総合診療 28巻8号 (2018年8月)

特集 80歳からの診療スタンダードUp to Date—Silver Standard

片岡 仁美
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超高齢社会において、診療ガイドラインをどのように考え、どう使いこなすかは重要な課題です。本特集では、特に80歳以上の高齢者に多いプロブレムについての診療ガイドラインを、高齢者の外来診療の目線でまとめてみました。高血圧、糖尿病、骨粗鬆症、COPD/喘息、認知症、安定狭心症&慢性心不全、脳卒中再発予防等々、高齢者にとってのcommon diseaseのみならず、高齢者の転倒、尿失禁、誤嚥性肺炎、意思決定など、日常診療で重要なプロブレムを網羅しました。高齢者の「病気を診る」のではなく、高齢者を「トータルに診る」ための一助になればと考えます。また、コラムは「高齢者診療トピックUp to Date」として、ポリファーマシー、マルチモビディティ、CGA、ユマニチュードなど、さまざまな観点から高齢者診療のトピックを解説しました。今後ますます必要となり、総合診療医の活躍が期待される「高齢者/超高齢者診療」という切り口で、今月は診療スタンダードについて考えます。

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 「ガイドラインは絶対に守らないといけないのか?」「ガイドラインに拘束力はあるのか?」「ガイドラインと訴訟との関係は?」等々、根拠に基づく医療と診療ガイドラインに関連して、さまざまな疑問や誤解が多い。

 本稿では、診療ガイドラインの基礎になっている“科学的根拠に基づく医療”からガイドライン作りの手法を紹介することで、このような疑問や誤解に応えたい。

【80歳以上の高齢者の外来診療 ここがポイント!】

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高齢者高血圧の特徴

 高血圧の有病率は加齢により顕著に上昇し、65歳以上の高血圧有病率は50%を超える。高齢者の高血圧発症は、非高齢者の高血圧に較べ収縮期高血圧(拡張期は正常以下の高血圧)が増加するなどの特徴がある。また、高齢者の高血圧では血圧が変動しやすく、白衣高血圧が増えるため、家庭血圧計による血圧測定が、診断や治療に重要となる。起立性低血圧、食後低血圧などを伴う高血圧も増加し、転倒・骨折の原因となるため、ふらつき等に関する問診が重要となる。

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治療に入る前に

 近年、2型糖尿病の患者数は増加の一途をたどっており、そのなかでも高齢者の占める割合が大きくなっている。高齢者の糖尿病患者には、若年者の糖尿病患者とは違った問題点があるが、今後より一層、高齢者糖尿病患者の割合が増えることが予想されるため、適切な対処が求められる。

 治療方針を考えていくうえで、まず高齢者総合機能評価をしなくてはいけない。すなわち身体機能、認知機能、精神・心理機能、社会・経済状況の評価である。2016年5月に日本糖尿病学会と日本老年学会の合同委員会により高齢者糖尿病の血糖コントロール目標が作成されたが、ADL(activities of daily living ; ADLは着衣、移動、入浴、排泄などの「基本的ADL」と、買い物、食事の準備、服薬管理、金銭管理などの「手段的ADL」に分けられる)や認知機能により、治療目標が変わってくる(図1)。目標のHbA1cの上限が緩和され、下限が設けられる症例もあるため、症例ごとに正確に状態を把握して管理目標を設定していき、そのうえで以下に留意しながら治療を行っていく。

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わが国は超高齢社会

 わが国の人口のうち、65歳以上の割合は27.3%、そのうち前期高齢者は13.9%、後期高齢者は13.4%であり(2016年)、2065年には約2.6人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上と予測されている。2016年の日本人の平均寿命は、男性80.98歳、女性87.14歳と、いずれも80歳を超えている。一方、健康寿命では、2016年時点で男性72.14歳、女性74.79歳であり、健康寿命と平均寿命の差(不健康な期間)は、前回の調査に比べてわずかに縮まり、男性8.84歳、女性12.35歳であった。不健康な期間では、要介護等または入院することで、QOL(quality of life)の低下をきたす。

 要介護状態とは、寝たきりになったり、自立した生活を送ることができない状態を指す。その原因の多くは、脳血管障害や認知症であるが、関節疾患や骨折・転倒が原因となっている場合も多く、特に女性の場合は両者を合わせると、原因の1位となる。要介護の原因となる骨折の多くは、骨粗鬆症によるものであり、特に足の付け根、すなわち大腿骨近位部骨折の受傷が多くを占めている。超高齢社会となったわが国では、この骨粗鬆症による骨折を防ぐことが重要な課題である。

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 わが国においては、高齢化社会が進行中であり、喫煙と加齢を背景にCOPDの発症が増加している。一方、喘息においても、喘息死は2011年の2,060人から2016年には1,454人と減少しているが、その約90%が65歳以上であり、高齢者への対応が大きな課題と捉えられている。

 本稿では、高齢者のCOPDと喘息への対応を「COPD診断と治療のためのガイドライン第5版(2018)」1)と「喘息予防・管理ガイドライン(2015)」2)の内容に沿って概説する。

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 わが国の2012年時点での高齢認知症者は462万人と推計され、有病率は15%で、増加傾向にあることが報告されている。本稿では、2017年に改訂された「認知症疾患診療ガイドライン2017」1)から、ガイドライン作成の経緯、認知症の診断、認知症の治療についてその内容を紹介する。

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虚血性心疾患の一次予防ガイドライン

 虚血性心疾患の危険因子としては、高齢、家族歴、高血圧、糖尿病、喫煙、脂質異常症、肥満、メタボリックシンドローム、CKD(慢性腎臓病)、精神的・肉体的ストレスなどが挙げられる。

 本稿では、このうち高齢患者でも、重要と思われる因子について述べる。

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 人生の晩期に頻発する脳卒中は、片麻痺や失語、認知症という難治性の後遺症を残し、本人や家族を悲観に暮れさせる。わが国では脳卒中は、5人に1人が生涯で経験する疾患であると疫学調査で示されている。そのなかで機能的後遺症により、自宅に戻れない「要介護3」以上に転落する患者は少なくない。

 本Caseのように、脳梗塞発症後にかかりつけ主治医に歩いて再会できたのも、脳梗塞超急性期治療が、この1〜2年の間に目覚ましく進歩しているためである。脳卒中の症状について、市民や救急隊に対しても啓発が進み、脳卒中センターに迅速にバイパス搬送され、発症後4.5時間以内のrt-PA(アルテプラーゼ)静脈投与による血栓溶解療法、また残存ペナンブラ救援療法としての機械的血栓除去カテーテル術をハイブリッドさせる治療、さらに高血圧性脳内出血に対して迅速な降圧療法や抗凝固薬の中和療法による止血療法により、死亡率は改善している。とはいえ、脳卒中は亜急性期以降も再発率が非常に高く、再発により再起不能の寝たきりや、死亡に至る症例が多い。

【80歳以上の高齢者のプロブレムへのアプローチ】

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 転倒骨折は、寝たきりの3番目の原因である。

 骨折予防効果のある骨粗鬆症薬が登場して久しいが、依然として大腿骨頸部骨折は増加している。高齢人口の伸びを考慮しても、骨折の原因の8割以上を占める転倒の予防対策が不十分であることは明らかである。

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CaseⓆの答え

Ⓐ夜間頻尿に関しては、いろいろなことを考えなければならない。本稿にて、その答えを含めながら解説する。

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誤嚥性肺炎とは

 誤嚥性肺炎(嚥下性肺炎)は、嚥下機能の障害により食物や口腔内容物が下気道へ流入することにより生じる肺炎である。年齢が高くなるにつれて誤嚥性肺炎の割合は増加し、高齢者肺炎の多くは誤嚥性肺炎である(図1)1, 2)。高齢者では、市中肺炎、院内肺炎、医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare associated pneumonia : NHCAP)のいずれにおいても誤嚥は重要なファクターであるが、特に医療・介護関連肺炎の主体をなすのは、高齢者の誤嚥性肺炎と考えられている3)

 誤嚥の危険因子として、一般的に、脳血管障害、中枢神経系の変性疾患およびParkinson病、鎮静薬・睡眠薬などの薬物投与、認知症、口腔衛生の不良、気管切開、人工呼吸器使用、免疫低下状態、うつ状態などの精神疾患、ADL(activities of daily living)低下、食道の通過障害などが挙げられるが、高齢者はこれらの因子の多くを有する。

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 自分の将来に関しては自分が決定権を有していることは、自明の理である。これは医療の場においても当然成り立っており、何人も自分の意に沿った医療を受ける権利がある。

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◦ポリファーマシーと薬剤有害事象のリスク

 高齢者診療では、マルチモビディティ(multimorbidity)のため、どうしてもポリファーマシー(polypharmacy)になりがちである。ポリファーマシーは薬の有害事象のリスクとなり、特に転倒や骨折のリスクとなることがわかっている。以前私たちが行った研究で、高齢者の救急入院のうち少なくとも5%は、薬の有害事象が原因であったことが判明した。そのうち多くの患者さんでポリファーマシーを認めた1)

 つまり高齢者では、腎機能や肝機能の低下、体内の脂肪割合の増加、そして血清アルブミン濃度の低下などが原因でポリファーマシーとなると、薬剤相互作用なども加わり、薬の有害事象のリスクが高まるのである。

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◦日本におけるマルチモビディティ

 マルチモビディティ(multimorbidity)とは、いくつかの慢性疾患各々が、病態生理的に関連する・しないにかかわらず併存している状態であり、診療の中心となる疾患を設定しがたい状態をいう。

 たとえば、心房細動、心不全、骨粗鬆症、転倒傾向、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、うつ状態を伴う血管性認知症が、併存するような場合である。マルチモビディティ状態では、どの科の専門家が中心となるべきかが明確になりにくく、ケアが科別に分断され、容易にポリファーマシーや予期せぬ入院などを生じやすい。

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◦CGAとは?

 高齢者総合機能評価(comprehensive geriatric assessment :以下CGA)は、疾患や障害のある高齢者に対して、医療、社会、精神・心理、機能的観点から総合的に評価を行う手法で、通例は介入を伴う1)。そのセッティングは入院、救急、外来、在宅、施設などさまざまで、欧米ではトレーニングを受けた老年医や認定看護師を中心に、多職種チームで行われることが多い。具体的には、医学的情報の他、ADL(activities of daily living)、栄養状態、家庭環境など多面的に情報収集・評価を行い、しばしば患者や家族も巻き込んで、介入計画を作成する。

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▶ユマニチュードは、関係性に基づくケア(relationship based care)である。

▶4つのコミュニケーションの柱を同時に用いる、マルチモーダル・コミュニケーションである。

▶情報学的に定量でき、人工知能などを用いた評価とコーチングが可能である。

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本問題集は、今月の特集のご執筆者に、執筆テーマに関連して「総合診療専門医なら知っておいてほしい!」「自分ならこんな試験問題をつくりたい!」という内容を自由に作成していただいたものです。力試し問題に、チャレンジしてみてください。

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 わが国で公開された診療ガイドラインを収集し、評価選定のうえ、著作者の許諾に基づき掲載しているMindsガイドラインライブラリ1)を活用されている方も多いでしょう。同ライブラリに本文が掲載されているガイドラインは222、登録ガイドラインは419に上ります。ガイドラインは年々その数が増しており、診療スタンダードをつねにupdateし続けることは、容易とは言えない状況があるでしょう。

 一方、わが国は世界のどの国も経験していない勢いで高齢社会に突入し、日常診療でも“高齢者診療のスタンダード”という切り口は、まさに旬な話題と考えます。

What's your diagnosis?[188]

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病歴

患者:43歳、女性。

主訴:顔面のむくみ。

現病歴:全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus : SLE)で、多剤免疫抑制療法中の患者。入院2日前に人混みに行き、帰りに雨の中を30分くらい歩いた後から鼻汁が出現した。その後から顔面のむくみが出現し、2日経っても症状が改善しないため当院を受診。血液検査で著明な補体低値を認めたため、精査目的で入院した。

ROS(review of systems)(+):鼻汁、咳嗽(軽度で以前と変化なし)、口渇、排尿回数減少。

ROS(-):頭痛、倦怠感、悪寒戦慄、喀痰、咽頭痛、関節痛。

既往歴・並存疾患:

●12年前〜;SLEで治療中(関節痛、発熱、蝶形紅斑、抗ds-DNA抗体・抗核抗体陽性)。

●3年前および2年前;血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura : TTP)を発症し、血漿交換とステロイドパルスなどを施行して、寛解している。

●5カ月前〜:微熱、関節痛、補体低下を生じ、SLEの増悪としてプレドニゾロン(PSL)10mgからプレドニゾロン20mg+ミコフェノール酸モフェチル(MMF)1,000mgに治療強化され、症状は軽快。

アレルギー歴:なし。

薬剤歴:プレドニゾロン20mg、ミコフェノール酸モフェチル1,000mg、エソメプラゾール20mg、レボセチリジン5mg、テルミサルタン40mg、アレンドロン酸ナトリウム35mg/週。

家族歴:母方従兄弟が、重症筋無力症。

喫煙歴:5本/日×20年(41歳、入院時に禁煙)。

飲酒歴:機会飲酒。

患者背景:夫、子ども2人(15歳、13歳)との4人暮らし。

職業:看護師。

みるトレ Special・20

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患者:80歳代、男性。

主訴:発熱、意識障害。

現病歴:約1カ月前に、入所中の施設で心肺停止となり、当院に搬送され療養中であった。全身状態も徐々に改善し、施設へ戻る準備をしているところであったが、1日前から傾眠傾向となった。本日朝から発熱も認め、「意識障害」の原因検索のため血清アンモニアを測定したところ、132μg/dLと高値を示した。また、尿道留置カテーテルが挿入されていたが、1日前の夜から「無尿」となっており、確認したところ閉塞していた。カテーテルを入れ替え、排出された尿の一般検査および培養検査を提出したところ、検査室から尿沈査所見に「多数の結晶を認める」と連絡があった(図1)。

身体所見:GCS(Glasgow Coma Scale)E3V3M5、血圧104/62mmHg、心拍数122回/分・整、体温38.6℃、呼吸数24回/分、SpO2 96%(室内気)。

血液検査:WBC 19,800/μL(Stab 6%、Seg 81%、Lym 6%)、CRP 13.7mg/dL。

尿検査:比重1.015、pH 8.5、蛋白≧300mg/dL、ブドウ糖(-)、潜血(3+)。

もやもや処方の処方箋・5

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今月の処方箋

A病院内科より

•ロキソニン®(ロキソプロフェン)60mg

 1回1錠 1日3回 毎食後

•ムコスタ®(レバミピド)100mg

 1回1錠 1日3回 毎食後

•ネキシウム®(エソメプラゾール)20mg

 1回1カプセル 1日1回 朝食後

•ツムラ六君子湯エキス顆粒2.5g/包

 1回1包 1日3回 毎食前

•マーズレン®S配合顆粒(L-グルタミン+アズレンスルホン酸)0.67g/包

 1回1包 1日3回 毎食後

•ドグマチール®(スルピリド)50mg

 1回1カプセル 1日3回 毎食後

•ガスモチン®(モサプリド)5mg

 1回1錠 1日3回 毎食後

•アルロイドG内用液(アルギン酸ナトリウム)0.5g/10mL

 1回20mL 1日3回 毎食前

•カロナール®(アセトアミノフェン)200mg

 1回2錠 疼痛時屯用 1日3回まで

B皮膚科より

•タリオン®(ベポタスチン)10mg

 1回1錠 1日2回 朝夕食後

•アタラックス®-P(ヒドロキシジンパモ酸塩)25mg

 1回1カプセル 1日1回 眠前

•ヒルドイド®ローション(ヘパリン類似物質)

 体と四肢に1日1回塗布

ジェネラリスト漢方Basics|東西2つの視点でアプローチ・8

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 本連載では以前、漢方において“気”とは、人が死ぬと消えてしまう機能であると説明した。その“気”を高める機能を持つとされる生薬の代表が朝鮮人参だが、本連載タイトルの左上にあるイラストは「オバケ」や「謎の海洋生物」ではなく、まさに朝鮮人参を表している。

 朝鮮人参の学名はPanax ginsengで、「Panax」とは、ギリシャ語の「pan(汎、全)」と「axos(薬)」から成り、“万能薬”の意味を持つ。朝鮮人参は野生株の採取は困難で、主に栽培される。私の住む長野県も朝鮮人参の産地だが、出荷できるまでに4〜6年を要し、採取した後の農地は痩せてしまうため、安定的な供給には広大な農地を要する。このことを考えても、無駄な漢方薬の処方は慎みたくなる。

診察で使える!|急性期Point-of-Care超音波ベーシックス・17

肺炎を疑った時 亀田 徹
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はじめに

肺炎を超音波で診断?

 肺炎の診断は、病歴、身体所見、血液検査、喀痰グラム染色・培養、そして胸部X線で行われます。X線で肺野に浸潤影を認めれば、肺炎の診断はより確かになりますが、X線の精度は決して高くはなく1)、総合的な評価が求められ、必要に応じてCTが追加されます。CTの追加で肺炎の予後が改善するかについては明らかではありませんが、肺炎の診断精度が高まるのは事実です2)

 本邦では、以前より呼吸器領域で、超音波を用いた肺炎の診断について検討が行われていましたが3, 4)、広く普及には至りませんでした。近年Point-of-Care超音波が普及し、診察の一環として、超音波による肺炎の診断が注目されるようになっています。肺炎の診療において、将来Point-of-Care超音波は胸部X線を補うものとなるのか、果たしてX線の代用になりうるのか、近年報告された多くの臨床研究と実例をもとに、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

*本論文中、[▶動画]マークにつきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2020年7月31日まで)。

I LOVE Urinalysis|シンプルだけどディープな尿検査の世界・17

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Case

患者:35歳、女性。

現病歴:年余にわたる倦怠感にて受診。経口摂取は良好で、偏食もない。K 2.1mEq/Lと、低カリウム血症を認めた。

Mg 2.8mg/dL

血清浸透圧 298mOsm/kg

尿K 18mEq/L

尿Cr 98mg/dL

尿浸透圧 869mOsm/kg

オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・20

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CASE

患者:15歳、女性。

主訴:全身の痛み。

現病歴:

●来院7日前:起床時から身体全体の倦怠感が強かった。昼頃には頭痛・嘔気・軟便が出現した。夕方には両手のしびれ感も出現した。

●来院6日前:頭痛は増悪していた。全身の痛みも徐々に自覚するようになった。上肢はしびれ感が強く、挙上できなくなり、両足も重く感じていた。そのため近医の脳神経外科を受診した。頭部CT検査を行ったが、異常はなかった。検査後に当院への受診を勧められ、夕方になって当院救急センターを受診。体温を含め、バイタルサインに異常はなく、身体所見でも神経学的異常はなかった。検査として、頭部CTさらにMRIを行ったが、頭部から頸髄に異常所見はなかった。さらに髄液穿刺も行ったが、初圧は正常であり、細胞数0、蛋白・糖も正常だった。救急センターでは、神経疾患や膠原病では症状をうまく説明できないと考えられ、解離性障害などを鑑別に小児精神科への紹介も検討が必要と判断され、後日総合内科で症状の経過観察を行う方針となり、帰宅となった。

●来院当日:このような全身の痛みは初めての経験で、どこを押しても痛く、頭痛・倦怠感が強いとの訴えだった。学校生活は今まで問題なく、友人関係も良好。母親と別に面談の時間をもったが、家族の問題もないとの本人談だった。気分の落ち込み、興味や喜びの喪失はなかった。睡眠リズムに問題なく、昼間の眠気もない。明らかな先行感染はない。この数年ワクチンは未接種。

既往歴:出生40週2日、出生体重3,740g、成長発達は問題なし。

アレルギー歴:エビで皮膚発赤・掻痒感、ロキソプロフェンで頭痛・吐き気。

社会歴:普通高校1年生、成績は中。学校生活は放送部、軽音部。母・祖父母と暮らしている(父は本人が7歳時に離婚)。

内服歴:定期内服薬はなし。

家族歴:特記すべきことなし。

受診時身体所見:

●バイタルサイン;血圧 107/69mmHg、心拍数 91回/分、体温 37.0℃、酸素飽和度 98%(室内気)。

●頭頸部;眼球黄染・眼瞼蒼白なし、項部硬直なし、jolt accentuationは陰性。

●下腿;下腿浮腫なし。

●皮膚;皮疹なし。

神経学的所見:

●対光反射あり、眼球運動障害なし、眼振なし。

●顔面の運動異常なし。

●聴力左右差なし、肩挙上可能。

●構音障害なし(「パ」「タ」「カ」を明瞭に発音)、呂律難なし。

●腱反射左右差なし、Babinski反射陰性、歩行障害なし。

●両上肢は筋収縮可能だが、動かしたがらず、挙上は不可。下肢の明らかな筋力低下なし。

●感覚;知覚低下はないが、頭部を含め、全身の多くの場所で触れるだけで痛みやしびれなど、不快感を訴える。

受診時検査所見:WBC 7.7/μL、Hb 15.1g/dL、Ht 43.2%、MCV 89fL、Plt 32.3×104/μL、Na 140mEq/L、K 4.1mEq/L、Cl 106mEq/L、Mg 1.9mEq/L、BUN 12mg/dL、Cr 0.49mg/dL、AST 20IU/L、ALT 22IU/L、T-Bil 0.5mg/dL、CRP 0.24mg/dL、TSH 3.1mU/L、Free-T4 1.42ng/dL。

こんなときオスラー|超訳『平静の心』・20

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CASE 1

厚生労働大臣のA氏は、医療システムを改善するための政策導入を日々行っている。

A氏は、専門医の質を向上させるための制度を導入するための専門家委員会を、省内で開催することにした。参加した委員の多くは、大学の教員であり、医師である。しかし、委員会内での討論では、委員同士だけでなく、参加していない医師に対する非難や誹謗中傷などがかなりあった。大臣である議長のA氏は困惑した。

国試にたずねよ・20

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 蓼科の森の中にひっそりと建つ、木造りの小さな家が「ハーバルノート」だ。諏訪中央病院のハーブガーデン(p.1162に写真)をプロデュースした萩尾エリ子さんのハーブショップである。もとは、開拓農家の住まいであったという。

 林を吹き抜ける風が心地よい。店の入り口に置かれたハーブティを味わいながら、商品を眺めることができる。ドライハーブ、紅茶、ハーブティ、アロマオイル、手づくりクラフトを眺めているだけで、心が癒やされてくる。

投稿 GM Clinical Pictures

右膝痛と膝くずれ 吉田 英人
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CASE

患者:30歳代、男性。

現病歴:坂道に駐車してある車に乗り込もうと思ったところ足が滑ってしまい、膝を捻じるような姿勢になった。直後より右膝の痛みと膝くずれを認めたため、救急外来を受診した。

既往歴:なし

内服:なし

アレルギー:花粉症

身体所見:右膝外側部に圧痛あり、膝蓋跳動あり。

膝X線所見:図1

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抄録

 基礎的な診断戦略とされるSystem 1(直観的診断)・System 2(網羅的・論理的・分析的診断)は、総合診療領域を中心に広く使われており、System 1,2はdual process theory(DPT)と総称される相補概念である。精神科領域では、未だSystem 1に近い「従来診断」と、System 2に近い「操作的診断基準」が、あたかも対立構造のようである。しかし、System 1とSystem 2は優劣をつけるべきものではなく、時と場合によって適切に使い分ける、あるいはPivot & Cluster Strategy(PCS)のようにハイブリッドさせることが求められる。

 精神科で「状態像」を決め、そこから「病名」を探る作業は、漠然としたClusterを想起し、時間経過とともにClusterをあるPivotに収束させていく。逆方向のPCSになぞらえることができる。治療においては、フローチャート式の対応ではなく、一種の作業仮説である「見立て」に沿って関与しながら観察し、時間経過や個別性を大事にする精神科的な診療姿勢が、総合診療領域でも効果的だろう。「不確実性への耐性」や「可能性に開かれること」といったキーワードも、精神科診療から総合診療に提供できるよいメッセージになりうる。

#総合診療

#今月の特集関連本

#医学書院の新刊

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 わが国では、高齢者人口が未曾有の速さで増加し、それに伴い「認知症」を有する高齢者が増え、大きな医療・社会問題となっている。認知症高齢者の数は現在、全国に約462万人と推計されており、2025年には700万人を超えると推計される。これは、65歳以上の高齢者のうち、「5人に1人」が認知症に罹患する計算となる(厚生労働省、2015年1月)。

 認知症のなかでも最も頻度の高い疾患がAlzheimer型認知症であり、わが国では治療薬としてドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンが用いられているが、これらの薬剤は投与を続けても認知機能低下の速度を低下させることができないため、認知機能低下の速度を低下させる薬剤、すなわち、早期投与によって進行そのものを修正できる疾患修飾薬(disease-modifying drug:DMT)の開発が活発に行われ、実際にわが国においてもDMTの臨床治験が増えてきている。

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目次

『総合診療』編集方針
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 1991年に創刊した弊誌は、2015年に『JIM』より『総合診療』に誌名を変更いたしました。その後も高齢化はさらに進み、社会構造や価値観、さらなる科学技術の進歩など、日本の医療を取り巻く状況は刻々と変化し続けています。地域医療の真価が問われ、ジェネラルに診ることがいっそう求められる時代となり、ますます「総合診療」への期待が高まってきました。これまで以上に多岐にわたる知識・技術、そして思想・価値観の共有が必要とされています。そこで弊誌は、さらなる誌面の充実を図るべく、2017年にリニューアルをいたしました。本誌は、今後も下記の「編集方針」のもと、既存の価値にとらわれることなく、また診療現場からの要請に応え、読者ならびに執筆者のみなさまとともに、日本の総合診療の新たな未来を切り拓いていく所存です。

2018年1月  『総合診療』編集委員会

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基本情報

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総合診療
28巻8号 (2018年8月)
電子版ISSN:2188-806X 印刷版ISSN:2188-8051 医学書院

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