総合リハビリテーション 12巻9号 (1984年9月)

特集 脳卒中片麻痺のリハビリテーション

  • 文献概要を表示

はじめに

 脳卒中の診断・治療はX線CTの開発普及によりめざましい進歩を遂げた.しかし現在脳血管障害の病態生理の検索には脳血流・代謝測定が不可欠なものになりつつある.

 1945年Kety and Schmidt1)がN2O法を用いて初めてヒトの定量的全脳血流測定を行い,Lassen and Ingvar2)はXe-133クリアランス法を用いた局所脳血流測定法を開発し,以来急速に脳血管障害の病態把握に進歩がみられた.しかしこの二次元的測定法は頭蓋外におかれたマルチプローブにより脳内放射性同位元素(RI)を測定するため,脳表に近い灰白質血流の測定にとどまり,深部脳組織の血流動態の把握はできない.また反対側大脳のRIの影響(crosstalk)や,病巣周辺組織のRIの影響(look throgh)を受けやすい.この欠点を補うため,断層面で脳血流分布を把握する三次元的測定法が開発された.それには,非放射性Xeを用いたX線CT3),Xe-133でのsingle photon emission CT(SPECTと略す)4),そして代謝測定も可能なpositron emission CT(PETと略す)5,6)などがある.

 本稿では,著者らの行っているSPECTによる脳血流測定法と正常像そして脳卒中患者での実例を示し,脳血流測定で何が分るかを紹介する.次いで機能的検査法としてのactivation studyと,著者らの行ったADL予後予測にSPECTがどのように役立つかについて述べたい.

  • 文献概要を表示

緒言

 脳卒中後片麻痺患者の機能的予後を早期に推測することは,リハビリテーション治療のプログラムを遂行する上で重要な課題である.

 そのため,従来の診断学にあわせCT scanの利用も,脳卒中の病型の正確な診断を可能にし,病巣を容易に検索することが可能であることから,障害部位と臨床症状の解明を行い,さらに機能的予後を推定することが可能になってきている.

 しかし,脳卒中による病変は,急性期より経時的に変化することが既に多数報告されている.病巣と脳組織の障害程度の推定,また当然,付随する循環動態や脳代謝状態等の機能的側面の解明が必要になっている.最近の補助的診断法の発達は,Positron Emission CT(PET),Nuclear Magnetic Resonance CT(NMR-CT),Regional Cerebral Blood Flow(R-CBF)などと日進月歩の勢いで進歩している.これらの情報を参考にCT所見に示される病巣と脳機能との相関が,さらに解明されることが期待される.しかし,一般に普及率の高いCT scanの活用により,多くの情報を得て,臨床症状との対比から脳機能障害を判断し,予後を予測しリハビリテーション治療の補助とする必要がある.

 著者らの症例から,1)片麻痺患者の機能の全体像として体幹機能などに問題がありADL評価からみて不良であった例.2)片麻痺患者の歩行機能を中心に筋緊張異常,異常運動から,足部変形に問題の起った例の2症例群についてCT所見との関連性について検討し,形態上から判断される予後についての機能的診断の側面と,CT診断の問題点について論述する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 脳卒中片麻痺患者(以下,片麻痺患者と略す)のリハビリテーションにおける最終的なゴールの1つに,片麻痺患者を円滑に地域社会へ融合させることがある.このゴールの達成を阻害する因子として多くのものがあげられるが,われわれはその中の1つとして,従来ほとんど取上げられなかった「体力の低下」に注目してきた.その理由は以下の3点である.すなわち①社会復帰を果たした片麻痺患者の中に,何らの身体諸器官の異常も認められないにもかかわらず,著明な易疲労性のために社会的活動に著しい制約をうけているものが少なからず認められたこと,②このような易疲労性の原因として,発病直後からの長期にわたる活動性の低下による体力の低下が最も考えられたこと,③そして体力の増強をめざした生活指導,(昼間)横にならないこと,一定量の散歩をすることなどにより,いちじるしく易疲労性が改善した例を多数経験したこと,以上である.

 体力低下は易疲労性による活動性の低下を片麻痺患者に強い,その結果としてより一層の体力低下を招来するという悪循環を生み出し,片麻痺患者の社会的不利を増大させる.

 このため,廃用症候群の一つである体力低下を予防し,さらには体力の改善をはかるためのもっとも有効なプログラムの開発が,片麻痺患者のリハビリテーションにおける重要な研究課題となってくる.この前提として,片麻痺患者の体力の指標とその測定方法を確立すること,および片麻痺患者の体力の実態を把握することが必要である.われわれは,この点についての検討を,40台と50台の片麻痺患者を対象として行ってきた1~3).本論文においては,60台片麻痺患者の体力に関する検討結果も加えて,片麻痺患者の体力について概説する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 脳損傷者の「非言語能力」を問題にする場合,一般的にこの用語は,明らかな失認・失行の概念では分類しがたい,より総合的ないわば非言語的知能を指していると考えられ,本稿でもその意味で使用していく.

 非言語能力の評価に用いられる最もよく知られている検査法はWAISの動作性検査であるが,この検査の5種の下位検査の中には,記号を書いたり積木を操作するなど,ある程度の手の動作の巧緻性が要求される課題が含まれているために,片麻痺患者にとっては不利な面がある.このような問題がなく,非言語能力の研究史上しばしば使用されるのがRavenのStandard Progressive Matrices(RPM,図1)とColoured Progressive Matrices(RCPM)である.後者は年少者を対象とした色つきの図版で,そのほとんどの課題が成人用のRPMのやさしい課題によって構成されており,両者に本質的な差はなく,ともに脳損傷者にしばしば利用されている.

 Raven1)は自身のテストについて視知覚の能力と空間的な論理的思考を要求する非言語的な知能テストであると述べている.このテスト課題は図1の例にみられるように,刺激図版の欠如部分にはめ込むべき模様を下方の選択肢から選ぶものであるが,刺激図版の各模様のおのおのを関係づけて把握し,全体的な図版構成に用いられている基準を推理判断しなければ正しい選択が出来ないようになっている.実施に当っては,ことばによる教示を理解出来なくとも検者が示すデモンストレーションから類推して検査が可能であり,また反応は図版の指さしのみであるため,失語,麻痺,失行などを合併する患者にもっとも使いやすいテキストとなっている.

 本稿では片麻痺患者の非言語能力を,このRavenテスト(以下,RPMやRCPMについて,適宜このように表現する)の成績を中心に検討していくことにしたい.ただし,Ravenテストによる脳損傷者の非言語能力に関する研究史の検討はわれわれが既に行っているので2,3),ここではそれらをまとめて概観すると同時に,それ以後の研究について調べ,さらにわれわれ自身のデータも加えて片麻痺患者の非言語能力を検討していく.

  • 文献概要を表示

 私は最初からの整形外科医ではなく,昭和29年に当教室が故児玉俊夫教授により開設された時,一般外科より転向した者である.当時一般外科でも整形外科的疾患を取り扱っていたので,とりたてて戸惑いはなかったが,リハビリテーションという言葉は私にとって全く新しいものであった.特に児玉教授は肢体不自由児の父ともいわれた故高木憲治先生の門下生でもあった関係で,第3の医学としてのリハビリテーションの重要性をことあるごとに私達に教え込まれた.それでもそのことが十分に理解されないまま,術後の後療法的なものとも混同し,外科医であるのならば,何もそんな面倒なことをしなくても,手術の腕前でうまく治してやればよいのではないかと不遜なことも考えていた.

 2年間整形外科的基礎技術を習得後,最初に勤務したのが,肢体不自由児施設である高知県立整肢子鹿園であった.此処ではじめて現在の医学では治し得ない疾患に直面し,しかも子供の時からhandicapを持って生活をして行かなければならない人達に対して,医師はどう対処しなければならないのか,また何がしてやれるのかを常に考えなければならない場合があることを知らされた.5年という短期間ではあったが,子供達と共に生活をしてみて,これまで習得しえた単に治療上の知識や技術のみでは不十分であることを痛感させられた.

  • 文献概要を表示

まえがき

 歩行のエネルギーの測定は宮下1)によれば,1912年頃よりDouglas等によって始められたとされ,以来その測定の目的は運動生理学,労働科学,体力科学,人間工学,医学の各分野ごとに多岐にわたっている.その中で歩行に障害のある例については,Fisher等2)は切断者,片麻痺,両下肢麻痺等を対象に1930年以降の業績について文献的考察を行っている.

 これらの知見を参考にすると,歩行障害例についての主な研究目的は,歩行の生理学的負担度の検討,義足,下肢装具等の製作にかかわる設計上の因子の優劣の比較,杖を含めた各種の歩行補助具の効果の判定などであり,これらの目的に沿うために幾つかの定量的指標が考慮されている.これらの定量的指標の基礎となったものが1927年におけるAlzler等3)の研究と思われ,彼等は健常人においてストライドと歩調を様々に変化させた時に,単位距離当たりのエネルギー消費量cal/mの測定データーより,それぞれ異なった歩行スピードにおいてcal/mの値を最少にするための最適な組み合わせが両者の間に存在することを示している.次いで彼等はDurigによって名付けられたWegkonstante(k=cal/D.L D:体重,L:歩行距離)が歩調,ストライド,歩行スピード等と比較して変動幅が少ない値であることを示した.

 梅谷等4)はバイオメカニズムの領域で人工機械の移動様式の評価関数として用いられてきた指標を新たに移動仕事率εと名付け,ε=E/wl(E:移動に必要なエネルギー,W:移動体重量,l:移動距離)で定義し,このεがほふく運動,2足歩行,車輪歩行等の移動様式に関する評価指標として妥当性があることを実験的,理論的に示している.なおこの移動仕事率はDurigのWegkons tanteと同一のものであることは定義式より明らかである.

 江原5)は移動運動のエネルギー消費に関しとくに移動の効率に着目して広範囲な文献的考察を行っている中で,運動に必要なエネルギーに対する有効エネルギーの比で定義される移動の効率は移動様式の性能の優劣を判断する指標とはならないことを指摘している.そして移動様式の損得の大きさを移動能率と名付け,この指標は梅原等の定義した移動仕事率と同一の式で表わし得ると述べている.

 cal/kg/mが移動様式の能率の良否を表わす指標であることは定義式よりうなずけることであるが,この指標を動力学,運動学的な歩行の検査項目とともに日常実施可能な検査項目の1つとすることは必ずしも容易ではない.その理由として歩行のエネルギー消費の検査にはある規模の測定装置を必要とすること,および歩行障害者にとってガスマスクを装着して歩行を行うことは大きな負担になることが挙げられる.そこで著者等は片麻痺症例を対象とし,歩行のエネルギー消費量とともに,心拍数,歩行スピード等の測定を行いこれらのデーターをもとに歩行の能率を簡便に推定し得る方法について検討を行い,併せて片麻痺の歩行の能率に影響を考える要因について検討を加えることにした.

  • 文献概要を表示

はじめに

 重度に四肢の運動機能が障害された脳性麻痺症例においては書字能力が障害されることがあり,その結果コミュニケーション手段としての文章による表現や教育に際しての能力発揮に重大な問題を生じることになる.

 また,われわれが日常診療中に接することができる重度脳性麻痺例のなかにも,書字能力獲得に対する希望を強く訴える症例を経験する.

 アテトーゼ型脳性麻痺例の中には書字機能および言語機能に障害を有し,症例の潜在能力を引き出す機会を失うこともある.

 従来より脳性麻痺例のリハビリテーション手段として各種のタイプライターが利用され,文字を書くのみでなく,タイプアートなどとして絵を描く手段としても利用されている.

 今回はわれわれは従来のタイプライターを使用することが困難であり,より重度の症例を対象にして,さらに機能的な書字介助機器を開発することに着手した.

 このような症例に対して,安易に介助機器を与えず,可能な限り自分の力で字を書く努力をさせることも確かに重要である.しかし,症例の中には書くことは不可能として書字をあきらめ,文字を学ぶことすらあきらめていることもある,このような症例にとって,機器により実用的な文字を書くことができるよう介助することは意義があると思われる.

 以上の観点より,開発中の脳性麻痺症例に対する書学介助機器を紹介する.

講座 合併症の障害学(3)

  • 文献概要を表示

はじめに

 すべての動物が生きている陰には意志に左右されない神経系統によって完全に制御されている.高等動物になるに従い,感覚・運動器官の発達が伴って動物としての行動が具現化されていく.

 その極点にあるヒトではあたかも自分の意志で手足を自由に操作できると思われる程に錐体路を中心とした随意運動神経系の発達をみているが,この運動ですら,体温調節,血液循環調節などに見られるように自律神経系の陰のサポートがあって初めて成り立っている.

 脊髄が損傷を受けると損傷レベルより末梢の脊髄神経全体は中枢と隔離されてしまい,中枢への情報の伝達も,中枢からの制御も受けなくなる(isolated spinal segment).この遊離された部位の脊髄神経によって支配を受けていた器官,組織は一見,壊滅的打撃を受けるようになる.すなわち,運動神経支配筋は廃用性萎縮に陥り,感覚神経麻痺に起因した様々な障害(disability:褥創を作り易いとか,外傷への対応が困難など)がみられるのみならず,膀胱直腸障害を主とする自律神経機能異常はその個体の生命を直接的に脅かす原因となる.

 これらの障害はたとえ軽度であっても,動物としての全体的機能が果たし得なくなり,死滅するに至る.自然界では脊髄損傷動物の存在は長期的にあり得ない.

 ヒトの脊髄損傷の場合でも,つい20~30年前までは生命予後は極めて悪く,完全頸髄損傷の長期生存例はほとんどみなかったと考えられる程に生命に直結する合併症が多い疾患である.この主原因には①膀胱直腸障害による尿路機能荒廃→尿毒症の関連,②皮膚感覚喪失・局所活性(修復力)の低下などによって生じる褥創の増悪→血漿蛋白低下,感染防御能力低下(敗血症)の関連が考えられ,③上位脊髄損傷にみられる呼吸機能の障害では,上気道感染,気道閉塞などである.

 しかし,ADL上では血管運動神経の麻痺によって,容易に起立性低血圧→失神や自律神経経過緊張反射による著明な高血圧「発作」などがあり,これらは脊損者自身を狼狽させる.

 体温調節中枢の制御を受けない部位が大きいと,夏季のうつ熱や寒冷時の産熱障害などのdisabilityとなる.これらは上述3項目程に直接的に生命を脅かすまでに至らないとはいえ,また,予知予防することができる面があるとはいえ,脊髄損傷者に重くのしかかっている自律神経異常であり,終生続くdisabilityである.

 しかし,自律神経が中枢から遊離されたら文字通りに自律神経自身でその支配器官を制御し出すようになる.それがいかに不完全で,勝手に働き出す要素があるとはいえ,生き物は本質的には自律神経に依存している.脊髄損傷になっても食事をしたら胃腸は食物を消化吸収し,排泄するという能力を有している.しかし,脊髄損傷ではその損傷レベルが高位になるに従って,homeostasis機能が損われている.自律神経の各種の機能の連携プレーがうまくゆかないために,過度な反射反応を見たり,逆に反応の誘発が生じなかったりする.

 この自律神経支配の不安定さを十分理解することで,脊髄損傷者の有する様々なdisabilityに対応(予見,予防対策)できると思われる.その他に,動かなかったことに起因する2次性の廃用症候群にみられる様々のdisabilityが生じてくる.これらの点は脊髄損傷者を管理する立場の人々だけでなしに,損傷者自身も理解を深めておかねばならず,これにより,障害者の社会活動がより安定したものとなろう.

 脊髄損傷の急性期(spinal shock期)と慢性期では種種の様相が一変するので,ここでは慢性期脊髄損傷者の自律神経障害の主なものについて概説と予防対策への関連について略記する.

講座 言語障害の評価(3)

  • 文献概要を表示

 Ⅰ.難聴によることばの障害

 難聴児のことばの障害は,“きこえとことば”という明確な因果律に規定されている.つまりそれは,彼らが周囲の人や自分の音声を十分い聞くことができないために生じる障害である.しかしながらその症状は,難聴の程度や型,障害部位,発症時期,発見時期,発見後の措置,育児環境,本人の能力などの種々の要因と相互に深く関連しており,広範かつ複雑な様相を呈し,個人差も大きい.ことに先天性の高度難聴は,コミュニケーション行動の発達や言語習得そのものに重篤な影響を及ぼす.

 以下に言語習得前に難聴が発症した場合に生じることばの障害を概略する.

  • 文献概要を表示

 1984年の4月27日(金)の午前中をGold Water Memorial Hospitalで過ごしたわれわれは,昼食会の後再びManhattanに舞い戻り,International Center fot the Disabled,ICDを訪れた.なかなかのハードスケジュールである.

 ICDはかつてInstitute for Crippled and Disabledの名で知られ,義肢で有名なLawrence Friedmannの居た所であるが,彼は今upstateのStony Brook Medical Centerへ移りそれに伴って専門も義肢から腰痛へと転換してしまった.彼とは2年前にTorontoで顔を合わせたが,国際腰椎学会のメンバーになるために昔の弟子の小生が推薦状を書いたのだから,世の中は変りつつあることがわかる.ICDはBelleview Hospitalより斜め前,downtown側24丁目にあるがActing DirectorのDavid S. Reynolds,リハビリテーション科DirectorのNina Hillらから現況についての説明の後,日本側より真野,菅原,上田の諸氏の研究発表があったが,小生は所用にて中座させていただいた.従って成果の詳細については不明であるが,上田の上肢下肢のBrunnstromテストの標準化をはじめとする諸氏の演説が米国側に対してもよきdemonstrationになったことは間違いない.

  • 文献概要を表示

 「リスボンの6月といえばもっとも初夏らしい空気が広がっている筈ですが,今年は欧州全体に冬の厳しさが長く残ったために今日の空も夏の空とはいえません.」これは小生らの滞在したリスボン・シェラトンホテルまでわざわざ話をしにやってきたポルトガルのリハビリテーション医のことばである.実際のところ通常の月の気温を予想して持って来た夏服では会議場の中も涼しい感じが勝り,寒いねと思わず口に出された先輩の先生もいた.

 明け方から朝食時にかけては雲が多くなって,風とともに強い雨が降るが1時間ほどでそれも止み,その後澄んだ白い陽射しの中を虹を見ながら会議場に向う時や,古い街並みの雑踏の様を車の中から眺めながら海の空気を感じる時にここは大陸の西端だと実感する.

  • 文献概要を表示

 今度,第21回日本リハビリテーション医学会を開催するに当り,小生が日頃から聲咳に接したいと考えておりましたIrwin M. Siegel先生に来日していただき,多年にわたり取り組んでこられた“筋神経疾患に対する臨床的対策”につき集まられた会員の皆様に感銘深い講演をしていただきました(学会第1日,7月6日).

 先生は,1927年のお生れで,1954年Northwestern大学を卒業され,整形外科医としての途を歩まれ,現在,ChicagoのStrauss Surgical Group Assn.に属され,Weiss Memorial Hospitalの整形外科のチーフとして活躍されているのをはじめChicago近辺の多くの病院に関係され,とくに上述,筋神経疾患に対して整形外科学的リハビリテーションにつき,多数の著書,論文をものにされている.上記学会における講演も活気あふれ,難渋な疾病に対し雄々しく立ち向かっておられる気概の偲ばれたものでありました.

一頁講座 人工関節・9

足関節 加藤 哲也
  • 文献概要を表示

 変形性関節症あるいは慢性関節リウマチのうち強い疼痛を伴い,高度の骨破壊や変形,拘縮があるものは観血的治療として従来関節固定術が行われてきた.

 足関節固定術は各部関節の固定術の中でも満足度の高い治療法とされているが,いくつかの欠点も併せ有している.これに対し人工関節置換術は除痛効果に秀れている,社会復帰が早い,可動性を温存あるいは回復させるため歩行や日常生活動作に制限がない.隣接関節や反対側の足,膝,股関節への代償性負荷がないなどの長所がある.

追悼

中村 裕先生 御略歴
  • 文献概要を表示

昭和2年3月31日:別府市に生れる

昭和26年3月:九州大学医学専門部卒業

中村 裕先生を悼む 赤津 隆
  • 文献概要を表示

 中村 裕先生は7月23日午前7時30分,肝硬変のため大分の自宅において急逝された.

 57歳というあまりにも早い死であった.23日朝訃報をうけた時,一瞬わが耳をうたがった.御遺族のこと,大分中村病院のこと,そして多数の身障者の自立の場である太陽の家の将来のことなど次々と頭にうかび,しばらくは呆然として立ちすくんでしまった.つい2カ月前には電話で色々と話をしたばかりであったのに,あの声が最後となってしまった.何となく何時もの声とちがって弱々しく感じた事が思い出される.

  • 文献概要を表示

 リハビリテーション技術全書の第2版が上梓の運びに至った.初版は昭和49年であるが,“何でも具体的に解りやすく書いてあって直ぐ役に立つ本”として,この領域を志す人達に広く読まれていたものであった.

 第2版はさらに新しく,バイオフィードバック療法,振動障害の理学療法,運営管理の章で言語治療士と義肢装具士の項目などが追加され,障害評価の内容が大幅に変更になり,その他全般にわたって細かく手が加えられての大改訂となった.1070頁に及ぶ圧巻である.

  • 文献概要を表示

 この書は,かつては人類最大の天敵であった結核の栄枯盛衰を物語る壮大な叙事詩である.リハビリテーション医学の専門医の上田氏が,結核の第一人者であり,リハビリテーション医学にも御造詣の深い砂原先生から話を引き出す形で進められているが,上田氏は吾々が聞きたいと思う事を的確に質問して,砂原先生の蘊蓄の一部を引き出すことに成功しているので大変興味深い書となっている.

 結核の歴史,障害者としての結核患者の実態,結核の予防,診断および治療の変遷,化学療法等々,結核のすべてが語られている.思えば,ストレプトマイシンが発見されるまで,結核に対する治療は随分と廻り道をしたものである.砂原先生の言われるように,いわば,木を見て森を見なかったがゆえに,肺結核の治療のために,人工気胸,胸廓成形術等によって沢山の呼吸機能障害がつくられてしまったのであった.

  • 文献概要を表示

 おそまきながら最近わが国でも脳死に対する関心が高まっているが,論議に先立ってまず十分な理解が必要である.その意味で本書は英国の医師に向けて書かれた脳死の基礎的な解説(ABC)であり,1980年におきた“不幸な出来事”,すなわちBBC放送のパノラマ事件を契機としてBrit. Med. J. に連載された記事が基本となっている.したがってわが国でもこの問題に興味のある医師はもちろん,一般の医師も常識としてこの程度の知識をもっていなければならない時期になっていると言えよう.

 そもそも脳死は「生きた体に死んだ脳」と表現されるが,一方では「脈の触れる死体」とも表現される.これは未だに論議の絶えない脳死を“生”とみるか“死”とみるかの観点の相違を示すものであるが,脳死そのものの病態はただ一つの筈である.ただ,広く一般的に用いられている「全脳髄の不可逆的な機能停止」なる定義と,本書の表題になっている脳幹死(brain stem death)を脳死とする英国流の考え方があり,両者のいずれをとるかは未だ議論の余地があるところである.もちろん本書では後者の考え方にもとづき,脳死の判定は脳幹機能の不可逆的喪失を証明することであり,その妥当性についても詳しく説明されている.すなわち脳でも心臓でも全細胞の死に先立って有機的な機能を果さなくなれば,それぞれの臓器の死と考えねばならないことが繰返し強調されている.この前提が脳死(脳幹死)でも時にはなお脳波活動や脳循環機能が残存するような事実の説明には不可欠で,全脳死(brain death)あるいは大脳死(cerebral death)とのくい違いによる混乱を避けることもできる.

--------------------

文献抄録

編集後記 千野 直一
  • 文献概要を表示

 今年の夏は全国的に酷暑にみまわれ,38℃を記録したところもあったと報じております.そして,ささやかな夏休みもまたたく間に終り,秋の学会準備にあわせふためいているのは筆者ばかりではないと存じます.

 さて,本号の特集は「脳卒中片麻痺のリハビリテーション」ですが,今回は見方をかえてup-to-dateのテーマをとりあげました.

 牧下氏・他によるEmission CTと今村氏・他のX線CTは,ともに脳損傷による機能障害を予測するうえでの有効性を論じております.両者のそれぞれの特徴は興味あるもので,ことにEmission CTによる超早期のCVAに対する診断やADLの予後判定の可能性などは,リハビリテーション医の基礎知識として必要となるものです.

基本情報

03869822.12.9.jpg
総合リハビリテーション
12巻9号 (1984年9月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

文献閲覧数ランキング(
6月7日~6月13日
)