書評
―『看護現場学の方法と成果 いのちの学びのマネジメント』―看護学独自の科学を探究する看護教員への問いかけ
前川 幸子
1
1甲南女子大学看護リハビリテーション学部
pp.33
発行日 2010年1月25日
Published Date 2010/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101379
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「看護現場学」という言葉に,心を動かされない人はいないだろう。私たちが看護を語るときに欠かせない,刹那的で永遠的な人や出来事との関わりを生み出す母胎からの看護現場学なのである。私たち看護教員は,学問としての看護学の教授を目指しながらも,独自の方法論を持ち得ないことから足元の揺らぎを自覚している。その方法論について,著者は自身の来歴に重ね合わせるように追究し続けている。1995年に,看護短期大学の教員になり,「26年という看護師のキャリアは,教員をするうえでそれなりの意味があるもの」と考えていた著者が,しかし他教員と共同作業を行っていく中で,自分が何か「一歩遅れる感覚」を覚えるようになる。それは他教員と著者との看護学に対する立場の相違──前者は演繹的に,後者は帰納的に看護を捉えていくアプローチの相違であった。以来,著者は臨床看護を基盤にした看護学とその方法論の確立へと向かうことになる。
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