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臨床医学の父 ウイリアム・オスラー先生(1848-1919)は、「肺炎は老人の友」という言葉を遺した。当時、人間は歳をとって寿命に達した時に肺炎で亡くなる、というのが医学的事実だったからだ。抗生物質がまだ発見される前の時代であった1919年12月、オスラー先生自身、英国オックスフォードの自宅において、肺炎の合併症で亡くなった。
しかしその時代背景を調べてみると、1918年から新型インフルエンザのパンデミックがあり(現代では「スペイン風邪」と呼ばれている)、世界で多数の死者が出ていたのだ。オスラー先生の命を奪った肺炎のトリガーになったのも、インフルエンザだった可能性が高い。
翻って、2019年12月に確認され、現在パンデミックになっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。これによる肺炎は、世界中で多くの人命を奪っている。SARSやMERSでの経験で訓練していた台湾や香港、韓国などを除いて、ほとんどの国の政策担当部門が、このパンデミックに対して後手に回った。そのような状況の中、誠実に患者診療を続けているのが医療者である。医療者は様々な役割を担って、今このパンデミックの最前線に立っている。
本特集では、100年ぶりのパンデミックにおけるジェネラリスト診療の助けになる企画、すなわち「肺炎診療のピットフォール」をテーマに取り上げる。肺炎はCOVID-19の最も重要な病態であるが、多岐にわたる診療ピットフォールがある。それぞれの項目では、ピットフォールCaseの紹介、臨床上の問題点、診断・治療・予後予測のピットフォール、重要ポイントのまとめの提示をお願いした。
本特集が最前線の医療者の助けになれば幸いである。
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