看護教育 60巻5号 (2019年5月)

特集 授業はプレゼンだ!

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アクティブラーニングの考え方が広がり、学生が主体的に考える授業への取り組みが活発になっています。だからこそ、知識や考え方を伝える「教員が話す時間」は、より重要になっているのではないでしょうか。適切な手法を用いて情報が伝達されてこそ、その材料で学生は主体的に考えることができます。ですから先生方は、学生が確かに情報を受け取れるよう、授業の仕方を工夫されていることと思います。そこには、無意識かもしれませんが、プレゼンテーション(以下、プレゼン)のスキルも取り入れられているはずです。

プレゼンのスキルというと、たとえば学会や会議での発表方法のように思われているかもしれませんが、相手に意図した内容を伝えるという意味では、授業の技術となんら変わるものではありません。

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プレゼンを見るのは楽しい

 2018年3月に「スーパープレゼンテーション」1)という番組が終了しました。7年間続き、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボ所長の伊藤穣一教授がナビゲーターをしていたことでも有名な番組です。世界の人々がプレゼンテーション(以下、プレゼン)を行う、TED Conference(テド・カンファレンス)から選ばれた素敵なプレゼンに、伊藤氏とスプツニ子氏(同メディアラボ助教、当時)との対話による解説も加えられていました。番組終了後もTED Talks2)での無料動画配信などがあり、TEDを知らなかったという方もインターネットで今すぐに視聴できます。

 この動画は1本10〜20分程度なので通勤や移動時にちょうどよく、私はある時期に毎日見ていました。TEDでは自分のアイデアを世界中の人々に伝えたいと情熱をもっている人がプレゼンするため、その内容には大きな魅力がありますが、それ以上にプレゼンターが練習により獲得したプレゼンのスキルに目がいき、「なんて素晴らしい伝え方だろうか」と感激しながら見ていました。

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はじめに

 小学校・中学校・高等学校・特別支援学校に勤める教員にとって、授業をする力は中核的能力の1つである。なかでも、教授する内容・方法を児童・生徒にわかりやすく伝え、彼らと共有する力、つまりプレゼンテーション能力(以下、プレゼン力)は、大きな比重を占めている。しかし、教員であるからといって、皆がそれに長けているわけではない。むしろ苦手意識をもっている者も多い。その理由は、授業は児童・生徒に対して、教員が一方的に教えたいことを教える場ではないからである。実際の授業では、対象となる児童・生徒の参加・理解状況を常時観察しつつ、教える側があらかじめ用意した内容の範囲、用いる教材のレベル、説明の仕方などを、対象者に受け入れられるレベルへと逐次柔軟に変化させていくことが求められる。

 このように、深い対象者理解能力や教材解釈能力が根底にあれば、発表する技術の不足を補って授業を成立させることができる。特に若年層教員の場合に、発表はうまいのだが授業にならないということが起きてくるのは、そのような背景による。しかしこのことは、本当の意味でプレゼン力を向上させるためには、長い時間をかけて修練を積んでいく必要があることを示唆している。

 今回筆者には、理科系学生でかつ教員をめざす学生たちの養成を行っている立場および、看護教員養成講習会の非常勤講師として長らく勤めた経験をふまえたコメントが求められている。そこで本稿では、筆者の勤める東邦大学理学部教員養成課程在籍の学生(以下、本学の学生)と看護教員養成講習会の受講生を念頭に置きながら、彼らがプレゼン力に関して抱えているさまざまな悩みを浮き彫りにしたい。また、課題解決のための具体的な取り組みについても述べる。

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毎日の授業をプレゼンテーションと考える

 世の中でいちばんプレゼンテーション能力を求められている人は誰だろうか。それは「教える職業」の人たちだ。小学校の教員は1日に6時限まで子どもを相手にプレゼンテーションをしているし、中高の教員、大学の講師・教授なども、日々学生に対して考え方や知識を伝達するためのプレゼンテーションをしている。

 看護教育に携わっているあなたも1日に多くの時間をプレゼンテーションに費やしているはずだ。教室や実習現場で学生に対して看護の考え方や知識を伝え、質問を投げかけ考えさせ、返ってきた答えに、あなた自身の意見を述べる。また、実習現場で、こうするべきだとか、こうしてはいけない、あるいは、どのようにすべきかと問いを発し、学生に深く考えさせる。

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プレゼンテーションの基礎をワークショップで学ぶ

 プレゼンテーション(以下、プレゼン)は、「自分の考えや計画を他の人に聴いてもらうこと」1)と定義される。グローバル化、価値観の多様化が進む現代社会においては、プレゼンが求められる機会も多く、教育の場でも学生のプレゼンのスキルを高める教育が求められている。

 プレゼンについて教育していくためには、まずは教員自身がプレゼンについて考え学ぶことが必要である。加えて、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善の推進が要求されていることからも、教員の授業運営能力、特にプレゼン力の重要性は日々増している。

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 佐瀬竜一先生の「プレゼンテーションを学ぶワークショップ」に、4つの教育機関の先生方に参加していただきました(進行詳細は、p.368の佐瀬論文を参照)。

 「プレゼンテーションを行いやすい環境(雰囲気)をつくる」「スケーリング・クエスチョンを用いて、理想のプレゼンテーションについて考える」「聞き手を具体的にイメージする」「聞き手の心とその変化を具体的にイメージする」「プレゼンテーションの内容を考え、フューチャーマッピング上に配置する」「プレゼンテーションを行う方法や形式を決める(確認する)」という形式で、プレゼンテーションの体系的な準備の仕方を学んだ先生方のなかから、代表して各校1人ずつに佐瀬先生との座談会に参加していただきました。

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2018年11月10日、医学書院会議室にて「教育実践を研究にするSoTLと研究デザインワークシートのつくり方」と題する公開収録が開かれました。その内容を、2回にわたって誌面でご紹介しています。

第1部(60巻4号掲載)では、SoTL(Scholarship of Teaching and Learning)について概説し、SoTLで論文を書くためのステップと、そのために必要な良い問いづくりの方法について説明しました。 『看護教育』編集室

連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・17

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 体幹のもっとも低い場所で骨盤に守られているのが、骨盤内臓と呼ばれる器官です。前方に膀胱、後方に直腸があり、その間に生殖器官があります。男性は膀胱の下に前立腺が、後ろに精囊があります。女性では膀胱と直腸の間に腟があり、子宮がその上に乗っています。子宮や卵巣が目立つ女性の骨盤内臓は複雑に見えますが、男性も体外に押し出された精巣から膀胱の後ろまではるばる向かう精管があるので、それほど単純ではありません。

 造形では、まず膀胱を作ります。膀胱は先の尖った栗のような形です。その左右に尿管の断端をツノのように付けます。膀胱の下には丸い前立腺を付け、左右の精囊は尿管と前立腺の間に付けます。これらを体壁に見立てた厚めの粘土の板に乗せ、その前部を上へ折り曲げて下腹部の腹壁とします。次に棒状の粘土を陰茎としますが、これは前立腺の真下から始まるので長めにします。精巣とそこから伸びる精管は、先が細長く伸びた涙の形にします。精巣は陰茎の左右に立てて置き(①)、細長い精管は腹壁を跨いで(実際は鼠径管を通過して)膀胱の後ろへ向かい、尿管のツノに引っかかるように下降して精囊へと向かいます(②)。最後に太い直腸を作って後ろに配置して完成です(③)。

連載 核心に迫る授業改善 インストラクショナルデザインによる事例検討・2

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 この連載の目的は実際の授業に対する改善提案をし、そのプロセスを読んでいく過程で授業改善のコツを習得してもらうことです。コツが習得できなくても、ご自身の授業内容とよく似た事例やお悩みに対する改善案をそのまま利用してもらうだけでも、一定の効果があるようにするつもりです。では、さっそく始めましょう。前回が予告編だったので、今回が実質的なスタートです。

連載 専門看護師とともに考える 実習指導のポイント 昭和大学の臨床教員の立場から・2

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 本連載では、臨床教員である専門看護師が、自分の担当する実習科目について、看護スペシャリストとしての視点をふまえた実習指導の「概要・ポイント」と「実践」の2回で説明する。「概要・ポイント」回では、実習領域の特徴を説明したうえで学生への指導ポイントや臨床との連携について紹介し、「実践」回では、実践例を具体的に説明する。また連載とは別に、昭和大学の臨床教員制度の詳細について毎回異なるテーマのコラムを掲載する。

大﨑千恵子(昭和大学保健医療学部 同学統括看護部)

連載 臨床倫理を映画で学ぼう!・5

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作品紹介

 今回は『ザ・サークル』(ジェームズ・ポンソルト監督、2017年、米)を紹介します。アマゾン、グーグル、フェイスブックなどの現代IT大企業を1つにまとめたような超モダンで巨大なSNS企業サークル社が舞台です。会社の顔である経営者ベイリーは、テクノロジーが社会を民主化し、隠し事は罪であり、すべてが記録され共有されることによって人権問題も解消できる、と心から信じていました。社員はタブレットやスマホがあれば、ソフトである「サークル」内で何でも手に入れることができ、まさに至れり尽くせりの環境ですが、文字どおり自分の日常生活についてのあらゆる情報を共有することが要求されます。

 そんな大企業に26歳の女性、メイ・ホランドが大きな夢を抱いて入社してきました。はじめは顧客対応でしたが、とあるきっかけでサークル社の新しい試みである「完全透明化」プロジェクトに参加し、24時間自分の生活を公開し、会社のトップを含め皆に認められていきました。そしてある日、「ソウルサーチ」という公開プレゼンテーションを行うことになりました。それは最新テクノロジーを駆使して、世界のなかから任意の人を短時間で探し出すトライアルでした。その実験では逃亡中の犯罪者を瞬時に捕えることに成功する一方、思いもよらない悲劇も起きてしまうのでした。

連載 障害や病いとともに学ぶ、働く・4【最終回】

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障害をもつ教員として見えること

 多くのサポートを得ながら学部を卒業し、看護師の資格を取得し、そのまま大学院へ進んで、その後は、研究所などの勤務を経て、いま看護教員5年目を迎えている。「臨床経験がない教員がいてもいい」「いろいろな人がいてもいい」「役割分担だから、できることを一所懸命やってください」。今の職場に採用されるときに、そういうふうに声をかけてくれた人がいた。この言葉は、採用後も頭のなかで、自分に言い聞かせるように繰り返してきたと思う。

 それでも、看護教員としてできないことに直面したときは、人と比べて自分が苦手なことを挙げてわざわざ確認し、どうしようもないことについて思い悩み、消耗したこともあった。努力して何とかなるなら努力するという選択肢もあるが、それが難しいこともある。時には、今の自分を否定してなるべく「健常」に近づけようとする思考自体が、障害をもつ仲間から教えてもらったこと、その人たちと一緒に過ごした時間、また、障害をもつ仲間と出会ったことで広げてもらった世界を、否定するような思いにすらなった。

連載 医療通訳inバンクーバー・2

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 こんにちは。今回は、いつもバンクーバーでお世話になっている日本人看護師のSteven Hashimotoさんにカナダの看護教育について伺ったので、その概要をお伝えします。

 カナダでは、2000年頃から看護の基礎教育がすべて4年制(学士課程)になり、最近では都市部を中心に、高校を卒業してすぐに看護学科に入学できる学校は少なくなりました。バンクーバー近郊の大学の看護学科に進学するには、高校卒業後1〜2年間カレッジにて、看護学科指定の基礎科目を5〜10取ることが必要です。たとえば、市内のある看護学科では、大学1年レベルの英語(2科目)、解剖・生理学(2科目)、統計学の履修が入学の必要条件です。

連載 看護師のように考える コンセプトにもとづく事例集・05

認知・感染 池田 葉子 , 奥 裕美
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episode1 術後1日目、あなたは山田さんの夜勤を担当しています。

あなた 検温のために山田さんの病室を訪ねたら、いつもと比べてぼーっとしているような様子で、「ここは病院で間違いないわよね?私どうかしちゃったのかしら」とそわそわしていたんです。日勤からの申し送りでは、とてもしっかりした方だという話でしたが……。バイタルサインは、いつもと変わりがなく、痛みの程度は昼間と変わらないとおっしゃっていますが、ときどき手術部位を触って痛そうにしていて、なんだか落ち着きがない感じです。せん妄なのでしょうか。

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目次

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41の失敗事例で、「伝え方」スキルを学ぶ

 看護基礎教育にかかわる教員は、学生が興味をもって主体的に学べる授業を行いたいと常に考えています。しかし、学生が寝ている、問いかけても反応がない、伝えたいことが理解してもらえないなど、教員たちの悩みはつきません。世代間のギャップもあり、今まで行っていた説明の仕方では通用しないことも多々経験します。たとえば、災害時の備えについて考えてほしいと思い、阪神・淡路大震災を例に出します。災害看護学の発展の契機となった大災害であり、地元で暮らすわれわれには忘れることのできない出来事ですが、学生にとっては、まだ生まれる前の過去のことで、ピンとこないようです。そもそも「災害看護」という専門用語が、入学したばかりの学生には理解できないのかもしれません。

 効果的な授業を実施するには、伝える内容の精選はもちろん、伝え方、つまりプレゼンスキルが欠かせません。本書は、「医療者とプレゼンのプロが“しくじらない”極意を教えます」とあるとおり、とてもわかりやすくプレゼンテーションについて解説されています。編著者である八幡紕芦史先生は、日本におけるプレゼンテーション分野の第一人者で、企業や官公庁・自治体でのプレゼンテーション教育、大学での講義、多種業界での講演活動、関連書籍や雑誌の執筆とご活躍されています。さらに、本書は医療現場に特化して、現役の医療従事者とともに執筆されています。

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在宅看護ならではの学びの指針に

 在宅看護論は、平成21(2009)年のカリキュラム改正(第4次改正)時に統合分野として位置づけられ、地域で生活しながら療養する人々とその家族を理解し、在宅での看護実践の基礎を学ぶことが求められてきた。また、終末期看護も含め、在宅での基礎的な看護技術を身につけ、多職種連携における看護の役割を理解することも必要とされている。さらに、少子・超高齢社会による2025年問題に対して、高齢者の尊厳の保持と自立支援の目的のもと、可能な限り住み慣れた地域で人生の最期まで自分らしい暮らしを続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)が推進されている。

 本書は、このような時代の看護を支える看護師養成のための在宅看護過程の参考書である。

新刊紹介

INFORMATION

基本情報

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看護教育
60巻5号 (2019年5月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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