書評
網本 和,高倉保幸 編「《理学療法NAVI》臨床の“疑問”を“研究”に変える 臨床研究 first stage」
木村 貞治
1
1信州大学基礎理学療法学
pp.463
発行日 2018年5月10日
Published Date 2018/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201311
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超少子高齢社会という情勢において,理学療法には,治療的介入と予防的介入の両面からの対応による,国民の健康や生活の質向上に向けての貢献が求められている.このような中で,安全で効果的な理学療法を実践していくために理学療法士の力源となるものは,対象者の健康や生活の質の向上を願う熱意と,自身の専門性の向上を追求し続けるプロフェッションとしての自律的な向上心である.
その志を具現化するための第一歩は,対象者の臨床的,心理・社会的特性と,自身が実施した理学療法の内容,そして,その結果に関する正確な記述と振り返りである.このような臨床活動の記述と振り返りという能動的な学びが継続されなければ,臨床実践の経験は,個々の理学療法士の記憶の引き出しの中に,無形の「暗黙知」としてとどまることになる.そこで,理学療法における臨床実践の経験的事実を,可能な範囲で「形式知」として明示化し,経験科学という枠組みの中で体系的に整理していくことが,生涯学習における重要な礎となる.この臨床実践の形式知化を通して,評価・治療・指導方法やその効果に関する疑問などさまざまな臨床的疑問(Clinical Question:CQ)が生じることになる.
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