看護管理 15巻1号 (2005年1月)

特集 看護管理をクリエイティブに展開する方法

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はじめに

 筆者が看護管理を実践するうえで大切にしていることは,これまで異なる職場で経験してきた多くの問題と,それらを解決するためにとった数々の試行錯誤,また看護界のみならず,管理を担う多くの方々から得た学びなどで形成されている。特に人材育成においては,「人は,やればできる」こと,そして管理者の役割は,その人ができるようになる環境をつくっていくことだと考えて関わってきた。また育つ環境をどのくらいつくるかは,そのスタッフの特性や,求める内容によって変えるなど,スタッフの状況をみて,環境を整える割合を差し引きしながら,スタッフが自律できるように接してきた。与えられた環境のなかで,看護本来の使命を果たすそうした姿勢が,地域貢献をめざし,患者や家族にとって最良の医療や看護とは何かを考えて提供するための方法をつくり出すプロセスとなり,看護管理実践に創造性をもたらしたのかもしれないと感じている。これまでの経験を客観的に振り返り,看護管理者としての今を検証してみたい。

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これからの医療改革の内容

 医療・看護を取り巻く環境は,だれも経験したことのない速さと規模で変化しています。今後も2005(平成17)年度に介護保険制度改革,診療報酬・介護報酬同時改定,2006(平成18)年度には第5次医療法改正が実施されていくなかで,さらなる混乱をひき起こしながら,新たな医療システムへのステップを踏み出そうとしています。

 看護管理者として,この変化にどう対応していくのか。これらに的確に対応していくためには,一連の医療制度改革とその改革がもたらす医療・看護への影響について十分な知識をもつことは不可欠だと考えます。特に2006年度の診療報酬改定は,かなり大規模なものになるはずです。病院数はこの10年間で減少し続け,1990(平成2)年に約1万あった病院数が,9000を切るのもいまや時間の問題です。また,現在100万床ある一般病床は,現状の入院回数を基礎とし,平均在院日数を15日として試算すると,5年後の2010年には63万床にまで減少すると試算できます。急性期医療ではDPCの一般病院への拡大,重症度に応じた臨床機能再編成,慢性期医療では介護保険への一本化,日本版DRGの導入による包括化の進展,一方,精神医療では7万床の退院促進による在宅医療へのシフトは避けられません。

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医療の社会経済的環境と看護の現場の疲弊

 今日,医療の質と経済的効率をいかに両立させるかは,先進諸国における医療制度改革の重要な課題の1つになっている。

 わが国においては,医療費抑制政策として,患者の自己負担金の増加と診療報酬の引き下げが段階的に行なわれてきた。その結果,2002年の国内総生産GDPに対する医療費の割合は7.6%となり,先進国のなかでは英国についで低い値に留まっている1)。また,入院患者の平均在院日数は,1995年には32.8日であったが,2002年には22.2日と6年の短期間に10日以上短縮している2)。さらに2004年には,一般病床に診断群別包括支払い(Diagnosis Procedure Combination: DPC)の導入が始まり,よりいっそう入院期間の短縮が見込まれる。

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はじめに

 現在,日本で聴覚・言語障害による身体障害の認定者は36万人以上にのぼる1,2)

 聴覚は日常生活上の音を瞬時に識別しており3),聴覚障害者が日常生活,特に医療機関受診時に困難を感じていることはすでに報告されている4)

 また,医療者も聴覚障害者と接する際に不安を感じていることが多く5),聴覚障害者への対応に関する調査が行なわれている6,7)。しかし,聴覚障害者自身に関する調査は少ない。また,病院の一般患者への接遇との関連に注目した調査もない。

 本研究では,聴覚障害者の医療機関受診時の不安を健聴者と比較することと,病院の接遇と聴覚障害者への対応の関連から,医療者の聴覚障害者への対応を検討した。

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はじめに

 近年の保健医療を取り巻く環境が大きく変化する中,看護職員(保健師,助産師,看護師及び准看護師をいう。以下同じ。)の業務にも様々な変化が生じている。例えば,目覚ましい医療技術の進歩への対応,医療安全の確保,インフォームド・コンセントへの国民の期待等,山積する多くの課題があり,これらに適切に対応していくためには,看護職員の臨床実践能力の向上を図ることが必須である。特に新人看護職員に対しては,学生時代と大きく異なる環境の中で安全に看護業務を遂行できるようにするために,臨床実践能力を向上させる組織的,体系的な取組が必要である。

 これまでも,旧厚生省において「看護職員生涯教育検討会報告書」(平成4年)が取りまとめられ,卒業直後から概ね3年間の「看護実務研修」について言及されている。しかし,新人看護職員の研修についての明確な記述はなく,現実にも新人看護職員研修について国としての取組は十分ではなかった。

 このような現況を踏まえ,当検討会は,厚生労働省医政局長の依頼を受けて設置され,医療安全の確保及び臨床看護実践の質の向上の観点から,新人看護職員の卒後1年間の看護実践の到達目標及び目標達成に向けた研修体制構築のための指針について,平成15年9月25日の第1回開催以後,全4回にわたって議論を重ねてきた。

 新人看護職員研修到達目標(以下「到達目標」という。)及び新人看護職員研修指導指針(以下「指導指針」という。)の作成に当たっては,検討会の下に看護管理者及び教育・研究者から成るワーキンググループを設置して,たたき台を作成した。さらに,検討会において,医療安全,看護管理に関する専門家の意見,新人看護職員の指導者,新人看護職員等の関係者からのヒアリングを踏まえ,議論を深め,起草委員によって報告書の文言の整理等に取り組むなど,新人看護職員研修の在り方について精力的に検討してきたところである。

 今般,当検討会としてこれまでの議論を整理し,本報告書を取りまとめたので,これを公表する。

 なお,報告書は,第一部において新人看護職員をめぐる現状と課題について述べ,第二部において新人看護職員が卒後の1年間で備えるべき看護技術等を示した到達目標,新人看護職員の指導に必要な要件・指導方法等を示した指導指針を提示した。

新連載 事例と判例で考える病院の看護水準と事故防止・1

転倒・転落 木村 ひでみ
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はじめに

 高齢患者の増加により,医療施設内の転倒・転落事故は増加し,事故,ヒヤリ・ハット事例を集めると,必ず転倒・転落が上位を占めます。ところが,この転倒・転落事故には,患者サイドの要因や環境問題など複数の要因が複雑に絡み合い,これといった有効な対策がなく,看護者も防止に苦慮しているのが現状です。

 そして転倒・転落事故が発生し,不幸にも患者が死亡,もしくは重度後遺障害により医事紛争へ発展した場合,看護体制のレベルに応じて危険性を予見することができたのか(予見義務),危険性に伴い,適切な対策を講じていたのか(結果回避義務)が問われることになります。したがって,医療機関にとって転倒・転落を完全に予防することは難しいという現実があるにせよ,自院の看護水準に応じた対策を講じなければいけません。

 今回は,参考になる転倒・転落の裁判例を2例紹介し,そこから学ぶことができる転倒・転落事故防止の考え方と問題点を,改めて整理してみることにします。

新連載 機能する看護部組織を創る対人関係技法・1

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 看護教育の場から久しぶりに臨床現場に戻ったときに感じたことは,非常に速いスピードで医療の質が変化,あるいは変化せざるを得ない状況が生じているということでした。かつては「患者さんのためにいい医療を提供したい,いい看護を提供したい」ということだけ考え,それが大義名分として十分機能していました。しかし,低経済成長下で,しかも国民医療費が膨張し続け,「いい医療を効率的にしかも安いコストで提供すること」が病院内で至上命令になってきているなかで,コストパフォーマンスを考えた看護の提供が不可欠となってきています。

 さらに,医療が完全無欠ではなく,ミスを犯すことがあるという事実が日々明らかにされ,患者側の医療不信が顕在化してきています。そして,「在院日数の短縮化で追い出されるのではないか」「この病院はほんとうに安心して療養できるところなのか」と不安を抱きながら入院してくる患者さんたちと日々対峙し看護を提供する看護師たちにとって,現場はかなりストレスフルな場として認知されてきています。現場の看護師の抱えている大変さは,一言でいうならば,時代が求める医療や看護に対して現実が追いついていないところからきているといえるのではないでしょうか。

新連載 私のこだわり看護管理 パート2 〈看護現場学〉クオリア創造に向けて・1

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 「お先に」といって,看護部を一足先に退室する。夜8時,まだ副部長らは残って仕事をしている。一体いつになったら定刻で仕事を終えて帰宅できる日が来るのだろうか。むなしさが押し寄せてくる。どこかから声が聞こえてくる。「その日のためにいま,備えているんじゃないか,覚悟したんでしょ!」そうだ,そうなのだ。やがてくるその日のために私ができることをやるだけ,そう決めて引き受けた看護部長職なのだ。いま,私の頭の中で繰り返している言葉である。

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 2004年は,天災や虐待,子どもの殺人など凄まじいニュースばかりが流れ,誰しもが世の中どうなっていくのだろうという不安を抱いた年だったと思う。そんな状況のなかで,『砂漠でみつけた一冊の絵本』が出版された。「おとなこそ絵本を」というキャンペーンを展開されている柳田邦男さんの著書である。

 柳田さんが,次男洋二郎さんの「死」について最初に書かれたのは1994年のことだった。それから10年。息子さんの死を悼みつつも,ご自身の人生を模索されていたのだろう。失意のなか,柳田さんはかつて息子さんたちに読み聞かせた童話や絵本を手にされた。それらを読んでいるうちに,「絵本のもつ力」という新しい発見をしたのだ。

連載 組織マネジメントツール バランスト・スコアカードの基本のキ 実践編[最終回]

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システム思考

 私たちは日常生活の中でよく「システム」という言葉を使いますが,システムとはいったい何でしょうか? 少しわかりにくいですが,「システム」とは,その構成要素,構成要素間の連結,達成しようとする目的によって定義されます。達成する目的が変われば,たとえ構成要素に変化がなくても,構成要素間の連結は組み直され,新しいシステムが誕生します。

 20世紀後半のヘルスケアシステムは,医療に対するアクセスの保障を目的としたシステムでした。21世紀のヘルスケアシステムは,安全性・有効性・患者中心志向・適時性・効率性・公正性を保障し,ヘルスケアに関する情報を十分に伝達し,人々の健康の維持という一つの目的に向けて,さまざまな構成要素(診療所,病院,薬局,リハビリ施設,介護施設,臨床検査ラボなどのサービス提供機関,教育機関,保険支払機関,サービス消費者など)が患者と情報の移動を介して相互に結びつけられたものでなければなりません。

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 今日,患者の安全を推進することは優先課題であるが,医療上のエラーや有害事象への対策を評価するためには,それらの事象を把握する効果的な方法が必要である。この論文では,有害事象の把握方法について,それぞれの特徴と手法に対する評価を概観し,またヒューマンエラーに関する認知論的枠組みを提示する研究を紹介する。

 まず,有害事象把握方法には大きく分けて,人が記録・観察する「手動的方法」と機器を用いた「自動検索」があり,手動的方法には,自発的報告と非自発的報告が含まれる。それぞれの方法の長所と短所を表にまとめた。各方法の概要は以下に示す。

連載 市場原理に揺れる米国のマグネットホスピタルで奮闘する看護師たち―メイヨーメディカルセンターでの研修でみたもの[4]

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 筆者は,3年間看護師として勤務した後,ルーマニアで2年間ボランティアとして援助活動を行なった。世界各地の紛争地域や自然災害などの被害地域を巡るなかで,災害や戦争を経験した人々への援助,特に看護師としての援助の重要性に気づき,看護学を学び直したいと,大学の保健学科看護学専攻に進学した。そんななか,メイヨークリニック(以下,メイヨー)で研修があることを知り,常に災害への脅威にさらされ,そして特に戦争に関しては,いま渦中にある米国の大病院で,人的・自然災害に対してどのような医療的取り組みがなされているのかを知りたいと思い,参加した。

 マグネットホスピタルという評価を得ているメイヨーでは,救急・災害医療に対しても数え切れないほどの役割をもった人々が合理的なシステムの中で協働し,その中でも看護師たちは,自分たちの専門性を発揮し,また専門職としての誇りをもちながら職務に従事していた。日本では,阪神・淡路大震災以降,災害看護が脚光を浴び始めているものの,看護職が専門的にそういった領域で活躍していることがまだまだ少ないのが現状である。しかしながら,災害看護や救命・救急看護の今後の発展は早急に望まれており,今回,実際に目にしたメイヨーの看護師たちの活動がその一助になると思われるので,報告したい。

連載 自律してケアを提供できるセルフマネージングチーム[10]

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 セルフマネージングチーム制は,ソフトシステム方法論によるアクションリサーチを行ない,問題状況を明らかにし,「プリセプターグループ制からセルフマネージングチーム制への転換。チーム制の中で,メンバー間が個人の意思決定を支えるシステム」を創出するという根底定義をもとに,開発されたことは既に述べた。アクションリサーチの利点は,変化の軌跡をたどり,比較できることである。セルフマネージングチームを通して,個人はどのような学びを得ただろうか。また,プリセプターグループ制と比較して,個人にどのような変化をもたらしているのだろうか。さらには,1年目と2年目では変化に差が出るのだろうか。

 今回は,セルフマネージングチームにおける個人の学びと,問題状況の変化について述べる。

基本情報

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看護管理
15巻1号 (2005年1月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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