額面,水平面の3平面の骨折を有する特殊なものであり,脛骨遠位骨端線閉鎖前の限られた時期に発生する比較的まれな骨折である.足関節という解剖学的な特殊性,またそれに起因する複雑な受傷機転,および骨端線の閉鎖の進行状況から多彩な病像を示す.

 われわれは,前額面骨折面により外側骨片が前後に分かれた3-fragment typeのtriplane骨折を経験したので文献的考察を加えて報告する.

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 脊椎椎間板は中心の髄核を周囲の線維輪が取り囲み,軟骨終板で椎体と隔てられた特徴的な構造をとる1).椎間板髄核は脊索より発生し2),ヒトの脊索由来細胞は多くが青年期に消失する3).脊索由来細胞の消失に一致して軟骨様細胞が出現し3),細胞外基質の分解産物4)やアポトーシス死細胞3)が増加することから脊索由来細胞の椎間板恒常性への寄与が示唆されるものの,いまだ証明にはいたってない.また,椎間板は人体最大の無血管組織であり加齢や喫煙に伴う軟骨終板の硬化・石灰化により容易に栄養不足に陥ることから1),低栄養は変性の主たる契機の一つとされる.そこでわれわれは,低栄養条件下で細胞が自己の余剰蛋白や老廃物を分解,再利用して生存を図る細胞内クリアランス機構である自食作用オートファジー5)が脊椎椎間板の恒常性維持に重要な役割を果たすと仮説を立てた.脊索由来細胞が終生椎間板内に留まるラットを用い2),変性過程へのオートファジーの関与について検討を行った.

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は じ め に

 競泳とは一定の距離を定められた泳法で泳ぐ競技であり,入水後に水の抵抗を減らした流線型の体位(ストリームライン姿勢:streamlined body position)を維持することはタイムの向上に重要である.競泳選手の用いる理想的なストリームライン姿勢とは単に両上肢を挙上し重ねた両手指の先端から足趾までが一直線の流線型の姿勢であるだけでなく1,2),浮心と重心の位置が適切で上半身と下半身のバランスがとれていることが求められる3)

 これまでの先行研究により競泳熟練者のストリームラインでは腰椎前弯および骨盤前傾が減少することが報告されているが4~6),どのように浮心と重心のバランスをとっているのかはいまだ明らかでない.われわれは競泳熟練者の体幹部の体幹内臓器の高位変化に着目し,CT撮影を行うことで画像的評価を行った.

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は じ め に

 腰痛は日本人の主訴の男性1位,女性2位を占め,多くのヒトが腰痛を経験している.腰痛は人類が2本足で立位歩行するようになってから生じた宿命的なものともいえる.整形外科領域に関連する腰痛に対しては古来から多くの研究がなされ,特に近年の外科的治療にはめざましいものがある.一方,保存的治療に関しても新しい薬物療法の開発,理学療法,民間療法のほか,全国にも多くの腰痛教室が開催されている.われわれは新しいコンセプトとしてpush-upを取り入れた腰痛対策を行ったので,若干の考察を加え報告する.

連載 X線診断Q&A

X線診断Q&A 北島 将
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Question

 症 例.60歳,女.

 主 訴:左下肢痛.

 家族歴・既往歴:特記すべきことはない.

 現病歴:50ccバイクを運転中に,左からきた乗用車と衝突し,飛ばされて受傷した.意識消失はなかった.左下肢痛が著明にあり救急外来を受診した.

 身体所見:左股関節は疼痛のため動かせず,左下肢の短縮を認め,屈曲,内旋位を呈していた.

 血液検査所見:異常はなかった.

 X線所見:図1に初診時単純X線像を示す.

連載 卒後研修講座

腰痛症の診断と治療 千葉 一裕
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は じ め に

 腰痛は8割の人がその生涯で一度は経験する症状であり,整形外科受診患者の主訴としてもっとも頻度が高い.わが国で腰痛を有する人は推定1,300~2,800万人,ある1ヵ月間の住民の腰痛の有病率は男性25.2%,女性30.5%との推計がある1).厚生労働省が3年に1回実施している国民生活基礎調査で日本国民が有している愁訴の第1位は腰痛であり,実際に医療機関に通院している患者数も第4位である(図1)2).45歳以下の就業不能あるいは労働災害の原因としてもっとも多いのも腰痛で,休業補償ならびに就業不能による労働機会の損失を併せると治療費の3倍に及ぶとの試算もあり,腰痛はわが国の医療・社会経済上の大きな問題となっている3)

 厚生労働科学研究研究班(慶應義塾大学・戸山芳昭班長)が全国規模で実施したアンケート調査によって,わが国の人口の15.4%が6ヵ月以上持続するvisual analogue scale(VAS)で5以上の運動器慢性疼痛を有しており,中でも腰痛,頚部痛など脊椎関連症状の頻度が高いことが明らかとされた.さらに,こうした運動器慢性疼痛を訴える患者の半数以上が治療を受けておらず,治療を受けている者の約半数は医療機関ではなく民間療法を受けていること,さらに医療機関,民間療法を問わず,いずれの患者も治療に対する満足度が低く,受療機関を変更する割合が高いことなど,さまざまな問題点が浮上した(図2)4).同研究班では追跡(二次)調査を実施し,疼痛がさらに1年以上持続している例が45%にのぼり,VAS≧7,疼痛をほぼ毎日訴える,3年以上持続する疼痛などが疼痛持続の危険因子であったと報告している5).さらに2年後のpainDETECTやHospital Anxiety & Depression Scale(HADS)を用いた三次調査において,運動器慢性疼痛をもつ例の20%が神経障害性疼痛を有し,その関与の度合いが強いほど疼痛の訴えが強いこと,また,不安やうつ状態にある患者ほど疼痛が強く,その持続期間も長いことを報告した6~8)

 数多くの研究によって腰痛の実態が明らかにされ,新たな治療法が開発されてきたにもかかわらず,腰痛を訴える患者はむしろ増加傾向にあり,その治療にかかる医療費も年々増大している.腰痛に対する有効な治療法を提供することは運動器の専門家である整形外科医にとって喫緊の課題である3)

連載 専門医試験をめざす症例問題トレーニング

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 症 例.72歳,女.

 主 訴:腰背部痛.

 既往歴:高血圧,慢性腎不全(G3a期)のため内科に通院し,降圧薬を内服していた.

 現病歴:自宅で尻餅をついて受傷した.腰背部痛のため体動困難となり救急搬送された.

 初診時所見:腰背部痛が強く体動困難であった.胸腰椎移行部に叩打痛がみられた.殿部には痛みはなかった.四肢にしびれや麻痺はなく,腱反射の異常もなかった.

 X線所見:腰椎単純X線像を図1に示す.

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 症 例.42歳,男.

 主 訴:左足関節部痛.

 家族歴・既往症:特記すべきことはない.

 現病歴:子どもと鬼ごっこ中に左足を後ろから殴られたような衝撃があり,その後,歩行困難となり当院救急外来を受診した.

 初診時所見:立位は可能であるが,Achilles腱部に陥凹あり,Thompson sign陽性であった.

 画像所見:受傷時の単純X線像(図1),超音波像(図2),MRI(図3)を示す.

連載 最新原著レビュー

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【要 旨】

 目 的:われわれは,きわめてまれな先天性重複上肢(upper limb dimelia)の症例を経験したので報告する.

 症 例:0歳(38週4日,2,858g),男.右上肢は2本の上腕骨,4本の前腕骨,11本の手指を有し,頭側要素と尾側要素は合指症のように上腕基部から手掌まで癒合していた.それぞれの上腕骨は低形成の2個の肩甲骨と対抗していた.

 手術所見:呼吸状態の安定をまって,4歳時に手術を施行した.頭側・尾側要素は皮膚性癒合であったため,比較的容易に分離可能で,尾側側の上腕から手指を切除し,形成した.頭側上肢尺骨神経が肘関節高位で尾側上肢橈骨神経知覚枝に分岐していたため,これを切離した.頭側上肢の母指は良好であったが,示指~小指は屈曲拘縮を呈していたため,各指基部掌側を剥離して全層植皮を施行した.

 術後経過:術後1年6ヵ月,各関節可動域(ROM)は術前と変化なく右上肢をよく使用しており,経過良好であった.

 考 察:先天性重複上肢は過去に数例の報告例があるのみで,本例と類似する形態の報告はみられない.症例に応じ手術方法を検討すべきであるが,今後成長とともに機能予後について経過を追う必要がある.

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【要 旨】

 目 的:頚椎疾患においてインストゥルメンテーションを用いた固定術は広く用いられている治療法である.われわれは頚椎後方固定術における新しい手術法として,椎孔周囲スクリュー(paravertebral foramen screw:PVFS)固定を考案した.本研究の目的はPVFSの手術手技の説明および外側塊スクリュー(LMS)と比較した,PVFSの引き抜き強度を調べることである.またLMS刺入が失敗した際にPVFSがサルベージとして使用できるかを調べた.

 対象および方法:新鮮凍結屍体(平均年齢84.3±10.4歳)6体から採取した頚椎(C3~C6)を対象とした.同一椎体の片側にそれぞれランダムにLMSとPVFSを刺入した.LMSには径3.5mm×長さ14mm,PVFSには径4.5mm×長さ12mmのスクリューを用いた.PVFSの手術手技は外側塊中央より1mm内側の椎弓根高位を刺入点として3.2mm径のドリルを横突孔に達しない長さである12mmのストッパーをつけて透視下にすすめた.ドリルは20°~25°程度正中側へ向けて刺入した.径4.5mmのタップを行いスクリューを刺入した.それぞれのスクリューに引き抜き試験を行い,最大引き抜き強度を調べた.LMS引き抜き後にスクリュー孔にドリルを入れて外側塊骨折を作ってLMSがカットアウトした状態を想定し,同一高位にPVFSを刺入し直してこれをsPVFSとした.sPVFSについても引き抜き試験を行った.

 結 果:合計69本のスクリューに引き抜き試験を施行した(23本のPVFS,23本のLMS,および23本のsPVFS).平均引き抜き強度は,PVFSでは234±114N,LMSでは158±91N,sPVFSでは195±125Nであった.PVFSの引き抜き強度は,LMSの引き抜き強度よりも大きい傾向があったが有意差はなかった(p=0.06).

 結 語:中下位頚椎後方手術における新しい内固定法PVFSについて解説した.PVFSはLMSに比べて引き抜き強度が強い傾向があり,sPVFSはLMSと同等の引き抜き強度であった.LMSがカットアウトした際にPVFSがサルベージとして使用できることが示された.

Vocabulary

Cdk1 高橋 晃 , 猪瀬 弘之
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 Cdkはcyclin dependent kinase(サイクリン依存性キナーゼ)の略称であり,Cdk1は数あるCdkのうちの1種である.Cdkは1970年台にNurseとHerefordらによって,細胞周期を調節する働きをもつ蛋白質として,はじめて同定された1,2).Cdkはあらゆる真核生物においてよく保存されており,多くのサブタイプが報告されている.その名の通り,Cdkはサイクリンと結合することで複合体を形成し,セリンやスレオニンをリン酸化することでその機能を果たす.細胞周期はG1期→S期(DNA複製)→G2期→M期(細胞分裂)と進行するが,各時期においてCdk-cyclin複合体が関与している.特にCdk1-cyclinB複合体はM期,つまりは細胞分裂に必須であることがこれまでの研究から判明している2)

喫茶ロビー

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1.運動音痴と運動の教え方

 子供の頃から他人が当たり前にできることが私にはできなかった.幼稚園に入った時,「はい,皆さん,スキップ!」と先生に言われ,できなかったのは私だけであった.恥ずかしかった.スキップを観察し,要するにけんけん2回を交互にやればよいということを知り,こっそり練習した.懸垂もできなかった.当然逆上がりもできなかった.腕立て伏せも同様である.幼稚園に始まって学生時代は体育の授業が苦痛であった.やってもできないし,笑われるのが常だったからである.大学に入り体育の授業から解放されてからは人生が明るくなった.

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 Stanley Hoppenfeld先生,Piet de Boer先生,Richard Buckley先生共著の “Surgical Exposures in Orthopaedics;The Anatomic Approach. Fifth Edition” の翻訳版『整形外科医のための手術解剖学図説(原書第5版)』(辻陽雄先生,長野昭先生監訳)が発刊された.初版の発刊から30年以上にわたり,整形外科医師に幅広く購入され,われわれにとってはバイブル的な存在である.俗に「ホッペンフェルド」と呼ばれ,整形外科1年生にとっては必須の教科書である.手術前夜には必読し,オーベンからの当日の質問に覚えたての知識を披露した記憶が昨日のことのように思い出される.そして今,小生は整形外科24年生であるが,あらためてその内容を拝読するに,正確な三次元的解剖アプローチ図,色使い,解説,また的確な監訳,すべてに調和がとれ,完成度が高いものと感銘を受ける.

『骨折・脱臼(改訂第4版)』 小林 晶
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[骨折・脱臼治療学バイブルの出版を喜ぶ]

 わが国は超高齢社会を迎えて,整形外科の領域では関節疾患や脊椎・脊髄疾患の問題が百花繚乱の趣である.しかし,骨折・脱臼を含めた外傷は古くて,なお新しい話題で,整形外科医にとっては今後も必須の領域であることに異論はないであろう.

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 この度,超音波を活用したスポーツ障害・外傷診療の指南書『スポーツエコー診療 Golden Standard』が刊行されました.現在は癌や胎児の診断,心臓エコーなど必須となってきている超音波診断の中でも,スポーツ整形外科にフォーカスした実践書です.整形外科疾患はX線像による診断が優先されてきましたが,超音波という低侵襲の検査はスポーツ障害・外傷の現場においても有益なツールになったといえます.

学会を聞く

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1.は じ め に

 2018年6月23日(土)に沖縄コンベンションセンターにおいて金谷文則会長(琉球大学)のもと本学会が開催された(図1).

 本学会は1988年11月に日本整形外科学会理事会で理学診療委員会が設置され,発足した日本理学診療医学会を前身とする会である.外科的治療・手技偏重になりつつあった当時の整形外科の中における,従来からの理学療法,作業療法,義肢装具療法の重要性を再認識し,科学的治療法としてevidence-based medicine(EBM)を作り上げることを目標として立ち上げられた.本学会の歴史を繙くと,時代の流れに乗って変革を遂げてきたことがわかる.

 第1回は1989年9月,鳥山貞宣会長のもと開催され,理学療法士,作業療法士などと協働することが運動器疾患治療に大切であることを再認識し,新たな運動器学を開拓するものであった.1990年後半からはメカニカルストレスに対する生体反応に関する基礎研究がすすみ,理学療法プログラムなど経験的なものから科学的なアプローチへと臨床応用された.EBMに基づいてリハビリテーションの質が高まるにつれ,運動器リハビリテーションの重要性が社会的にも認知されるようになった.2004年に学会名を「日本運動器リハビリテーション学会」に変更,さらに2006年に「運動器リハビリテーション学会」に変更し,本学会主導のもと2006年に運動器リハビリテーションセラピスト研修制度,2008年には認定運動器リハビリテーション医制度が整備された.2009年,日本整形外科学会のロコモティブシンドローム(ロコモ)の提唱に呼応して,運動器疾患への治療から,要介護状態の早期発見,予防への支援を強化していった1).2011年には日本運動器学会へと改称され,現在の総会員数4,721名(名誉会員24名,特別会員17名)にいたっている.

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1.は じ め に

 第55回日本リハビリテーション医学会は,佐賀大学リハビリテーション科の浅見豊子会長のもと,2018年6月28日(木)~7月1日(日)に,福岡国際会議場・福岡サンパレスの両会場で開催された.歴史ある本学会ではじめての女性会長であり,会期も昨年より1日延長され4日間での開催となった.本学会のメインテーマは「再生を羽ぐくむリハビリテーション医学」であり,再生医療の効果を引き出すリハビリテーション医学の役割を再認識し,「再び生きる」ことを支援するリハビリテーション医学を皆の力で育てていきたい,という浅見会長の熱い思いが伝わってくるテーマであった.また,「羽ぐくむ」には親鳥がひなを羽で包んで大切に育てるという母性的な意味合いも含まれており,その温かい思いが各所に散りばめられた学会でもあった.

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1.静岡での骨・軟部腫瘍学術集会

 骨・軟部腫瘍学術集会は,第1回目より半世紀が過ぎ,記念すべき51回目が2018年7月12日(木)~13日(金)に静岡で開催された.テーマは「進行肉腫と骨転移に対する新たな治療戦略」“Tactics Now!! Against Advanced Sarcomas and Bone Metastases” であった(図1).静岡がんセンター整形外科と名古屋大学整形外科学の主催で,高橋満氏(静岡がんセンター整形外科)が会長を務められた.本学会は骨・軟部腫瘍を担当する整形外科医にとって中心的な役割をもち,学会名に悪性を冠せず,良悪性を問わず骨・軟部腫瘍を広く網羅する懐の深い学会である.日本整形外科学会の学術集会であり,正式には「日本整形外科学会 骨・軟部腫瘍学術集会」である.

 本学会での発表演題数は360演題であり,整形外科からだけでなく,病理,放射線科,泌尿器科など他科のほか,理学療法士からの発表もある.教育研修講演7講演,海外招待講演も6講演と充実していた.講演会場は5会場あり,ポスター発表も4発表が同時に進行された.これらの発表が一つの建物のみで開催され,とても暑い日であったが,屋外へでる必要もなく快適な学会期間であった.学会会場は静岡県コンベンションアーツセンターグランシップであり,最寄り駅は東静岡駅で静岡駅の上り一駅である.静岡駅は新幹線と在来線の共通駅であり,学会会場には静岡駅よりシャトルバスも頻回に出ていた.

基本情報

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臨床雑誌整形外科
69巻12号 (2018年11月)
電子版ISSN:2432-9444 印刷版ISSN:0030-5901 南江堂

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