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はじめに
近年,うつ病の治療として非侵襲的大脳刺激法が社会的に注目されている.特に反復性経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation;rTMS)は,海外において薬物治療抵抗性のうつ病に対する治療効果が認められ1,2),2008年にはアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)によって治療的使用が承認されている3).また,日本においても2017年9月に厚生労働省が経頭蓋磁気刺激装置を医療機器として薬事承認し,2018年度には医療保険での診療が可能になる見込みである.一方,経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation;tDCS)は,2017年6月に選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるエスシタロプラムとの二重盲検無作為化非劣勢試験が行われたが,tDCSのエスシタロプラムに対する非劣勢は示されず,有害事象がより多かったとの報告がされている4).
また,非侵襲的大脳刺激法(rTMS,tDCS)を併用した集中的言語訓練による失語症治療は,その効果と安全性が国際的にも認められるようになり,ランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)のメタアナリシスにおいてもその有効性が示されている5).このメタアナリシスではrTMSとtDCSのそれぞれのRCTの統合結果を個々には比較してはいないが,図1からわかるようにrTMSのRCTの統合結果では95%信頼区間は0.23〜0.84であり,tDCSのRCTの統合結果では−0.29〜1.13となっているため,rTMSでは有意な効果があるが,tDCSでは有意な効果は認めない可能性がある.ただし,現状ではrTMS,tDCS併用のリハビリテーション治療の効果の差を確認した比較試験は未だに存在しない.現在,rTMS,tDCSの安全性と有効性を直接比較するために,国際的な多施設間RCT(Non-invasive Repeated Thera peutic Stimulation for Aphasia Recovery:NORTHSTAR試験)が開始されている6).
これらの経緯からもわかるように,今後の非侵襲的大脳刺激法を用いた治療ではrTMSにより多くの注目が集まるだろう.
当講座では,脳の可塑性を高め,機能的再構築を促す7-9)治療としてrTMSにいち早く着目し,研究・治療を行ってきた.2009年4月には脳卒中後遺症としての失語症に対して,rTMSと言語聴覚士(ST)による言語訓練を併用した新たなリハビリテーション治療を開始し,良好な治療成績をおさめている10).本稿では当院での経験をもとに,失語症に対するrTMS併用集中的リハビリテーション治療の理論と方法,今後の課題について述べる.
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