総合診療 31巻2号 (2021年2月)

特集 肺炎診療のピットフォール—COVID-19から肺炎ミミックまで

徳田 安春
  • 文献概要を表示

 臨床医学の父 ウイリアム・オスラー先生(1848-1919)は、「肺炎は老人の友」という言葉を遺した。当時、人間は歳をとって寿命に達した時に肺炎で亡くなる、というのが医学的事実だったからだ。抗生物質がまだ発見される前の時代であった1919年12月、オスラー先生自身、英国オックスフォードの自宅において、肺炎の合併症で亡くなった。

 しかしその時代背景を調べてみると、1918年から新型インフルエンザのパンデミックがあり(現代では「スペイン風邪」と呼ばれている)、世界で多数の死者が出ていたのだ。オスラー先生の命を奪った肺炎のトリガーになったのも、インフルエンザだった可能性が高い。

 翻って、2019年12月に確認され、現在パンデミックになっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。これによる肺炎は、世界中で多くの人命を奪っている。SARSやMERSでの経験で訓練していた台湾や香港、韓国などを除いて、ほとんどの国の政策担当部門が、このパンデミックに対して後手に回った。そのような状況の中、誠実に患者診療を続けているのが医療者である。医療者は様々な役割を担って、今このパンデミックの最前線に立っている。

 本特集では、100年ぶりのパンデミックにおけるジェネラリスト診療の助けになる企画、すなわち「肺炎診療のピットフォール」をテーマに取り上げる。肺炎はCOVID-19の最も重要な病態であるが、多岐にわたる診療ピットフォールがある。それぞれの項目では、ピットフォールCaseの紹介、臨床上の問題点、診断・治療・予後予測のピットフォール、重要ポイントのまとめの提示をお願いした。

 本特集が最前線の医療者の助けになれば幸いである。

  • 文献概要を表示

本問題集は、今月の特集のご執筆者に、執筆テーマに関連して「総合診療専門医なら知っておいてほしい!」「自分ならこんな試験問題をつくりたい!」という内容を自由に作成していただいたものです。力試し問題に、チャレンジしてみてください。

【感染性肺炎】

❶COVID-19 高倉 俊一 , 成田 雅
  • 文献概要を表示

ピットフォールCase❶

喀痰検体で確定診断に至ったCOVID-19の1例

患者:60代、男性。

既往歴:糖尿病、高血圧。

現病歴:10日前から発熱、倦怠感、味覚障害が出現し、7日前に近医受診した。COVID-19患者と濃厚接触歴もあったため、唾液SARS-CoV-2 PCR検査を施行するも陰性であった。その後も発熱が続くため、当院紹介受診となった。来院時SpO2 93%(経鼻酸素3L/分)、胸部CTで末梢・背側優位に散在するすりガラス陰影を認めた。病歴・画像所見からCOVID-19を疑い、当院でも鼻咽頭ぬぐい液による抗原検査、PCR検査を施行したが、いずれも陰性であった。その後徐々に酸素化は悪化し、ネーザルハイフローにて呼吸管理を行った。喀痰でPCR検査を再検したところ陽性となり、COVID-19と確定診断した。

  • 文献概要を表示

ピットフォールCase❶

妊娠女性の市中肺炎で初期は抗菌薬のみで対応された1例

患者:41歳、女性。

既往歴:特記事項なし、喫煙歴なし。

現病歴:2回目の妊娠で胎児と母体も安定していた。3日前から湿性咳嗽が見られ、2日前から38℃を超える発熱も伴い、30分前後の悪寒も1回あり、当院救急室を受診した。バイタルサインは血圧110/74mmHg、脈拍数108回/分、呼吸数28回/分、体温38.6℃、意識清明、SpO2 93%(室内気)。身体診察で右肺底部にcoarse cracklesを聴取し、胸部X線写真で右の心陰影の一部を消失させる陰影あり(図1矢印)。血液検査での白血球数も10,500/μLと上昇しており、喀痰の塗抹検査でもグラム陽性双球菌が確認でき、肺炎球菌性肺炎として抗菌薬(アンピシリン)を1日4gで開始した。しかしながら3日間投与しても37℃台で微熱は続き、薬剤熱も考えてベッドサイドで診察。新規の発疹はなかったが、右の乳房の下もしっかり聴診すると、吸気時に低調な単一な連続性雑音が聴取され、改めて入院時の胸部X線側面像を確認したところ、右中葉の無気肺を伴う陰影であることが判明した(図2矢印)。以上から、抗菌薬は継続しながら、ネブライザーを1日4回吸入してもらって固めの喀痰が排出されるようになり、第5病日から解熱してきた。

▶Case 1の教訓:特に女性の診察では乳房の下の聴診がスキップされがちであるが、状況に応じて聴診したい。また、胸部X線側面像は中葉や舌区の肺炎や無気肺の評価には極めて有用である1)

  • 文献概要を表示

ピットフォールCase

薬剤耐性を考慮せず初期対応されたマイコプラズマ肺炎の1例

患者:42歳、男性。

既往歴:特記事項なし。喫煙は22歳から現在まで20本/日。

現病歴:10日前からの咳嗽と3日前からの発熱を主訴に、近くのクリニックを受診した。咳嗽は徐々に悪化傾向であり、ここ数日は睡眠も妨げられるほどであった。聴診上は明らかな所見は認められなかったが、呼吸数の上昇と酸素飽和度の低下を認めたため胸部X線撮影(図1)が行われ、右下肺野の浸潤影を認めた。追加の病歴聴取から同居家族にマイコプラズマ肺炎で治療中の患児がいることがわかり、マイコプラズマ肺炎としてマクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン)を処方され、帰宅となった。内服開始後3日経過しても症状改善を認めず、発熱が続くため、クリニック再診後、精査目的に2次病院総合診療科へ紹介となった。受診時の胸部CT(図2ⒶⒷ、図3)で一部すりガラス陰影を伴う右下葉S8および左肺底部の浸潤影を認めた。同日行われたM. pneumoniaeの遺伝子検査においてマクロライド耐性(M. pneumoniae)を認め、テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン)への内服治療の変更が行われた。

❹誤嚥性肺炎 森川 暢
  • 文献概要を表示

ピットフォールCase

患者:89歳、男性。

既往歴:Parkinson病、認知症。薬剤歴:L-DOPA、ドネペジル。

現病歴:Parkinson病で認知症のある要介護2の男性。最近、徐々にADLが低下していた。食事の際にムセを認めることがあった。今回、発熱と咳嗽の悪化を認め、誤嚥性肺炎で入院。絶食、持続点滴、尿道カテーテル、持続モニタリング管理とした。入院後、せん妄を認めたため、リスペリドンで対応した。誤嚥性肺炎の経過は良好で、酸素化、発熱が改善、全身状態も改善したため、入院後7日目に言語聴覚士による嚥下訓練を開始した。しかし嚥下機能の低下が著明であり、訓練が進まなかった。家族に説明し、胃瘻造設して転院の方針となった。

  • 文献概要を表示

ピットフォールCase❶

治療開始前はT-SPOT陰性だったが、入院経過中、肺結核を発症した抗MDA5抗体関連皮膚筋炎の1例

患者:65歳、女性。

家族歴:弟;肺結核(10代の頃)。

現病歴:抗MDA5抗体関連皮膚筋炎の治療導入のため入院していた。プレドニゾロン、タクロリムス、シクロホスファミド併用療法を開始したが、経過不良のためトファチニブを追加した。いったん病勢は落ち着いたが、第62病日の胸部CTで左上葉に結節が新たに出現した(図1Ⓐ)。喀痰Ziehl-Neelsen(Z-N)染色は陰性だった。第79病日の胸部CTで同結節が空洞化し(図1Ⓑ)、喀痰グラム染色では“ゴースト”を認め、Z-N染色を行ったところガフキー(2+)、Tb-PCR陽性であり、活動性肺結核と診断した(図2ⒶⒷ)。後日喀痰からMycobacterium tuberculosisが発育した。なお、免疫抑制薬開始前のT-SPOTは陰性であった。

  • 文献概要を表示

ピットフォールCase

患者:33歳、男性。

既往歴:クラミジア尿道炎。

現病歴:2週間前から発熱、倦怠感、乾性咳嗽、呼吸苦が出現し、徐々に増悪した。1週間前に近医を受診するも、胸部X線写真に特筆すべき異常は見られず、「かぜ」と診断されたが、“念のため”レボフロキサシンが処方されたという。3日前から労作時呼吸苦が急激に悪化し、当院救急部を受診。市中肺炎の診断で内科入院となった。性行動を含む詳細な病歴聴取の過程で、コンドームを使用しない不特定多数の女性および男性パートナーとの性交渉歴が明らかとなった。診察時、顔面の脂漏性皮膚炎と口腔粘膜に白苔を認め、聴診で肺野は清であるが、安静時94%(room air)のSpO2が軽度労作時に86%まで低下した。胸部X線写真では、両側の肺野にすりガラス陰影(図1)を認め、迅速HIV検査は陽性であった。ニューモシスチス肺炎(PCP)をターゲットとする抗菌薬治療が開始された。

❼院内感染による肺炎 本田 仁
  • 文献概要を表示

ピットフォールCase

患者:48歳、男性。

現病歴:糖尿病、重喫煙歴の患者が、呼吸苦を主訴に来院した。新型コロナウイルス感染症の流行期の症例であり、速やかにSARS-CoV-2のPCR検査が実施され、陽性であった。呼吸不全は急激に進行し、挿管管理となった。中心静脈カテーテル、尿道カテーテルも挿入されている。呼吸器管理は長くなり、ICU入室後16日目に発熱をきたした。血圧低下はないものの(108/86mmHg)、頻脈102回/分となり、呼吸数は人工呼吸器に完全に乗っており、16回/分であった。

身体所見:(右の内頸静脈に中心静脈カテーテル、左橈骨動脈に動脈カテーテル、尿道カテーテルが留置されている)

心音:頻脈はあるものの、心音は整、心雑音やⅢ音の聴取は聞かれない。

肺:右の下肺に軽度のcoarse crackleを聴取する。気管挿管されている。

腹部:平坦 軟であり、腹部蠕動音は聴取する。

検査所見:WBC 9,800/uL、Hb 11.2g/dL、Plt 125×103/uL、AST 46IU/L、ALT 34IU/L、BUN 28.2mg/dL、Cr 0.94mg/dL、Na 134mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 102mEq/L、ABG PH 7.36、PaO2 88mmHg、PaCO2 38mmHg、HCO3 25mmol/L(FiO2 50%)。

喀痰グラム染色:グラム陰性桿菌(2+)、WBC(2+)

胸部画像診断:右肺に軽度の浸潤影を認めた。

酸素需要量もFiO2 40%から50%に上昇。

【感染性肺炎の合併症と鑑別疾患】

  • 文献概要を表示

 ARDS(acute respiratory distress syndrome)は、1960年代に認識されて以来、医学が大きく進歩してきたにもかかわらず依然として死亡率の高い症候群である。重症ARDSにおける死亡率は40%にものぼる1)

 そもそもARDSという疾患概念は、「何らかの傷害による肺の病的反応」とやや曖昧なものであり、臨床現場でもARDSという言葉を「急性呼吸不全を起こすさまざまな鑑別疾患のなかの診断名の1つ」なのか、「急性呼吸不全を起こしているさまざまな病態のなかの1つ」なのかを意識せず用いているのではないだろうか。概念の共通化を目的として作成された国際的な定義2)は、「ARDSとは何か?」に答えてくれるものではなく、むしろ実臨床で鑑別を進めていく弊害の1つになっている感すらある。

  • 文献概要を表示

ピットフォールCase

肺膿瘍として初期治療された肺扁平上皮癌の1例

患者:60歳、男性。

既往歴:特になし。

喫煙歴:50本/日、20歳〜現在まで。

現病歴:1カ月前からの発熱(38℃までの間欠熱)を主訴に受診。胸部X線写真(初診時:図1Ⓑ)で左中肺野に4cm程の空洞性病変を認めた。肺膿瘍の診断でアモキシシリンクラブラン酸の内服加療を2週間行うも発熱は持続し、胸部X線写真で空洞壁の肥厚と空洞内の液体貯留(図1Ⓒ)を認めた。胸部単純CT(図2)では左下葉に長径5cmほどで厚さ4mmほどの壁の厚い空洞性病変を認め、内部は液体貯留を伴っていた。同日、肺膿瘍の診断で入院となった。

入院時現症:バイタルサインは38.2℃の発熱以外は正常。左背側肺底部で肺胞呼吸音の低下を認める。

入院後経過:アンピシリンスルバクタム12g/日の点滴治療を行うも発熱は持続し、末梢血の炎症所見は高く(CRP 12mg/dL)、血痰を伴うようになった。後日、健診元から取り寄せた胸部X線写真(半年前:図1Ⓐ)では、左中肺野にわずかに壁の薄い空洞性病変を指摘できたため、喀痰細胞診および気管支鏡検査を施行し、肺扁平上皮癌(stageⅢA)の診断となった。

❸肺血栓塞栓症 巴 崇 , 志水 太郎
  • 文献概要を表示

ピットフォールCase

肺炎加療中に見つかった肺血栓塞栓症の1例

患者:19歳、女性。

既往歴:気管支喘息、強皮症疑い。

現病歴:入院2日前に咳嗽あり、入院1日前に左胸痛も出現し前医を受診。左肺炎、胸膜炎を指摘され、当院呼吸器内科紹介受診となり、胸部CT検査で左下葉に浸潤影(図1)を認め、採血検査でもWBC 16.80×109/μL、Neut 78%、CRP 6.88mg/dLと、肺炎による変化とも矛盾しない結果であり、肺炎、胸膜炎の診断で同日緊急入院となった。抗菌薬加療開始となり、浸潤影、炎症反応などは改善した(図2)。一方、入院時のD-dimer 17.9μg/mLという値は入院6日目になっても改善が乏しく、フィブリノーゲンが50μg/mLと著明に低下していたことから、DIC(播種性血管内凝固症候群)を起こしていると判断され、低分子ヘパリンの投与が開始された。また入院14日目に深部静脈血栓症の鑑別のために下肢静脈エコーを施行したところ、血栓が左総大腿静脈からヒラメ静脈で見つかり、深部静脈血栓症の加療目的に当院循環器内科へコンサルトとなった。肺血栓塞栓症精査目的に造影CT検査を施行し、左肺動脈内に血栓を認め(図3)、肺血栓塞栓症の診断となった。

【感染性肺炎と紛らわしい病態】

  • 文献概要を表示

 研修医の頃に指導医から、“肺炎の存在は肺癌と結核の否定にはならない”ということを教えてもらった。呼吸器内科を続けるとその言葉の重みを感じる。肺癌は進行例で根治治療が困難になるため、なるべく早めに診断することが求められる。

 本稿では、肺炎と鑑別が難しい肺癌について述べる。

  • 文献概要を表示

ピットフォールCase

市中肺炎として初期対応された急性過敏性肺炎の1例

患者:56歳、男性。

主訴:乾性咳嗽、発熱。

既往歴:特記事項なし。

現病歴:X年8月に、1週間前から出現した乾性咳嗽、発熱を主訴に内科外来を受診した。胸部診察では背側でlate inspiratory crackles(=fine crackles)を聴取した。胸部X線写真で両下肺野の透過性低下を認めたため、市中肺炎の診断で入院となり、セフトリアキソン2g/日とアジスロマイシン500mg/日の投与が開始された。入院後は速やかに解熱し、咳嗽も改善したため、セフトリアキソン2g/日・5日間、アジスロマイシン500mg/日・3日間の投与を行い退院となった。自宅退院2日目より再び咳嗽が出現し、労作時呼吸苦の増悪と胸部X線で肺野に両肺の透過性低下を認め、再入院となり、肺炎の再発として再度抗菌薬が投与された。呼吸状態は速やかに改善し退院となったが、自宅退院後に再び呼吸困難と発熱を認め、救急搬送となった。胸部CTでは両肺びまん性に淡い小葉中心性(=小葉の中心部分に病変を認める)の粒状影とすりガラス陰影(図1)を認めた。肺炎を繰り返していること、自宅は木造築50年であり、8月の発症であることから、夏型過敏性肺炎が疑われた。呼吸器内科にコンサルトを行い、気管支鏡検査を行ったところ、気管支肺胞洗浄液はリンパ球増加を認め、一般細菌や抗酸菌などの微生物は同定されなかった。抗菌薬を使用せずに経過観察したところ、自覚症状は数日で軽快し、画像所見も改善した。経気管支肺生検組織の病理学的評価では肉芽腫の形成を認め、抗トリコスポロン・アサヒ抗体を提出したところ陽性であり、急性過敏性肺炎の診断となった。自宅の大掃除をして帰宅試験を行い、症状の再発がないことを確認して退院となった。

❸膠原病に伴う肺疾患 栗原 健
  • 文献概要を表示

ピットフォールCase

患者:78歳、男性。

主訴:呼吸困難。

現病歴:呼吸困難のため入院。呼吸困難は来院2週間前から徐々に増悪していた。来院時、体温38.2℃、血圧120/56mmHg、心拍数110回/分、呼吸数24回/分、SpO2 90%(2Lカヌラ)であった。血液検査ではWBCやCRPの炎症反応の上昇があり、胸部単純X線写真でも右下肺野に浸潤影があった。これらの結果から、細菌性肺炎と診断し、セフトリアキソンとアジスロマイシンによる加療を開始し、入院となった。入院4日目の血液検査や胸部X線写真では改善がなく、呼吸数やSpO2の改善も乏しく、むしろ増悪傾向になっていた。担当医は上級医に相談し、もう一度診断を見直すこととした。

身体診察のとり直し:両側背部から捻髪音を聴取した。手指を確認すると、機械工の手(図1)やGottron徴候を認めた。病歴を再度聴取すると、1カ月前から徐々に筋痛が出現し、歩行困難となっていた。本人曰く「(筋痛については)聞かれておらず、肺炎と言われたから関係ないと思った」とのこと。すぐに胸部CTを撮影したところ、両側すりガラス陰影(ground glass opacities : GGO)や網状影を認め、病歴や身体所見から、皮膚筋炎による間質性肺炎を疑い、ステロイドを含む集学的加療を行ったが、治療4日目に死亡した。後に判明した血液検査では、抗MDA5抗体が陽性となっていた。

  • 文献概要を表示

 2011年から6年連続死亡原因の“3位”であった肺炎。人口動態統計で、「肺炎」から「誤嚥性肺炎」を独立して集計するようになったため、2017年に「肺炎」は5位に、「誤嚥性肺炎」は7位となった。しかし両者を合わせると、やはり3位の死亡数になる。また、その年の4位の「老衰」のなかには、肺炎に罹患したケースも多く含まれていたと考えられる。このように、肺炎で死亡したケースはかなり多いのである。

 ここで私は「肺炎をすべて治せ」と言いたいのではない。「肺炎にもさまざまな種類があり、さらには、肺炎と診断していても、実は肺炎以外のこともあるのだ」と言いたいのが本特集だ。

  • 文献概要を表示

 この春、「総合診療専門医」がいよいよ誕生する。2018年度から制度がスタートし、3年の専門研修を終えた一期生が専門医となる予定だ。しかしながら、その専攻医数は初年度・次年度は約180名、2020年度も約220名にとどまっている。今後、総合診療専門医を、どれだけ、どのように育成していくのか?

 一方、コロナ禍において今、「総合診療」の機能がクローズアップされている。自ずと、その担い手を今後どう育成するかを議論する意義も高まっている。地域医療の現場、また大学病院で、それぞれ「総合診療専門医」育成に邁進する両氏が、“この10年”の戦略的スキームを議論し、その未来を展望した。(編集室)

What's your diagnosis?[218]

  • 文献概要を表示

病歴

患者:78歳、男性

主訴:不明熱

現病歴:7カ月ほど前に急性腹症で前医を受診し消化管穿孔による腹膜炎と診断された。緊急手術で回盲部終末から口側15〜30cmに多発潰瘍が認められ、病巣部位の切除と共に人工肛門が留置された。病理診断は「非特異的多発潰瘍」であった。術後110日から口腔内潰瘍、背部痛と悪寒を伴う発熱(max値40.3℃)、および抗菌薬に反応したように見える解熱、毎回部位の変わる腹痛と下血を4カ月間繰り返した。腹痛時には人工肛門からの内視鏡検査では回腸に潰瘍性病変を認めた(図1Ⓐ、Ⓑ)。血培、便培、CDトキシン、胸腹部CT検査が施行され抗菌薬投与が反復されたが、原因は同定できず、家族性地中海熱が疑われてコルヒチンも投与されたが無効であった(図2)。何らかの膠原病・炎症性疾患の存在が疑われ、術後227日に当院へ転院した。転院までの6カ月で体重は8kg減少していたが、頭痛、眼症状、悪心・嘔吐、皮疹、陰部症状、関節痛・筋肉痛、脱力・しびれの病歴はなかった。

既往歴:特になし

薬剤歴・アレルギー歴:なし

家族歴:結核、膠原病、Behçet病、間欠熱は本人の知る限りなし

生活歴:喫煙は40本/日を65歳まで、飲酒は日本酒2合を週2回程度、海外渡航なし

職業:75歳まで自営業

研修医Issy&Dr.Sudoのとびだせフィジカル! 聴診音付・2

  • 文献概要を表示

ここは、とある病院。研修医Issy(石井大太)は、指導医Hiro(中野弘康先生)とフィジカルマスターDr.Sudo(須藤博先生)のもと、病棟業務の忙しい毎日に追われていました。

【エッセイ】アスクレピオスの杖—想い出の診療録・10

  • 文献概要を表示

本連載は、毎月替わる著者が、これまでの診療で心に残る患者さんとの出会いや、人生を変えた出来事を、エッセイにまとめてお届けします。

  • 文献概要を表示

CASE

患者:70歳、男性。施設入所中で、日中はデイサービスを利用していた。

現病歴:入院2日前に発熱があり、ご家族と共にかかりつけ医療機関を独歩で受診したが、「特に問題はない」と言われ帰宅した。入院前日、施設で夕食を摂った後に悪寒が出現。その後39.8℃の発熱があり、2回嘔吐した。はじめは様子を見ていたが、その後も発熱が持続したため、22時頃に施設職員が救急要請した。

既往歴:Alzheimer型認知症、慢性腎不全、心房細動。アルコール依存症(断酒してから8年が経過)。肥大型心筋症(詳細不明)。

薬歴:アピキサバン、クレメジン、リバスチグミン、抑肝散。

ADL:ほぼ自立していたが、普段から時おり失禁や易怒性があった。

飲酒歴:泡盛4合/日×40年。8年前から断酒。

喫煙歴:20本/日×20年。40歳から禁煙。

アレルギー歴:食物アレルギーおよび薬剤アレルギーなし。

Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?・11

“男指”とは? 上田 剛士
  • 文献概要を表示

患者さんからのふとした質問に答えられないことはないでしょうか? 素朴な疑問ほど回答が難しいものはないですが、新たな気づきをもたらす良問も多いのではないでしょうか? 本連載では素朴な疑問に、文献的根拠を提示しながらお答えします!

“コミュ力”増強!「医療文書」書きカタログ・8

  • 文献概要を表示

今月の文書

診療情報提供書

セッティング:総合病院→診療所への訪問診療依頼

患者:進行期の子宮体がん患者。蜂窩織炎での入院を契機に、退院後は訪問診療を導入することになった。

【登場人物】

桜井:研修医2年目。総合診療科研修中。

生駒:卒後5年目の総合診療科専攻医。

飛鳥:総合診療医。桜井・生駒の指導医。

月ヶ瀬:地域の開業医。

“JOY”of the World!|ロールモデル百花繚乱・13

  • 文献概要を表示

 私は、和歌山県にある本州最南端、潮岬という田舎で育った。毎日水平線を眺め、地球は円いんだなと思っていた幼少期。星が無数に見え、家の外に出ては空を見上げながら、まだ見ぬ未来の自分を思い描いていたのかもしれない。

 私は現在、大阪医科大学病院総合診療科で、大学総合診療の臨床と医学生・研修医の教育にあたっている。小学生の息子たちに振り回されつつも、なんとかフルタイムの医師として仕事を続けさせてもらっている。専門は大好きな総合診療・家庭医療であるが、糖尿病専門医も取得しており、両方の経験を活かしながら楽しく仕事をしている。ここに至るには、いくつものターニングポイントがあった(表1)。それぞれのターニングポイントで、さまざまな人や出来事と出会い、そのつど少しずつ人生のベクトルを変えながらも、目線の先にはいつも同じ目標を見て進んできたように思う。本稿では自身のキャリアを振り返ることで、誰かの生きるヒントになれば幸いである。

55歳からの家庭医療 Season 2|明日から地域で働く技術とエビデンス・37

  • 文献概要を表示

 本誌2021年1月号での特集座談会「今こそ医療を『開疎』せよ!—“シン・ニホン”と“ウィズ・コロナ”」1)におけるディスカッションは多面的・放射的に行われましたが、議論全体の基調音は「気候変動」に関する問題群にあったと思います。

【臨床小説】後悔しない医者|あの日できなかった決断・第11話

希望を与える医者 國松 淳和
  • 文献概要を表示

前回までのあらすじ 今月のナゾ

 季節はまだ冬。前回訪れた山梨の白川診療所から戻った黒野は、院内で懐かしい顔に出会う。以前この病院で初期研修を受けていた田山陽輔である。専門医試験を控えた田山は、かつての症例サマリーを作成しにきたのだ。その症例の1つが初診時18歳だった湯川伶子、全身性エリテマトーデス(SLE)の患者だった。田山に再会して想起された3年前の記憶を、黒野と筧がたぐる、全4回の新エピソードが始まる。

 患者は、いわゆる思春期の女子高生だ。身体が重く、時にふさぎこみ、不登校にもなっている。異常行動もみられるようになってきて、母親は2つのことを心配している。1つは「精神疾患ではないか」、もう1つは「この病気は治るのか」。さて黒野は、「病状説明」の場面で、不安げな母親にどう答えるのだろうか? そして本人には?

投稿 GM Clinical Pictures

  • 文献概要を表示

CASE

患者:34歳、女性。

既往歴:子宮筋腫、子宮内膜症。

現病歴:6日前から持続する下腹部痛を訴えて近医より紹介された。バイタルサインは正常。腹部診察では腹膜刺激徴候や周期的な疼痛を認めなかった。痛みは消炎鎮痛薬を内服するとやや軽快するものの、持続していた。

血液検査:軽度の炎症反応とHb 10.2g/dL、MCV 78.7fLの小球性貧血を認めた。妊娠反応は陰性。

画像所見:子宮内膜症に対して経口避妊薬を内服していたため、深部静脈血栓症などを鑑別にCT(computed tomography)検査を行ったところ、子宮体部右側壁の筋層内に71mm大の低吸収腫瘤を認めた(図1)。

#総合診療

#今月の特集関連本❶

#今月の特集関連本❷

#今月の特集関連本❸

#今月の特集関連本❹

#今月の特集関連本❺

#今月の特集関連本❻

#今月の特集関連本

#今月の連載関連本

#今月の連載関連本

#今月の連載関連本

#医学書院の新刊

  • 文献概要を表示

 近年、非結核性抗酸菌症例の検出率と診断症例の上昇が顕著で、呼吸器感染症のなかでも注目されている疾患である。しかしながら、わが国での疫学・診断方法・治療開始の時期などについては不明な点も多い。

 本書の構成は大きく総論と各論に分かれ、総論では最新のわが国の疫学情報、臨床的および細菌学的基準の意義、菌種ごとの使用治療薬の相違点と使用上の注意点、2020年に公表された「米国胸部疾患学会/欧州呼吸器学会/欧州臨床微生物感染症学会/米国感染症学会(ATS/ERS/ESCMID/IDSA)ガイドライン」の臨床的疑問に対する推奨とその解説をして、具体的な症例の診断・治療のイメージが湧くように配慮されている。

--------------------

目次

『総合診療』編集方針
  • 文献概要を表示

 1991年に創刊した弊誌は、2015年に『JIM』より『総合診療』に誌名を変更いたしました。その後も高齢化はさらに進み、社会構造や価値観、さらなる科学技術の進歩など、日本の医療を取り巻く状況は刻々と変化し続けています。地域医療の真価が問われ、ジェネラルに診ることがいっそう求められる時代となり、ますます「総合診療」への期待が高まってきました。これまで以上に多岐にわたる知識・技術、そして思想・価値観の共有が必要とされています。そこで弊誌は、さらなる誌面の充実を図るべく、2017年にリニューアルをいたしました。本誌は、今後も下記の「編集方針」のもと、既存の価値にとらわれることなく、また診療現場からの要請に応え、読者ならびに執筆者のみなさまとともに、日本の総合診療の新たな未来を切り拓いていく所存です。

2018年1月  『総合診療』編集委員会

読者アンケート

『総合診療』バックナンバーのご案内

お得な年間購読のご案内

次号予告

基本情報

21888051.31.2.jpg
総合診療
31巻2号 (2021年2月)
電子版ISSN:2188-806X 印刷版ISSN:2188-8051 医学書院

前身誌

文献閲覧数ランキング(
2月15日~2月21日
)