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はじめに
小学校・中学校・高等学校・特別支援学校に勤める教員にとって、授業をする力は中核的能力の1つである。なかでも、教授する内容・方法を児童・生徒にわかりやすく伝え、彼らと共有する力、つまりプレゼンテーション能力(以下、プレゼン力)は、大きな比重を占めている。しかし、教員であるからといって、皆がそれに長けているわけではない。むしろ苦手意識をもっている者も多い。その理由は、授業は児童・生徒に対して、教員が一方的に教えたいことを教える場ではないからである。実際の授業では、対象となる児童・生徒の参加・理解状況を常時観察しつつ、教える側があらかじめ用意した内容の範囲、用いる教材のレベル、説明の仕方などを、対象者に受け入れられるレベルへと逐次柔軟に変化させていくことが求められる。
このように、深い対象者理解能力や教材解釈能力が根底にあれば、発表する技術の不足を補って授業を成立させることができる。特に若年層教員の場合に、発表はうまいのだが授業にならないということが起きてくるのは、そのような背景による。しかしこのことは、本当の意味でプレゼン力を向上させるためには、長い時間をかけて修練を積んでいく必要があることを示唆している。
今回筆者には、理科系学生でかつ教員をめざす学生たちの養成を行っている立場および、看護教員養成講習会の非常勤講師として長らく勤めた経験をふまえたコメントが求められている。そこで本稿では、筆者の勤める東邦大学理学部教員養成課程在籍の学生(以下、本学の学生)と看護教員養成講習会の受講生を念頭に置きながら、彼らがプレゼン力に関して抱えているさまざまな悩みを浮き彫りにしたい。また、課題解決のための具体的な取り組みについても述べる。
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