書評
佐伯 覚 編「《標準理学療法学・作業療法学・言語聴覚障害学 別巻》義肢装具学」
半田 一登
1
1日本理学療法士協会
pp.517
発行日 2018年6月10日
Published Date 2018/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201329
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理学療法士の業務は,法的には基本的動作能力の回復が中心となっています.その基本的動作の中でも,二足歩行こそが理学療法士が担うべき役割です.人間は二足歩行を獲得したことで前足が「手」として機能を果たすようになり,道具を使うことが可能になったのです.この「二足歩行」こそが生活の基盤を構成し,その成否によって生活の質は決定付けられます.
私事になって恐縮ですが,1970年(今から約50年前)に九州労災病院に臨床実習に行ったとき,義肢装具に関するペーパーテストがあり,何と15点(100点満点)という恐るべき結果でした.その後の実習期間は,歩行用装具,大腿義足,下腿義足,義手について学ぶため,毎日のように義肢課(当時は義肢装具士の身分法はなし)を訪ね,採型や製作過程を見学させてもらいました.それらのおかげで実習終了時は義肢装具には並々ならぬ自信を持てるようになりました.そして,71年にはその九州労災病院に就職したのですが,初めてのブレイスカンファレンスで当時リハビリテーション科部長であった原武郎先生に言われた言葉は今でもしっかりと覚えています.それは「義肢や装具を考えるときに長さの1mm,角度の1度にこだわりなさい.もしかするとその1mm,1度のせいで歩行困難になるかもしれないぞ」というものでした.その言葉は私に決定的な影響を与えました.
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