Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「最低。」—<最低な人>の教育的情念の発露としての<最低限の教育>を描く
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.487
発行日 2018年5月10日
Published Date 2018/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201318
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「最低。」(監督/瀬々敬久)は,<最低の職業>として家族や周囲から祝福されることのない3人のAV女優,釧路から東京に出てきた二十代の専門学校生・彩乃,三十代半ばの主婦・美穂,女子高生・あやこの母親・孝子のバックグラウンドを,ひとまず並列的に描く.
筆者にとっての主役は,5歳から祖母のいる田舎町で暮らす女子高生・あやこ.母親は元AV女優.父親を特定できない.学校では,「撮影中に子供ができてお金がなくなって実家に戻ってきた母親」の子供として,いじめ・嘲笑の対象になっている.絵画の才能に恵まれ,コンクールでの受賞記事が校内の掲示板に貼り出されたりすることも<芸術系女子>としての孤高性を一層高めている.<映画はあやこのような子供の味方にならねばならない>とする筆者の映画観に呼応するがごとく,本作はあやこ救済の物語へと収れんしていく.
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