臨床眼科 64巻5号 (2010年5月)

特集 第63回日本臨床眼科学会講演集(3)

特別講演

  • 文献概要を表示

 視細胞外節は光を電気信号に変換する場所で,視力の根源をなす。このため外節の障害は視機能に鋭敏に反映される。しかし,外節病変は検眼鏡では見ることができない。スペクトラルドメイン光干渉断層計の登場により,視細胞内節・外節接合部(IS/OS)は高反射ラインとして,外境界膜と網膜色素上皮から分離して観察できるようになった。これに視力,視野,多局所網膜電図を組み合わせることで,外節の機能を評価できる。この結果,視細胞外節を場とするさまざまな疾患があることが明らかになってきた。

 視細胞外節は代謝が盛んで酸化ストレスにさらされている。その先端は網膜色素上皮に貪食され,10日間で一新する。また網膜の神経細胞はMüllerなどのグリア細胞によって守られているが,外節は網膜下腔に突出している。これらの外節の特異性が外節病の背景にあると考えられる。

  • 文献概要を表示

要約 目的:増殖糖尿病網膜症に対する20ゲージ(G)と25G硝子体手術の成績の比較。対象と方法:同一術者が52か月間に硝子体手術を行った増殖糖尿病網膜症108例136眼を対象とした。45眼には最初の16か月間に20G,91眼にはこれに続く36か月間に25Gを用いた手術を行った。周辺部まで硝子体を切除し,鋸状縁まで光凝固を行った。25Gの91眼中,ベバシズマブを術前に12眼,術後に8眼に注入した。結果:術後の視力には,20G群と25G群とで差はなった。20G群に比し,25G群では手術時間が短く,術中の裂孔形成が少なかった。累計手術回数は,20Gでは平均1.4回,25Gでは平均1.2回であった。25G群での視力転帰には,裂孔形成とシリコーンオイル置換が関与した。結論:増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術で,25Gでは20Gと同様な視力転帰が得られ,手術時間が短縮し,術中の医原性網膜裂孔の頻度が減少した。

  • 文献概要を表示

要約 目的:高度近視がある緑内障眼での眼圧,視野,薬物の効果の報告。対象と方法:視野障害がある原発開放隅角緑内障または正常眼圧緑内障31例38眼を対象とした。全例が-6D以上の近視または26mm以上の眼軸長であった。上方視野障害が23眼,下方視野障害が15眼にあった。眼圧は圧平眼圧計とdynamic contour tonometer(DCT)で測定し,ラタノプロストとチモロール点眼による反応を両群で比較した。結果:眼圧は上方視野障害群で有意に高かった。平均眼圧はラタノプロスト点眼により両群で有意に下降した。チモロールの眼圧下降効果はラタノプロストよりも少なく,上方視野障害群でのDCTによる測定のみで有意であった。結論:DCTでは低眼圧領域での眼圧管理に有用である。高度近視がある緑内障ではチモロール点眼による眼圧下降効果が限られ,上方視野に障害があるときに第二選択となる。

  • 文献概要を表示

要約 背景:角膜鉄線の頻度は,日本人では4.4%,非日本人では29~69%とされている。目的:日本人での角膜鉄線の頻度を動画で検索した報告。対象と方法:眼科を受診した男性436名,女性564名の合計1,000名の角膜を動画として撮影し,Photoshop®で自動処理をして角膜鉄線を検索した。結果:散乱光では瞳孔領の鉄線だけが写り,青フィルタを挿入すると虹彩域の鉄線と透明域が写った。直接光と反帰光では虹彩域の鉄線が写り,透明域は写らなかった。この写真をPhotoshop®で処理すると虹彩域で透明域が現れ,鉄線の両端から輪部まで続いていた。鉄線と透明域を合わせた頻度は31.3%であった。鉄線の形は非日本人で報告されているそれと同じであった。結論:角膜鉄線は虹彩の色と記録法で検出率が違う。その頻度が日本人と非日本人とで異なるのは,手技の違いによると解釈される。

  • 文献概要を表示

要約 目的:アクリル製の1ピースと3ピース眼内レンズを挿入した後の屈折変化の報告。対象と方法:30か月間に眼内レンズを挿入した274例402眼を対象とした。273眼には1ピース,129眼には3ピース眼内レンズを挿入し,術後屈折値,術前予測屈折値との差,前房深度を検索した。結果:術後3か月以後は,術後の屈折と予測誤差について,両群間に有意差はなかった。術後の前房深度には有意な変化はなかった。結論:アクリル製の眼内レンズ挿入後の屈折の安定性は,1ピースと3ピース間に有意差がない。

  • 文献概要を表示

要約 目的:Shaken baby syndromeが疑われた3症例の報告。症例と所見:3例とも女児で,網膜前出血と急性硬膜下出血があった。1例は生後2か月で,問診で父親による虐待が判明した。1例は生後3か月で,痙攣で受診した。母親による揺さぶりがあったことが確認でき,本症候群と診断した。1例は生後9か月で,軽い頭部打撲後に痙攣が起こった。両親は虐待や強い揺さぶりを否定したが,本症候群が推定された。結論:乳児に頭蓋内出血や網膜出血があるときには,虐待またはshaken baby syndromeの可能性がある。その診断には眼科医による診察が必要である。

  • 文献概要を表示

要約 目的:特発性黄斑円孔に対し,外来で日帰り硝子体手術を行った結果の報告。対象と方法:過去3年間に同一術者が手術した22例22眼を対象とした。男性6眼,女性16眼で,年齢は49~80歳(平均66歳)である。推定罹病期間は0.5~24か月,平均4.7か月であった。全例が全層黄斑円孔で,Gass分類では5眼が第2期,17眼が第3期であった。60歳以上の症例には白内障手術,全例に単純硝子体切除,後部硝子体剝離,無染色内境界膜剝離,空気タンポナーデを行った。術後約9時間は腹臥位,以後は仰臥位以外は自由な体位とした。視力はlogMARで評価した。結果:全例が初回手術で円孔が閉鎖した。視力は術前に比べ術後1か月以降で有意に改善し,術後18か月後の小数換算視力は平均1.01であった。合併症はなかった。結論:特発性黄斑円孔に対し,外来日帰り手術でも良好な結果が得られた。

  • 文献概要を表示

要約 目的:点状内層脈絡膜症(punctate inner choroidopathy)に併発した脈絡膜新生血管(CNV)がベバシズマブの硝子体内投与で退縮した3症例の報告。症例と経過:3症例とも女性で,年齢は24,36,57歳であり,いずれも片眼性の発症であった。2眼には-8D,1眼には-2Dの近視があり,矯正視力はそれぞれ0.5,0.2,0.08であった。眼底後極部に白点が散在し,蛍光眼底造影でⅡ型CNVがあった。CNVを伴った点状内層脈絡膜症と診断した。1~3回のベバシズマブの硝子体内投与を行った。CNVは退縮し,視力はそれぞれ1.2,1.0,0.8に改善した。結論:3例の点状内層脈絡膜症に併発したCNVに対し,ベバシズマブの硝子体内投与が著効を示した。

  • 文献概要を表示

要約 目的:急性網膜色素上皮炎に似た所見を呈した急性後部多発性斑状色素上皮症(APMPPE)の症例の報告。症例:16歳男性が1週間前からの左眼視力低下で受診した。所見:矯正視力は右1.5,左0.6で,両眼に淡い滲出斑が網膜下に散在していた。蛍光眼底造影所見からAPMPPEと診断した。多数の暗灰色点が左眼黄斑部の深層にあり,黄白色輪に囲まれていた。左眼黄斑部は地図状の低蛍光を呈し,光干渉断層計で視細胞内外節の欠損と脈絡膜の高輝度の陰影があった。この所見は急性網膜色素上皮炎に相当すると解釈した。無治療で2か月後に滲出斑は消失し,蛍光眼底造影と光干渉断層計所見は改善し,左眼視力は1.2になった。結論:APMPPEに急性網膜色素上皮炎に似た病変が併発する可能性がある。

  • 文献概要を表示

要約 背景:経鼻的涙囊鼻腔吻合術(DCR)の適応は,涙囊よりも後方の涙道閉塞であるとされてきた。筆者らは涙小管閉塞にもこれを応用している。目的:軽度の涙小管閉塞に対する経鼻的DCRの成績の報告。対象と方法:過去1年間に手術を行い,1年以上の経過が追跡できた軽度の涙小管閉塞35例を対象とした。男性10例,女性25例であり,16例には経鼻的DCR,19例には経皮的DCRを行った。術後1年目に通水試験,自覚症状などから成績を判定した。結果:全35例で涙道のステントチューブを留置できた。手術の成功率は,経鼻的DCRが69%,経皮的DCRが79%で,両群間に有意差はなかった(p=0.25)。結論:軽度の涙小管閉塞に対する手術の成績は,経鼻的DCRと経皮的DCRとの間に差がない。

  • 文献概要を表示

要約 目的:フェムトセカンド(FS)レーザーで異なるフラップ厚を作製して施行したLASIKの治療成績の比較。対象と方法:フラップを26眼では厚さ90μmで作製し,48眼では厚さ120μmで作製した。術後裸眼・矯正視力,矯正精度,屈折度数,高次収差増加量,コントラスト感度,合併症を評価した。結果:術後6か月の裸眼・矯正視力,矯正精度,屈折度数は両群に有意差がなく,球面収差の増加量は厚さ90μmのほうが有意に少なかった。コントラスト感度は両群で改善傾向がみられた。合併症はなかった。結論:FSレーザーを使用したフラップ厚90μmで行うLASIKは,残存角膜ベッド厚の確保に有用である。

  • 文献概要を表示

要約 目的:プロスタグランジン関連点眼薬にドルゾラミドを追加投与したときの効果と安全性の報告。対象と方法:14施設で加療中の広義の原発開放隅角緑内障55例55眼を対象とした。男性26例,女性29例で,年齢は43~88歳,平均71歳である。50例はラタノプロスト,5例はトラボプロストを点眼中で,平均眼圧は16.7±2.4mmHgであった。1%ドルゾラミドを1日3回点眼し,6か月間の経過を追った。結果:ドルゾラミドの追加投与で眼圧は有意に下降した(p<0.0001)。眼圧下降幅と下降率は,追加投与開始から1か月,3か月,6か月で差がなかった。1例が眼圧上昇,2例が通院中断で脱落した。結論:プロスタグランジン関連点眼薬を使用中の症例に対するドルゾラミドの追加投与により,安全で強い眼圧下降効果が得られた。

  • 文献概要を表示

要約 目的:点眼で治療中の緑内障患者での点状表層角膜症の報告。対象と方法:当院に通院中の緑内障患者486人882眼を対象とした。角膜をフルオレセインで染色して点状表層角膜症の有無を観察し,程度にはAD分類を用いた。結果:419眼(47.5%)に点状表層角膜症があった。その重篤度と頻度は,1日の点眼回数と使用している薬剤数に有意の相関があった(p<0.01)。ラタノプロストまたはトラボプロストの単剤点眼では,角膜症の頻度に差がなかった。70歳未満に比べ,70歳以上では点状表層角膜症の頻度が増加したが,後者では点眼回数と使用薬剤数が多かった。結論:点眼治療中の緑内障眼の約48%に点状表層角膜症があり,その頻度と重篤度は1日の点眼回数と使用している薬剤数と正の相関があった。

  • 文献概要を表示

要約 目的:杆体機能障害が改善した両眼性AZOOR(acute zonal occult outer retinopathy)の症例の報告。症例:34歳女性が10日前からの右眼の光視症と下方視野欠損で受診した。所見:矯正視力は左右とも1.5で,前眼部から眼底まで異常所見はなかった。視野検査で右眼に傍中心暗点と下方視野の暗点,左眼に盲点の拡大があった。全視野網膜電図で錐体と杆体の障害が両眼にあり,多局所網膜電図で視野異常の部位と一致する応答密度の低下があった。視野と網膜電図とから両眼性のAZOORと診断した。発症から7か月後に杆体機能が改善し,錐体機能障害は持続した。結論:本症例では,AZOORによる機能回復の過程に錐体と杆体とで違いがあった。

  • 文献概要を表示

要約 目的:うっ血乳頭を契機として脳静脈洞血栓症が発見された症例の報告。症例:36歳男性が10日前からの頭痛と変視症でうっ血乳頭を発見され,紹介受診した。矯正視力は左右とも1.0で,両眼に顕著なうっ血乳頭があった。他に眼科的に異常はなかった。コンピュータ断層撮影(CT)では異常所見はなかった。脳神経外科での磁気共鳴画像静脈検査(MRV)で脳静脈洞血栓症と診断された。抗凝固療法で血栓は溶解し,治療開始から2週間後に頭痛は消失し,6か月後にうっ血乳頭は改善した。結論:うっ血乳頭がCTでは検出できない脳静脈洞血栓症で発症する可能性がある。

  • 文献概要を表示

要約 目的:瞳孔不同と対光反射の消失がある多発奇形症候群の1例の報告。症例:生後4か月の男児に出生時から小顎,鞍鼻,上下肢の多発性関節拘縮,小陰茎,内反足,舟状足があった。瞳孔は正円で虹彩紋理は正常,瞳孔径は右3.5mm,左2.5mmで,対光反射はなかった。前眼部から眼底に異常はなかった。網膜電図は正常で,視覚誘発電位には右後頭部と左後頭部の波形に大きな振幅差があった。3歳になった現在,右眼には対光反射の減弱があり,左眼には対光反射がない。結論:本症例では,多発性関節拘縮と眼異常が合併する多発奇形症候群であるcerebro-oculo-facio-skeletal syndrome type 1が疑われる。

  • 文献概要を表示

要約 目的:抗血管内皮増殖因子(anti-VEGF)の硝子体内注入後の眼圧と視野変化の報告。対象と方法:滲出型加齢黄斑変性に対して抗血管内皮増殖因子の硝子体注射を過去8か月間に行った延べ81眼を対象とした。ペガプタニブを12眼,ラニビズマブを49眼,ベバシズマブを20眼に用い,注入量は0.05または0.09mlとした。非接触眼圧計で眼圧が正常化するまで全例で測定し,Humphrey自動視野計で40眼の視野を測定した。結果:全例で注射直後の平均眼圧が約50から65mmHgに上昇し,無処置で60分以内に20mmHgになった。注射前後で視野に変化はなかった。結論:抗血管内皮増殖因子の硝子体注入で眼圧が上昇するが,1時間以内に正常化し,視野への影響はない。

  • 文献概要を表示

要約 目的:ベバシズマブの硝子体内注入後に網膜循環不全と視力低下が生じた症例の報告。症例:75歳男性が右眼の視力低下で受診した。2年前から糖尿病で加療中であった。所見と経過:矯正視力は右0.4,左0.5であり,白内障と前増殖網膜症が両眼にあった。右眼に白内障手術と眼内レンズ挿入を行い,視力は1.0に改善した。汎網膜光凝固を行った。手術から3か月後に虹彩ルベオーシスと高眼圧が生じ,硝子体切除術を行った。さらに3か月後にベバシズマブを硝子体内に注入した。その3週間後に視力低下を自覚した。視力は0.01で,網膜動脈の狭細化と白鞘化があり,蛍光眼底造影で著しい循環遅延があった。視神経萎縮が生じ,視力は0.02になった。結論:ベバシズマブの硝子体内注入で網膜に急性循環不全が生じる可能性がある。

  • 文献概要を表示

要約 目的:車椅子マラソン後に網膜中心動脈閉塞症が発症した症例の報告。症例:27歳男性が30kmの車椅子マラソン後に右眼の視力低下が生じ,その19時間後に受診した。生後6か月に脊髄損傷があり,車椅子を使っていた。所見と経過:矯正視力は右手動弁,左1.5で,右眼の相対性瞳孔求心路障害が陽性であった。右眼後極部に網膜の浮腫混濁と桜桃黄斑があった。網膜中心動脈閉塞症を疑い,眼球マッサージと前房穿刺を行った。翌日の蛍光眼底造影で眼底に循環遅延はなく再疎通していた。視力に変化はなかった。経食道心エコー検査で卵円孔開存があり,経過から奇異性塞栓症が疑われた。結論:発症機転から静脈血栓が疑われる網膜中心動脈閉塞症では,奇異性塞栓症の可能性がある。

  • 文献概要を表示

要約 目的:網膜静脈閉塞症に続発した黄斑浮腫に対して酢酸メチルプレドニゾロンを後部テノン囊下に注射した効果の報告。対象と方法:黄斑浮腫が続発し,3か月以上寛解しない網膜中心静脈閉塞症2眼と網膜静脈分枝閉塞症3眼を対象とした。酢酸メチルプレドニゾロン10mgを後部テノン囊下に注射し,3か月間の経過を追跡した。視力はlogMARで評価した。結果:注射後3か月で視力は2眼で改善し,3眼では不変であった。平均視力は3か月後に有意に改善した。光干渉断層計(OCT)で測定した中心窩厚と黄斑浮腫には変化がなかった。副作用はなかった。結論:黄斑浮腫がある網膜中心静脈閉塞症または網膜静脈分枝閉塞症に対し,酢酸メチルプレドニゾロン10mgのテノン囊下注射は安全ではあるが,黄斑浮腫の改善効果は少ない。

  • 文献概要を表示

要約 目的:視神経に及ぶ頭蓋内腫瘍が発見された神経線維腫症1型の2症例の報告。症例と経過:1例は65歳男性,他の1例は43歳女性で,2症例とも神経線維腫症1型に特徴的な皮膚所見と虹彩のLisch結節があった。1例は白内障手術の2か月後に左眼視力が1.0から0.7に低下し,右眼視野に輪状欠損が生じた。磁気共鳴画像検査(MRI)で左蝶形骨に径4cmの腫瘍が発見された。他の1例には学童期に脳手術の既往があり,左眼視力が0.7に低下していた。MRIで左蝶形骨に沿って視神経を上部から圧排する軟部陰影が発見された。それぞれ診断から11か月と6か月間,視力と視野は悪化せず,腫瘍の増大もない。結論:神経線維腫症1型では,頭蓋内病変が眼症状として成人に発症することがある。皮膚または虹彩の所見から本症が疑われるときには,眼科医が果たす役割が大きい。

  • 文献概要を表示

要約 背景:硬膜拡張症は神経鞘部くも膜下腔の囊状拡張で,神経線維腫症1型に多い。視神経に生じるのは稀である。目的:視神経鞘に生じた硬膜拡張症の症例に眼内炎が生じた報告。症例:50歳男性が左眼の眼痛で受診した。18年前に両眼の水晶体脱臼に対して水晶体摘出を受けていた。所見:矯正視力は右0.06,左手動弁で,右眼の屈折は+7Dであった。右眼に強膜の部分的な菲薄化,左眼に強膜穿孔と眼内炎があった。磁気共鳴画像検査(MRI)で両眼の視神経が蛇行・腫大し,眼球の変形があり,硬膜拡張症と診断した。皮膚と骨に病変はなく,虹彩結節はなかった。神経線維腫症1型を示す所見はなかった。結論:本症例は硬膜拡張症が視神経に生じ得ることを示している。強度近視,過去の水晶体摘出術,強膜軟化症が眼内炎の素因になった可能性がある。

  • 文献概要を表示

要約 目的:過去1年間のBehçet病による眼合併症の報告。対象と方法:高知大学附属病院眼科を受診した初診または再診患者25例を診療録に基づいて検索した。結果:男性13例,女性12例で,平均年齢は52.5±13.8歳,平均罹患期間は12.9±8.3年であった。20例が両眼に罹患し,計45眼中14眼(31%)が前眼部炎型,31眼(69%)が汎ぶどう膜炎型であった。13眼(29%)では最終受診時の矯正視力が0.3未満であった。汎ぶどう膜炎型では前眼部炎型よりも最終受診時の視力が有意に低かった(p<0.01)。40歳以前に両眼性に発症した男性では汎ぶどう膜炎型が多かった。結論:Behçet病によるぶどう膜炎では,40歳以前に両眼に発症した男性では汎ぶどう膜炎になるリスクが大きく,視力予後が不良である。

連載 今月の話題

  • 文献概要を表示

 角膜ジストロフィの遺伝子変異は,1992年に最初の同定が行われて以来,約300種類が見つかっている。近年ではnovel mutationの報告数も減少傾向となる一方で,一個体に複数の遺伝子変異を持つ症例などの報告が増えてきている。本稿では既知の知見のみでは説明し難いこれらの症例について概説する。

連載 公開講座・炎症性眼疾患の診療・26

  • 文献概要を表示

はじめに

 Behçet病の病名はトルコ・イスタンブール大学皮膚科初代教授であるHulusi Behçetが1937年,口腔内,外陰部,眼球の炎症を呈する疾患を報告したことによる(図1)。本病は口腔内アフタ性潰瘍,皮膚症状,外陰部潰瘍,眼病変を4主症状とする全身疾患であるが(図2),意外なことに皮膚科医であるBehçet自身は皮膚症状を記載していない。また古代ギリシアのヒポクラテス(図3)は紀元前5世紀に,そして後漢時代の中国でも紀元2~3世紀に活躍した張仲景が「狐惑病」という名で本病を記載している1)。したがって本病は20世紀に突然出現した疾患ではなく,古代から存在していたと考えられる。

 多発地域はユーラシア大陸の北緯30~45度に偏在しており,その地域特性からシルクロード病ともいわれる2)。青壮年期に発症し,視力予後不良の疾患であるが3),近年有効性の高い新しい治療法が登場し,視力予後の改善が期待されている。

連載 視野のみかた・2

  • 文献概要を表示

はじめに

 静的視野の結果を解釈する場合,個々の検査点の測定値が正常であるか,異常であるかを判断する必要がある。視野検査によって得られる感度は,加齢により10年間に約0.4~0.6dB低下することが知られている。このことから,現在の自動視野計は多数の正常被検者から得られた年齢別正常値を内蔵している。そして実際の評価では,実測値と同年代の年齢別正常値を比較し異常を判定することになる。この判定に際して,Humphrey視野計ではtotal deviation,pattern deviationなどで用いられている確率表示(probability plot)が主に用いられる。ここでは,この単一視野解析における確率表示の意義について考えていきたい。

連載 眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本・5

IGF-1 栗本 拓治
  • 文献概要を表示

 インスリン様成長因子1(insulin-like growth factor-1:IGF-1)は細胞の分化,増殖に関与する成長因子の一種であり,その発現作用として血管新生,癌細胞増殖,神経細胞の分化,突起伸長などが挙げられる。癌治療において,すでにIGF-1受容体を標的とした臨床治験が開始されており,次第にその適応は拡大されている。眼科領域においても,IGF-1の神経保護効果や網膜虚血性疾患への関与が実験・臨床レベルにおいて明らかとなってきている。本稿では,IGF-1の基礎知識から臨床へのかかわりまでを総括する。

連載 つけよう! 神経眼科力・2

  • 文献概要を表示

 いろいろある複視をみわけるときに大切なポイントは,中枢性か末梢性かであり,その決め手は単独麻痺か複合麻痺かである。

  • 文献概要を表示

要約 目的:眼内レンズ縫着眼へのプラノプロフェン点眼中に囊胞様黄斑症が生じ,ジクロフェナク点眼で軽快した症例の報告。症例:63歳男性が14年前に右眼に白内障手術と眼内レンズ挿入を受け,8か月前に眼内レンズの偏位に対して縫着を受けた。その直後から囊胞様黄斑浮腫があり,ジクロフェナクを点眼していた。所見:右眼の矯正視力は0.4で,黄斑部に漿液性網膜剝離があった。4週間後に黄斑剝離が消失し,ジクロフェナク点眼をプラノプロフェンに切り替えた。5か月後に視力が低下し,囊胞様黄斑浮腫が再発した。ジクロフェナクの点眼を再開し,10週間後に黄斑囊胞が消失した。結論:プラノプロフェン点眼中に発症した眼内レンズ縫着後の黄斑囊胞に,ジクロフェナク点眼が奏効した可能性がある。

  • 文献概要を表示

要約 目的:双生児に発見された網膜血管の報告。症例:17歳男児が眼底の血管異常で紹介され受診した。未熟児であったが詳細は不明である。所見:矯正視力は左右とも1.5であり,左眼に乳頭から発する血管が蛇行・怒張し,網膜のつた状血管腫(racemose angioma)と診断した。蛍光眼底造影で血管の透過性亢進と閉塞はなかった。一卵性双生児の第2子であり,第1子を精査した。視力は正常で,右眼網膜に血管の蛇行と怒張が軽度にあった。蛍光眼底造影で循環動態に異常はなかった。結論:つた状血管腫が双生児の第2子の左眼にあり,軽度の網膜血管走行異常が第1子の右眼にあり,鏡像を呈した。網膜血管の走行異常の発生原因が先天性で,その重篤度に後天性要因の関与があると推定される。

今月の表紙

  • 文献概要を表示

 症例は36歳男性。バイクを運転中に転倒し,左眼を打撲した後から左視力低下を自覚した。近医を受診したが経過観察のみであったため,セカンドオピニオン目的で当院を受診した。初診時視力は右0.09(1.2×-1.75D),左0.1p(0.5×+3.00D),眼圧は右15mmHg,左5mmHgであった。右眼は前眼部,中間透光体,眼底とも正常であった。左瞳孔は中等度に散大していたが水晶体混濁はなかった。眼底は視神経乳頭境界不鮮明で発赤・腫脹し,網膜血管は拡張・蛇行していた。黄斑部を中心に放射状に網脈絡膜に皺襞形成が認められた。光干渉断層計(OCT)では網膜色素上皮を含んで網脈絡膜全層に凸凹不整が認められた。以上より低眼圧黄斑症と診断した。

 撮影はコーワ社製の眼底カメラVX-10iを用いた。撮影画角は50°,露光は標準モードより1段階強くし,乳頭および網膜皺襞が鮮明に表現されるよう撮影した。

べらどんな

失明防止の功績者
  • 文献概要を表示

 戦後の1948年頃からアメリカで失明する未熟児が急に増えだした。後水晶体線維増殖retrolental fibroplasia,いまの未熟児網膜症のためである。失明者の総数は,アメリカで8,000人,イギリスで600人と推定されている。

 さまざまな原因が挙げられた。水溶性ビタミン,鉄,酸素投与,牛乳を飲ませたこと,輸血などがそれである。

栄養補助食品
  • 文献概要を表示

 サプリメント,いわゆるサプリが「栄養補助剤」の意味で使われるようになったのは約10年前からである。

 そもそもsupplementは「補遺」のことであった。辞書を出版したあと,新語などを追加するために出すのがこれである。「広辞苑」でサプリメントを引くと,第5版(1998)では「付録,補遺」だけなのに,第6版(2008)ではこれに「栄養補助食品。体に欠乏しやすいビタミン・ミネラル・アミノ酸・不飽和脂肪酸などを,錠剤・カプセル・飲料などにしたもの」という説明が追加された。

  • 文献概要を表示

 「将来の人々は,かつて忌まわしい天然痘が存在し貴殿によってそれが撲滅されたことを歴史によって知るだけであろう。」

 トーマス・ジェファーソンのエドワード・ジェンナーへの1806年の手紙,本書134頁より(以下,頁数は本書)

やさしい目で きびしい目で・125

言葉は“命”なり 青山 裕美子
  • 文献概要を表示

 毎月,『臨床眼科』が手元に来ると,不謹慎にもこの欄を読むのを一番(?)楽しみにしていた。そこには,お一人お一人の先生のお人柄が垣間見られて,ときにクスッと笑ったり,ときにウーンと考えさせられたり,あるときはそう,そう!と膝を打ったりしていた。そんな一読者であった私にお鉢が廻ってきて,「なんで私なんですか?」「ほんとに私でいいんですか」と言いながら,はたと困ってしまった。

 女医の就業問題(出産,育児,介護),研修医の医局離れ,勤務医と開業医の格差などなどいろいろな問題が山積している。これら一つ一つのテーマは,これからの医療にもかかわる問題であるので,きちんと考えていかねばならない。よーし,その内容でかっこよくこの欄を決めるぞ!と,あれもこれもと言葉は頭のなかで勝手に飛び出してくるが,ピシッとこない。どうして言葉がまとまらないのか? それは私がピシッとしていないから? ならば,言葉と私はどう繋がるのか?

ことば・ことば・ことば

黒内障
  • 文献概要を表示

 シェイクスピアの作品の多くには副題がついています。『ハムレット』ですと,“The Tragicall Historie of Hamlet, Prince of Denmarke”といった具合です。

 4大悲劇のひとつである『オセロ』のフルタイトルは,“Othello, the Moor of Venice”です。ところがこのMoorは簡単には翻訳できません。

--------------------

あとがき 寺崎 浩子
  • 文献概要を表示

 さわやかな青葉の季節となりました。4月の日本眼科学会総会やARVOなども終え,ゴールデンウィーク後の診療の忙しさもすこし落ち着いたこの頃でしょうか。本号では第63回日本臨床眼科学会総会の原著論文に加えて,皆様の記憶にまだ新しい,群馬大学岸教授の特別講演「OCTによる視細胞外節病変の観察」を掲載することができました。光干渉断層計(OCT)は,日本に導入されて10年あまりですが,蛍光眼底造影が診断の重要なツールであるように,眼底疾患の診断に確固たる地位を得ました。とくに,検眼鏡的にはそれによって起こった現象のみしか見ることができない視細胞外節病変の観察は,OCTが最大限に威力を発揮するところと思います。たくさんのカラー写真で再度特別講演をご堪能ください。

 「今月の話題」は角膜ジストロフィの遺伝子診断についてです。先生方の身近にもある遺伝性角膜疾患の症例の知見を重ねていくことが,今後の解明にも役立つことと思います。

基本情報

03705579.64.5.jpg
臨床眼科
64巻5号 (2010年5月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

文献閲覧数ランキング(
11月23日~11月29日
)