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はじめに
「地域包括ケアシステム」とは,ニーズに応じた住宅の確保を基本として,さまざまな生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏域)で提供されることにより,その人らしい暮らし方を尊重した地域居住の維持を可能とするネットワークを意味する.包括的な地域づくりの方向に発展しようとしているこの枠組みのなかで,障害のある人の住まいと地域居住について議論し,その課題を整理することは,地域社会が多様な人々を包摂する共生社会となるために有意義であろう.
障害のある人の暮らしは,本人の意向を尊重した「暮らしの場」と「支援」が権利性の観点から協調される時代となっている.日本政府も2014年に批准している障害者の権利に関する条約19条では,「障害者が,他の者との平等を基礎として,居住地を選択し,及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと」を締結国に求めている.これは障害者に特別な権利を認めるというものではなく,他の障害のない人と同様に地域社会に住まう権利があることを明確にし,それを実現していこうとするものである.逆にいえば,歴史的に,障害のある人がどこに住むかを自由意思で決めることは難しい状況があり続け,今もなおその制約は障害のない人と同程度とはいえない.
その制約の1つとして,障害者グループホームの設置に関する住民の反対運動が現在でも頻繁に起きている.また特に障害が重い人たちにとっては,まだまだ地域での居住支援は十分ではなく,入所施設待機者は多く,後述するとおり入所施設からの地域生活移行率は低下している.さらに,少なくとも量的には地域生活支援の要となりつつある共同生活援助事業(以下,グループホーム)も課題を抱えている.以下,これらの課題を検討することを通して,地域包括ケア時代における障害のある人の地域居住支援のあり方について展望したい.
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