特集 パーキンソン病大全—あなたのギモンに答えます!
【治療編】
❸進行期の薬物療法と運動合併症
髙坂 雅之
1
1国立病院機構宇多野病院 脳神経内科
キーワード:
進行期パーキンソン病
,
運動合併症
,
レボドパ血中濃度
,
持続的ドパミン受容体刺激
Keyword:
進行期パーキンソン病
,
運動合併症
,
レボドパ血中濃度
,
持続的ドパミン受容体刺激
pp.908-913
発行日 2025年8月15日
Published Date 2025/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218880510350080908
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◦症状の日内変動
ウェアリングオフ:レボドパ(L-ドパ)は十二指腸と空腸上部にある大型中性アミノ酸トランスポーターから吸収され、血液脳関門(blood-brain barrier : BBB)を通過する。脳内に移行したL-ドパは主にドパミン神経細胞に取り込まれ、芳香族アミノ酸脱炭酸酵素によりドパミンに代謝され、神経終末から線条体のシナプス間隙に放出される。ドパミン神経細胞の変性が進行すると、代謝の主体はセロトニン神経細胞に移行する。セロトニン神経細胞には、ドパミン神経細胞のようなシナプス間隙のドパミン濃度の調整機構がないため、線条体のドパミン濃度はL-ドパ血中濃度に依存して変動するようになる。L-ドパの血中濃度半減期は60〜90分と短いため、服用数時間後には線条体のドパミン濃度は低下し、薬効が減弱する(図1Ⓐ)。これをウェアリングオフと呼ぶ。off時には運動症状の増悪に加え、アパシー、うつ、不安、疼痛などの非運動症状が出現、増悪する場合がある2)。
delayed onとno on:L-ドパの吸収は、嚥下障害、胃排出能低下、胃内pHの影響を受ける3)。また、食事由来のアミノ酸は十二指腸と空腸上部の大型中性アミノ酸トランスポーターでL-ドパと競合し、L-ドパの吸収速度や吸収量を低下させる。そのためL-ドパを服用しても、効果の発現が遅延するdelayed on(図1Ⓑ)や、服用後も効果が得られないno onが生じる(図1Ⓒ)。

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