看護管理 15巻2号 (2005年2月)

特集 新潟県中越地震・台風23号災害への救援活動

阪神・淡路大震災の教訓は活かされたか

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看護職はいつなんどき災害医療の最前線に立たされるかわからない。地球上に安全地帯はないからだ。2004年10月23日の新潟県中越地震の余燼も収まらぬ同年暮れにはスマトラ島沖地震・インド洋大津波が勃発し,18万人にものぼる不明・犠牲者をもたらした。そのとき現地の医療機関はどう動いたのか。阪神・淡路大震災の貴重な体験と教訓は活かされたか。今回は中越地震の被災地で奮闘した長岡赤十字病院と魚沼病院を訪ねて院長・看護部長から当時の生々しい状況について聞き,災害医療の専門家らに「そのとき」に備えるための危機管理の基本を尋ねた。今年は阪神・淡路大震災の大惨事10周年である。

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土曜日でしたから,病院も休みで私は自宅にいました。そろそろ夕食をというときに,突然下から突き上げるような大きな衝撃があったのです。家中でガーッと音がして何がなんだかわからなかったですよ。新潟地震,日本海中部沖地震を現地で経験しましたが,直下型地震は初めてでした。

 慌てて素足のまま靴を履き病院に駆けつけました。200人の職員のうち,当直者は医師,看護師,事務職,夜警が1人ずつで,そこへ28人の職員が駆けつけました。いちばん遅かったのは道路が寸断されて来れなかった看護部長です。

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筆者は,昨年2004(平成16)年10月23日に発生した新潟県中越地震の「こころのケア」の支援に参加する機会を得た。今回は川崎市との合同チームとしての参加で,新潟県からの要請で「こころのケア」支援を行なうことになった。

 筆者は災害支援は初めての体験であり不安もあったが,少しでも被災者の方々のお役に立てればと思い,希望して参加した。今回の派遣で,災害支援時に考慮しなければならないことなど,学びを得ることができた。災害支援に多くの体験をもたない当院にとって,今回の支援参加の意義は大きい。本稿では主に聖マリアンナ医科大学病院の活動を中心に報告したい。なお活動の概要を表1に示した。

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はじめに

 2004(平成16)年10月20日,大型台風23号は近畿地方を横断し大きな被害をもたらした。当日,大雨洪水警報のなか,降り続いた雨は16時ごろには,猛烈な勢いで山裾から噴き出した。土砂をまじえて支流に集まり,一気に本流の円山川に流れ込んだ。急激に水位は上昇し,濁流となって堤防から溢れ出し,23時12分,円山川の下流で約50メートルにわたって決壊した。濁流はその後,あふれる内水ともども市街地を水没させた。

 今回の台風で公立豊岡病院(以下,当院)は床上浸水するという被害にみまわれた。台風は予報のあたる確率が高く準備性があるが,実際には被害の予測は立たず,自然の猛威を改めて実感することになった。しかし,水と時間の戦いのなかで職員が一丸となって,患者と病院を守ることができた。

 今回の水害で多くのことを体験したので,今後の水害時援助の一助になればと考え,その経過を報告したい。

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何のためになぜ働くのか。就職して社会に出ると,時間が経つにつれ働いていることが当然のようになってしまって,改めてじっくり考えることもあまりないのではないだろうか。

 看護の仕事をするには免許が必要で,その取得のために求められる教育が影響しているのか,看護師には特に強い職業観と使命感を備えている人が多いようだ。「看護師の方々は,所属している病院がどうとかいう以前に,自分の職業を全うするという意識が非常に高い。環境の厳しさや残業の多さには少々の不満はあるようですが,こんなに大変な仕事なのに手を抜こうとはあまり思わないんですね」。国内外のさまざまな組織で,30年以上人事一筋できた高田富士雄さんは,「医療提供組織が企業と比べて,あまり経営を意識せずにやってこられたのは,職業への使命感が強い医師や看護師が組織の大半を占めていることも大きな理由ではないか」と指摘する。病院など医療提供組織の使命とは,何よりも医療の提供であり,医療者の職業使命そのものと重なる部分が多いからこそ,企業の経営管理のように組織使命や理念が重視されなくても,自らの職業使命が行動を律し組織を成り立たせてきたのかもしれない。

連載 事例と判例で考える病院の看護水準と事故防止・2

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はじめに

 納得して医療を受けたい,受ける医療は自己で決定したいという患者の権利があるということは疑う余地もなく,医療者も医療行為を行なうにあたってのインフォームドコンセント(IC:Informed Consent)は必須であると認識している。その一方で,近年の医療裁判では,説明義務違反による医療側の責任が問われることが少なくない。その背景には,医療者にICの基本理念が理解されていなかったり,説明を尽くしたとしても,患者にはほとんど理解されていなかったりなどという現実もある。医療行為の説明にあたっては,医師にその義務と責任があるが,医師だけで担いきれるものではない。本稿は看護としてこの問題と現実をどのように受け止め,関わりとその役割を果たすことができるかを考える。

連載 機能する看護部組織を創る対人関係技法・2

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今回は組織の最小単位である“個”に焦点を当てます。「患者の“個”に向き合うには,看護師の“個”の確立が必要である」といわれます。しかし,看護師をめぐる環境は“You are OK”であっても“I am OK”と胸を張って言えないものがあります。まずは自分や自分をめぐる環境を知ることから始め,看護師である自分に自信と誇りをもって働けるための方策を考えていきたいと思います。

看護は感情労働――自分たちの感情を大切にすること

 久しぶりの基礎実習に病棟に出て感じたことがあります。

連載 私のこだわり看護管理 パート2 〈看護現場学〉クオリア創造に向けて・2

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医療現場の特徴・看護現場の特徴

<看護は実践の科学,という矛盾>

 看護は実践の科学である,とよく言われる。看護実践は,机上の論理(一般論)を踏まえつつ,現場では目の前の患者1人ひとりの異なる状況をとらえて(現象論),いまできる最善の看護を提供する。そう考えると,実は,看護は実践の科学という言葉には矛盾がある。

 科学は,個別の違いを捨象して普遍性を考えていくものである。医師が行なう診断とは,診断基準に照らし合わせてその違いを取り除き,合致する点を選択していく過程である。各種検査の結果,臨床症状を診るのは,あくまでも基準に照らして判断するための作業である。一方,看護実践は,さまざまな生活歴を持った個別な患者の1人ひとりに対応すべく,看護の原則論を頭に置きつつも,最終的には限られた資源の中でより健康的な方向へ向かう,個別なニーズに対応する実践の過程である。

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背景

 航空機のパイロットなどにおける研究では,短時間の休憩がパフォーマンスを高め,主観的疲労を減らすといわれている。勤務時間内の休憩においては,実際の休憩時間の長さよりもその頻度やタイミングが重要である。普通,仕事の内容により休憩を計画的に取るか,労働者が疲れを感じたときに取るかが決まる。しかし実際には,労働者が正確に自らの疲労レベルを判断するのは困難であり,しばしばパフォーマンスが低下するまで休憩を取っていない。多くの工場では10時間以上の長時間勤務体制がとられているが,労働者に必要な休憩の頻度,タイミング,時間についての情報はあまりない。

 多くの看護師は10時間シフトではなく,12時間シフトで働いているが,仕事量は減少しておらず,休憩時間の取得については明らかではない。英国の研究では,3分の1以上の看護師が食事・休憩時間を取っていないとの報告がある。同様に,米国の病院での研究でも看護師は仕事量が多いため,しばしば休憩を取っていないことが報告されている。しかし,労働時間と食事・休憩時間を取らないことによる患者安全への影響についての情報はあまりない。この研究では,1)米国看護師の食事・休憩時間の取得状況を記述することと,2)それが患者安全に有害な影響を与えるかどうかをみることを目的とする。

連載 市場原理に揺れる米国のマグネットホスピタルで奮闘する看護師たち―メイヨーメディカルセンターでの研修でみたもの[5]

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国民皆保険が成立していないアメリカでは,1990年代以降マネジドケア型医療保険制度が急速に発展してきた。マネジドケアとは,医療提供の効率化を目的とする技術,およびHMOやPPOといった医療費抑制のための組織注)を意味する用語であり1),この医療制度により,専門医受診の制限,医師の自律性の抑制,医療費削減に伴う入院期間の短縮を余儀なくされている。

 メイヨーメディカルセンター(以下,メイヨー)でも,患者の8割は外来通院の患者であり,入院患者はわずか2割に過ぎない。そのような状況のなかでもメイヨーでは,世界最高の医療の提供をモットーに,多くのスペシャリストが活躍している。今回は,メイヨーの中でも代表的な領域の1つとされる循環器領域のスペシャリストについて紹介したい。

連載 自律してケアを提供できるセルフマネージングチーム[11]

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セルフマネージングチームを円滑に動かすためには,意図的なミーティングの場を必要とする。6~8人のチームを7~8チーム編成して,これらがあたかも1つのチームであるかのように動かすのである。チーム活動を円滑にするための仕組みを言い換えるならば,「場のマネージメント」と言うことができるであろう。

 場のマネージメントは,「場を生成させるためのマネージメント」と「生成した場を生き生きと動かしていくためのマネージメント」の2つからなる。この観点から,「セルフマネージングチームの創出」そのものが,場のマネージメントの1つである「場を生成させるためのマネージメント」ということができるのではないか。また,「生成した場を生き生き動かしていくためのマネージメント」は,これまで紹介してきた多様なツールを用いることや,時間のマネージメントであると言えよう。チーム内での意思決定の仕方に焦点が当てられるとともに,この2つの取り組みの過程が,心理的連帯感を生むプロセスに深い関わり合いをもつのではないだろうか。

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患者には少しむずかしく,看護師にはちょうどいい知識

角田 私は現在,筑波メディカルセンター病院で,副看護部長をしていますが,日本看護協会認定のがん看護専門看護師でもありまして,この『あなたのためのがん用語事典』を,がんの医療に携わる自分たちがこれをどんなふうに使えるかを考えながら,たいへん興味深く読ませていただきました。

宮田 私は,もともとサイエンスジャーナリストで,その後,一般の雑誌編集を経て,医療に関わるようになったのはここ15年くらいです。医学部を卒業しているのですが,実は薬学科,現在の薬学部で,“解剖”をちゃんとやっていませんから医学に関しては素人と思っています。

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はじめに

 各医療機関では,治療に際して同意書(あるいは承諾書)の提出を患者に求めていると思われる。この同意書の意味は,医療行為の前に,患者の有効な同意があったことを確認し,その事実を説明できる書類とするためである。けれども,患者の自己決定権の侵害が問題となったときには,医療側からどの程度の説明がなされたのかが重要となるが,現在,多くの病院がもっている同意書や診療録などにはその情報は記載されていない場合が多い。

 現在筆者は,診療情報をマネジメントする立場から,北里大学東病院における「説明と同意」の適切な運用のために努力している。そこで本稿では,標準的な「説明同意書」の様式とその取り扱い,併せて実際になされた説明内容の記録と,それを患者に交付することを目的とした「説明記録」について述べる。

基本情報

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看護管理
15巻2号 (2005年2月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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