投稿 Empirical EYE
Pivot & Cluster Strategyと精神科診療のアナロジー—診療領域間の診断教育のブレイクスルー
田宗 秀隆
1,2,3
,
志水 太郎
4
1東京都立多摩総合医療センター 精神神経科
2東京大学大学院医学系研究科 精神医学分野
3東京大学大学院医学系研究科 神経細胞生物学分野
4獨協医科大学病院 総合診療科
pp.1166-1171
発行日 2018年8月15日
Published Date 2018/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429201665
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
抄録
基礎的な診断戦略とされるSystem 1(直観的診断)・System 2(網羅的・論理的・分析的診断)は、総合診療領域を中心に広く使われており、System 1,2はdual process theory(DPT)と総称される相補概念である。精神科領域では、未だSystem 1に近い「従来診断」と、System 2に近い「操作的診断基準」が、あたかも対立構造のようである。しかし、System 1とSystem 2は優劣をつけるべきものではなく、時と場合によって適切に使い分ける、あるいはPivot & Cluster Strategy(PCS)のようにハイブリッドさせることが求められる。
精神科で「状態像」を決め、そこから「病名」を探る作業は、漠然としたClusterを想起し、時間経過とともにClusterをあるPivotに収束させていく。逆方向のPCSになぞらえることができる。治療においては、フローチャート式の対応ではなく、一種の作業仮説である「見立て」に沿って関与しながら観察し、時間経過や個別性を大事にする精神科的な診療姿勢が、総合診療領域でも効果的だろう。「不確実性への耐性」や「可能性に開かれること」といったキーワードも、精神科診療から総合診療に提供できるよいメッセージになりうる。
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.