連載 「看護」の意味を見つめる 訪問看護の実践から・7
精神科病院への緊急入院—もっと早くできることはなかったか
藤田 愛
1
1医療法人社団慈恵会 北須磨訪問看護・リハビリセンター
pp.1040-1042
発行日 2019年11月10日
Published Date 2019/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686201439
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変わり果てた幸一さんとの再会
幸一さん(仮名,男性)とは8年前,妻の訪問看護をきっかけに出会った。幸一さんは当時70代。精神を患いながら,寝たきりになった妻の介護を1人で担っていた。訪問時は,妻が片時も夫のそばを離れなかったので,介護に伴う幸一さんの悩みを話題にすることはできなかった。そのため,妻と口論になったりして疲れがたまると,当時,幸一さんの家のすぐそばにあった私たちの事務所を訪ねてきた。看護師たちと少し話した後,いつも決まって「さあ,がんばるよ」と笑って帰る後ろ姿を見送った。
5年後に妻が亡くなり,幸一さんは1人暮らしになった。しばらく元気がなかったが,少しずつ立ち直り,「さあ,これからは自由に自分の時間を楽しむぞ」と言って,外出するたびにお土産を買っては事務所に立ち寄り,元気な姿を見せてくれた。その後,事務所の移転があり,幸一さんと会うことはなくなった。
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