看護教育 60巻6号 (2019年6月)

特集 まず、自分をいたわるために―マインドフルネス&セルフ・コンパッション

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これまでの看護教育では、他者へのコンパッション(共感、慈しみ)が非常に重視されてきました。看護は「感情労働」と称されるほど、働くうえで自身の感情のあり方が問われる職業であり、また同時に、看護白書(平成22年)で指摘されるように、歴史的に「犠牲と献身を職業的な使命」としてとらえてきたためともいえるでしょう。

しかし、近年、他者へコンパッションをもち、充分なケアを行うためには、まずセルフ・コンパッション(自分への慈しみ)が重要との研究報告がなされています。自分自身に思いやりを向けることは、自分勝手なことや弱いことではなく、自分を甘やかすことでもなく、誰かをケアするためにこそ大切なことです。

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医療者の「つらさ」に向き合う

 はじめまして、岸本早苗です。私は自身もある疾患の患者として、マインドフルネス&セルフ・コンパッションに出会い、実践を重ねると同時に、マサチューセッツ州でマインドフルネス&心理療法の認定プログラム(The Institute for Meditation and Psychotherapy)を修了し、また、マインドフルネスストレス低減法(Mindfulness-based stress reduction :以下、MBSR)や、マインドフルセルフ・コンパッション(Mindful self-compassion:以下、MSC)を人に伝えるトレーニング(それぞれMBSR Qualified Teacher, MSC Trained Teacher)を米国在住時から受けています。その後、マサチューセッツ総合病院などで医療の質向上プログラムの仕組みづくりに従事し、現在、京都大学でマインドフルネス&セルフ・コンパッションを用いた研究をしつつ、同時に広める活動をしています。

 マインドフルネスは、日本でもたくさん本や雑誌が出版され、浸透しつつあるように思います。みなさんは、マインドフルネスにどのような印象をおもちでしょうか。企業などで取り入れられたことが話題になりましたし、海外の流行りもの、うさんくさいもの、ととらえている方もいらっしゃるかもしれません。

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疲れてしまっている看護師たちへ

 もしもタイムマシンがあったら、新人看護師だった頃の私に言ってあげたい。いつも「私は看護師に向いていない」と泣いて、自分を責めてばかりいた、かつての自分に「そんなに自分を責めなくていいよ。確かにあなたは看護師としての業務や技術をなかなか覚えられないけど、それだけで看護師失格ってことはないからね」「自分に対してもっと思いやりをもっていいんだよ」とセルフ・コンパッションについて伝えたい。

 しかし残念なことに、まだタイムマシンは発明されていないので、かつての自分の代わりに、私の後輩たちに伝えたい。それが私の臨床・教育・研究のモチベーションになっている。

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リエゾンナースとして、疲弊する看護師に向き合う

 精神看護専門看護師は、日本看護協会が認定する専門看護師の一領域であるが、そのなかでも、リエゾンナースと呼ばれる看護師は、精神看護の知識を一般総合病院の患者ケアに適用し、看護師による全人的なケア提供を側面から支援する専門看護師である1)

 筆者は一般科に入院している患者に対する精神科医療を行う精神科リエゾンチームの一員であるとともに、「看護師のための看護師」であることをめざして、組織横断的に活動している2)。リエゾンナースとして、看護師のメンタルヘルス支援も重要な役割の1つである。具体的には、院内看護教育に参入しての教育的な支援、看護師の個人的なメンタルヘルス相談や看護師グループへの支援がある。

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オーバーワークな教員たちへ届けたい

 筆者は、兵庫県看護学校協議会副会長兼研修委員長の役割を担って2年になります。研修委員会では年に4〜5回の研修会を企画運営してきました。そのうち2回は、兵庫県看護協会との共催研修を行っています。平成30年度の研修企画を思案している時に、『ナースパートナーズ』の3回の連載「“自分への”思いやり 思いやりケアギビングとともに」(2018年春号、夏号、秋号)を読んだことで、岸本早苗さんを知ることになりました。

 それは、第1回目のタイトルが、「マインドフルネスとセルフ・コンパッション」とあり、《気づきと自分への思いやり》と日本語での吹き出しになっていました。最近、マインドフルネスという言葉は精神看護学の教科書にも記載されており、知ってはいましたが、ヨガやカウンセリングとはどのように違うのか? と気になりました。そこには“心のエクササイズ”という不思議な言葉もありました。

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 みなさんで体験できるエクササイズとして、今回は4つご紹介します。

 スージング・タッチ(ホッといたわりを感じられるタッチ)やセルフ・コンパッション ブレイク(自分への思いやりとともにひと休み)は、マインドフルネス&セルフ・コンパッションの基本とされるもので、日常生活のなかで疲れたなあ、ストレスを感じるなあというとき、自分をいたわってあげたいときに気楽に行うことができます。

 親愛のこもった呼吸の瞑想や、コンパッションを受けとり与える瞑想は、マインドフル セルフ・コンパッション(MSC)で扱うコアの瞑想3つのうちの2つ。親愛のこもった呼吸の瞑想は、自分に栄養を与えてあげながら心身ともに落ち着く助けになるでしょう。コンパッションを受けとり与える瞑想は、「自分を見失わずに相手を愛する」瞑想とも言われていて、他者を思いやり、疲労や燃え尽きを感じうる医療者の方には、ぜひ取り入れていただきたい瞑想です。

 呼吸を感じるとき、呼吸を追いかけたり、毎回意識を向けなきゃと、無理する必要はまったくありません。数回に一回でも十分。からだにゆだねながら、ご自分のペースで。

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はじめに

 2017(平成29)年度の在留外国人は256万人を超え、前年比7.5%増で過去最高となった。都道府県別では、東京都が約54万人と最も多く、全国の21.0%を占めている1)。また、2017年12月には、年間訪日外国人旅行者が3000万人を超えた2)。さらに、改正入管法が可決・成立3)し、外国人労働者の受け入れ拡大も想定されており、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、さらなる在留・訪日外国人の増加が見込まれる。

 こうした状況から、医療機関を受診する外国人は今後増加していくことが予想され、外国人患者の受け入れ体制の充実が急がれている4,5)。それに伴い、看護基礎教育でも国際看護や異文化看護にかかわる教育の導入や外国人患者への看護を視野に入れた看護師育成が求められてきている。

 東京都立広尾看護専門学校(以下、本校)は1学年定員80名の3年課程看護専門学校である。所在地は東京都渋谷区恵比寿であり、街中には外国人が多く見られる地域である。実習病院である東京都立広尾病院(以下、広尾病院)は、東京都の基幹災害拠点病院に指定された病床数469床の急性期型病院である。2017年度の新規外国人患者数は1,707人、国籍にして90か国を超える。外国人対応に力を入れており、2016年度から患者支援センターに外国人向け医療コーディネーターを配置している。2016年に外国人患者受入れ拠点病院に認定、2017年には「外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)」6)の認証医療機関となっている。

 広尾病院での本校学生の臨地実習においても、近年、外国人患者を受け持つことが珍しくなくなり、外国人患者の理解や看護について学習の必要性が増してきた。そこで、今回、広尾病院の外国人向け医療コーディネーターである看護師(以下、医療コーディネーター看護師)と本校の基礎分野「文化人類学」の講師(以下、文化人類学講師)および看護教員とで「異文化看護」のコラボレーション授業を実施したので報告する。

連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・18

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 女性の骨盤内臓には、胎児をその内部で育てる子宮が備わっています。平常時の子宮は、前方にある膀胱にもたれかかっています。子宮体上部の子宮底の左右からは卵管が伸びています。子宮は、ひも状の靱帯を四方に伸ばしています(①、②)。さらにそれら全体を膜で覆うことで位置を安定させているのです。

 造形では、まず体壁に見たてた粘土板を作ります。次に栗のような形の膀胱を作り、そこに左右2本の尿管をツノ状に付けます。体壁の上に膀胱を乗せたら、膀胱の後ろに、前後に少し平らな円柱を立たせ、これを腟とします。ここに、扁平なナスのような子宮を乗せ、前方へ倒すように曲げます。続いて、腟の後方に大きな直腸を立たせます。

連載 核心に迫る授業改善 インストラクショナルデザインによる事例検討・3

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お悩み「効果的な学習目標を設定したい」

 連載第3回ですね。さっそく事例を見てみましょう(表1)。今回はこの連載にご協力いただいている現場の教員のお一人である、豊宮さんの事例です。豊宮さん、これは豊宮さんが以前にやられていた授業の事例なんですよね。インストラクショナルデザイン(以下、ID)を学び始めた今となって、どこか気になるところがありますか?

豊宮 「はい、学習目標が測定可能なものになっていないですね。理解する、考えることができるというのは、頭のなかで起こることなので……」

連載 医療通訳inバンクーバー・3

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 前回に引き続き、日本人の診療看護師(ナースプラクティショナー)のSteven Hashimotoさんから伺ったお話をお伝えします。今回は、医師と看護師の協働についてです。

 最近の医療の根幹に、チーム・ベースド・アプローチという概念があります。これは、1つの専門職(たとえば医師)のみが患者を診るのではなく、多職種連携したチーム医療でこそ、ホリスティックな医療サービスが実現できるという考え方です。カナダや米国の研究で、医師と看護師のコミュニケーションが良好であることが、エラーの減少や患者の満足度の向上につながることが証明されています。患者に最も近い存在である看護師は患者の状態をこと細かに報告し、その情報は医師を含めた他職種と共有されます。医師は、その情報をもとに治療経過を評価し、他職種からいろいろな意見を聞きながら、治療方針をチームでつくり上げていくのです。

連載 専門看護師とともに考える 実習指導のポイント 昭和大学の臨床教員の立場から・3

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 本連載では、臨床教員である専門看護師が、自分の担当する実習科目について、看護スペシャリストとしての視点をふまえた実習指導の「概要・ポイント」と「実践」の2回で説明する。「概要・ポイント」回では、実習領域の特徴を説明したうえで学生への指導ポイントや臨床との連携について紹介し、「実践」回では、実践例を具体的に説明する。また連載とは別に、昭和大学の臨床教員制度の詳細について毎回異なるテーマのコラムを掲載する。

大﨑千恵子(昭和大学保健医療学部 同学統括看護部)

連載 臨床倫理を映画で学ぼう!・6

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作品紹介

 今回は『世界一キライなあなたに』(トミー・ウィルコラ監督、2016年、仏・英・ベルギー)を取り上げます。舞台はイギリスの田舎町。主人公は26歳、実家暮らしの女性ルイーザ。彼女はとても明るく親切な女性で、近所のカフェでウェイトレスをしていました。ところが長年勤めていたカフェが廃業することになり、家計を支えるために31歳男性ウィルの身のまわりの世話をする仕事を得ました。6か月の期限付きの介護職です。

 ウィルは大成功した実業家で、実家もお城を所有するほどの資産家でした。しかし2年前の交通事故で脊髄を損傷し、首から下がほとんど動きません。リハビリを続けていますが回復の見込みはありません。活動的で人生を謳歌していた彼は、現在の自分の状態が受け入れられず、スイスで自殺幇助を受けることを計画しています。彼の父親は息子のこの世を去るという決断を受け入れていますが、母親は大反対です。ウィルはルイーザに対しても、はじめは拒絶的でつらくあたりました。しかし、ある日彼の計画を知ったルイーザは、なんとか彼の翻意を促し、生きる望みをもたせようとするのでした。

連載 看護師のように考える コンセプトにもとづく事例集・06

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episode 1

午前9時、あなたは加藤さんの検温後に、水分摂取を促そうと声をかけました。

あなた 加藤さん、少しずつで構いませんのでお茶やお水を飲むようにしてくださいね。

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目次

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実践家たちからの学びが、地域包括ケアの時代の道しるべとなる

 地域包括ケアシステムを2025年までにすべての市町村に構築するという国の政策も残すところ6年となり、その進捗状況には市町村格差がかなり見えてきている。本書に収載された講義は、かねてFacebook上で1万人以上のメンバーに周知されてきたものである。受講者は全国からそれぞれの地域や立場の違いを越えて、たぶんかなりワクワクして気づきの多さに驚きながら実際に参加したのだろうと想像をふくらませた。筆者も書評を書くという役目を忘れ、夢中で読みふけった。付箋の数が頁を繰るごとに増えていった。

 本書に収録されたカレッジ講義には、「教授」として、優れた実践家にとどまらず「未来の課題解決のために全力で取り組んでいる情熱的かつ魅力的な専門家」(「はじめに」より)が招聘されている。彼らのメッセージはどれも刺激的で魅力的であるが、ここでは高齢者ケアの学び(第Ⅱ部)に注目したい。筆者は、これがあらためてわれわれ専門職に求められているものと実感した。第Ⅱ部では7人の教授による新しい知見や自身の確信に基づく実践知が余すことなく披露されており、筆者は生活モデルの下位概念としての医学モデルという考え方をあらためて想起した。対象者の生活の質を上げるため、対象者自身がもっていた力を取り戻してもらうため、医療は最新の知見に基づき、知識や技術を用いる。治す医療から治し・支える医療への転換は、医療の役割をしっかりと果たすことを前提としつつ、それを何のために行うのか、の認識の問題といえる。その認識のあいまいさが、時として必要のない医療の提供となって、本当に必要なサービスが提供されないという実態がまだあるように感じている。

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多彩な実践風景を描き出す、ユマニチュードからの誘い

 2013年3月、あるきっかけで本田美和子医師にイヴ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッティ氏が講師を務める研修の見学の機会をいただき、途中から研修生に混じって実技指導を受けさせていただいた。あっという間の時間だった。楽しかった。そのときの参加者と桜の木の下で写真を撮った記憶がある。皆笑顔だった。

 やってみたくなる。そして、笑顔になる。ユマニチュードの最大の魅力がここにあると思う。「自由・平等・友愛」を核としたユマニチュードの哲学。ユマニチュードを紹介する講演や書籍には必ずこの哲学の重要性が語られているが、本書にも、やはりその哲学が一貫していることをあらためて実感している。

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研究の強力な道案内に

 看護研究に迷えるナースの心強い味方、田久浩志先生の待望の改訂。「異性の友人を作るには」「看護師の妻と夫の認識の違い」「デートに誘ってくれる人によるヒールの高さの違い」「イッキ飲みは男らしい?」といった心をくすぐる問いの数々が、χ2検定、t検定、Wilcoxonの符号付順位和検定など、活用頻度の高い検定手法とふんだんな図表を用いて、科学的かつ軽やかに解説されている。読者が実際に操作するExcel画面は、注意するポイントが赤色で示されていて、数字が並んでいても目に優しくてぐんぐん読める。まさに田久マジック。

 本書のタイトルは『統計解析なんかこわくない』だが、サブタイトルの「データ整理から学会発表まで」が表すように、研究初心者でも、このとおりに行えばサクサクと進められそうな気がする1冊となっている。

新刊紹介

INFORMATION

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基本情報

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看護教育
60巻6号 (2019年6月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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