看護教育 60巻7号 (2019年7月)

特集 あらためて協同学習を理解する

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「ともに学んでいる仲間全体の意識を高めていくこと」を目的とした協同学習を看護教育に取り入れる試みは、めずらしくなくなりました。

看護師には、医療現場でさまざまな人とともに協力して働くことが求められます。また、その教育において、従来からグループワークが多用されてきました。そのような理由から、協同学習と看護教育には親和性があったといえるでしょう。しかし、なかには、ジグソー法やラウンド・ロビンといった代表的な技法を活用しただけで、「教育に協同学習を取り入れた」としているケースも見受けられます。

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 本誌「看護教育」と筆者との出会いは、連載「活動性を高める授業づくり」を始めた2010年4月にさかのぼる。1年にわたるこの連載は、本誌に協同学習が本格的に取り上げられた最初の企画であった。幸いにして一定の評価を得ることができ、同じタイトルで2012年に単行本として出版することができた。その後も、本誌では協同学習に関連する企画が幾度か組まれ、筆者も寄稿の機会を得た。

 これら一連の企画をとおして、本誌が看護教育における協同学習の普及に果たした役割は大きい。実際、本誌の企画に呼応するかのように、日本協同教育学会が開催する全国大会やワークショップに参加する看護教員が増えてきた。筆者が主催している「授業づくり研究会」や「協同教育フェスタ」にも、この5年ほどの間に看護教員の参加が急増し、参加者の半数近くが看護教員で占められることもある。

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技法にとどまる危うさ

 協同学習が看護教育の領域で広まっていることはうれしいことです。ただ、協同学習がポピュラーになればなるほど、「もどき」というか、「形だけの協同学習」の実践も増えているようです。その理由はさまざまだと思いますが、ここでは2点挙げておきます。

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はじめに

 2018年11月、筆者の勤務校である梅花女子大学で日本協同教育学会第15回大会を開催させていただきました。その折に、「協同学習に取り組み始めた看護教員たちは、技法を使う≒協同学習を取り入れているという考え方になっていないだろうか、つまり協同学習を用いた授業実践(教育活動)において協同の精神なき技法に陥っていないだろうか。いちばん大切な核となる協同の精神は育めているのだろうか」との問いが示されました。この背景には、アクティブラーニングの普及により協同学習を実践する看護教員が急増したことがあげられます。本特集は、まさに協同学習の考え方に基づいて授業実践をしている、あるいはこれから取り組もうとしている看護教員に対する上記のような問いかけであり、協同学習の実践者が心得ておかねばならない「協同とは」「協同の精神とは」「協同の体現化とは」について、あらためて確認し合う機会であると思います。

 本特集における筆者の役割は、2014年9月から大阪で開催してきた「協同学習を用いた看護教育研究会」の企画・運営者として研究会の現状をお示しすること、そして筆者を含め協同学習を実践する教員たちがこれからも啓発し合って成長し続け、さらなる熱意と自信をもって、学生のために学生とともに協同学習に取り組んでいくためにどう向き合えばいいのかを提案することです。

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本稿の概要

 久留米大学医学部(以下、本学)では、形骸化したPBLテュートリアルを再興したく、教育カリキュラムに協同学習を導入した。まず、いちばん重要な協同の精神について学び、あわせて協同学習の技法(LTDコアパッケージ)を学んだ。そのうえでPBLテュートリアルを実践した。本稿では、2年間の実践のなかから浮かび上がった問題点を挙げるとともに、テューターのあるべき姿勢について述べる。

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はじめに

 協同学習は、これまで幾度となく耳にし、また、看護関係雑誌で目にし、特に、アクティブラーニングに関する文献には必ず出てくる言葉だった。

 アクティブラーニングについては、2012年に中央教育審議会報告で取り上げられ、「知識の伝達・注入を中心とした授業から学生が主体的に問題を発見し、解をみいだしていく能動的学修」1)として推奨されている。看護基礎教育の現場でも主体的に学ぶ学生を育てたいという思いから、さまざまなかたちでアクティブラーニングができる教育方法がとられてきた。当校では看護学の各領域において、適宜グループワークを実施し、学生が主体的に思考する時間をプログラムしている。今思うに、そのグループワークもどちらかといえば、単にグループで学習課題を仕上げるという、表面的なものになっていたのではないかと危惧しているところである。

 このたび「協同学習は単なるグループ学習と根本的に異なる」2)という、安永悟氏が述べていることの意味を体験的に理解したいとの思いから、沖縄県看護教育協議会では2年(2017〜2018年)にわたり、協同学習について学んだ。そのなかで、協同学習が単なる教育技法にとどまるものでないこと、そしてそのめざすものの奥深さに触発され、その学びを継続していく必要があることを痛感したところである。

 さて、今回筆者に与えられたテーマは、設置主体の異なる県内5つの看護専門校で協同学習の導入から実践、結果に至るまでと今後の課題についてまとめ、紹介することにある。

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協同学習との出会い

 私たち、滝川市立高等看護学院(以下、当学院)教員が協同学習と出会ったのは、2015年12月に札幌市で開催された安永悟先生による「看護学教育にいかす協同学習のすすめ」というテーマの講演会だった。この講演会には、当学院の全教員8名のうち5名が参加した。私は「協同学習」という名称を耳にしたことがあったため、何か自分の講義の参考になればという軽い気持ちで講演会に参加した。しかし、講演の内容はその期待をはるかにこえたもので、講義のなかで知識だけでなく、主体性・能動性・協働性といった能力を伸ばし、現場で活躍できる人材を育成できるという理論と技法に私たちは感銘を受けた。また、実際に協同学習の技法を体験したことで、学んだことを自分の言葉にして仲間に話すことが、こんなにも自分の頭で考え記憶に残るのだということを体感した。講演会に参加したほかの教員も協同学習の効果を実感しており、帰路につく間も興奮しながら話をした。その後、個々の教員が自分の講義に協同学習を取り入れはじめた。

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はじめに

 ナイチンゲールは、「看護とは、患者が生きるように援助することであり、《訓練》とは、患者が生きるように援助することを看護婦に教えることにほかならない。看護はひとつの芸術であり、それは実際的かつ科学的な、系統だった訓練を必要とする芸術である」と述べている1)。このナイチンゲール看護論を基盤として、「すべての人が健康への最善の機会を与えられるように」、知的な関心・心のこもった人間的な関心・技術的な関心という三重の関心を重ねて注ぎ続けることができる看護師の育成を、松下看護専門学校(以下、当校)では開学以来教育目的として掲げている。

 当校では2012年から、同組織にある松下記念病院(以下、記念病院)と連携し、学生に「看護師ってカッコいい!」「看護って人を幸せにする!!」「私もそんな看護師になりたい!!!」と思ってもらうにはどうすればよいのかを考えながら、授業改革を進めてきた2,3)。結果、当校における休退学者はほとんどいなくなり、記念病院における新人離職率も激減し、2018年度には10年ぶりに0%となった。

 改革当初から授業時間数や実習進度などの課題が浮き彫りとなり、教育課程を変更する必要を感じていたが、すべてを構築するまでには長い時間を要し、2019年度からようやく新課程に基づく教育を開始することができた。本稿では、当校で進めた授業改革およびカリキュラム開発の取り組みを紹介する。まだまだ課題の多い教育課程であると考えており、よりよい看護教育の実現に向け、忌憚のないご意見をいただきたい。

連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・19

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 耳は頭の横に出ている部分だけではなく、頭の骨の中にまで長く続いており、解剖学ではこれを「外・中・内」の3部に分けています。外から鼓膜までが外耳、鼓膜の内側で耳小骨がある鼓室が中耳、その奥で頭の骨に埋もれている部分が内耳です。内耳はカタツムリの殻のような特徴的な形でよく知られています。しかし、この渦巻き形の器官は骨に埋もれていて取り出せません。その内部は空洞で、ほぼ同じ形の袋が収まっています。

 内耳は次の3つの部位に分けられます。渦を巻いた「蝸牛」、直交する3つの輪の「半規管」、そして両者の間でふくらんだ「前庭」です。これらはそれぞれ働きも異なり、蝸牛が音をとらえ、半規管は頭部の回転をとらえ、前庭は頭部の傾きをとらえます。この3つの部位を意識しながら右側の内耳を造形します。

連載 専門看護師とともに考える 実習指導のポイント 昭和大学の臨床教員の立場から・4

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 本連載では、臨床教員である専門看護師が、自分の担当する実習科目について、看護スペシャリストとしての視点をふまえた実習指導の「概要・ポイント」と「実践」の2回で説明する。「概要・ポイント」回では、実習領域の特徴を説明したうえで学生への指導ポイントや臨床との連携について紹介し、「実践」回では、実践例を具体的に説明する。また連載とは別に、昭和大学の臨床教員制度の詳細について毎回異なるテーマのコラムを掲載する。

大﨑千恵子(昭和大学保健医療学部 同学統括看護部)

連載 核心に迫る授業改善 インストラクショナルデザインによる事例検討・4

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お悩み「学生が事前学習をしてきません」

 今回はこの連載にご協力いただいている看護教員、三沢さんの事例です。まずは学習目標を見てみましょう(表)。

 学習目標からは、この授業が終わったときに学習者が何ができるとよいのかがよくわかります。私は看護の素人なのでお尋ねしますが、これは「患者さんの様子を見ながら、状態を把握する」ということでよいですか?

連載 臨床倫理を映画で学ぼう!・7

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作品紹介

 今回は『アルジャーノンに花束を』(ダヴィッド・デルリュー監督、2006年、仏・スイス)を紹介します。原作はダニエル・キイスが1959年に発表した、時代をこえて読み継がれている傑作同名小説です。主人公シャルルは30歳代の男性で、知的障害があり、近くの学校で清掃係として働いていました。小さい頃に知的障害者の施設に預けられ、現在はひとり暮らしです。自宅から職場へも毎日地図を見ないとたどり着けません。自分の名前も書けません。本人にはわかりませんが、学校の生徒にもバカにされています。

 ある日、シャルルは親代わりである職場の校長の薦めで、知的機能を改善する薬物を開発するための臨床研究への参加について、説明を受けることになりました。この薬物は、先行する動物実験でネズミのアルジャーノンに投与され、その知的機能を飛躍的に向上させていました。シャルルはヒト被験者の第一号として、実験薬を使用する候補になったのです。彼は説明された内容をほとんど理解できませんでしたが、自分の頭が良くなったら母親が喜ぶと思い、またお守りがあるから悪いことは起きないと信じ、「頭が良くなったらいいな」という一心で参加を望みました。そして、校長の代理承諾によって実験に参加します。

連載 医療通訳inバンクーバー・4

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 医療通訳会社Trans Medでは薬に関する問い合わせにも対応しています。たとえば、カナダへの薬の持ち込みの可否や、その場合の量、または服用中の薬がカナダでも購入可能かどうかなど、さまざまです。わからないことがあれば、バンクーバーで8年、日本で3年の薬剤師歴をもつKusuri Consulting社代表の森本のりこさんが強い味方になってくれます。私も業務でいつもお世話になっています。

 森本さんのお話では、カナダで薬剤師として働いていて感じる日本とのもっとも大きな違いは、カナダの薬剤師には日本よりも仕事上の権限があることだそうです。権限の大きさは社会的地位にも影響しており、カナダにおいて薬剤師は信用される職業の上位につねにあげられています。

連載 看護師のように考える コンセプトにもとづく事例集・07

体温調節・炎症 松崎 紗織 , 奥 裕美
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episode1

小谷さんからナースコールがあり、訪室すると「寒い」と言っていた。

あなた 小谷さんが「寒い」とおっしゃるので、とりあえずお布団をきちんと掛けて、お部屋の温度を少し上げてきました。

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目次

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プレゼンのワザから研究を考える

 本書は“プレゼンの本”というより、“プレゼンのためのスライドづくりの本”である。著者の前田圭介氏は、愛知医科大学大学院の講師。高齢者の摂食嚥下障害、栄養障害、チーム医療を専門に研究・教育に従事されている。紹介されるスライド例は、摂食嚥下や栄養障害にまつわる内容が多いので、看護職者にもかなり馴染みやすいだろう。

 本書全体は4つのPartsに分かれている。まず、Part1「『伝わる』スライドづくりの基本」で、スライドデザインのテクニックとして有益なノウハウの大部分が紹介される。「情報はシンプル・ダイレクトに」「アニメーションはシンプルに」「加工のワザにおぼれない」といったアドバイスには、もともとスライド作りのワザなどもっていない評者も、わが意を得たりとニンマリ。けれど、「フォントの選び方」「コンテンツは上目に作る」「行間を自在にあやつる」あたりになると、あわててPCを起動して、わがスライドのダメさ加減を確認することになる。

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学生への論文作成指導を振り返るきっかけともなる一冊

 専門職を目指す看護学生にとって、科学的な文章を書けるようにトレーニングすることは、大切なことです。しかし、高等学校までの国語では科学的作文の作成に関してほとんど指導されることはなく、看護学生は、基礎教育課程でレポート課題や卒業研究などの論文作成をとおして、その書き方を学びます。本書は、その手助けになる1冊です。

 第1章では、文章の書き方の基本が紹介されています。小・中学校で学ぶ「『文』とは、なにか」から始まり、「。(句点)」「、(読点)」の説明、「主語」「述語」の確認の仕方、さらに、「補助語」「助詞」「連用修飾語」「連体修飾語」などの活用方法が示されています。シンプルな例題を用いて説明されており、学生にはとても理解しやすい内容です。たとえば、日常的に目にする「風疹の流行が広がっている」という表現は、厳密には「風疹の患者数が増加している」とすべきである、などの例題が取り上げられています。

新刊紹介

INFORMATION

基本情報

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看護教育
60巻7号 (2019年7月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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