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はじめに
脳卒中片麻痺患者(以下,片麻痺患者と略す)のリハビリテーションにおける最終的なゴールの1つに,片麻痺患者を円滑に地域社会へ融合させることがある.このゴールの達成を阻害する因子として多くのものがあげられるが,われわれはその中の1つとして,従来ほとんど取上げられなかった「体力の低下」に注目してきた.その理由は以下の3点である.すなわち①社会復帰を果たした片麻痺患者の中に,何らの身体諸器官の異常も認められないにもかかわらず,著明な易疲労性のために社会的活動に著しい制約をうけているものが少なからず認められたこと,②このような易疲労性の原因として,発病直後からの長期にわたる活動性の低下による体力の低下が最も考えられたこと,③そして体力の増強をめざした生活指導,(昼間)横にならないこと,一定量の散歩をすることなどにより,いちじるしく易疲労性が改善した例を多数経験したこと,以上である.
体力低下は易疲労性による活動性の低下を片麻痺患者に強い,その結果としてより一層の体力低下を招来するという悪循環を生み出し,片麻痺患者の社会的不利を増大させる.
このため,廃用症候群の一つである体力低下を予防し,さらには体力の改善をはかるためのもっとも有効なプログラムの開発が,片麻痺患者のリハビリテーションにおける重要な研究課題となってくる.この前提として,片麻痺患者の体力の指標とその測定方法を確立すること,および片麻痺患者の体力の実態を把握することが必要である.われわれは,この点についての検討を,40台と50台の片麻痺患者を対象として行ってきた1~3).本論文においては,60台片麻痺患者の体力に関する検討結果も加えて,片麻痺患者の体力について概説する.
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