総合診療 31巻1号 (2021年1月)

特別増大特集 新型コロナウイルス・パンデミック—今こそ知っておきたいこと、そして考えるべき未来

藤沼 康樹 , 青木 眞
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COVID-19(新型コロナウイルス感染症)診療の最前線で、「総合診療医」の役割がクローズアップされている。

今後は、常にCOVID-19を念頭に置いた診療が、プライマリ・ケア外来、救急外来、そして一般病棟でも必須となるだろう。

COVID-19診療の基本を押さえつつ、多様な総合診療の現場で、「今」どのような取り組みが求められているかを探る。

そして、「未来」の社会は、ヘルスケアシステムは、どう変わっていくのだろうか?

現在も続く「新型コロナウイルス・パンデミック」に、多彩な側面から光を当てる。

[Ⅰ章] COVID-19診療の基本:総合診療医が今知っておくべきこと

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Case

COVID-19における二峰性の悪化

患者:41歳、女性

現病歴:発症3日前に、パーティに参加した。X日(発症日)に、38℃の発熱がありA医院を受診し、対症療法で帰宅した。翌日には解熱したが、軽い咳と喉の違和感は続いた。X+3日目に再度発熱し、パーティ参加者のなかに、のちにCOVID-19と判明した人がいたことがわかり、帰国者・接触者相談センターへ相談した。

 X+4日目に新型コロナウイルスPCR検体が採取され陽性になり、X+5日目に当院に入院した。入院時は微熱と乾性咳嗽、軽度の呼吸困難があり、胸部X線では肺炎像は明らかではなかったが、胸部CTでは胸膜直下のすりガラス陰影がみられた。

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Case

患者:82歳、男性

現病歴:ホストとして働く同居の孫が、1週間前にCOVID-19と診断された。

 7日前から39℃台の「発熱」と「咳嗽」が、2日前から「呼吸苦」も出現したため、昨日かかりつけ医を受診したところPCR検査センターを紹介され、新型コロナウイルスPCR検査が行われた。本日、陽性と判明し、保健所より要請があり、当院に入院となった。

 入院時、「SpO2 80%台」と低下があり、酸素投与が開始された。本症例の適応と考えられる治療薬は?

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院内・施設内へ「持ち込まない」

早期に「COVID-19疑い」を察知せよ

 何より重要なのは、目の前の患者さんがCOVID-19の可能性があることを察知できるかどうかである。

 ただし、症状については未だ一定の見解はない。あくまで一般論を述べるが、初期は感冒と区別がつかないような症状が出現し、重症化する場合には7日ほど経過してから重症化する1)(p.15・21)。重症例においてCOVID-19を疑うのは、それほど困難ではないと考えられる。むしろ「間質性肺炎」や「ニューモシスチス肺炎」など、胸部CTで同様のすりガラス陰影を呈する疾患の除外が不十分なケースが散見されるように感じる。

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 2020年10月現在、世界の感染者数約4,000万人・死者100万人を超えるCOVID-19のパンデミックは、もはや“災害”である。災害は英語でdisasterというが、これは「悪い星まわり」を意味し、すなわち災厄全般を指し、感染症も含まれる。

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 各地で「総合診療医」が最前線に立った。パンデミックに対応する特別な教育を受けてきたわけではないが、従来から不明または不確実、ないし複雑な事象に対峙し、多様な機能を併せもつ「総合診療」の強みが必然的に活きた形だ。その活躍のし方は、現場によって異なっている。そこで本座談会では、病院または診療所でそれぞれパンデミックに向き合い続ける3名の「総合診療医」が、感染症診療教育とジェネラル・マインドの養成に長年尽力してきた青木氏のもと、その実践を報告し合った。パンデミックにおける「総合診療」の役割とは? パンデミックを通し改めて見直された「総合診療」の秘めたる力とは?(編集室)

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 当院・板橋中央総合病院(東京都板橋区)は550床の総合病院で、年間9,000台の救急車を受け入れている。

 筆者が医長を務める総合診療内科(医師17人)は、もともと「肺炎」を中心に重症内科疾患をすべて受け入れており、集中治療室の約20%を利用している。緩和ケアやリハビリテーション栄養を必要とするフレイルな方、社会的に困難な問題がある方、併存疾患が多く管理が難しい方々を主な診療対象としている。第1波の際には、板橋区の60%程度の保健所から発熱精査依頼を受け入れた。また、総合診療内科として「COVID-19チーム」(後述)を立ち上げ、第1波の際にはECMO(体外式膜型人工肺)適応症例を除く軽症〜重症の入院患者診療にあたった。その後、「COVID-19 PHS」(p.36)をつくり、他診療科の疑い症例への対応を協力して行った。

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Case

新型コロナウイルス感染後に間質性肺炎所見が持続した一例

患者:48歳、女性

既往歴:高血圧症、くも膜下出血

現病歴:2020年3月下旬から咳・鼻汁があったが、すぐには受診せず自宅から外出しないで様子をみていた。その後、咳だけが残り改善せず、自宅内での家事でも息切れが出現してきたため、4月中旬に当院の発熱外来を受診。肺・縦隔CT検査を施行したところ両側に「間質性陰影」を認め、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のPCR検査を施行した。

 PCR検査は陰性だったが、画像上は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が否定できないため、自宅待機を継続した。その後も、「労作時息切れ」が続くため再診し、血液検査でSARS-CoV-2抗体が陽性と判明し、計3回のPCR検査を追加したが、いずれも陰性で、間質性肺炎に対して入院でステロイド治療を行った。

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 私が勤務する豊田地域医療センター(愛知県豊田市)は、150床の慢性期〜急性期の入院病床をもつケアミックス病院である。さらに、救急医療を含めた外来診療、約450名の患者に対する在宅医療、訪問看護や訪問リハビリテーションだけでなく、健診事業も積極的に行っている中小病院である。外来〜在宅〜病棟診療をシームレスに行う「コミュニティホスピタル」として機能している。

 幸いなことに、当地域は本稿執筆時点(2020年11月)では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大規模な流行が起きている地域ではないが、日本での流行が本格化した2020年2月頃から、流行地域における複数の病院で「院内感染」が報告され、病院機能を縮小せざるをえない事態が散見された。そこで当院でも、「感染からスタッフを守り、地域の医療体制を維持する」こと、また「当院がクラスターの発生源とならない」ために、総合診療医が中心になって新型コロナウイルス対応ICT(infection control team)委員会(以下、ICT委員会)を立ち上げ、さまざまな対策を講じてきた。筆者もその一員となり週1〜2回行ってきたICT委員会も、12月現在で50回を超える。本稿では今まで当院が講じてきた対策についてまとめ、読者のみなさんの今後の対策に少しでも役立てば幸いである。

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Case

COVID-19院内感染から軽快した超高齢者の一例

患者:90歳、女性

既往歴:高血圧、変形性膝関節症

現病歴:両下肢浮腫を訴え、近医より紹介受診された。正球性貧血を認め、精査目的に入院。胃出血性ポリープが原因であった。症状軽快しリハビリ転院待ちであったが、病棟内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)アウトブレイクがあり施行した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)PCR検査で陽性だった。一時はウイルス性肺炎を起こし状態が悪化したが、ナファモスタット投与などを行って回復し、自宅退院となった。

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 私が院長を務めるマイファミリークリニック蒲郡(愛知県蒲郡市)は、乳児から高齢者まで幅広い年齢層の方がコモンディジーズで受診する(男女比は女性が多い)、典型的な家庭医療診療所である(常勤医師1人)。一般外来以外に「女性外来」と「渡航外来」を併設しており、「訪問診療」も行っている。本稿では、一般外来での感染対策についてご案内する。

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Case

私も息子も会社に「来るな」と言われた

患者:48歳、女性

現病歴:4日前、8月の暑い日中に散歩をしたあと飲み会に参加し、夜帰宅してから体温を測定したところ38.9℃の発熱に気づいた。発熱以外の症状はなし。翌朝には37.0℃まで低下していたが、その後も37℃台前半の微熱が続き、また倦怠感もあるため、当診療所の「かぜ外来」を受診した。会社から「37℃以上の熱がある時は来るな」と言われているため、自宅待機している。同居している息子も、家族に37℃以上の熱がある時は出社できないため自宅待機になってしまっており、「どうにかしてくれ」と言われている。

所見:バイタルサインも含め特記事項なし。

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 在宅医療のミッションは、たとえ治らない病気や障害があっても、人生の最終段階にいたとしても、最期まで安心できる生活・納得できる人生を支援することにある。たとえ地域で新型コロナウイルスの感染が拡大しても、在宅療養支援を継続すること。そのために私たちは、次の3つの“防衛線”を意識して新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に取り組んだ。

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 沖縄県には25箇所のへき地診療所があり、うち16診療所が県立診療所(離島診療所)、9診療所が町村立診療所となっている。沖縄県は海域が広く、約500km半径に離島診療所が点在しているのが特徴である。本稿では、16ある沖縄県立の離島診療所(医師1人・看護師1人体制)における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策について報告したい。

[Ⅲ章] 「ヘルスケアシステム」や「社会」は構造的にどう変わったか、変わっていくか

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言葉への負荷

 私たちは病気になると、当たり前に思えていた日常が、いかに奇跡的なバランスで成立しているかを痛感する。哲学者のニーチェに「病者の光学」という言葉があるように、病いは日常そのものの例外性を照らす光なのだ。

 新型コロナウイルス感染症の流行にも、そのような一面がある。文学の研究者である私の立場から言えば、パンデミックは、医学的なテーマであるのみならず、人文的な「光源」でもある。なぜなら、それは言葉やコミュニケーションに関わる諸問題を改めて浮き彫りにしたからである。

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 コロナ禍においては、人と人が1つの場に集うことが危険とみなされ、出会いと交流の場は次々に「オンライン」に移行した。それが最も顕著なのは、医療施設と介護施設である。「家族であっても面会できない」「許されても15分」「たまたま濃厚接触者になってしまったので、面会はおろか居室から出ることも許されない」といった話をこれまで耳にした。

 このような状況は、時に否定的に捉えられる。たとえば、在宅緩和ケア医の新城拓也1)は、「新型コロナウイルスで緩和ケアは自殺したのではないか? 医療者は、死者の権利を冒涜している」という記事をBuzz Feed Japan Medicalに寄稿した(2020年6月13日)。このなかで新城は、緩和医療で推進されるタブレット端末による面会は「実際に顔を触り、手を握り、体をさすり声をかけることに比べれば、比べるに値しないのは当たり前です」と述べ、感染対策を掲げて面会を禁ずる今の状況を「死者の権利を冒涜している」とさえ思うと告白する。

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 新型コロナウイルス感染予防のために、地域での活動やイベントの多くが中止や延期になったことは、「地域のつながり」や「高齢者の健康」などに影響を与えている。筆者は、東京都の地域包括ケアシステムにおける生活支援コーディネーター向けの研修や活動支援、千代田区など都心部のコミュニティ醸成に携わっており、数多くの地域づくりの現場の声を聴いてきた。それを踏まえて、COVID-19が「地域」に与えた影響と今後のあり方と、そのなかで専門職に求められることの一考察を行いたい。

[Ⅳ章] 未来を展望する:新型コロナウイルスと共存する「社会」「医療」「人」のあり方

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 疫病は幾度も社会を変えてきた。では、新型コロナウイルス・パンデミックは、未来をどう変えるのか? ヘルスケアシステムは、どう変わっていかねばならないか? このパンデミック直前に『シン・ニホンーAI×データ時代における日本再生と人材育成』(NewsPicksパブリッシング、p.95)を上梓、日本の現状を冷徹に分析して新たな時代を力強く展望した安宅氏は、早々に「ウィズ・コロナ」という言葉を生み出した。氏は今、この国の医療をどう見ているのか? それぞれ診療所・病院の最前線でパンデミックに対応してきた藤沼氏・尾藤氏が、安宅氏と現状を俯瞰し、未来を語り合った。(編集室)

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今回、共同編集をお願いした青木眞先生と親しくなったのは、わりあい最近のことです。実は、青木先生が日本の臨床感染症学に多大なインパクトを与えてきた医師であることを、それまではあまり認識していませんでした。しかし、だからこそ、バイアスのかからない出会いになったような気もします。

 青木先生とは、日本におけるこれからの「総合診療」をどのように発展させるべきか、というディスカッションをすることが多いのですが、初めから印象的だったことは、「それはつまりどういうことですか?」「もう少しそこをくわしく教えてください!」「それはおもしろいですね!」「そういう患者さんをどんなふうに診察するんですか?」といった好奇心旺盛な質問でした。curiosity(好奇心)をとても尊ぶ態度が印象的だったのです。

研修医Issy&Dr.Sudoのとびだせフィジカル! 聴診音付・1【新連載】

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今月から新連載「とびだせフィジカル! 聴診音付」がスタートします。研修医IssyとともにフィジカルマスターDr.Sudoと対話しながら、誌面をとびだし、まるでその場にいるかのような臨場感をもって、楽しくフィジカルを学びましょう。目の前の患者さんのフィジカルを図や動画で確認しながら、さらにQRコードの聴診音も聴いて、一緒にCASEの診断に迫りましょう!

What's your diagnosis?[217]

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病歴

患者:66歳、専業主婦

主訴:労作時呼吸困難

現病歴:元々は非常に活動的で、スポーツジムに週に2〜3回は通い、プールで1km以上泳いでいた。受診の約1カ月前のある日から、胸部不快感を伴う労作時呼吸困難のため、25mを続けて泳ぐことができなくなった。また同時期より、5分ほどの歩行で疲労を感じるようになり、変わりかけの信号の横断歩道は大事をとって待つようになった。安静時には全く無症状で、呼吸困難の増悪傾向はないものの改善がないため、内科外来を受診した。

既往歴:帯状疱疹(61歳時)

常用薬:なし。不眠時にベンゾジアゼピンを頓用のみ

生活歴:夫・長男と同居しペットは飼っていない。飲酒はしない。喫煙は10本/日×40年の後、5年前から禁煙

陰性所見:発熱・寝汗、食思不振・体重減少、胸痛・背部痛・腹痛、起座呼吸・夜間発作性呼吸困難、浮腫・腹満・体重増加、鼻汁・咽頭痛、咳・痰・喘鳴、皮疹、関節痛・筋肉痛、寒がり・暑がり、便秘・下痢、複視・霧視、嚥下障害・構語障害、四肢筋力低下・感覚障害

オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・49

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CASE

患者:40代、男性。

主訴:発熱、嘔吐、倦怠感。

現病歴:入院1カ月前から時折微熱があり、数時間で消失する瘙痒感を伴う、顔面、体幹、四肢の紅斑を自覚。ただし、発熱時に出現するわけではなかった。1週間前から度々38℃弱の発熱があり、3日前の夜間から40℃の発熱と悪寒、咽頭痛、1日数回の嘔吐、下痢が出現した。その後に悪寒戦慄の症状が出現、さらに嘔吐がひどくなり食事が摂れず、当院救急外来を受診した。この間、咳嗽や鼻汁なし、腹痛なし、寝汗なし、明らかな体重減少も見られなかった。

既往歴:なし。

常用薬:なし。サプリメントの服用もなし。

生活歴:喫煙は5本/日×7年、26歳で禁煙。機会飲酒。最近の海外渡航歴なし。外食や生肉・生卵等の摂取なし。不特定多数の性交歴なし。ペットやその他の動物との接触なし。

Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?・10

欠伸は伝播する? 上田 剛士
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患者さんからのふとした質問に答えられないことはないでしょうか? 素朴な疑問ほど回答が難しいものはないですが、新たな気づきをもたらす良問も多いのではないでしょうか? 本連載では素朴な疑問に、文献的根拠を提示しながらお答えします!

【臨床小説】後悔しない医者|あの日できなかった決断・第10話

安心させられる医者 國松 淳和
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前回までのあらすじ 今月のナゾ

 季節は冬。黒野の内科チームの初期研修医・西畑が「地域研修」から帰ってきた。研修先は、山梨県南巨摩郡富士川町鰍沢の「白川診療所」。西畑いわく「すごい先生」がいたという。「患者さんの気持ちがわかってるかのよう」らしい。指導医の筧や黒野も、これには反応した。筧の勧めもあって、黒野は西畑と白川診療所を訪ねた。外来診療で気をつけていることを尋ねると、白川は「患者さんが言ってほしいことを、言ってあげること」だと答えて——。

 白川診療所は、患者が絶えない。特別丁寧に診ている様子はなく、むしろ診療時間は短いほうだ。それでも患者がまた来たくなる。その秘訣は何なのだろう? 心身症の患者が多いが、白川医師は心身医学の専門家ではなく、普通の内科医だ。「心身症」とは何なのか? 心の病気か、身体の病気か——。

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 認知症サポート医であり、また厚労省が推進する「人生会議」のファシリテーターを担当する筆者は、本人と家族、医療関係者間で、患者の価値観を主体的に共有するアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の推進1)に携わる機会に恵まれている。

 本稿では、家族介護事例を取り上げ、関係性のなかで変容する本人の意向を尊重し、意思決定支援に求められる多様性と柔軟性について述べる。

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#医学書院の新刊

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の波が世界を押し流している。まさしく「パンデミック」の風景であるが、このパンデミックは各社会が内包する脆弱性を片端から明らかにしつつある。わが国の診療現場においても、少なからぬ数の「システムエラー」が明白になったが、その1つに「日常診療において『発熱患者』に対してどのようにワークアップすればよいのか、きちんと理解して診療している医師は決して多くない」という不都合な事実がある。卒前の医学教育において、疾患ごと・臓器ごとの縦割りの教育を受け(そのメリットが幾分かは存在することは、旧世代の医学教育を受けた者としては、いちおう留保をつけておきたいところではあるが)、卒後の臨床現場では多くはon-the-job trainingの形で、教える側の医師の専門性に大きく偏った教育が施される現状であれば、今後もしばらくは慣性的に現状が維持されるのではないかと悲観せざるをえない。

 そのような状況で出版された本書は、「遷延する発熱=不明熱」ならびに「不明炎症」という、非常にありふれていながらぞんざいな扱いを受けてきた症候に対して、多くの分野の専門家が寄稿する形でまとめられた1冊であり、まさに“with COVID-19”の一著としてふさわしい内容である。編者の國松淳和先生(p.129)はすでに類似テーマで『外来で診る不明熱—Dr. Kの発熱カレンダーでよくわかる不明熱のミカタ』(中山書店、2017)、『「これって自己炎症性疾患?」と思ったら—疑い、捉え、実践する』(金芳堂、2018)などのスマッシュヒットを飛ばしておられるが、今回のレジデントマニュアルは過去の単著よりもやや基本的なレベルに読者対象を絞っており、「レジデント」が踏まえておくべき内容として適切と思われる。一方で、「コアな國松ファン」にとっては、やや食い足りない感じも否めないが、そういう読者に向けては國松節全開の10章「とにかく全然わからないとき」、付章「こっそり読みたい『不明熱マニュアル外伝』」が準備されている。ただし、付章については「コアな國松ファン」は立ち入り禁止の札が立っているので、そういう意味でも「こっそり読みたい」。

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目次

『総合診療』編集方針
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 1991年に創刊した弊誌は、2015年に『JIM』より『総合診療』に誌名を変更いたしました。その後も高齢化はさらに進み、社会構造や価値観、さらなる科学技術の進歩など、日本の医療を取り巻く状況は刻々と変化し続けています。地域医療の真価が問われ、ジェネラルに診ることがいっそう求められる時代となり、ますます「総合診療」への期待が高まってきました。これまで以上に多岐にわたる知識・技術、そして思想・価値観の共有が必要とされています。そこで弊誌は、さらなる誌面の充実を図るべく、2017年にリニューアルをいたしました。本誌は、今後も下記の「編集方針」のもと、既存の価値にとらわれることなく、また診療現場からの要請に応え、読者ならびに執筆者のみなさまとともに、日本の総合診療の新たな未来を切り拓いていく所存です。

2018年1月  『総合診療』編集委員会

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基本情報

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総合診療
31巻1号 (2021年1月)
電子版ISSN:2188-806X 印刷版ISSN:2188-8051 医学書院

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