臨床整形外科 20巻4号 (1985年4月)

特集 Spinal Instrumentation(第13回脊椎外科研究会より)

Spinal Instrumentation 金田 清志
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 脊柱は体幹の中心支柱としての支持性と,脊柱管内での神経組織保護の役割を有している.前者にはrigidityとplasticityの矛盾せる機構上の要求が課されている.脊柱のplasticityを犠牲にしrigidity獲得を目的する脊椎固定は,(1)脊柱の構築学的支持性に破綻をきたした場合の脊柱再建,(2)脊柱変形の進行防止と矯正保持,(3)神経障害や疼痛の緩解,などが目的とされる場合に適応がある.このような目的と適応のもと脊椎固定術は20世紀前半から盛んに行われてきた.

 Spinal instrumentationは,前述の脊椎固定の目標がより効果的,より確実に達成されるために行われる.脊柱変形の矯正と固定,損傷脊柱の整復と固定,種々の原因による脊柱機能障害の再建などのために応用されている.Spinal instrumentation surgeryの目標は,従来の脊柱再建の目標を逸脱するものではない.Implantsの応用で脊柱構築学上や機能上に障害が起こったり,その他の器官への副作用が起こってはならない.また過剰なspinal segmentsが固定されたり,生理的彎曲が障害されたり,隣接脊椎要素にimplantsの一部が異常刺激を与えたりすることは容認されるべきでない.脊柱管内には重要な脊髄,馬尾神経,そして神経根が保護されている.不適切なinstrumentationには神経損傷の可能性が常に存在する.

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 Spinal instrumentation(以下SIと略)を主題とする今回の脊椎外科研究会は,まず脊柱側彎症・後彎症に対するposterior instrumentationを中心とする演題と討論から始められた.このsessionにおける発表は表の7題であり,以下に各講演とそれに引続いて行われた討論の要旨を総括する.

 最初に大和田(札医大)は過去10年間にSIを行った側彎症例のうちHarrington法(以下HIと略)を行った36例の成績について述べた.症例の術前の平均側彎度は78.9°であり,術後早期と調査時とを比較すると11.6%の矯正ロスがみられた.初期矯正率については術前100°未満の症例は100°以上の症例と比較して優れており,手術時年齢に関しては13〜14歳の低年齢群が15〜16歳の高年齢群より矯正率において優れていた.

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 脊椎腫瘍はspinal instrumentationが用いられてよい疾患の1つであるが,どんな種類の脊椎腫瘍のどの程度のものに良い適応があるのか,用いるとすればどのような手術法が最適であるのか,などまだまだ問題点が多い.このセッションでは脊椎腫瘍とくに悪性ないし転移性脊椎腫瘍を中心に,本手技の適否が論ぜられた.

 II-8四方らはmyeloma 3,aneurysmal bone cyst1,chordoma 1,巨細胞腫瘍1例の計6例に対し,Harrington法とZielke法を使用した経験を述べ,脊柱支持機能の再建ひいては術後早期離床に極めて有効な手段であると主張した.詳細は論文を参照されたい.

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 このセッションでは主として働きざかりの年齢層での不安定腰椎に対するinstrumentationの適応と成績について討議がなされた.奈良医大岩崎らは無分離すべり症に対するposterolateral fusion(PLFと以下略)単独施行例6例とこのPLFに水野式プレートを棘突起間に設置した6例との成績を比較した結果,プレート併用は後療法の簡略化と骨癒合率,成績の向上に有用だと報じた.しかし,水野式プレートの固定にはボルトを4本使用することを奨めている.PLFは骨癒合が良好であるという従来の定説は必ずしも正しくないことに基づく工夫といえる.

 国立神戸の西林らはunstable backを示すMOB,分離すべり症,脊柱管狭窄,変性すべり,ヘルニアなどに対する後方除圧,PLFとKnodt rod(KRと以下略)を同時に実施した30例の成績をPLF単独例32例と比較した結果,全体にKR併用でやや成績向上をみるものの,術後椎間間隙の拡大は一過性でやがて元に戻る傾向があると述べた.詳細は本文を参照されたい.

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 このセッションは主として分離・辷り症,脊柱管狭窄症に対するPosterior instrumentation,中でも近年側彎症に広く行われているLuque segmental spinal instrumentation(SSI)の本症への応用と手術成績を中心とし7名の演者により発表が行われた(表).各演者の発表の要旨を以下まず紹介したい.

 22席渡辺(京都府立大)は11歳,IV度の高度辷り症に対しhalo-pelvic traction(H-P)→wire reduction(Ōki)→anterior interbody fusion(ABF)→Luque SSIを行い直後より歩行を許可した良好例について述べた.23席里見(慶大)は下垂症2例を含む50%以上の高度辷り症7例の治療経験を報告した.50%〜74%の辷りの症例には逆向きsacral hookに腰椎彎曲にそってcontourをつけたHarrington square rodを使用しposterolateralfusionの後に1期的あるいは2期的にABFを行った.

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 脊椎外傷に対するspinal instrumentationについては多くの報告がある.このセッションでは演者らの行った色々なinstrumentが報告され討論された.

 各演者の要約を記す.

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 このsessionでは頸椎のinstrumentationが8題とりあげられた.使用された材料は金属プレート(前方及び後方),ワイヤー(後方),L-rod(後方)及びceramicsである.

 小山ら(日大)はoccipito-cervical fusionに際し,AO指用L型アングルプレートを用いて後頭骨と移植骨片との固定性を確実とし,良好な結果を得た3症例を報告した.ただ頸椎部では移植骨をワイヤーで固定するのみであるので,さらに強い内固定を工夫する必要があることを指摘している.

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 セッションVIIでは各種InstrumentationのBiomechanicsに関する実験的研究4題が発表された.InstrumentationとしてはHarrington system,LuqueやZielke instrumentationならびに演者らの独自のものが対象とされ,損傷脊柱に用いるに当っての設置条件や固定効果をbiomechanicalに明らかにせんとしたものであった.

 45席の貴島らはHarrington systemの効果的設置条件を人体脊柱標本と力学的挙動の一致する脊柱シミュレターを用いて検索した.今回はこの後方要素破断脊柱を,①Distraction rodを上下3椎弓部にかけ損傷脊椎の1つ上の椎弓に接点を設けたもの,②Compression rodを上下3椎体よりfullにかけたもの,および③①と②のcombinationのもの,で固定し,前・後屈時の損傷椎体,前縦靱帯,およびrodに作用する力を定量的に解析しrod設置条件を求めた.前・後屈時に損傷椎体および靱帯に作用する力が最も小さくなるrod設置条件は上下椎弓部にcombinationを設置することである.また,rodが外力を最も多く吸収する設置条件は前屈,後屈とも上下椎弓部にcombinationでrodを設置した場合である.

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 本sessionでは前方内金属固定法の5題が論じられた.先ず,Ⅷ-49 Hsuは香港大学整形外科において1980年までに施行された150例のDwyer手術の成績について発表した.103例のpolio-scoliosisではHarrington法(以下H. 法と略)後方固定術の追加が不可欠であるが,全体の平均で72%の良好な矯正率を得,殊に座位バランスが著しく改善,特発性の胸腰椎,腰椎側彎ではH. 法に比し平均3椎は固定範囲が短くてすむ利点があった.合併症は比較的多くポリオで,仮関節4,深部感染4,胸部合併症8があり,殊に深部感染は重篤で金属抜去術など侵襲が大となること,後彎化やstabilityの点で以後はZielke法(以下Z. 法)にきりかえたと述べた.

 Ⅷ-50大谷は神経筋疾患性側彎に対し11年間に応用したDwyer法12,Z. 法3,Z. +H. 法2,内,polio 8,小児期脊損と二分脊椎6,角度は47〜120°の17例について報告した.脊髄麻痺例では矯正率72%と良好であったがpolioでは42.5%で,non-unionのため後方固定術を加えたもの3,深部感染1を経験した.患者の満足度はおおむね良いが,X線所見と必ずしも一致せず,適応や固定範囲決定に慎重を要すると報告した.この2題に多数の質疑応答があった.

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 脊椎の悪性腫瘍は外科医にとっていまだに未解決の課題である.四肢の場合とちがって病巣の広汎切除が実際には困難であり,なんらかの補助手段によって根治性をたかめる工夫が要求される.たとえば放射線療法であり化学療法である.全剔が不可能であれば,せめて痛みや麻痺の原因となる脊髄神経根周辺の腫瘍浸潤を除きたいわけであるが,これまた完壁を期し難い.最後に部分切除された脊柱の支持性再建が残されている.こうしてみるとこのsessionのテーマであるanterior instrumentationというのがこの未解決課題のほんの部分解答に過ぎないことがよくわかる.ことが転移性腫瘍ということになれば,腫瘍病理・腫瘍の拡がりと病期・期待余命などより高い判断がさらに求められるはずである.そこでこのsessionにおける討議はanterior instrumentatinをめぐる技術論やindicationの是非よりも,脊椎における腫瘍外科そのものにむけられていったように思う.たとえば「転移性腫瘍である場合には術前に癌であることを患者に知らせるのか?」「前方から切除といっても,その範囲は限定されるのではないか?」「術後さらに拡がりはすまいか?」「数ヵ月以内に死亡する例にはたして手術は正当化されうるや?」といった議論である.講演内容を紹介しよう.

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 5題の発表があった.

 新潟大本間らは局麻下でinstrumentationをおこなった8例(Harrington法3,Luque法2,プレート3)の経験から,予想よりもはるかに苦痛が少なく全身麻酔と同じ手術ができたと報告した.利点として,高齢や合併症にともなう全麻のリスクの回避,術中の脊髄損傷の早期発見,麻酔医の不要などを挙げた.

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 1982年3月から1984年4月までの約2年間に,29例の側彎症に対しL-rods segmental spinalinstrumentationを適用し,その経験を基に,中等度側彎と高度側彎に分け,それぞれに対する手技的問題を中心に述べた.L-rods S. S. I. は,Harrington Instrumentationと比較して矯正率に差はなかったが,術後の外固定なしにより優れた矯正保持力を示した.しかも中等度の胸椎カーブにおいて最も優れた成績を示した.また,高度側彎にはHarrington Distraction Rodの併用が望ましいと思われた.腰椎カーブにおいては,H. I. と同様,矯正率が高い割にcorrection lossが大きく,後方手術における今後の課題と思われた.本法の最大の利点は強力な矯正保持力であり,外固定を省略できる点にある.しかし,その実施にあたっては,脊髄モニタリングの下に,atraumaticな手術手技の習熟が不可欠であると考えられる.

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 脊椎に対するInstrumentation Surgeryは,現在までに,さまざまの方法が考案されている.側彎症の手術療法においては,Instrumentationの目的を十分に果たすため,個々の症例において最も適切と思われるInstrumenationを選択することが望まれる.近年のSegmental Spinal Instrumentationの進歩を考えるとき,側彎症の手術療法においては,何らかの形のSegmental Instrumentationを行ない,外固定期間の短縮をはかるべきと考えている.現在では,1.singledistraction rodに2個のdistraction hookを装着し,棘突起wiringを加える方法,2.singledistraction rodにsublaminar wiringを加える方法,3.Luque法の3種の方法を主体として選択を行ない,術式を決定している.個々の症例における,手術法の選択要因と,選択の目安,各々の手術法に対する適応について論ずる.

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 Spinal instrumentationは1962年のHarrington法に始まり,主として脊柱側彎症の観血的治療法として研究開発が進められてきた.近年instrumentation surgeryは脊柱側彎症の治療のみならず脊椎外傷(骨折,脱臼),脊椎腫瘍(原発性,転移性),その他の疾患にも広く用いられるようになってきた.

 我々が脊柱側彎症以外にinstrumentation surgeryを施行した症例は37例あり,その内7例がそれほど頻度の高くない脊椎原発性腫瘍に対して施行されている.症例はMyeloma 3例,Aneurysmalbone cyst 1例,Chordoma 1例,Giant cell tumor 1例,Hemangioma 1例であり腫瘍存在部位は胸椎5例,腰椎1例,仙骨1例であった.使用したinstrumentはHarrington 5例,ZielKe2例であった.仙骨のgiant cell tumorに対して仙骨全摘出術施行後,脊柱支持機構再建術に成功した症例を中心に供覧しinstrumentation surgeryの必要性,問題点について考察を加えた.

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 脊椎悪性腫瘍は原発性,転移性に分けられるが,手術療法の目的は腫瘍の摘出,疼痛の除去,脊髄麻痺の改善と予防そして体幹支持機構である脊椎の破壊防止と脊柱の再建である.脊椎腫瘍29例(原発性12例,転移性17例,うち22例は悪性腫瘍)に対しspinal instrumentation surgeryを行った.方法は後方法17例,前方法3例,前後合併例9例であり,後方法ではSSIを加え,前方法ではハリントン法,ジールケ法とセラミック,骨セメント,プレート等で椎体置換や補強を行った.全例に疼痛の緩解がみられ,58%に神経症状の改善をみた.転移性脊椎腫瘍に対しては集学的治療と同時に各種spinal instrumentation surgery,椎体置換術を積極的に導入し,脊柱の再建と強固なstabilityを獲得し,早期離床,早期リハビリテーションが可能となった事は,患者自身の身体・精神的苦痛を軽減し,家族および医療チームにとっても意義は大きいものと考える.

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 1974年以来,31例の転移性脊椎腫瘍例に対してInstrumentを用いた後方固定術を施行してきた.脊髄症状を伴った8例に対しては除圧術も加えた.方法としては,時期的変遷を経て,現在はwiring,L-rod+SSI,Harrington rod+SSI,,Knodt rodなどを転移巣高位に応じて選択使用し,更に補強として,Bone cementを用いている.

 〈結果〉1983年12月現在の生存例は11例で,若干の延命効果が得られたという手応えがある.手術による疼痛の改善は25例中22例,根性の神経症状に対しては,直接の除圧術を加えなかったが,14例中9例に改善または消失を見た.更に総合的なADLの改善が4例を除く27例で得られた.いくつかの合併症も経験したが,重篤なものはなく,あらかじめ適応を明確にし,適切な材料を選択することによって,最小の侵襲で最強の固定が得られるよう工夫するならば満足できる結果が得られる方法と思われる.

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 30例の種々な原因による腰椎不安定症に対するKnodt rod instrumentationを併用した腰椎後側方固定術(KR群)の結果と,腰椎後側方固定術単独施行群(PLF群)25例の結果を比較検討した.KR群の平均年齢は45.5歳,追跡期間は平均1年3カ月であり,PLF群ではそれぞれ45.7歳,2年9カ月であった.骨癒合率はKR群93%,PLF群84%であった.椎間板高はKR群では術直後拡大し,徐々に元に戻っていた.PLF群では狭小化傾向があった.除痛効果はKR群で腰痛53%,下肢痛80%,PLF群で腰痛32%,下肢痛72%と前者が勝り,これに伴ってKR群で良好な臨床成績を得やすい傾向がみられた.すなわちKR群ではgood 67%,fair 17%,PLF群ではgood 48%,fair 36%であった.Knodt rodそのものによる合併症は認めなかった.骨癒合に失敗したmultiplyoperated back(MOB)に本法を施行し,良好な骨癒合を得た.

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 1980年2月から1983年12月までにcombined distraction and compression rod systemを応用した135例の腰椎・腰仙椎疾患の治療成績を検討した.脊柱管内操作による神経除圧(77.8%に施行)と後側方固定の結果,臨床評価は優と良あわせて90%,骨癒合率は93.3%であった.従来のdualdistraction rod systemとX線学的に比較して,combined systemは腰椎前彎の保持に優れ,辷りなどのspinal disarrangementのある程度の矯正と矯正位の保持が可能であった.合併症としてのinstrumentation failureは5例に,looseningが3例にみられた.本法は装着性,安全性でも優れ腰椎・腰仙椎固定に有用な方法であった.

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 Taillardの前方辷り率で50%以上の脊椎辷り症7例(dysplastic 4例,うち2例はspondyloptosis,spondylolytic 3例)を経験した.Spondyloptosis例は尿失禁を主訴とし,外見的には,側彎,腰部皮膚皺,でっ尻,凹足,槌趾がみられた,Dysplastic type特にspondyloptosisは,X線上仙椎上面のドーム化が著明で,他にslip angleの増大がみられた.Spondylolytic typeでは,slip angleの変化が少なかった.Myelogram上は,dysplastic typeは仙椎部以下全体の,spondylolytic typeはL5/S1間の限局性の狭窄像がみられた.

 Spondyloptosis例では,観血的に辷りの整復を試み,一時的には整復できた例もあったが,最終的には軽度の整復しか得られず,また,固定するという点からもその治療に難渋した.60%前後の辷りの最近の4例は両typeとも,sacral hookを逆向きにつけるHarrington法と前方固定術で,術前平均58%の辷りが24%に改善し,固定も良好で満足のいく結果となった.

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 不安定腰椎の整復・固定手術におけるInstrumentationの応用が注目されつつある.Instrumentationを用いることにより,望ましい解剖学的アライメントが再獲得され,最少必要範囲にて確実な強固な固定効果が得られ,早期社会復帰が得られることは意義があるものと思われる.

 私たち高知医大では,不安定腰椎に対し,病態,年齢,障害の範囲を考慮して,年齢の比較的若い腰椎分離症にはTransverse Segmental Wiring法を適用し,一椎間レベルでの狭窄症を合併する辷り症に対しては,私たちの開発したPedicular Screw Spinal Plate法を用い,そして2椎間以上の多椎間レベルでの脊柱管狭窄を合併する不安定腰椎例に対してはL-rods Segmental Spinal Instrumentationを適応している.これらの方法を合せて40例の症例に用いて来たが,いずれも満足のゆく成績が得られているので,その手技,適応,成績等について検討し報告した.

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 胸腰椎部の不安定脱臼骨折に対し,Harrington手術を行い,今回術後6ヵ月以上経過した24症例について検討した.症例は男性20例,女性4例で平均36.1歳,手術までの期間は平均4ヵ月で術後追跡期間は平均2年11ヵ月である.脊椎損傷の内訳ではHoldworthの分類で不安定粉砕骨折18例,脱臼骨折4例などが多かった.Instrumentationはほとんどがdistractionとcompression rodの併用である.術後神経機能の改善は著しくFrankelの評価基準で1段階以上改善されたものは70.6%であった.合併症としてはhookの逸脱が8例にみられた.本法は整復と強固な固定が同時に行え,早期のrehabilitationも可能である.Instrumentationは3 levels above−3 levels belowの方法で行い,上下一椎体までのshort fusionを原則としている.Distraction rodとcompression rodとの併用により,さらに強固な固定が得られる.Rodの逸脱が33%と高率に見られたが成績を左右するものではなかった.

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 〈目的〉胸椎・腰椎脊椎損傷の不安定椎に対するInstrumentation surgeryの手術成績の比較検討を行なった.〈対象〉Harrington法18例,Luque法8例,Harrington-Luque法5例,Anterior rod Instruments法3例,非手術例5例,計39例の脊椎損傷患者.〈方法〉術後6ヵ月以上経過した上記症例に対し,フォローアップし,1)Frankel分類による神経機能の改善,2)averagecorrection angle,Anterior-posterior displacement ratioによるstability,3)Barthel Indexを用いたADL評価,4)術後疼痛を含めた合併症の4項目に亘り検討し,併せてラミネクトミー,Instrumentsとfusionのlevel等の種々の問題点の考察を行なった.〈結果〉脱臼の整復保持にはHarrington-Luque法とAnterior-rod instrumentsが優れており,術後のStabilityはHarrington-Luque法が高い.神経症状の改善にはInstruments間で差を認めない.術後のADL評価では手術例は非手術例に比較し,高度のADL獲得が可能となり,特に不完全麻痺例にその傾向が強かった.

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 1.脊椎・脊髄損傷を,脱臼骨折と椎体骨折に大別し,前者には前方後方同時侵入法による整復・除圧・固定術が選択され,後者には前方除圧・固定は重要であり,後方要素の損傷の程度により後方固定の必要なことを述べた.

 2.過去5年間に受傷後1か月以内に手術的治療を行い,6か月以上経過観察可能であった胸椎・腰椎部損傷110例(脱臼骨折68例・椎体骨折48例)において,主に損傷部の整復・固定状態についてレ線学的検討を加えると共に,完全麻痺32例において全脊柱アライメントと坐位バランスの比較検討を行った.

 3.Ha法におけるhookの外れが全体の20%に存在し,本方法を外傷例に使用する際はsegmental spinous process wiringを加えたtwo distraction rodsが有効であることを述べた.

 4.脊椎損傷例にinstrumentationを行うに際しては,症例を充分吟味し有用な方法を使用することが望ましい.

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 4例の頸椎,頸髄疾患に対して,Luque rodを用いたinstrumentation surgeryを行った.4例中3例は,前方固定が種々の原因で破綻をきたし,それに対するsalvage手術として本法を行ったものであるが,各々充分な固定性が得られた.

 頸椎に対するHarringtonやLuqueなどのinstrumentation surgeryはimplantが大きすぎ,固定の範囲も長大になるなど,一般的には必ずしもmeritがあるとは言えない.しかし,術直後より外固定なしで体位交換や全身管理の必要がある例で,骨破壊や骨脆弱性が高度のため,通常の前方固定や後方固定では,たとえ鋼線による補強を行っても支持性が不充分な場合HarringtonやLuque法の適応が考慮される.

 頸椎疾患に関してはHarrington instrumentationよりLuque instrumentationの方が,応用範囲が広く,変形の矯正もやりやすいなどの点で,より有用であると考える.

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 頸椎前方手術,特に多椎間にわたる前方除圧術を必要とする症例,CPを伴った頸椎症性脊髄症例,不安定な頸椎損傷例などの術後に,頸椎不安定性に起因する移植骨脱転,骨癒合遷延,変形治癒などの不満足例を経験することがあり,早期離床が困難と考えられてきた.そこでこのような症例ならびに術後管理に問題のあるpoor risk例などに対して,fibular strut bone graft,fibular Plate,sapphire screwsによる新しい前方固定法を考案し,SOMI brace,Philadelphia braceなどの簡易な外固定装着のうえ早期離床をはかった.本法施行後6ヵ月以上経過した症例は23例あり,全例骨癒合が完成した.また術後早期の移植骨脱転などの合併症もなかった.危惧されるscrewの脱転については,気管切開後のmild infectionを疑わせた1例にのみ認められたが,他の症例ではみられなかった.

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 胸腰椎脱臼骨折に対し,強力な内固定力を有するHarrington systemが広く用いられるようになってきている.しかし本法の用い方は,人により異なり,主に臨床的経験より論議されている.著者らはHarrington systemの内固定力を力学的立場より評価する目的で,脊柱シミュレーターを作成し,本シミュレーターの力学的特性が,人体脊柱標本のそれと同じである事を確認した.更に本シミュレーターに,Harrington systemを各種の設置条件で設置し,脊柱に外力を加えた時,損傷椎体と周囲の靱帯に作用するモーメント量を測定した.その結果,損傷椎体および靱帯に作用するモーメント量を小さくする—即ち損傷脊柱を安定的に保持する—Harrington systemの設置法は,1)DistractionrodとCompression rodを組合せて用いる.2)Distraction rodと椎弓の間に接点を作る.3)Compression rodに可能な限り多くのフックを設置する.4)損傷椎体より遠位部にフックを設置する事である事,を定量的に明らかにした.臨床的には,損傷椎体の上下3椎弓部にDistraction rodとCompression rodを組合せて用いる事が,最も効果的なHarrington systemの用い方である.

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 5体の死体標本脊椎を用い,これに脊椎の後方要素と椎間板の半分をきり(half injury),さらにこれに椎体の骨切りを追加し(half injury+osteotomy),2種の実験的脊椎損傷を作り,これらにHarrington distraction rod,compression rod,2本のdistraction rodと1本のcompression rodの組み合わせの3種の内固定を行った.これらに屈曲,伸展,側屈,回旋の負荷を生理的範囲内で加え,その動きを立体写真測量法の手技を用いて計測した.固定椎間および損傷の上下椎間の動きを正常椎のそれと比較して3種の固定法の有効性を検討した.その結果,half injuryに対しては3種の固定法はいずれも有効と考えられた.Half injury+Osteotomyにおいては,回旋負荷に対して有効な固定法がなく,屈曲,伸展負荷にはどの固定法も有効であったが,2本のDistraction rodと1本のcompression rodの組み合わせがより有効と考えられた.

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 〈目的〉本研究は胸腰椎損傷に対する各種instrumentationの力学的安定性につき生体力学的立場よりの評価を試みた.〈材料および方法〉リゴラック製椎骨とウレタン樹脂製椎間板よりなる脊柱モデルを用い,前方,後方,および完全破壊モデルの3種を作成した.これらに対し,後方法6種,前方法3種を装着し,3点曲げ試験,捩り試験を行った.また,single Zielkeおよびdual Zielkeに関し,2体の新鮮人屍体脊柱を用い圧縮および捩り試験を行った.〈結果および考察〉後方破壊モデルではLuque 2-2,compression・distraction,Harrington with wiring,前方破壊モデルではdual Zielke,compression・distraction,Luque 2-2,完全破壊モデルではdual Zielkeのみが有効であった.しかしながら,人屍体脊柱を用いた力学試験では,dual Zielkeも捩りに対する固定性はなお十分とは言えずdesignの改良によるより強固なinstrumentの開発が望まれる.

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 成豚(人間腰椎と類似性あり)に脊椎損傷を作成し,著者ら(金田)の開発した新しいanteriorspinal fixation deviceを装着,非損傷脊柱との間で脊柱の安定性を実験的に比較検討した.損傷脊柱は,損傷I:前縦靱帯を温存し,椎体亜全剔とその上下の椎間板および後縦靱帯の切除,損傷II;損傷Iに椎間関節,黄色靱帯,棘間棘上靭帯の切除の2つのタイプを作成した.椎体亜全剔部分には同種骨のstrut graftを行い,左側からanterior fixation deviceを装着した.Instron machineにてflexion,extension,lateral bendingをaxial rotationはtorsional testing machineにて試験を行った.前方後方両要素を破壊した極めて不安定な損傷脊柱は著者らの開発したanteriorfixation deviceにて各方向へのstressでaxial rotationを除き正常脊柱よりも大きなstiffness係数を示し,臨床成績を裏付ける実験結果が得られた.

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 1973年より1983年までの11年間に国立療養所村山病院整形外科でneuromuscular spinalcurvatureに対してanterior instrumentation surgeryを行った症例は17例である.Polio 8例,脊髄麻痺によるもの6例,myogenic scoliosis 2例,tabes dorsalis 1例であり,scoliosis 16例,lumbar lordosis 1例である.年齢は14歳から42歳,男性7例,女性10例である.手術法はDwyer法12例,ZielKe法3例,Zielke法+Harrington法2例である.術前側彎度は47°から120°,術後は5°から85°,矯正率平均57.1%であり,矯正成績は比較的良好である.しかし,患者の満足度は必ずしも良くなく,不満足が3例17.6%であった.合併症ではnon-union 3例17.6%,deep infection 1例5.9%にみられた.

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 新しいanterior spinal implants(dual rod-double screw system)を作成し,55例に臨床応用し,平均2年1ヵ月の経過観察で調査した.症例は胸椎腰椎損傷42例(粉砕骨折38例,陳旧性脱臼骨折4例),先天性腰椎後彎症4例,L4脊椎分離辷り症4例,不安定椎間板変性3例,脊椎腫瘍2例である.神経合併症は49例にあり,40例で椎体切除による椎柱管前方除圧術が行われた.Instrumentationによる固定脊椎数は3椎固定が最も多く,第1腰椎を中心とした胸椎下部と腰椎に多い.分離辷り症ではL4-51椎間固定である.骨癒合は53例96.4%に得られ,2例3.6%が後方から追加固定を受けた.後彎変形矯正は全体では50%,新鮮脊椎損傷例では76%である.神経障害の改善は61.2%で完全回復,30.6%が不完全回復,8.2%が変化なしであった.重度の合併症はなかった.早期離床にも拘らず良好な前方脊柱再建がinstrumentationで達成された.

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 癌の脊椎転移による激しい疼痛や脊髄障害併発例において,一時的にせよそれらを解決し余生を苦痛なく過させるようにすることは意義深いことである.すべての脊椎レベルに対応できるようにmodular systemにてceramic spacerを作製し代用椎体として使用した.症例は計9例10椎体であり,その内訳は,頸椎3,胸椎5,腰椎2,原発は乳癌3,胃癌2,腎癌2,子宮癌,甲状腺癌,前立腺癌各1である.生理的前彎である頸椎,腰椎にたいしてはプレート固定の併用,胸椎にたいしてはspacerをdualに使用し,全例にbone cementが併用された.放射線療法は,前立腺癌を除く全例にたいして併用された.全例術後,疼痛の寛解がみられた.神経症状も全例に改善がみられ,多発性骨転移による下肢病的骨折の例および麻痺出現から手術までに4カ月経過した1例は車椅子生活にとどまったが,他全例は歩行可能状態にまで改善した.術後臥床期間は最長3週間であり,短期離床が可能であった.

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 1969年以来大阪大学整形外科ならびに当科関連病院整形外科において,脊椎悪性腫瘍に対して人工椎体を用いた脊柱再建手術を施行した22例の臨床例をretrospectiveに検討して以下の知見を得た.

 1)悪性腫瘍により脊椎の椎体部分が破壊され疼痛・麻痺を生じている場合,罹患椎体が隣接する2椎体以下で患者の生命的予後が比較的良好な場合には,人工椎体を用いた脊柱再建手術が有効で,その手術効果はterminal stageまで持続する.

 2)人工椎体は単なるスペーサーという意味だけでなく,骨セメントを用いて隣接椎体に固定することによって安定した脊柱が得られる.従って人工椎体は前方の強力なspinal instrumentationと考えてよく,他の内固定器具の併用は原則として必要とせず早期離床が可能である.

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 各種のspinal instrumentationには様々な脊髄損傷の病態を引き起す可能性が考えられた.従って,術中脊髄損傷を引き起したと考えられる手術操作と電位所見,術後の神経症状の推移を検討することは今後のモニタリングを行う上で重要と考えられた.1978年4月から1983年12月まで脊髄誘発電位による術中脊髄モニタリングを行ったspinal instrumentation 28例の電位所見を検討した.電位所見は最大振幅と潜時の変化によって分類した.電位が50%以上低下した3例に,神経学的合併症を認めた,それら3症例の電位所見と神経症状について報告した.それら3例の脊髄障害の原因は1例は伸展,1例は直接的圧迫が考えられた.他の1例に関しては原因が不明であった.

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 脊柱後彎症手術の目的は,第一に神経麻痺の治癒改善,第2にstabilization,第三に後彎変形の矯正である.手術は前方処置を主,後方固定を従とするcombined operationが原則であるが,手術侵襲が大で脊髄に対する精密な処理を行わねばならないため,細心の注意を払ってもなお合併症や問題例の発生が少なくない.著者の経験例を紹介し考察を加える.

 1.脊髄不全麻痺:posterior instrumentation適応と使用法の過誤によるachondroplasia例,6歳(治癒).2.著明な矯正喪失:Harrington distr.rod折損が14歳の特発性後側彎例に,hook脱転と前方支柱移植骨折損が25歳の高度先天性後側彎症例に惹起した,3.後彎領域の延長と増悪:16歳男,Scheuermann病,固定範囲が過短であったことが原因,4.前方distraction rodによる側彎形成:33歳,Scheuermann病例,5.深部感染:25歳,polioによる高度変形例.

基本情報

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臨床整形外科
20巻4号 (1985年4月)
電子版ISSN:1882-1286 印刷版ISSN:0557-0433 医学書院

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