連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・160
わが子を抱きしめる愛を,今こそ
柳田 邦男
pp.1068-1069
発行日 2019年11月10日
Published Date 2019/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686201449
- 有料閲覧
- 文献概要
自然界に生きる動物や鳥などの生態を長期にわたって観察し,映像で記録したテレビ番組が放送されると,つい見てしまう。そういう番組はたいてい午前1時とか3時と言った時間帯に放送されるのだが,とくに感動するのは,小動物や小鳥たちが生まれたばかりのわが子を,獰猛な外敵から守るための工夫のこらし方だ。たとえば,北米大陸では,ある小鳥はなぜか大きなハクトウワシが高木の上から睨みをきかす間近な空間のなかの枝に巣を作り,ひなを育てるのだ。ハクトウワシに襲われるのではないかと思うが,そうではない。
専門の研究者が調査したところ,その小鳥はあまりに小さいので,ハクトウワシの餌にはならない。つまり襲われないのだ。ハクトウワシが餌にするのは,大きな鳥やリス,イタチなどの小動物だ。高木のてっぺんからそういう生き物たちをねらっているので,生き物たちは近づかない。小さな小鳥にとっては,安全な空間になるのだ。
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.