看護教育 51巻1号 (2010年1月)

特集 2010年看護教育の課題

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 2008年から2009年の看護教育界は,新カリキュラムに明け暮れたといっても過言ではありません。新カリの2年課程への導入や改正保助看法の施行が今年からということを考えると,2010年は新たな一歩を踏み出す年といえるのではないでしょうか。

 そこで今回は,さまざまな立場の筆者に,看護教育の今とこれからを語っていただき,今後看護教育者がどのような道を歩んでいけばいいのかを考える指針にしていただきたいと考えました。

 見える問題,見えざる問題,さまざまですが,一つひとつに対応していってこそ,看護教育が充実していくことと思います。

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看護基礎技術に“わざ”の土台となる『型』を

川島 看護研究学会(横浜,2009年)で,提起したことがあるんです。近年──この10年程度の期間,厚労省や文科省でも公けに打ち出されている新人看護師の「実践力低下」の問題について,基礎教育での課題としても,まず看護学生の実践力や技術力をどのように向上させるかがテーマにされてきていますね。ところがさらに以前──30年程前に,日本看護協会や種々の学会の場での主流意見としては,新人は「すぐに役立つ必要はない。じっくりでいいから現場で熟成して成長していくのが大事」というものでした。その背景としては,理想として近未来に看護教育の大学化が進み,高等教育の体系の中で看護学生に“考える力”を身につけさせたい,すぐに役立つより自己啓発して長く伸びてゆく人を育てたいという論議が相当されていたんです1)。でも,看護師とは看護実践をする人だから,即戦力とまでは言わないまでも,現場である程度役に立たなかったら意味がないでしょうと,その流れについては,私はずっと疑問に感じてきたわけです。

 ただ考えてみれば,学生の技術力・実践力の低下という以前に,「教員の」実践力はどうなっているの?と問いたいわけです。いったい優れた看護実践のできる教員がどのくらい存在するのでしょうか。

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はじめに

■夏のニュースに「またカリキュラム改正?」

 多くの看護系学校は,2009(平成21)年度入学生から新カリキュラム(以下,新カリ)を施行している。昨今の医療環境の変化にともなって改正されるカリキュラムについては,筆者は看護教育の大学化の期待をもっていた。これは医学教育に卒後の研修制度が設けられ,薬剤師教育が6年となった今日,共に医療・保健を担う専門職を指向している看護職としては時代の要求でもあると考えていた。しかし,改正された保健師助産師看護師学校養成所規則(以下,指定規則)では,専門分野の構造の変更や統合科目の設置などでの単位の増加が提示されたのみで,期待した内容ではなかった。

 とはいえ,指定規則変更にともなうカリキュラムの変更は国家試験受験資格の条件でもあることから,当校においても時間をかけて検討を重ね,本年度入学生より導入した。その直後の7月,議員立法による保健師助産師看護師法(以下,保助看法)の一部改正が報じられた。いち地方で教育に携わっている筆者にとって,看護協会の号外で出されたこのニュースに青天の霹靂のようなショックを受けた。本音として「なぜ今頃?またカリキュラム改正?」であった。

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 「看護教育,新時代の幕開け─看護師の基礎教育『大学』主流へ,新人臨床研修が制度化」と,看護界は2009(平成21)年7月15日の法律の一部改正を報じました。看護の発展を願うひとりの看護職としては,「やっと」といった思いでした。その反面,看護専門学校(以後,専門学校)で看護師養成を担っている者としての重圧を同時に感じました。

 「大学化」が加速度を増すとしても,現在,わが国の7割を担っている専門学校での看護師教育が,雪崩を打って大学教育になることはあり得ません。大学が量的にも主流へと移行するには,時間を要することは否めず,まだまだ,国の看護師養成の多くを専門学校が支えていかなければならないと思います。人員,資金,設備など大学に比べればハンディともいえる教育環境で,しかも短期間で,専門学校が今以上に資の高い看護師教育をしなければならないわけです。

 専門学校は教育の充実に向けて何をしていけばよいか,大切なことは何か,本校の状況を通して述べたいと思います。

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同じ問題を別の方向から見ること

 今回私は,教育者から看護管理者になった立場から,両方の視点から見える看護教育の課題について述べる,という難問を依頼された。なぜ難問かというと,私は看護管理を教えていた教員時代と現在とで視点は変わっていないからだ。

 学生を送り出す側にいたときは,臨床現場のダイナミズムを,学生や卒業生の本音を通して理解していた。今は,現場で働いている人たちからの意見を吸い上げる努力はしてはいるが,必ずしも本音が聞けているわけではないと思っている。

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取り組みの動機──学生の現状から

 アルファベットは1つの音を表わす文字であるのに対し,漢字は一つひとつに意味と音をもつ文字である。漢字を正しく読むことは,文字一つひとつの意味を理解することを促し,漢字の組み合わせである単語の意味内容の理解にもつながると期待できる。看護学の専門用語を正しく読むことは,看護学の知識を習得する際に重要な役割を果たすと考える。しかし,現在では電子辞書を片手に教師の話を聞くという授業風景を目にするとともに,受け答えの様子から漢字の読み書きが苦手な学生が増えてきたと実感する。

 本稿では,現在の看護学生の漢字の読み能力を明らかにしたいと考えて,本学の学生とともに行った2つの漢字の読み能力に関する調査結果を報告するとともに,なぜ私が“チームKAN-TAN”(野崎,田中美穂,蜂ヶ崎令子の3名)として,基礎教育の素養を補う教材を作成するに至ったかを読者の皆様にお伝えしたい。

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はじめに

 いま人工呼吸の世界では,気管内挿管や気管切開による従来の人工呼吸器を装着するにあたって行われる,侵襲的な治療法ではない非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)の導入により変化の波が生じはじめている。以前,本誌特集「教員だからこそできる地域貢献」でも,筆者が行ってきた人工呼吸など医療依存度の高い長期療養児者の在宅支援活動を紹介した1)。NPPVの適応は,慢性呼吸不全の症状改善や生命維持だけではなく,ICUを含む急性期,そして緩和ケアにまで広がってきているのである。NPPVはまた,非侵襲的で利用者の負担が少なく,これまでの人工呼吸法に比べてQOLの高さや,リスクの低さを兼ね備えているが,その実践においては,きめ細やかなケアが成否のカギを握るとされている2)

 一方,小児看護の領域では,1994年に子どもの権利条約が批准された後,病院における子どもの権利に関する意識が高まり始め,(1)子どもの意思の尊重,(2)子どもが潜在的に持っている対処能力を引き出す,(3)子どもが頑張ったと実感できるような関わりや子どもの自己肯定感を高め,健全な心の発達を支援する,などの効果が期待できるケアの1つとして,プレパレーションの重要性が注目されている3)

 そこで,筆者は子どもの納得と協力が,安全で効果的な乳幼児への器械による咳介助(Mechanically assisted coughing:MAC)やNPPVの導入には重要であると考え,子ども向けのプレパレーション教材として,絵本と絵カードをセットで制作した(図1)。本稿では,その制作を考えるに至った取り組みの経緯などを紹介し,教育・研究と実践との新たな協働の可能性を探りたい。

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はじめに

 「看護基礎教育の充実に関する検討会」(以下,検討会)は,平成18(2006)年3月から厚生労働省の研究会として開催され,平成19(2007)年4月に「看護基礎教育の充実に関する検討会報告書」(以下,検討会報告書)として,看護基礎教育の充実に資するためのカリキュラム改正案が示された。このカリキュラム改正案を受け,厚生労働省および文部科学省は,平成20(2008)年4月1日付で看護基礎教育のカリキュラム改正を行った(「保健師助産師看護師学校養成所指定規則等の一部を改正する省令」の施行)。新カリキュラムは平成21年度の入学生から適用され(ただし2年課程は平成22年度から),改正の趣旨は,看護を取り巻く環境の変化に伴い,学生の看護実践能力を強化することにある。

 また厚生労働省では,このカリキュラム改正の検討とは別に,平成13(2001)年から「保健師助産師看護師国家試験制度改善部会」(以下,改善部会)を審議会として発足させた。ここで国家試験の改善について検討され,平成20(2008)年3月に「保健師助産師看護師国家試験制度改善部会報告書(以下,改善部会報告書)」が出された。改善部会報告書は「保健師助産師看護師国家試験出題基準改定部会」(以下,改定部会)において検討され,従来の出題基準が改定された。新出題基準は平成21(2009)年4月に公表され,保健師国家試験については平成22(2010)年度(第96回)からの適用となる。そこで,検討会報告書,改善部会報告書及び新出題基準と,近年の保健師国家試験の出題状況から,保健師国家試験の今後の出題傾向について考察する。

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 知人に勧められて,福島智さんの生まれてから現在に至る軌跡のすべてを綴った『ゆびさきの宇宙』を読んだ。本のカバーには点字が打たれており,またテキスト形式の電子データを提供していただけるという,視覚障害者に優しい本であることを感じた。

 ただ,本書を読んで,気になったのはすべての障害者が同じ道を辿ることはないということである。健常といわれる人々と同様に,障害者にも光と影があり,成功者とそれに相反する者が存在するという現実があるということを,認識して読んでいただきたいと思う。

連載 評価から始める教育活動・1【新連載】

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はじめに

 コミュニケーション能力の育成は,看護基礎教育上の重要な課題である。看護の実践では,対象の主体的な生活を支援するため,『対象の理解』が基盤となる。対象の理解は,外側からの分析的・批判的な理解ではなく,その人の視点に立った理解が求められる。看護学生は,コミュニケーション技術に関する知識を講義で学び,それを活用する演習を行った後,実習に臨む。実際の患者とのコミュニケーション場面では,学生が聞きたい内容を患者に質問し,情報を収集するに留まり,相手の反応を受けとめ,理解するという聴き方は困難な状況にある。そのため,看護におけるコミュニケーション能力を強化するうえで,相手の理解を深める「聴く技術」の習得をめざす必要があると考え,改正前のカリキュラムを評価し,授業改善に取り組んだ。

 本稿では,科目レベルのカリキュラム開発における,現状分析としての評価に焦点を当てて報告する。

連載 誌上FD 自己決定できる「女性」を育てる 気づきと目覚めのジェンダー教育・1【新連載】

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ごあいさつ

●「女性」の「 」は気にせずに

 これから,若い女子学生(そして男子学生)を対象としたジェンダー教育の組み立て方について,読者の皆さんとご一緒に考えていきたいと思います。単なるリップサービスではなく,本当に「皆さんと一緒に」考えたいと思っておりますので,ご質問やご意見を電子メールで私宛てに直接お寄せください。可能な限り,連載のなかでお答えして参ります。

 タイトルにあるように,目的は自己決定できる「女性」を育てることです。え? 今時の若い学生なら,自由に生きているんじゃないの? 教師の言うことなんか聞かないし,勝手気ままに学生生活を楽しんでいるでしょう? そう思われるかもしれません。ところがどっこい,自己決定のできない学生が多いのです。特に,女性の場合には。それも,責任感や義務感の強い女性ほど。なぜそうなのかは,これからゆっくり解き明かしていきましょう。とにかく自己決定できない学生が多いので,そしてそれゆえにジェンダーにまつわる問題に巻き込まれることが多いので,自己決定できるように育てることが目標となります。なお,「女性」に付けられたカッコの意味は,おいおい明らかになりますので,しばらくは気にせず,お付き合いください。

連載 大学ジャーナリストの取材ノートから・1【新連載】

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 『看護教育』読者の皆さん,はじめまして。大学ジャーナリストの石渡です。ご縁あって,本誌にて,これからしばらくの間,全国各職種を見通した視点からの教育・就職事情などをご紹介することになりました。

 高校生向けの進路ガイドブックを刊行していることもあり,医療問題には興味がありました。しかし,まさか,その専門雑誌からコラム執筆の依頼を受けるとは思ってもいませんでした。まさに偶然,実を言えば,私のこれまでの人生もまた偶然続きです。小学生のころ,イジメを受けていて地元の公立中学校に行くのがイヤでイヤでどうしようもないとき,たまたま図書室に新設の私立中の紹介記事が貼ってありました。そこで“私立は学費がかかるから……”,としぶる親を説得し受験,合格。環境を変えることに成功しました。

連載 ウズベキスタンで看護教育を『変える』・1【新連載】

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■はじめに

 ウズベキスタン共和国(以下,ウズベキスタン)において5年間にわたって取り組んできたJICA「看護教育改善プロジェクト」が,2009年6月に当初の目標を達成し終了した。そこで,看護領域の国際協力の一端としての本プロジェクトを紹介させていただき,ウズベキスタンをはじめとした中央アジア諸国の看護および看護教育の,今後のさらなる改革・発展に向けての一助となればと思っている。

 ウズベキスタンは,1991年に旧ソ連から独立した,中央アジアに位置する国で,面積は日本の約1.2倍であり,海に出るには2つの国を通らなければならないダブルロックカントリーである。独立後は日本との関係が深く,親日的である。12の州,1つの自治共和国および首都であるタシケント市に分かれており,人口は2780万人(2008年:国連人口基金)である。シルクロードに沿ってヒヴァ,ブハラ,サマルカンドは世界文化遺産に指定されている。気候は典型的な大陸性気候で,夏は非常に暑い。主要産業は綿繊維産業,天然資源(金,石油,天然ガス)などである。経済成長率は,プロジェクトが開始となった2004年からGDP成長率は7~9%の高水準を維持し,2008年の一人当たりのGDPは,1026.7ドル(2008年:IMF)である。タシケント市の中心部はビルが立ち並び,近年発展が目覚ましく,年々新車が目立つようになったと感じる。

 本プロジェクトは,日本のODAの一環としてJICA(国際協力機構)の「技術協力」として実施されたもので,日本の多くの看護教育の専門家で構成された国内支援委員会等を中心に,ウズベキスタンの行政等と協働して取り組んできた。

 本プロジェクトにより,CON(Client-Oriented Nursing)の概念に基づいて改善された看護教育のカリキュラムは,ウズベキスタンの保健省,教育省の承認を受けたうえで,2006年9月(ウズベキスタンの新学期は9月からスタート)からモデル校(タシケント第一医療専門学校)において導入されている。さらに,2009年9月からは,全国33校の医療専門学校において改善カリキュラムによる新しい看護教育が開始され,2012年までには,全国の80校すべての医療専門学校で,本プロジェクトで改善した教案プログラムに添った教育が行われる予定である。

 旧ソ連から独立したウズベキスタンでは,本プロジェクトに限らず「改革が必要であると行政が判断し,取り組む」ことにより,改革は一気に実現し加速されるという現実を目の当たりにし,日本では,看護職の基礎教育に関する保健師助産師看護師法の改正に60年以上もかかったことと比較すると感慨深いものがある。

 今回はJICA「看護教育改善プロジェクト」の概要を紹介し,次回以降3回にわたり,各領域の具体的な改善点等を紹介させていただく。

連載 学生とつくる「性の健康」講座・1【新連載】

情報源のルーツを探る 堀 成美
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“講座”開設のきっかけ

 聖路加看護大学では,女性学やセクシュアリティ等の授業の中で,テーマを決めてのグループ学習や自己学習課題を設けています。ここで選んだテーマをきっかけに,「より深く学びたい」「いつか指導者として教育に携われるレベルの勉強がしたい」という希望をもつ学生がいます。ヒアリングをすると,より多様な将来的な感心を抱える学生のニーズがあることがわかり,年度途中でしたが,自主的な活動として空いているコマと教室を探し,勉強会をスタートしています。

 教育目的の企画ですから,目的とゴールが明確でないといけません。ヒアリングで得た学生のニーズから設定したゴールは以下の3点です。

 目標1:自分自身の健康管理ができる

 目標2:周囲への支援ができる

 目標3:専門職としてのケアが行える

 看護学生は正規の授業で出される課題に追われています。その負担を増やさないため,学び方としては,

 「テーマについて自分自身が学ぶことに重きをおく参加」(目標1)

 「スキル取得もめざす参加」(目標2と3)

 上記を想定しました。

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犬の存在がコミュニケーションを活発に

──学校犬のバディは,具体的にどういう“仕事”をしているのですか。

吉田 まず,私は聖書科の教師という立場で,全学年全クラスに週に1回聖書の授業をしていますが,その時間はバディも同行し子どもたちと一緒に授業を受けます。それから6年生の有志による,バディウォーカーというボランティアで世話をするグループがありますが,その子たちと一緒に校内を散歩したり遊んだりします。あとは,バディのための部屋,バディルームが教員室のなかにあるので,授業がないときにはそこで過ごしています。バディは私と一緒に出勤し,退勤する時にも私が自宅へ連れて帰ります。

 クラスにバディが行く場合,高学年ですとすぐに授業を始めますが,低学年の場合は,授業の始まる前に子どもたち全員の机を回って,子どもたちがバディに触ったりお話ししたりしてから授業スタートです。バディ自身は,授業中はほとんど教室の隅っこで寝ていますね。

連載 ろくネコのナンセンスTimes・44

福袋 梶山 シゲル

連載 演習を通して学ぶ看護援助の基礎のキソ・10

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 先日,表1のような課題で「安全」「安楽」に関する演習を提示しました。

 今回は,この演習課題によって学生たちは何を学び,どのようにして科学的根拠に結びつくような学びができたかについての典型的な例をご紹介します。

連載 Mail from USA 『JNE』を読み,世界の看護教育の流れを知る・9

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●【主な論文】「研究対象者としての学生の倫理的処遇を保証すること」から

 『JNE』10月号に掲載されている,標題論文では,母性看護の授業をInteractive teaching(対話方式)で行う場合と,traditional lecture(講義形式)で行う場合の学生の効果を比較した研究を例にあげて,いかに研究対象としての学生の倫理的処遇を保証できるかをさまざまな視点から論じています。研究対象者に対し倫理的配慮を行うことは必須事項ですが,その対象者が学生となる場合,特有な問題が生じてくると著者は強調しています。なぜなら,学生は教員との力関係で弱い立場にあるからです。ですから,研究のデザインを考える際には,成績を評価する教員が,調査の際には関与しないなどの配慮が必要になるのだそうです。著者は,「自由裁量権,悪意のないこと,有益であること,誠実であること,公平であることの4つの原則が,看護教育の研究には重要である」と結論しています。

 それらの原則を実行するための具体的な説明の中で注目すべき点として,金銭に関する記述があります。例えば,「研究協力の謝礼金」は,金銭に悩みをもちがちな一般的な学生の自由裁量権に影響を与える可能性があるので注意を払うべきとか,公平性を守るためには十分な研究資金が重要であるとも述べています。アメリカでは,子どもの頃からしっかりと経済感覚を学ばせます。算数の計算の教材は,第一にお金のおもちゃが使われます。高校ではサマースクールの資金の一部を自分で集める指導もします。それゆえに看護教育においても,しっかりと経済に関して論じられるのはあたりまえなことなのでしょう。

 はたして,日本の看護研究において,経済の問題を論じることはあるのでしょうか? 日本では,教育の場でお金のことを論じることは少ないのではないでしょうか? 看護研究の倫理を保証するために経済に関する検討が十分にされているのでしょうか? 老若男女を問わず経済の話題に敏感なアメリカらしさを,この論文に感じました。

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 「看護現場学」という言葉に,心を動かされない人はいないだろう。私たちが看護を語るときに欠かせない,刹那的で永遠的な人や出来事との関わりを生み出す母胎からの看護現場学なのである。私たち看護教員は,学問としての看護学の教授を目指しながらも,独自の方法論を持ち得ないことから足元の揺らぎを自覚している。その方法論について,著者は自身の来歴に重ね合わせるように追究し続けている。1995年に,看護短期大学の教員になり,「26年という看護師のキャリアは,教員をするうえでそれなりの意味があるもの」と考えていた著者が,しかし他教員と共同作業を行っていく中で,自分が何か「一歩遅れる感覚」を覚えるようになる。それは他教員と著者との看護学に対する立場の相違──前者は演繹的に,後者は帰納的に看護を捉えていくアプローチの相違であった。以来,著者は臨床看護を基盤にした看護学とその方法論の確立へと向かうことになる。

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 読書をするときには,医学書に限らず,その本がどのような対象に向けて書かれているのか考える習慣を評者はもっています。本書は,患者さんも含めたチーム医療関係者に向けられた素晴らしい1冊で,透析治療に関するさまざまな分野について非常に簡潔にそして分かりやすく解説しています。

 まず「セルフケア」について,腎臓の働き・腎不全・透析の原理など学問的な面について,血圧・体重測定・透析の手順,シャントなど実際の透析に関する解説,食事療法・データの読み方・日常生活の注意など自己管理に関する部分,透析中の不快な症状・トラブル・合併症,さらには心の問題,社会保障に関することまで網羅されており,基本的なことはこの1冊で理解できると思います。

基本情報

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看護教育
51巻1号 (2010年1月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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