総合リハビリテーション 46巻6号 (2018年6月)

特集 失語症の今

今月のハイライト
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 脳卒中などによる失語症を抱えつつ生きている人の数は全国で約50万人と推計されています.失語症に対しては単に回復期の訓練にとどまらず,長期的な,そして社会参加を見据えた対応が必要です.今日,脳画像検査の進歩による失語症の解明,各種治療法の開発,そしてコンピュータ技術や人工知能の進歩など,期待できることも多くなっています.さらに社会参加支援についても重要です.本稿では,失語症に関する最新の状況を各専門家にご解説いただきました.

言語と脳機能 金野 竜太
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はじめに

 失語症とは脳疾患により言語機能が障害された状態である.言語機能は,音・意味・統辞の3要素によって特徴づけられる1).聴覚的理解には音から言語音を抽出し意味情報を引き出す処理が必要であり,発話には意味を音情報に変換する処理が必要となる.意味をもった言葉の最小単位は単語であり,複数の単語が統辞規則(文法規則)に従って配列したものが文である.音・意味・統辞の3要素が脳内でどのように処理され,その処理がどのように相互作用するのか知ることにより,失語症に対する理解も深まる.

 言語の脳内メカニズムを解明する際に基本となる方法は,脳疾患により失語症を呈した症例に対する神経心理学的検討である.そして,健常者を対象とした研究では,機能的磁気共鳴映像法(functional magnetic resonance imaging;fMRI)・拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging;DTI)といった神経画像を用いることが多くなる.近年では神経心理学的検討と各種脳画像検査を組み合わせた研究も多い.

 本稿ではまず,1800年代から提唱された言語モデルについて概説する.そして,音・意味・統辞に関与する脳内メカニズムについて最新の知見に基づき概説する.

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はじめに

 失語症における言語機能の問題への対応が本格的に行われるようになったのは20世紀半ばからである.脳損傷により障害された大脳機能が回復する場合があると多くの研究者により示されたことが背景にある.機能回復に関する理論的背景については,局在論的な立場からの再構成あるいは再編成という仮説と,全体論的な立場からの再建という仮説とにまとめられる.局在論的な考えでは,損傷された機能は以前と同じ形で取り戻されるのではなく,まったく別の形として出現するとされる.一方,全体論的な考えでは,抑制の解除という考えがあり,損傷を受ける前の状態に機能が再構築されるということになる.失語症の治療的介入も言語をはじめとする機能が消失したと考えるのか,それともアクセスや回収などの機能が低下したと考えるのか,その立場の違い,また立脚する理論的枠組みが局在論か全体論か,など,さまざまな背景によって生まれてきている.

 1970年代以降,失読を対象とした研究から認知神経心理学が急速に発展した.情報処理過程のモデルに基づいて失語症状を分析し,言語処理過程のいずれの部分の障害であるか同定し,保存されている機能についても評価し,そこから治療仮説を立て訓練を実施するというアプローチである.単一光子放射断層撮影(single photon emission computed tomography;SPECT)や核磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging;MRI)などを用いた研究による知見から,人間の大脳が損傷を受けた場合の回復の状況についても解明が進んでいる.さらに厳密な個別の失語症患者の症状の解析に基づくアプローチが提案されるようになった.

 現在行われている失語症に対する治療的介入,言語聴覚療法は,その多くが症状と病巣との関係を前提に,認知神経心理学的な考え方で,症状の基底にある発症メカニズムに基づいて行われる.失語症に対する治療的介入では,1つの視点,立場に偏ることなく,症状の全体を詳細に記述し,整理し,さらにその背景にある障害の基盤を説明できる処理モデルを考えることが重要となる.

 2001年以降,世界保健機関(World Health Organization;WHO)の国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health;ICF)が広まり,障害をより中立的に捉えるという考え方が定着してきている.これは失語症の言語聴覚療法にも影響を及ぼし,脳損傷の結果として生じた機能障害を対象としたものだけでなく,生活場面における言語の使用に関するもの,社会参加を促す働きかけまで,より広い範囲を対象とするようになっている.

 失語症への治療的介入としては,機能障害に対するアプローチ,活動や参加という生活を視野に入れたアプローチなどさまざまなものがある.治療的介入の目標は最終的には包括的な実生活の改善にあるが,機能障害が活動や参加という生活の領域にどのように影響するのかという観点も含めた対応をするためには,的確な機能障害レベルの分析と,それに適合した治療デザインが求められる.機能障害レベルの改善を目指す臨床や研究を継続して進めていく努力が求められている.

 本稿ではさまざまな失語症に対する治療的介入のなかから刺激-促通法,遮断除去法,機能再編成法,Promoting Aphasics' Communicative Effectiveness(PACE),Melodic Intonation Therapy(MIT),意味セラピー,Psycholinguistic Assessment of Language Processing in Aphasia(PALPA),Sophia Analysis of Language in Aphasia(SALA)に基づく治療,Constraint-Induced Aphasia Treatment(CIAT)を取り上げる.

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はじめに

 近年,うつ病の治療として非侵襲的大脳刺激法が社会的に注目されている.特に反復性経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation;rTMS)は,海外において薬物治療抵抗性のうつ病に対する治療効果が認められ1,2),2008年にはアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)によって治療的使用が承認されている3).また,日本においても2017年9月に厚生労働省が経頭蓋磁気刺激装置を医療機器として薬事承認し,2018年度には医療保険での診療が可能になる見込みである.一方,経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation;tDCS)は,2017年6月に選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるエスシタロプラムとの二重盲検無作為化非劣勢試験が行われたが,tDCSのエスシタロプラムに対する非劣勢は示されず,有害事象がより多かったとの報告がされている4)

 また,非侵襲的大脳刺激法(rTMS,tDCS)を併用した集中的言語訓練による失語症治療は,その効果と安全性が国際的にも認められるようになり,ランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)のメタアナリシスにおいてもその有効性が示されている5).このメタアナリシスではrTMSとtDCSのそれぞれのRCTの統合結果を個々には比較してはいないが,図1からわかるようにrTMSのRCTの統合結果では95%信頼区間は0.23〜0.84であり,tDCSのRCTの統合結果では−0.29〜1.13となっているため,rTMSでは有意な効果があるが,tDCSでは有意な効果は認めない可能性がある.ただし,現状ではrTMS,tDCS併用のリハビリテーション治療の効果の差を確認した比較試験は未だに存在しない.現在,rTMS,tDCSの安全性と有効性を直接比較するために,国際的な多施設間RCT(Non-invasive Repeated Thera peutic Stimulation for Aphasia Recovery:NORTHSTAR試験)が開始されている6)

 これらの経緯からもわかるように,今後の非侵襲的大脳刺激法を用いた治療ではrTMSにより多くの注目が集まるだろう.

 当講座では,脳の可塑性を高め,機能的再構築を促す7-9)治療としてrTMSにいち早く着目し,研究・治療を行ってきた.2009年4月には脳卒中後遺症としての失語症に対して,rTMSと言語聴覚士(ST)による言語訓練を併用した新たなリハビリテーション治療を開始し,良好な治療成績をおさめている10).本稿では当院での経験をもとに,失語症に対するrTMS併用集中的リハビリテーション治療の理論と方法,今後の課題について述べる.

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はじめに

 近年,慢性期の高齢の失語症者でも長期にわたり継続的な言語訓練を行うことで発語などの改善が観察されるとの報告がみられるようになってきた1,2).巨人軍名誉終身監督の長嶋茂雄氏がたゆまぬ努力でリハビリテーションを続け,言語機能を改善させ続けている事実は多くの失語症者に希望を与えるものである.しかし,慢性期になっても回復を示す失語症者や,訓練を終了してしまうと機能が低下してしまう失語症者がいるなかで,保険診療上の制約や,高齢化による通院の困難さから,やむを得ず病院での言語訓練を終了にしなくてはならない現状がある.そのため,いつ,誰が,どのような形で言語訓練を継続するかの制度を含め考える必要がある.

 これに対し,information and communication technology(ICT)を利用した遠隔での訓練や人工知能(artificial intelligence;AI)技術を用いた評価機能をもつ言語訓練機器への期待は大きい.一方,言語聴覚士(ST)の数は未だ不十分であり日常業務量は増大の一途をたどっている.そのため,ICTを活用した業務の効率化を図り,本来STに期待されている患者ごとの言語訓練計画の立案および言語訓練に力を注げる環境の整備も必要である.実際,一部のSTは訓練時にiPadで写真や映像,地図,音声の提示等を行うとともに,訓練の記録をiPadで行い訓練計画に活用している.また,STの学会では失語症者向けに開発したアプリによる実践報告もみられるようになってきた3).最近では慢性期の失語症者にロボットを用いた在宅での呼称訓練も試みられており,その効果が報告されている4).さらに海外ではICT機器を用いた言語訓練に関する学術論文も増えてきており,商業ベースのサービスも始まっている〔例えばConstant Therapy Inc.(http://constanttherapy.com/)〕.AIの発展によりコンピュータと音声言語による対話が可能となった現在,言語訓練やコミュニケーション支援のあり方は変革期を迎えつつある.本稿では成人の失語症分野でのICTを用いた言語訓練やコミュニケーション支援の取り組みを紹介するとともに,現段階のICTの利用において最も有用な機能であり,かつ筆者の専門分野でもある音声認識を利用するうえでの注意点を述べる.

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はじめに

 本稿では本邦でよく用いられている「失語症者」ではなく「失語症のある人(々)」という用語を使用する.英語圏では近年“aphasic”という語を名詞としては使用しなくなり,形容詞として“aphasic person”という言い方もほとんどしない.“an aphasic”は,失語症のある人の尊厳を損ない配慮を欠いた表現であるとされる.“aphasic person”も,その人の障害をもってその人のアイデンティティを規定する表現であり,望ましくないとされる1).その代わりに“individual with aphasia”,“person with aphasia”または“people with aphasia”,その略称“PWA”がよく用いられている.本稿でも「失語症のある人」または「失語症のある人々」を用いる.

巻頭言

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 2018(平成30)年医療保険・介護保険同時改定の内容をみると「アウトカム」の評価,指標など成果への要求が鮮明になってきました.高いアウトカムを出すには効果的,効率的なチーム医療の展開が要になったと考えます.そこで,チーム医療に参画する専門職種のあるべき姿は?そしてその育成には何が必要か,古い世代の理学療法士(PT)として考えを述べます.

 筆者が就労した41年前はリハビリテーション医療の認知度は低く,多職種との情報交換も少なく,訓練室内が自分たちの働く空間でした.先輩からは「多職種から認知されるには治療効果を上げることだ」といわれました.また当時は国際障害分類(International Classification of Impairments Disabilities and Handicaps;ICIDH)の影響もあり,麻痺の回復や筋力強化,関節可動域の改善など身体機能の改善なくしてADLの回復には結び付かないと指導されました.当然,機能の改善を目的とした特殊な治療技法が脚光を浴び,さまざまな分野でSpecialistのPTが誕生する時代が長年続きました.

入門講座 リハビリテーション従事者のための論文の検索・収集・整理の仕方・3

各論 論文検索2 PubMed 馬場 孝浩
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はじめに

 PubMed(パブメド)1,2)は,世界の医学系雑誌に掲載された文献をインターネット上で検索することができる無料のデータベースのことであり,1997年6月より米国国立医学図書館(National Library of Medicine)が提供している.公開から20年以上が経過している現在,文献数は2018年1月31日時点で約2,800万件あり,リハビリテーション分野における海外の動向を調べるうえでは,欠かすことができない存在となっている.検索して得られる文献の情報としては,タイトル,著者,収載雑誌名などの書誌情報だけではなく,抄録や全文へのリンク(有料または無料を含む)が,約6割以上で利用できる.全文を無料で閲覧できる割合は,約22%となっている.

 本稿では,多忙な臨床の現場でPubMedを活用して効率よく文献レビューを進めていくための方法を,検索語や文献の絞り込み条件の設定などの具体例を示しながら紹介していく.

実践講座 地域包括ケア時代のさまざまな住まい方,新しい居住の形・2

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はじめに

 兵庫県(以下,本県)では,障害者が暮らしたい場所で暮らせる社会をめざし,さまざまなサービスの充実に努めている.なかでも,精神障害,知的障害等を有する人が,「世話人」等の一定の支援を受けながら共同生活を営むグループホームは,障害者の地域生活の拠点として重要な役割を果たしており,特に,施設入所者や精神科病院入院者の地域移行の促進に欠かせないものである.

 このため本県では,第5期兵庫県障害福祉推進計画〔2018(平成30)〜2020年度〕において,平成32年度末で定員3,585人ぶんのグループホームの設置を目標に定め,県単独の補助制度として,グループホーム新規開設サポート事業(表1)やグループホーム利用者家賃負担軽減事業(表2),そして県営住宅等を活用したグループホームマッチング事業を行い,設置促進に努めている.

 本稿では,平成20年度から実施している県営住宅を活用した障害者グループホームマッチング事業について,概要と課題を紹介する.

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要旨 【目的】本研究の目的は,肘関節肢位の違いが握力値,および手関節可動域に与える影響を調査し,正確で高い握力値を発揮する機序を検討することである.【方法】対象は健常成人27例(男性12例,女性15例,平均年齢25.0±1.8歳),握力と手関節可動域の測定肢位は,立位-肩関節自然下垂-前腕回内外中間位を統一したうえで,肘関節屈曲90°(肘屈曲群)と肘関節伸展位(肘伸展群)の2群に分けた.【結果】握力の平均値は肘屈曲群で31.3±10.7kg,肘伸展群で33.0±10.2kgであり,肘伸展群が有意に高い値を示した(p<0.01).他動的手関節可動域に関して,背屈では2群間に有意差は認めなかったが,掌屈,橈屈,尺屈角度は肘屈曲群で有意に高値を示した(p<0.05).【結論】肘関節伸展位では手指屈筋群が自然長に近くなり,介在する手関節の動的・静的安定性が向上するため,高い握力値を発揮することができると考えられる.

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要旨 【目的】本研究は,在宅医療を受けている地域在住がんサバイバーを日常生活自立度別に分類し,属性情報や機能状態を比較することでその実態を明らかにすることを目的とした.【対象と方法】対象は,東京都板橋区近郊在住で在宅医療を受けている地域在住がんサバイバー46例とした.地域在住がんサバイバーの日常生活自立度は,障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)で評価し,2群に分類した.対象者の属性情報および機能状態を群間比較した.【結果】地域在住がんサバイバーは,属性情報のがん病期やがん治療内容の項目で有意差が認められ,日常生活自立度の低い群ほどKarnofsky Performance Status(KPS)の中央値が有意に低かった.また,同対象者では,悪性腫瘍以外に脳血管疾患や整形疾患,認知症など日常生活活動に影響しやすい疾患をさまざま罹患していることが明らかとなった.【考察】在宅医療を受けている地域在住がんサバイバーの日常生活自立度低下の要因は,がん病期進行や積極的ながん治療非実施であることに加えて,他の併存疾患の影響など複合的であり,リハビリテーション分野も含めた積極的な地域医療提供の際には介入方法などを慎重に判断する必要がある.

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要旨 【背景】二分脊椎に伴う移動能力障害や膀胱直腸障害の程度はさまざまであり,各ライフステージにおいて日常生活動作(activities of daily living;ADL)や生活の質(quality of life;QOL)に大きく関連し,成人期は就労へも影響を及ぼしている.【目的】成人二分脊椎症例に就労状況をアンケート調査し,就労にかかわる影響因子を検討すること.【方法】成人二分脊椎症例40人にアンケートを送付し,就労状況,移動手段,排泄管理状況を調査した.就労状況については過去の職歴も含め,特に退職・転職となった理由については自由回答形式で調査した.移動能力良好群と移動能力不良群の2群で就労状況を比較した.また,おむつを使用していない排泄管理良好群とおむつを使用している排泄管理不良群の2群で就労状況を比較した.【結果】アンケートは,40人中29人(調査時年齢は平均31±9歳)から回答を得た(回答率73%).就労中17人(59%),過去に就労していたが現在は離職5人,就労経験なし7人であり,過去の就労経験も含めると22人(76%)が少なくとも一度は就労できていた.移動能力良好群と移動能力不良群の2群間に就労状況の差はなかった.また,排泄管理良好群と排泄管理不良群の2群間にも就労状況の差はみられなかった.【結論】移動能力および排泄管理と就労状況には明らかな関連はなかった.排泄管理状況よりもその心理的負担が,就労とその継続に重要な要素と考えられた.

連載 職業リハビリテーション関連機関の知識

就労移行支援事業 小牧 啓太
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 就労移行支援事業は障害者総合支援法(訓練等給付)に基づき,障害者の就職へ向けた支援を行う障害福祉サービスである.一般企業での就職が見込まれる障害者に対し,就労準備性の向上へ向けた訓練を行うとともに,就職のマッチングとフォローアップまで一貫した支援を行う事業である.本稿では,就労移行支援事業の機能や役割,利用方法,サービス内容などについて述べる.

連載 患者会・支援団体の活動

全国盲ろう者協会の活動 福島 智
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 本協会は,全国の盲ろう者の福祉増進を目的とする唯一の社会福祉法人です.

連載 災害と医療体制

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 マスギャザリングは,「一定期間,限定された地域において,同一目的で集合した多人数の集団」〔第12回日本集団災害医学会総会シンポジウム(2007年,名古屋)〕を指し,従前より日本語の『群衆』がその訳に充てられてきた.近年は「集団形成」の表記も散見される.オリンピックや国体といった大規模の総合競技大会,市民参加型の大規模マラソン大会,コンサート,大規模花火大会などがこれにあたる.

 人数による定義は25,000人以上1)とするものもあれば,1,000人以上2)というものもありさまざまである.世界最大規模のマスギャザリングは「メッカ巡礼」であり,その規模は数百万人である.近年は,「環境や場所に係る問題によってアクセスが制限された結果,緊急時の対応が遅れる可能性のある状態」が広義のマスギャザリングとして定義され,大都市の交通機関(地下鉄など),巨大商業施設,空港,客船における多人数の集団がその例として挙げられている3)

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 昭和39年に発表された湯川秀樹の『科学者の創造性』(『湯川秀樹自選集第4巻』,朝日新聞社)には,科学者の創造的な活動には内的矛盾が必要だとする,ある種の病跡学的な見解が示されている.

 この講演の中で,湯川は,「学問することそれ自身が執念」という立場から,科学者として成功するには,「執念深いということは確かに必要条件だ」と語る.そのうえで湯川は,人はなぜそういう執念をもつのかについて,「その人自身が自分自身のなかに非常に深刻な,内部的な矛盾をもっているということと非常に関係がある」という見解を示す.聖人と呼ばれるような人は悟りを開いていて執念などもっていないが,天才と呼ばれて自分の仕事に打ち込んでいるような人は,「まだ執念が残っている」.それは,少し悪い言葉で言えば「我執」と呼ばれるようなものだが,湯川は,「人間があまり立派になりますと,学問や芸術はできなくなるのではないか」,「天才に準ずるような人は,自分のなかに,いつまでも深刻な矛盾を残している」と,天才と内的矛盾との関係を強調するのである.

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

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 「真白の恋」(監督/坂本欣弘)が,自主上映を展開している映画愛好家らの目にとまっている.筆者の住む札幌でも,本年6月には1日限りの上映会がある.

 富山で家族と暮らしている渋谷真白には,軽度の知的障害がある.日常生活に必要なソーシャル・スキルを身につけており,初対面の人への挨拶も型通りにできる.パッと見には障害を感じさせない.時に「かわいいのに(知的障害があるのは)もったいない」といわれることもあり,これには,実兄・レンが「別にもったいないことはないだろ」と反発.きょうだいゆえの複雑な心情が垣間見える.

私の3冊

私の3冊 若林 秀隆

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1. 当院回復期リハビリテーション病棟入院高齢患者のサルコペニアの罹患状況と摂取栄養量,ADL能力の調査

 川崎医科大学附属病院リハビリテーションセンター

  中上 佑子・他

 [目的]低栄養はサルコペニアの改善を妨げるといわれ,サルコペニア患者の摂取栄養量,日常生活動作(activities of daily living;ADL)能力の関連を調査した.[対象]65歳以上の患者19名.[結果]入棟時サルコペニアでなかった患者(非サルコペニア群)は10名,入棟時サルコペニアと診断され退棟時に改善した患者は4名,入棟時退棟時ともにサルコペニアと診断された患者(非改善群)は5名.非改善群は非サルコペニア群と比較し,退棟時Functional Independence Measure(FIM)運動項目が有意差に低値であった.

お知らせ

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 理学療法士の業務は,法的には基本的動作能力の回復が中心となっています.その基本的動作の中でも,二足歩行こそが理学療法士が担うべき役割です.人間は二足歩行を獲得したことで前足が「手」として機能を果たすようになり,道具を使うことが可能になったのです.この「二足歩行」こそが生活の基盤を構成し,その成否によって生活の質は決定付けられます.

 私事になって恐縮ですが,1970年(今から約50年前)に九州労災病院に臨床実習に行ったとき,義肢装具に関するペーパーテストがあり,何と15点(100点満点)という恐るべき結果でした.その後の実習期間は,歩行用装具,大腿義足,下腿義足,義手について学ぶため,毎日のように義肢課(当時は義肢装具士の身分法はなし)を訪ね,採型や製作過程を見学させてもらいました.それらのおかげで実習終了時は義肢装具には並々ならぬ自信を持てるようになりました.そして,71年にはその九州労災病院に就職したのですが,初めてのブレイスカンファレンスで当時リハビリテーション科部長であった原武郎先生に言われた言葉は今でもしっかりと覚えています.それは「義肢や装具を考えるときに長さの1mm,角度の1度にこだわりなさい.もしかするとその1mm,1度のせいで歩行困難になるかもしれないぞ」というものでした.その言葉は私に決定的な影響を与えました.

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◆なぜ医師はリウマチ・膠原病が苦手なのか?

 リウマチ・膠原病科について,世間一般の多くの医師は,「難しい!」と考えているようだ.いわく,リウマチ・膠原病科は,難解で抽象的な免疫学の知識を振りかざし,診断や治療がことさら難しい稀少疾患ばかりを扱う診療科ということらしい.

 難解なイメージの一因は,扱う疾患がほぼ全て原因不明であることだろう.原因不明である以上,病因学的診断は不可能である.通常は疾患原因と密接に結びついている病理学的診断すら,原因不明の疾患においては絶対的意義を持たない.そのため,リウマチ・膠原病科で扱う疾患の多くは症候学的診断でしか捉えようがない.疾患の存在可能性を高める所見を累積することで診断する.疾患活動性評価も単一のマーカーに頼れない.複数の所見を組み合わせて行われる.

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記
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 編集室では,「総合リハビリテーション賞」の受賞を電話でお知らせしています.「お祝いの第一報は直接受賞者ご本人に電話でお伝えする」というのは編集室における重要な引継ぎ事項.喜びのリアクションを直に感じるのは編集室としても大変うれしい瞬間です.というわけで今年も「第26回総合リハビリテーション賞」が決定いたしました! 受賞論文は,河野健一先生(国際医療福祉大学成田保健医療学部理学療法学)らによる「外来通院透析患者の転倒予測指標としての歩行周期変動の有用性」(45巻7号「研究と報告」)です.実は河野先生は,「黄色のPT」による「理学療法ジャーナル賞」でも,2013年に奨励賞を受賞されています.その時の受賞論文は「血液透析施行中に行うレジスタントトレーニングの効果-システマティックレビューとメタアナリシスによる検討」.それから5年,同じ「透析」をテーマとした研究で「緑のリハ」での受賞となりました.「緑」,「黄色」いずれの賞も大変狭き門ですが,皆さまぜひチャレンジを! そして,受賞の一報を受け取った際には,編集室のために大きめのリアクションをお願いいたします.

基本情報

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総合リハビリテーション
46巻6号 (2018年6月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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