看護教育 60巻9号 (2019年9月)

特集 看護教育における効果的なOSCEの実施

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シミュレーション教育は、技能を身につけるために有用です。特に、失敗が許されない臨床とは異なり、失敗から学ぶことができる利点があります。また、看護領域によっては、実習で受け持つ機会が少ない対象の看護をすることもできるでしょう。一方で、学生同士や顔見知りを対象とした学習の場合、リアリティに欠けたり、評価基準を一定に保つのがむずかしいといった課題もあります。そこで、模擬患者などを利用して臨床能力の客観的評価を行うのがOSCEです。

医師・歯科医師・薬剤師などの養成課程(6年制)においては、臨床実習に進む前にOSCEに合格することが求められます。看護基礎教育においても授業にOSCEを導入している施設は増えていますが、制度として規定されたものではないため、その内容や取り組みはまちまちです。今回の特集では、大学や専門学校での取り組みを紹介するとともに、看護師に求められる臨床能力について確認することで、OSCEをより一層効果的なものにする方法を考えます。

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 OSCE(Objective Structured Clinical Examination:客観的臨床技能試験あるいは客観的臨床能力試験)は、筆記試験だけでは測ることのできない臨床で求められる技術や判断力、態度などの修得を評価する試験である。1975年にイギリスのR. M. Hardenの提唱によって始まり、欧州から北米、日本へと渡って、1994年に川崎医科大学医学部で導入された。そして、2004年度から医学部・歯学部の共用試験として正式に実施され、現在は特に臨床実習前に必須の試験科目とされている。

 筆者は、日本の看護学教育において、比較的早くからOSCEに着手してきた。本稿では、10年以上にわたる看護OSCEの実践をふまえて、その近況と将来への課題について述べる。

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 座談会では、OSCEを通じた医療者教育について、看護と医学ではどのような違いがあるのか、また臨床実習に必要な能力をどのように身につけるかといったテーマで、西田氏には看護教育の、孫氏には医学教育の、そして山口氏には模擬患者の視点からお話しいただきます。まずは、日ごろのOSCEへのかかわりについて、ご紹介いただきました。

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はじめに

 共立女子大学看護学部(以下、本学)は、今年度(2019年度)にようやく7期生をむかえたばかりである。OSCEもこれまで4学年分の経験しかないが、2013年4月の開設時から演習科目に組み込んでいる。新設校に集まった教員が、なにもないところから導入を進めたプロセスについては、北川ら1)に詳しいので、そちらを参照していただきたいが、試行錯誤しながらの数年間で、多少なりとも蓄積できたものがある。本稿では、看護以外に医療系の学部をもたない大学で、かつ、さまざまな制約のなかで、どのようにOSCEを実施しているのかについてお伝えしたいと思う。

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はじめに

 愛知県立大学看護学部(以下、本学)では、看護の基礎教育を重視し、科学的な根拠に基づく確かな知識と専門技術を修得し、高い実践能力と的確な判断力の育成を行うとともに、高い倫理観を有し、主体的に行動できる人間性豊かな看護専門職業人を育成することを目的としている。その実現のため、4年次の履修科目に「看護学統合演習」を配置、実施している。これは、今までに学習した専門的知識・技術・態度を統合して、卒業前の看護実践能力の確認、定着を図り、看護実践の総合的能力を高めることをめざすものである。

 看護学統合演習の内容は、2009年度のカリキュラム改正で設定された科目「看護の統合と実践」が土台となっている。この科目は「卒業前の看護実践能力の確認、定着を図り、卒業後に進むべき看護専門分野への動機づけを図る」ことを目標に、各看護学分野の全教員が連携を図り、プロジェクトチームを立ち上げて構築したプログラムであった。プログラム構築の際には、表1の3点を重視して検討した。

 2013年度の改正で、この科目の内容に複雑な課題(多重課題)を組み込んで再構成し、科目名を「看護学統合演習」とした。このプログラムを6年間実施した成果をふまえて演習計画を整え、2016年度から新たな「看護学統合演習」(1単位、30時間)として行っている(表2)。

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事例を自分のものにするのって意外とおもしろいかも

 演習室や実習室から、熱を帯びた声が聞こえてきます。

 「ねえねえ、この患者さんのケースは、開腹手術後1日目やけん、体動時痛軽減の優先順位が高いよね」「統合失調症で妄想・幻覚があるから、どんなふうに傾聴しようか?」「初産婦で産後2日目の母子やけん、児の沐浴はバイタル測定したあとよね」「2名の患者をどちらから声かけしたほうがいいのかな?」「優先順位を明確にするには、患者さんの状態をちゃんとわかっていないと難しいね」

連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・21

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 縦隔とは、文字どおり左右の肺の間を「縦に隔てる」領域のことです。ここには、心臓のほかに大動脈や食道、気管などの太い管が収まっています。縦隔の左右は肺で閉じられており、下にはドーム状の床のように横隔膜があります。前と後ろはそれぞれ胸椎と胸骨で閉じていますが、上は閉じておらず、胸部と頭部を結ぶ血管や気管、食道などが出入りします。

 今回は、縦隔内の太い管状の器官を作ります。まずハート形の心臓を作り、斜めに傾けて置きます。Y字形の肺動脈を作り、心臓に付けます。続けて、まっすぐな粘土柱を2本用意し、食道と気管とします。食道は断面が楕円の一本棒にします。気管は上下逆のY字形にして、分岐部の高さは肺動脈の分岐部と合わせます(①)。

連載 〈教育〉を哲学してみよう・2

教育の主体はだれか? 杉田 浩崇
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教育は野生児を幸せにしたか:『野生の少年』の解釈をめぐって

 『大人は判ってくれない』を撮ったフランソワ・トリュフォー監督の作品に『野生の少年』という映画がある。それは実際にフランスのアヴェロン地方で発見された野生児ヴィクトールと、彼に教育を試みたイタールの交流を描いている。

 野生で育ったヴィクトールを人間化しようと感覚や文字を教えるイタール。「牛乳」や「水」などの基礎的な音声や文字を習得し、人間の生活に喜びを見いだし始めたヴィクトール。イタールの教育的愛情が徐々に実を結んでいく様子が描かれており、心動かされる映画である。だが、その「成功」の過程には綻びが垣間見える。ヴィクトールが家の外の草原を羨ましそうに眺めるシーンが差し挟まれ、野生への憧憬が日々課せられる勉強への不穏な反抗を匂わせるのである。実際、映画の最後にヴィクトールはイタールの家を抜け出し、野生の生活に戻ろうとする。だが、すでに靴を履き、裸では風邪をひくほどに人間化されつつあったヴィクトールには、木に登って木の実を採ったり、獲物を捕らえて食べたりするかつての野生の力は残されておらず、イタールの家に戻るという選択肢しか残されていなかった。映画は、ずっと愛情を注いできたゲラン婦人との抱擁と、イタールからの「勉強をしよう」という言葉に対するヴィクトールの何とも言えない表情という対比的な場面で結ばれる。

連載 専門看護師とともに考える 実習指導のポイント 昭和大学の臨床教員の立場から・6

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 本連載では、臨床教員である専門看護師が、自分の担当する実習科目について、看護スペシャリストとしての視点をふまえた実習指導の「概要・ポイント」と「実践」に分けて説明する。「概要・ポイント」回では、実習領域の特徴を説明したうえで学生への指導ポイントや臨床との連携について紹介し、「実践」回では、実践例を具体的に説明する。また連載とは別に、昭和大学の臨床教員制度の詳細について毎回異なるテーマのコラムを掲載する。

大﨑千恵子(昭和大学保健医療学部 同学統括看護部)

連載 核心に迫る授業改善 インストラクショナルデザインによる事例検討・6

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 これまで伯方さん、豊宮さん、三沢さんの事例について改善策を検討してきました。今回は、ある授業計画について、3人に改善案を出してもらおうと思います。いわば演習編ですね。授業計画は、提供してくださった方の名前をとって、Nさんの事例とよびましょう(表1)。この事例を見て、こうしたほうがよい、と思うところはありますか?

連載 医療通訳inバンクーバー・6

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 前回(連載第5回)は、北米の人が「痛み」に関していかに敏感かということについてお話ししました。アメリカの人口は世界のおよそ5%ですが、世界のオピオイドの80%以上はアメリカ人が消費しているともいわれています。その処方件数は年間約2.5億件にも及びます。

 このように、医師がオピオイドを、安易に、長期間、大量に処方してしまうことが、別の社会問題を起こしています。オピオイドの効果は、痛みの緩和だけではありません。特に麻薬性鎮痛薬は、鎮痛作用をもたらすと同時に、脳内の喜びをコントロールする部位を刺激して、一時的に幸福感を感じさせるのです。麻薬性鎮痛薬を恒常的に処方された結果、依存してしまう患者さんも多く、近年問題になっています。

連載 臨床倫理を映画で学ぼう!・9

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作品紹介

 今回は『わたしを離さないで』(マーク・ロマネク監督、2010年、英米)を紹介します。原作は2017年にノーベル文学賞を受賞した長崎県出身の作家、カズオ・イシグロの同名ベストセラー小説です。キャシー、トミー、ルースの3人の若者が描く青春物語で、彼らの恋愛と友情が交錯します。同時に、本作はパラレルワールドにおける1990年代の英国を舞台にしたサイエンス・フィクション作品であり、さらには先端医療のお話でもあります。

 キャシーたちは、生体臓器移植のドナーとなるべく、クローン技術によって生まれてきました。彼らの「オリジナル」は彼らのあずかり知らぬ所で生活しており、物語には一切登場しません。彼らは他の生徒たちとヘールシャムという全寮制学校で生活し、さまざまな教育を受けてきました。ヘールシャムでは喫煙などの不健康な行為は厳しく禁止され、生徒の健康を維持するために、定期的な薬物の服用と健康診断が義務づけられていました。また生徒たちはヘールシャムの敷地外はとても危険だと教えられており、外に出る者は誰もいません。

連載 看護師のように考える コンセプトにもとづく事例集・09

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episode1

外来看護師のあなたが水田さんを受け持つことになりました。

水田さん びっくりしたわ。火を消そうとして、腕と脚がこんなになってしまって……。

あなた 水田さん、大変でしたね。まずやけどの処置をしますね。

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新刊紹介

INFORMATION

基本情報

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看護教育
60巻9号 (2019年9月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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