連載 臨床倫理を映画で学ぼう!・9
先端医療と運命―『わたしを離さないで』
浅井 篤
1
1東北大学大学院医学系研究科
pp.784-785
発行日 2019年9月25日
Published Date 2019/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201328
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作品紹介
今回は『わたしを離さないで』(マーク・ロマネク監督、2010年、英米)を紹介します。原作は2017年にノーベル文学賞を受賞した長崎県出身の作家、カズオ・イシグロの同名ベストセラー小説です。キャシー、トミー、ルースの3人の若者が描く青春物語で、彼らの恋愛と友情が交錯します。同時に、本作はパラレルワールドにおける1990年代の英国を舞台にしたサイエンス・フィクション作品であり、さらには先端医療のお話でもあります。
キャシーたちは、生体臓器移植のドナーとなるべく、クローン技術によって生まれてきました。彼らの「オリジナル」は彼らのあずかり知らぬ所で生活しており、物語には一切登場しません。彼らは他の生徒たちとヘールシャムという全寮制学校で生活し、さまざまな教育を受けてきました。ヘールシャムでは喫煙などの不健康な行為は厳しく禁止され、生徒の健康を維持するために、定期的な薬物の服用と健康診断が義務づけられていました。また生徒たちはヘールシャムの敷地外はとても危険だと教えられており、外に出る者は誰もいません。
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