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CASE
患者:15歳、女性。
主訴:全身の痛み。
現病歴:
●来院7日前:起床時から身体全体の倦怠感が強かった。昼頃には頭痛・嘔気・軟便が出現した。夕方には両手のしびれ感も出現した。
●来院6日前:頭痛は増悪していた。全身の痛みも徐々に自覚するようになった。上肢はしびれ感が強く、挙上できなくなり、両足も重く感じていた。そのため近医の脳神経外科を受診した。頭部CT検査を行ったが、異常はなかった。検査後に当院への受診を勧められ、夕方になって当院救急センターを受診。体温を含め、バイタルサインに異常はなく、身体所見でも神経学的異常はなかった。検査として、頭部CTさらにMRIを行ったが、頭部から頸髄に異常所見はなかった。さらに髄液穿刺も行ったが、初圧は正常であり、細胞数0、蛋白・糖も正常だった。救急センターでは、神経疾患や膠原病では症状をうまく説明できないと考えられ、解離性障害などを鑑別に小児精神科への紹介も検討が必要と判断され、後日総合内科で症状の経過観察を行う方針となり、帰宅となった。
●来院当日:このような全身の痛みは初めての経験で、どこを押しても痛く、頭痛・倦怠感が強いとの訴えだった。学校生活は今まで問題なく、友人関係も良好。母親と別に面談の時間をもったが、家族の問題もないとの本人談だった。気分の落ち込み、興味や喜びの喪失はなかった。睡眠リズムに問題なく、昼間の眠気もない。明らかな先行感染はない。この数年ワクチンは未接種。
既往歴:出生40週2日、出生体重3,740g、成長発達は問題なし。
アレルギー歴:エビで皮膚発赤・掻痒感、ロキソプロフェンで頭痛・吐き気。
社会歴:普通高校1年生、成績は中。学校生活は放送部、軽音部。母・祖父母と暮らしている(父は本人が7歳時に離婚)。
内服歴:定期内服薬はなし。
家族歴:特記すべきことなし。
受診時身体所見:
●バイタルサイン;血圧 107/69mmHg、心拍数 91回/分、体温 37.0℃、酸素飽和度 98%(室内気)。
●頭頸部;眼球黄染・眼瞼蒼白なし、項部硬直なし、jolt accentuationは陰性。
●下腿;下腿浮腫なし。
●皮膚;皮疹なし。
神経学的所見:
●対光反射あり、眼球運動障害なし、眼振なし。
●顔面の運動異常なし。
●聴力左右差なし、肩挙上可能。
●構音障害なし(「パ」「タ」「カ」を明瞭に発音)、呂律難なし。
●腱反射左右差なし、Babinski反射陰性、歩行障害なし。
●両上肢は筋収縮可能だが、動かしたがらず、挙上は不可。下肢の明らかな筋力低下なし。
●感覚;知覚低下はないが、頭部を含め、全身の多くの場所で触れるだけで痛みやしびれなど、不快感を訴える。
受診時検査所見:WBC 7.7/μL、Hb 15.1g/dL、Ht 43.2%、MCV 89fL、Plt 32.3×104/μL、Na 140mEq/L、K 4.1mEq/L、Cl 106mEq/L、Mg 1.9mEq/L、BUN 12mg/dL、Cr 0.49mg/dL、AST 20IU/L、ALT 22IU/L、T-Bil 0.5mg/dL、CRP 0.24mg/dL、TSH 3.1mU/L、Free-T4 1.42ng/dL。
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