連載 臨床倫理を映画で学ぼう!・5
プライバシーは罪?―『ザ・サークル』
浅井 篤
1
1東北大学大学院医学系研究科
pp.408-409
発行日 2019年5月25日
Published Date 2019/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201241
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作品紹介
今回は『ザ・サークル』(ジェームズ・ポンソルト監督、2017年、米)を紹介します。アマゾン、グーグル、フェイスブックなどの現代IT大企業を1つにまとめたような超モダンで巨大なSNS企業サークル社が舞台です。会社の顔である経営者ベイリーは、テクノロジーが社会を民主化し、隠し事は罪であり、すべてが記録され共有されることによって人権問題も解消できる、と心から信じていました。社員はタブレットやスマホがあれば、ソフトである「サークル」内で何でも手に入れることができ、まさに至れり尽くせりの環境ですが、文字どおり自分の日常生活についてのあらゆる情報を共有することが要求されます。
そんな大企業に26歳の女性、メイ・ホランドが大きな夢を抱いて入社してきました。はじめは顧客対応でしたが、とあるきっかけでサークル社の新しい試みである「完全透明化」プロジェクトに参加し、24時間自分の生活を公開し、会社のトップを含め皆に認められていきました。そしてある日、「ソウルサーチ」という公開プレゼンテーションを行うことになりました。それは最新テクノロジーを駆使して、世界のなかから任意の人を短時間で探し出すトライアルでした。その実験では逃亡中の犯罪者を瞬時に捕えることに成功する一方、思いもよらない悲劇も起きてしまうのでした。
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