Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
今日,筋力トレーニングの重要性は,運動器や脳卒中のリハビリテーションはもちろん,心血管,呼吸器,腎臓,そして,がんのリハビリテーションにおいても広く認められるところとなっている.最近は,レジスタンストレーニング(resistance training;RT)の総称で,フレイルやサルコペニアに対する最大の予防策として,その効果が注目されている.
なぜ筋力トレーニングは,このように多岐にわたってその重要性が認められてきたのであろうか.それは,筋力増強と筋肥大の効果だけではなく,トレーニングの意味をもって筋萎縮に陥った対象者の「活動」を高める効果があるからだと思われる.なぜならば,筋力トレーニングは,リハビリテーション医学の方法論である活動機能構造連関1)(生物の機能と構造はその活動のレベルに適応して調整されているという考え方)を利用した治療だからである.すなわち,この身体の適応の能力を利用して,運動が一定の計画のもとに身体発達に用いられる場合がトレーニング2)であり,筋力トレーニングの普遍的原理となった「過負荷の原則」もこのような活動と機能構造の関連性を利用したものといえよう.
こうしてみると,筋力トレーニングの目的は,対象者の活動障害改善のための方法論を確立し,種々の領域において,その効果をいかに上げるかではないかと考える.しかし,筋力トレーニングの効果をいかに上げたらよいかについては,関連するエビデンスを検索しても,まだまだ明確な答えは出ていないようである.そこで視点を変えて,対象者(患者)自身がいかに筋の収縮の仕方を意識し,いかに強化するかを体得して継続していけるかが重要と考える.なぜならば,次のステップとして,鍛えられた筋力を対象者自身が日常行動の中でいかに有効に発揮するかという,いわゆる運動学習の導入が課題となると考えるからである.才藤3)によれば,Parsonsの役割理論から,リハビリテーション医療場面では,治療者は教師としての役割をもち,患者は学習者としての役割をもつ.
本稿では,筆者が経験した整形外科疾患患者のうち,大腿四頭筋萎縮例と高齢障害者を通じて患者教育に関する問題点を抽出し,それらの問題点を改善する治療法の効果をエビデンスの観点から検討する.そしてこれら症例検討を軸として,評価,治療/介入の今日的課題について,関連するシステマティック・レビュー,ガイドライン等から検討する.合わせて患者教育の視点に立った筋力トレーニングの進め方について述べてみたい.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.