特集1 看護教育DXを進めるためのビジョンと構築
―学習者主体の実習を実現するために―大学と臨床が協調して臨むDX
藤村 朗子
1
,
長田 恵子
1
1東京医療保健大学立川看護学部
pp.284-289
発行日 2025年6月25日
Published Date 2025/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.004718950660030284
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はじめに
看護基礎教育における臨地実習は、学生が実践的な看護専門職として知識を統合し、態度を育成する上で中核を成す教育機会である。しかし、近年の医療の高度化・複雑化、在院日数の短縮化などにより、学生の実習環境は年々厳しさを増し、加えて2020年以降のコロナ禍では、実習機会の制限や代替実習の導入など、学習機会の保証に困難を生じた。
このような背景において、学習者が主体的に学び、実践力を高めるための実習の在り方があらためて問われている。「学習者主体」という概念は、学生が自らの学習に責任を持ち、能動的に参加し、自己の学習過程を振り返りながら成長していくことを意味する。これは2025年3月に提示された看護学教育モデル・コア・カリキュラムにおける「看護学士課程を修了した看護師として求められる資質・能力」1)のコンピテンシー基盤型カリキュラムの考え方とも合致している。一方、デジタルトランスフォーメーション(DX)は、単なるデジタル技術の導入にとどまらず、その技術を活用して教育の在り方そのものを変革する潮流として注目されているが、これは学習者主体の学習を実現する上で重要な位置を占めている。特に臨地実習においては、基礎教育側と臨床現場側が協調してDXに臨むことで、学習者主体の学習(実習)を実現する大きな可能性がある。
本稿では、基礎教育と臨床が協調して取り組む実習のDXについて、現状と課題を整理し、東京医療保健大学立川看護学部(以下、本学部)の具体的な実践例を中心に紹介しながら、今後の展望について考察する。

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