臨床眼科 64巻6号 (2010年6月)

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要約 目的:アレルギー性結膜疾患で涙液の総IgEを測定するアレルウォッチ涙液IgEと海外類似キットの多施設による評価と比較。対象と方法:本研究は5施設で得られたアレルギー性結膜疾患109検体と対照47検体について行われた。疾患の内訳は,季節性アレルギー性結膜炎65例,通年性アレルギー性結膜炎34例,アトピー性角結膜炎6例,春季カタル4例である。アレルウォッチ涙液IgEと海外で製造された類似キットで涙液総IgEを測定し,臨床診断と比較した。結果:臨床診断との一致率は,アレルウォッチ涙液IgEが海外類似キットよりも有意に高かった。特異度(陰性一致率)はいずれも100%であった。結論:アレルウォッチ涙液IgEによる涙液の総IgEの測定は,アレルギー性結膜疾患の診断に有効であり,輸入された海外類似キットよりも高い診断一致率を示した。

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要約 目的:増殖糖尿病網膜症に対する23G硝子体手術でベバシズマブを併用した結果の報告。対象と方法:40か月間に23G硝子体手術を行った増殖糖尿病網膜症69例84眼を診療録に基づいて検索した。22眼には手術の2~5日前にベバシズマブ1.25mgの硝子体注射を行った。術後3か月以上の経過を追跡した。結果:ベバシズマブ投与群と非投与群との間に,手術時間,術後の視力改善率,術後の合併症について有意差がなかった。術後の硝子体出血はベバシズマブ投与群では27%,非投与群では52%で生じ,有意差があった(p<0.03)。ベバシズマブの硝子体注射による合併症は皆無であった。結論:増殖糖尿病網膜症に対する23G硝子体手術で,術前のベバシズマブの硝子体注射をした症例では,術後の硝子体出血の頻度が小さかった。

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要約 目的:上下の半視野異常がある初期緑内障眼でのスペクトラルドメイン光干渉断層計(OCT)による所見とその意義の報告。対象と方法:広義の原発開放隅角緑内障29例30眼を対象とした。年齢は37~80歳(平均64歳)であり,上下の視野のどちらかに視野異常があった。OCTとしてOptovueのRTVue-100を使い,網膜の構造を定量的に検索した。結果:視野異常がある側では,網膜神経線維層厚と神経節細胞複合体厚が正常側よりも有意に菲薄化していた。神経節細胞複合体厚は緑内障性視野障害を反映する指標であり,視野が正常な側でも19眼(63%)に異常領域があった。結論:スペクトラルドメインOCTでの神経節細胞複合体厚は,半視野異常がある初期緑内障眼での視野異常と相関し,緑内障のごく初期での網膜構造の変化を検出している可能性がある。

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要約 目的:網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)に対するベバシズマブ硝子体注射の8か月以上の経過の報告。症例と方法:黄斑浮腫があるBRVO 33例33眼を対象とした。年齢は44~78歳(平均63歳)である。ベバシズマブを投与し,8~49か月(平均15か月)の経過を追った。視力はlogMARで評価した。結果:平均視力は術前0.47,最終診察時0.23で,有意に改善した(p<0.001)。光干渉断層計(OCT)で測定した網膜中心窩厚の平均値は,術前552.7μm,最終診察時336.8μmで,有意に改善した(p<0.001)。結論:BRVOに併発した黄斑浮腫は自然寛解することがあるが,発症後早期にベバシズマブの硝子体注射をすることで,良好な視力が維持できる可能性がある。

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要約 目的:LASIKを受けたのちに生じた白内障に対し,多焦点眼内レンズを挿入した2例の報告。症例:2症例とも男性で,年齢は47歳と55歳である。それぞれ6年前と2年前に近視に対するLASIKを受けた。両症例とも右眼に白内障があり,矯正視力はそれぞれ1.2と0.7であった。白内障手術を行い,回折型多焦点眼内レンズを挿入した。遠見と近見裸眼視力は,1例では1.2と1.0,他の1例ではいずれも1.0で,自覚的には満足が得られた。術後コントラスト感度は2症例とも正常値の下限にあった。結論:LASIKの既往がある眼での白内障手術と多焦点眼内レンズの挿入では,術後の屈折値の誤差と視機能低下の可能性があり,術前のインフォームド・コンセントが必要である。

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要約 目的:白内障術中にinfusion misdirection syndromeを呈し,解除に25ゲージ硝子体切除術が有効であった症例の報告。症例:62歳男性の右眼に白内障手術を施行した。短眼軸長(右眼20.83mm)で,右鼻骨骨折の既往がある。超音波乳化吸引後に眼圧が上昇,前房が消失し,手術続行は困難になった。術中の眼底検査で脈絡膜に異常がなかったためinfusion misdirection syndromeと判断し,25ゲージ硝子体切除術を施行した。これにより前房が形成され,白内障手術を完遂することができた。術後視力は良好である。結論:Infusion misdirection syndromeによって白内障手術が継続できなくなることがある。眼底所見を確認し,脈絡膜出血などを否定したうえで低侵襲に硝子体切除をすることが治療の1つの選択肢となると考えられた。

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要約 目的:視力が良好な滲出型加齢黄斑変性(AMD)にぺガプタニブナトリウムの硝子体注射を行った結果の報告。対象と方法:AMD 7例7眼を対象とした。男性4例,女性3例で,年齢は63~84歳(平均77歳)であり,矯正視力はすべて0.5以上であった。ペガプタニブナトリウム0.3mgを硝子体に注入し,6か月までの経過を追った。結果:投与回数は2~5回(平均3.7回)であった。6か月後の視力は全例で維持または改善したが,治療前と比べ有意差はなかった(p=0.22)。光干渉断層計(OCT)で測定した6か月後の網膜厚は,4眼で減少または不変,3眼で増加したが,治療前と比べ有意差はなかった(p=0.88)。全経過を通じ,眼または全身の副作用はなかった。結論:視力が良好なAMDに対するペガプタニブナトリウムの硝子体注射により,6か月間の視力が維持される可能性がある。

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要約 目的:Coats病に似た眼底を呈し,硝子体出血が生じた網膜色素変性症の症例の報告。症例:61歳男性が左眼視力障害で受診した。13歳で夜盲を自覚し,17歳のときに網膜色素変性症と診断された。兄2人と従兄弟1人に網膜色素変性症がある。4年前に白内障手術を受け,左右とも0.04の視力であった。所見:矯正視力は右0.03,左指数弁で,右眼に網膜色素変性症の所見,左眼に硝子体出血と眼底上方に増殖膜があった。左眼に硝子体手術を行い,器質化した増殖膜と新生血管,毛細血管の拡張蛇行があった。一年後の現在,左右眼とも0.03の矯正視力を維持している。結論:本症例でのCoats病様の網膜血管拡張,新生血管,増殖膜形成は,網膜色素変性症に併発したと解釈され,硝子体手術が有効であった。

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要約 背景:眼窩リンパ管腫で腫瘍内出血が生じると,急性眼球突出,視力低下,眼圧上昇,眼球運動障害などが起こり,重篤な場合には手術の適応になる。目的:保存的治療で軽快した眼窩リンパ管腫3症例の報告。症例:症例は8歳男児,35歳男性,35歳女性である。いずれも片眼性で,急性眼球突出,視力低下,眼球運動障害,眼圧上昇で受診した。矯正視力はそれぞれ0.6,0.04,0.3であった。磁気共鳴画像検査(MRI)で眼窩リンパ管腫と診断した。3症例とも手術を希望せず,止血薬や眼圧下降薬による対症療法のみで加療した。約1か月後に視力,眼圧,臨床症状が軽快し,最終的に0.9以上の矯正視力を得た。結論:急性眼球突出で発症した眼窩リンパ管腫でも,手術によらないで軽快する症例がある。

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要約 目的:下鼻道経由による涙囊鼻腔吻合術の直後に発熱した2症例の報告。症例:1例は81歳男性,他の1例は81歳女性である。2例とも鼻涙管閉塞症が右眼にあり,1例には同側の涙囊炎があった。いずれも患側に下鼻道経由の涙囊鼻腔吻合術が行われた。1例では術直後の36.7℃の体温が帰宅後に38℃以上,他の1例では36.6℃の体温が夜になり38.7℃になった。両症例とも抗菌薬の全身投与で術2日後までに平熱になり,1週間後には白血球数が正常化した。結論:下鼻道経由による涙囊鼻腔吻合術では,特に高年者では術後の体温に留意し,術後3日間は抗菌薬の全身投与が望ましい。

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要約 目的:正常眼圧緑内障に対するトラボプロスト点眼薬の安全性と眼圧下降効果の報告。対象と方法:正常眼圧緑内障66例66眼を対象とした。男性27例,女性39例で,年齢は26~83歳(平均55歳)である。眼圧は11~21mmHg(平均16.5±2.5mmHg)であった。0.004%トラボプロストを1日1回点眼させ,6か月間の経過を追った。結果:眼圧は点眼開始から1か月,3か月,6か月後に,いずれも開始前よりも有意に下降した(p<0.0001)。眼圧下降幅は,1か月後よりも6か月後が有意に大きかった(p<0.01)。眼圧下降率は1か月,3か月,6か月後で差がなかった。副作用で4例(6%)が点眼を中止した。結論:正常眼圧緑内障に対する6か月間のトラボプロスト点眼は安全で,良好な眼圧下降効果を示した。

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要約 目的:防腐剤を含まないチモロールとカルテオロール点眼液の比較。対象と方法:通院加療中の緑内障患者23例23眼を対象とした。男性2例,女性21例で,年齢は45~82歳(平均67歳)である。12例が原発開放隅角緑内障,11例が正常眼圧緑内障であった。それまで使用していた防腐剤を含まない0.5%チモロール点眼液を2%カルテオロール点眼液に変更し,眼圧を1か月後と3か月後に測定した。変更から1か月後に使用感などについて調査した。結果:眼圧には変更前後で差がなかった。眼の乾燥感はチモロール,刺激感,掻痒感,異物感はカルテオロールのほうが少なかった。点眼の難易度には差がなく,持ち運び,保管法,開栓の難易度はカルテオロールのほうが良好であった。チモロールからカルテオロールに変更したときの副作用が13%に生じた。結論:いずれも防腐剤を含まないチモロールとカルテオロール点眼液は,ほぼ同等の眼圧下降効果と安全性を有する。点眼時の自覚症状と点眼容器の取扱いはカルテオロールが優れていた。

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要約 目的:ドルゾラミド点眼が緑内障眼の視神経乳頭の血流に及ぼす影響の報告。対象と方法:緑内障患者11例11眼を対象とした。男性5例,女性6例で,年齢は54~78歳(平均68歳)である。6例が正常眼圧緑内障,4例が原発開放隅角緑内障,1例が慢性閉塞隅角緑内障であった。乳頭と視野所見とから,緑内障は初期~中期であった。それまでの治療に加え,1%ドルゾラミド点眼を追加し,2か月後の乳頭血流をレーザースペックル法で測定した。結果:眼圧は有意に低下し,血圧と眼灌流圧に変化はなかった。乳頭血流を示す指標は,乳頭陥凹部と下耳側リムで有意に増加した(p<0.05)。結論:緑内障眼への1%ドルゾラミド点眼により,眼圧が下降し,視神経乳頭の血流が増加した。以上からドルゾラミド点眼は緑内障眼での視神経を保護する可能性がある。

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要約 背景:多指症は胎生6週頃に起こる先天異常である。目的:角膜ぶどう腫と多指症が併発した新生児の報告。症例:生後4日目の男児が左眼角膜混濁と眼球突出で受診した。妊娠中の経過と分娩は正常で,出生体重は2,864gであった。所見:左眼は突出し,角膜に血管侵入と混濁があった。右手に多指症があった。生後4か月での磁気共鳴画像検査(MRI)で眼内に腫瘤はなかった。左眼の眼球突出が進行し,5か月後にぶどう膜を切除し,眼球内容を除去した。虹彩は角膜後面に癒着し,角膜は肥厚していた。角膜上皮に角化があり,メラニンを含んでいた。Bowman膜,Descemet膜,角膜内皮細胞は欠如していた。結論:本症例に多指症があったことから,左眼の角膜ぶどう腫は胎生5~7週に起こる神経堤細胞の遊走不全による先天性前眼部形成不全(mesenchymal dysgenesis of anterior segment)の重症例と考えられる。

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要約 目的:眼内レンズ(IOL)が脱臼したアトピー性皮膚炎3症例の報告。症例と所見:症例はいずれも男性で,幼児期からアトピー性皮膚炎があり,掻痒感のため顔面を殴打する癖があった。年齢はそれぞれ31,34,38歳である。いずれも両眼に白内障手術と眼内レンズ挿入術を過去に受け,2例2眼には網膜剝離の既往があった。IOL脱臼は挿入から5年,9年,16年後に生じ,2例では片眼性,1例では両眼性であった。IOLは2眼では硝子体内,2眼では前房内または虹彩前に脱臼した。IOL脱臼に対しては硝子体手術が行われ,2眼ではIOLが再挿入された。結論:網膜剝離手術,白内障手術とIOL挿入の既往があり,アトピー性皮膚炎のために顔面を殴打する癖がある症例では,白内障手術から長期間を経過した後に眼内レンズが脱臼することがあるので注意を要する。

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要約 目的:滲出性網膜剝離を伴ったCoats病にベバシズマブ硝子体内注射が奏効した症例の報告。症例と所見:15歳男子が7日前からの左眼視力低下で受診した。矯正視力は右1.2,左1.5で,左眼黄斑部に硬性白斑が沈着し,上耳側の眼底に滲出性病変と出血を伴う異常血管があった。蛍光眼底造影で毛細血管の拡張と血管瘤があり,Coats病と診断した。レーザー光凝固ののち黄斑滲出が増加し,初診から13か月後に視力が0.08に低下した。ベバシズマブ1.25mgの硝子体内注射を2回行い,初診から25か月後の現在,視力は0.6に改善している。結論:滲出性網膜剝離があるCoats病の症例にベバシズマブの硝子体内注射が奏効した。

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要約 目的:網膜中心動脈閉塞症の臨床像の報告。対象:網膜中心動脈閉塞症の自験例41症例を検索した。1か月~20年(平均40か月)の経過を追った。結果:男22例,女19例で,年齢は30~87歳(平均68歳)であった。34例(83%)が60歳以上で,27例が右眼,14例が左眼に発症した。高血圧が26例,糖尿病が9例,心疾患が9例にあった。初診時視力は全例が0.1以下であり,24例(59%)が指数弁以下であった。最終視力は7例(17%)が0.5~1.2で,19例(46%)が指数弁以下であった。視力が0.5以上に回復した7例は,平均年齢が55歳で,心疾患または脳梗塞の既往がなかった。70歳以上で発症した19例では,最終視力が15例(79%)で指数弁以下であった。結論:網膜中心動脈閉塞症の症例では,高年齢で全身疾患があると,視力転帰が不良であった。

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要約 目的:裂孔原性網膜剝離に対する硝子体手術と眼内レンズ縫着術の成績の報告。対象と方法:過去7年間に治療した裂孔原性網膜剝離8例8眼を検索した。男性6例,女性2例で,年齢は47~82歳(平均69歳)である。全例に硝子体手術と眼内レンズの毛様溝縫着を行った。結果:全例で初回復位が得られた。1例で6年後に網膜剝離が再発し,手術で復位した。術後の裸眼視力は全例で改善し,矯正視力も不変または改善した。目標屈折値からの誤差は平均1.5Dで,網膜剝離の手術後に二次的に眼内レンズを挿入した例と有意差はなかった。結論:裂孔原性網膜剝離に対する硝子体手術と眼内レンズ縫着術の同時手術は,安全で有効である。

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要約 目的:網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)に対するベバシズマブ硝子体注射の結果の報告。対象と方法:黄斑浮腫があるBRVO 29例29眼を対象とした。男性9眼,女性20眼で,平均年齢は68歳,発症からの推定期間は2.9±3.3か月であった。ベバシズマブ1.25mgを硝子体腔に注射し,3か月以上の経過を追った。視力はlogMARで評価した。経過中に視力が低下した症例には,1か月以上の間隔をおいて再投与した。結果:10例では1回の注射で平均視力が0.23から0.02になった。19例では2~6回の注射が行われ,第1回の注射で平均視力が0.40から0.11になった。29例では最高視力が得られた注射回数は,1回目が18/29例,2回目が3/19例,3回目が5/9例,4回目以上が3/5例であった。結論:黄斑浮腫があるBRVOに対するベバシズマブの硝子体注射は,1回だけで視力が上昇する例があるが,3回以上の注射でも改善する例がある。

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要約 背景:悪性黒色腫には,炭素の原子核を光速の80%に加速した重粒子線照射が奏効することが期待されている。目的:炭素イオン線照射から4年後に照射野内に再発した脈絡膜悪性黒色腫の症例の報告。症例:53歳女性の左眼に脈絡膜悪性黒色腫が発見された。腫瘍径は17mm,厚さは12mmで,視力は0.3であった。炭素イオン線(77GyE)の照射後6か月で網膜剝離が進行し,失明した。磁気共鳴画像検査(MRI)などで腫瘍は縮小していた。4年後に腫瘍が拡大し,眼球を摘出した。紡錘細胞型悪性黒色腫で,照射野内にある原発巣からの再発であった。結論:脈絡膜悪性黒色腫に炭素イオン線照射が奏効したが4年後に再発した。照射線量が過少ではなく再発の原因は不明であるが,治療後も長期経過観察が必要なことを示す症例である。

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要約 目的:前部ぶどう膜炎を初発症状としたNK/T細胞リンパ腫の症例の報告。症例:58歳男性が4週間前からの右眼視力低下で受診した。気管支喘息と高血圧の既往があった。所見:矯正視力は右0.15,左0.3であり,右眼に虹彩炎の所見と虹彩腫瘤があった。左眼には陳旧化した網膜静脈分枝閉塞症の所見があった。プレドニゾロン内服は無効で,出血性前房蓄膿が起こり,初診1か月後に眼瞼下垂を伴う右眼上眼瞼に腫瘤が生じた。磁気共鳴画像検査(MRI)で篩骨洞と鼻腔に進展する腫瘍があった。生検でNK/T細胞リンパ腫の診断が確定した。骨髄穿刺でⅣ期とされ,SMILE療法を開始した。放射線照射を追加し,病変部は縮小したが,全身状態が悪化し初診から8か月後に不帰の転帰をとった。結論:NK/T細胞リンパ腫は予後不良であり,早期の診断と治療が望まれることを示す症例である。

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要約 目的:胃の印環細胞癌が視神経に転移した症例の報告。症例:63歳男性が10日前からの右眼視力低下で受診した。6か月前に腹痛があり,3か月前に胃癌が発見された。4剤併用による化学療法が行われていた。所見:矯正視力は右手動弁,左1.0であり,右眼に乳頭浮腫と硝子体混濁があった。中心暗点と鼻側視野欠損があった。CTで視神経が芋虫状に腫大し,磁気共鳴画像検査(MRI)で頭蓋内に病的所見はなかった。化学療法の変更で視力は0.3になったが,全身状態が悪化し,播種性血管内凝固症候群が発症し,眼科初診から40日後に不帰の転帰をとった。剖検で胃癌は低分化腺癌非充実型の印環細胞癌であり,右視神経にその浸潤があった。結論:癌の視神経転移が視神経症の原因になることがある。

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要約 背景:塩酸ラロキシフェンは選択的エストロゲン受容体モジュレータで,骨粗鬆症に対して経口投与される。静脈血栓症は本剤の禁忌とされている。目的:塩酸ラロキシフェンの投与開始後に発症した結核性網膜血管炎の報告。症例:65歳女性が3週間前からの左眼霧視で受診した。霧視を自覚する2週間前から塩酸ラロキシフェンを投与されていた。所見:矯正視力は左右とも1.0で,両眼に眼底出血と網膜血管炎,左眼に豚脂様角膜後面沈着物と隅角結節があった。ツベルクリン反応が強陽性であった。塩酸ラロキシフェンの投与を中止し,デキサメタゾンの点眼を開始した。3か月後に眼底出血と血管炎は軽快した。内科の診察で結核性胸膜炎が疑われ,抗結核薬による治療が行われた。初診から15か月後の現在,眼底の経過は良好である。結論:塩酸ラロキシフェンの全身投与が網膜血管炎の発症または増悪に関係した可能性がある。

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要約 目的:激しい筋肉痛と高熱を伴ったG群溶血性連鎖球菌による内因性眼内炎の症例の報告。症例:31歳男性が1日前からの右眼の眼痛と視力低下で受診した。3日前から発熱と嘔吐,1日前から全身の筋肉痛と腎不全があった。所見:矯正視力は右指数弁,左1.5で,右眼に眼瞼浮腫,球結膜の充血,角膜浮腫,虹彩外反があり,眼底は透見不能であった。血液培養でG群溶血性連鎖球菌が検出された。通常の抗生物質の全身投与で熱発と高炎症反応が持続した。発症から6週間後に感染性心内膜炎に準じた抗生物質の大量投与で全身症状が速やかに改善した。結論:病原性が強いG群溶血性連鎖球菌による全身感染では,基礎疾患がない健常者に強い内因性眼内炎が生じることがある。

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要約 目的:非壊死性前部強膜炎に対するトリアムシノロンアセトニド結膜下注射の効果の報告。対象と方法:前部強膜炎9例11眼を対象とした。全例がステロイド薬の内服または点眼で改善しなかった。関節リウマチが2例2眼,再発性骨軟化症が1例2眼にあった。全例にトリアムシノロンアセトニド2~4mgの結膜下注射を行い,2~4週間後に改善しない症例には追加注射を行った。注射後4か月までの経過を追跡した。結果:11眼すべてで強膜炎が鎮静化した。2眼では追加注射を必要とした。鎮静化までのトリアムシノロンアセトニドの総量は平均5.3±2.2mgであった。3眼で強膜炎が再発したが,同様な治療で鎮静化した。4眼で強膜が菲薄化した。眼圧上昇と明らかな白内障の進行はなかった。結論:非壊死性前部強膜炎にトリアムシノロンアセトニドの結膜下注射が奏効した。長期的な副作用についてはさらに検討を要する。

専門別研究会

視野研究会 吉冨 健志
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はじめに

 専門別研究会は,2008年から日本臨床眼科学会に統合され,視野研究会も日本眼科学会から日本臨床眼科学会に移った。今回は福岡で行われた第63回日本臨床眼科学会初日2009年10月9日(金曜)午前に開催された。プログラムの運営上,午前8時10分からの開始という朝早いスケジュールにもかかわらず,参加者は180名と盛況であった。本研究会の会長を2005年から務めておられた故北原健二先生は,2008年10月に開催された前回の視野研究会を最後に会長職を辞することを表明しておられた。しかし,体調を崩されて研究会を欠席された直後に突然ご逝去されたとの知らせを受けた。北原先生は長年にわたって視野研究会の発展に寄与され,その温厚なお人柄で多くのお弟子さんを育成してこられた。その早すぎるご逝去を悼み,この場をお借りして心からご冥福をお祈り申し上げる。

 今回の視野研究会は,まず北原健二先生への黙祷から始まり,特別シンポジウムとして,「北原健二先生メモリアル」を企画させていただいた。このセッションは北原先生のお弟子さんである5人の先生方に,視野に関係する以外のことも含めて,北原先生のご業績を紹介していただく企画である。座長は視野研究会の現会長である松本長太先生が務められた。

 ご講演いただいたのは東京慈恵会医科大学で北原先生のご薫陶を受けられた中野匡先生,吉田正樹先生,仲泊聡先生,渡辺朗先生,林孝彰先生の5人である。北原先生の業績は幅広く,色視野を中心とした心理物理研究,色覚異常とそれに関連する遺伝子の研究,fMRIを用いた脳機能画像に関する研究などのお仕事を広く紹介していただくと同時に,北原先生のお人柄を偲ぶエピソードもご紹介いただいた。

 引き続いて一般講演とシンポジウムを例年どおり企画させていただいた。一般演題6題とシンポジウム4題の内容を簡単に記させていただく。

連載 今月の話題

黄斑浮腫の治療 志村 雅彦
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 黄斑浮腫は実に厄介な病気である。神経細胞が密集し,多くの血流を必要としながら血管の存在しない網膜黄斑部に水分が異常貯留するのである。原因疾患は多種多彩であり,病態も明らかにされていない。にもかかわらず,硝子体手術や網膜光凝固,抗炎症ステロイドや抗VEGF抗体の投与など,病態の解明に先立って治療が行われており,しかもそれなりに満足のいく効果が得られている。本稿では,現状における黄斑浮腫治療を総括するとともに,そこからみえる黄斑浮腫の病態について論じてみたい。

連載 公開講座・炎症性眼疾患の診療・27

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はじめに

 強膜は眼球後方の大部分と,前方の角膜を除く外壁を形成する白色の丈夫な組織である。また,強膜表層に接する血管の豊富な部分は上強膜とよばれる。眼球形状の維持と瞳孔以外からの外界の光を遮断する役割を果たすため,機能としてはカメラのボディに近い。肉眼的には透明な結膜を通していわゆる白目として認識される。しかし他の霊長類がすべて虹彩色に近い着色強膜であるにもかかわらず(図1),ヒトだけが白色強膜である理由ははっきりしない。これでは虹彩とのコントラストが強調されてしまうために視線を読まれやすくなり,逃走方向を予測されて天敵・捕食動物に襲われた際の生存率が低下すると考えられる。進化の過程でそのような必要性が低下したために白色化したとも考えられるが,そうだとしてもいつから変色したのかは不明である。

 この白色強膜のためヒトで最も多い強膜炎の自覚症状は充血,次いで疼痛である。強膜は膠原線維と弾性線維に富むため,膠原病やリウマチ疾患との関連が深い。比較的血管に富む前部強膜炎が多い。後部強膜炎は原田病との鑑別も重要である。

連載 視野のみかた・3

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はじめに

 自動視野計を用いて測定した静的視野は,結果が数値として得られることが解析上の大きな利点である。視野は,本来視覚の感度分布であり,閾値測定では測定点ごとに個々の部位の感度を得ることができる。さらに自動視野計では,これら個々の測定点の情報を用い,視野としての本来のパターンの情報は捨て,「1つの視野」の性状を「1つの数値」として算出し評価する視野指標(visual field indices)と呼ばれる種々のパラメータが計算される。ここでは,この視野指標のもつ意味をその原理から解説し,特徴を述べていきたい。

連載 眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本・6

IL-1 中尾 新太郎
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 インターロイキン(interleukin)とは,主に白血球により産生されるサイトカイン群であり,現在まで30種類以上のインターロイキンが報告されている。そのなかで最初に同定された分子がIL-1である。IL-1は代表的な炎症性サイトカインであり,さまざまな炎症疾患において重要な役割をしている。IL-1阻害薬は,米国において関節リウマチをはじめとしたいくつかの炎症疾患に対し認可,使用されている。眼疾患においても,炎症にかかわる病態でのIL-1の関与が報告されており,将来的にIL-1阻害薬の眼炎症疾患への臨床応用が期待される。

連載 つけよう! 神経眼科力・3

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複視を訴える患者がいれば……

まずHess複像表検査を!

 もちろん複視を訴える患者がいれば,まず自分自身の眼で眼位・眼球運動検査を行おう。正面視での眼位ずれが疑わしければ,片眼に赤フィルタを装用させペンライトで患者を照らし,患者自身に白いライトと赤いライトのずれを答えさせればよい。しかし,高齢者やオリエンテーションの不良な患者では,その答えがあいまいなことや判断に迷うことが多い。そういう場合には,まずHess複像表検査をオーダーしよう。複視を訴える患者ではまずHess複像表が測定できるはずである。患者が顎台に顎を載せ,片方の手で矢印を桝目に合わせることさえできれば,必ず正面視と左右上下視の5方向,さらにその間の斜め方向での眼位ずれが検出できる。

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要約 目的:冠動脈バイパス手術後に上脈絡膜出血が生じた原発開放隅角緑内障(POAG)の1例の報告。症例:60歳女性が左眼の眼痛で紹介され受診した。左眼には幼時から強度近視と弱視があった。4年前から両眼のPOAGに対し,点眼薬と内服薬で加療中であった。1か月前に両眼に白内障手術と眼内レンズ挿入を受けた。所見:矯正視力は右1.5,左手動弁で,眼圧は右22mmHg,左21mmHgであった。無症候性心筋虚血に対し,8日後に冠動脈バイパス手術を受け,その翌日からアスピリンを投与された。手術の17日後に左眼痛が突発した。眼圧は7mmHgで,全脈絡膜剝離があった。緑内障への薬物投与を中止し,アトロピンを点眼した。1か月後に脈絡膜剝離は治癒した。結論:左眼には,複数の全身と局所因子があり,冠動脈バイパス手術の周術期での循環変動による上脈絡膜剝離が生じたと推定される。

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要約 目的:隅角に大量の色素沈着があり,緑内障が併発した太田母斑の症例の報告。症例:49歳女性が左眼の霧視で紹介され受診した。過去に左頰部に色素斑があり,2年前にレーザー治療を受けた。前日の左眼眼圧が65mmHgで,降圧薬を使用中であった。所見:左右眼ともほぼ-5.5Dの近視があり,矯正視力は左右とも1.2であった。眼圧は右12mmHg,左23mmHgであった。左眼の虹彩と隅角に顕著な色素沈着があり,下方隅角に大量の色素沈着があった。太田母斑に併発した緑内障と診断した。線維柱帯切開術で眼圧が下降したが,6か月後に再上昇し,線維柱帯切除術の追加と水晶体再建術を行った。結論:太田母斑に併発した緑内障では,線維柱帯切開術による眼圧下降効果が持続しない例がある。

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 症例は40歳女性。眼鏡処方のため近医を受診したところ,左眼視神経乳頭部に黒色調の色素沈着を指摘され,精査・加療目的で当科を紹介され受診した。初診時,左眼視力は矯正1.0,眼圧は18mmHgで,対光反射良好,前眼部・中間透光体に異常所見はなく,視神経乳頭部に連続する黒色調の隆起性の病変を認めた。腫瘍病巣の大きさは,Bモード超音波検査で直径3.5mm,高さ1.6mmであり,硝子体中には細胞は認めなかった。フルオレセインおよびインドシアニングリーン蛍光造影検査では,網膜・脈絡膜ともに初期から後期にかけて低蛍光であり,腫瘍血管などの異常血管はみられなかった。視野は鼻側下方視野の狭窄を認めた。以上から視神経乳頭黒色細胞腫と診断した。造影コンピュータ断層撮影では,左眼視神経乳頭部に高吸収領域を認めたが,全身的に明らかな異常はなかった。8年後の最終受診時(表紙写真撮影日),腫瘍径の高さは2.0mmと増大したものの,矯正視力は変化なく良好で,硝子体腔への播種は認めず全身的にも転移はみられない。しかしながら,視野障害は進行し中心10°~15°を残して鼻側・耳側の下方周辺視野の狭窄をきたしていた。

 撮影には,TOPCON社製TRC-50AXを用い,画角50°で撮影した。全体像が捉えられるように撮影時には,ファインダーを覗いたときに突出している黒色細胞腫と網膜面の双方を写し込めるようにピントを合わせた。

べらどんな

時代錯誤
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 日本人がめがねを知ったのは切支丹ばてれんのお蔭である。めがねをかけた宣教師を見て,「異人には目が四つある」と驚いたという話がある。

 ザヴィエルが1549年に来日したときも,めがねを土産として持参した。山口で大内義隆に拝謁したときにこれを献上した。ただし当時のめがねはすべて老眼鏡であった。あいにく義隆は強度近視だったので,めがねを貰ってもまったく無意味であった。

媚薬
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 媚薬には2種類がある。第一種にはそれを使った人の魅力が増す効果があり,第二種を使うと自分が相手に惚れこむことになる。

 媚薬の例として「トリスタンとイゾルデ」があるが,2種類のどちらを使ったかは判定できない。船の中で両人が一緒に飲んだからである。

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 『プロメテウス解剖学アトラス』第3巻の日本語版がついに刊行された。第1巻を初めて目にしたときの驚きが,第2巻,第3巻と手に取って開くたびに新たによみがえる思いがする。

 『プロメテウス解剖学アトラス』のきわめて強い第一印象がその肉眼解剖の精細な図版によるものであることは,多くの評者の指摘しているところである。コンピュータを駆使して作成されたと聞くが,決してこれまでに多く見られたような,単純化された模式的なものではない。実物を詳しく観察した者誰もが納得する,緻密なテクスチャを再現した図は,従来の図譜になかったリアルさを感じさせる。リアルであるという点は写真のほうが有利だと思われがちであるが,焦点深度に限界のある写真と異なり,本書の図はすべてにピントが合っており,描かれている構造のすみずみまで行きわたった細密な描写に圧倒される。それにもかかわらず,正確な陰影の描き方によって,絵の図譜にありがちな平面的な表現とも無縁である。この奥行きの表現は,構造の立体的な理解を容易にする。これは解剖学のみならず臨床各科においても,実地に本書を利用する読者にとって大きな利点であろう。

やさしい目で きびしい目で・126

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 今から約10年前,教授の一声で思いがけず50年も続いている疫学研究「久山町研究」に眼科として参加し研究させていただくことになった。恥ずかしながら勉強不足で久山町研究についてまったく知らず,「どこかの町に住民健診に行ってデータを集めてくればいいんだろう」などと簡単に考えていた私。その後,久山町研究室の扉をたたき,そこで初めて単なる住民健診ではなく50年も続いている長期の追跡調査であるということを知った。

 研究に参加してまず一番に驚いたことは追跡率の高さである。久山町研究では40歳になると全員が研究対象者となり,どのような生活習慣があるか,どのような疾患を持っているか,またはどのような疾患を新たに発症したか,どのような死因で亡くなったかなど死ぬまで追跡されることになっている。これは久山町を転出してどこに移り住んでも同じように死ぬまで追跡される。なんと50年近くも追跡調査を行っているにもかかわらず,これまで99%と驚異的な追跡率を誇っており,健診を開始してから死ぬまで追跡できなかった人はわずか2人である。

ことば・ことば・ことば

アジェンダ
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 昨年秋から急に出てきた流行語にマニフェストがあります。これだけかと思ったら,ある新党をつくった政治家が質問に答え,「アジェンダが大事」と言っていました。

 「まさか」と思いましたが,調べてみるとこの言葉は「広辞苑」にちゃんと出ていました。「予定表。議事日程。行動計画」がその意味であり,英語の単語agendaをそのままカタカナにしたものです。

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あとがき 根木 昭
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 第114回日本眼科学会(日眼)総会が寺崎浩子会長のもと名古屋で開催され,4,700人を超える日眼総会史上,最高の参加者を記録しました。昨年の東京での総会も約4,300人とそれまでの新記録でしたが,今回東京以外で参加者が最高を記録したことで会員の日眼離れに終止符が打たれたのではないかと思います。

 一時は3.000人を切るほどで,日眼総会は基礎的研究学会でよいとする意見もありましたが,眼科専門医制度を主催する日眼の年1回の総会が,基礎研究者のためだけの学会では専門医制度も支持を得られるものではありません。14,000人の日眼会員のための総会にするよう,プログラム委員会が立ち上がり,秋の日本臨床眼科学会(臨眼)と整合性をとりながら,経年的にも統一性のあるプログラムを構成してきた結果が実を結んだといえます。寺崎会長もわかりやすい学会を合い言葉にプログラムを統制されました。教育セミナー,サブスペシャリティサンデーもすっかり定着し,日眼ならではの標準化が根付いてきました。市民公開講座も大盛況でした。

基本情報

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臨床眼科
64巻6号 (2010年6月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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